by五河四季
(??サイド)
絶対に勝てない敵。エリオ・モンディアルとキャロ・ル・ルシエは肌でそう感じていた。
魔法を無力化するAMFがあるだけが理由ではない。
隊長、いやそれ以上の相手を最初の実戦で相手するのは明らかに無謀な戦いなのだ。
「キャロ…………僕がまず突っ込む。だから後方支援をお願い」
「うん!」
槍型のアームドデバイス『ストラーダ』を構えて深呼吸。
緊張を和らげるだけではない。これこそエリオの戦闘へのスイッチである。
衛曰く、これは重要なものだ。
例えばテニスプレイヤーが押されぎみな時にラケットのネットを弄るように、野球選手がバッターボックスに立つ時にバットを振るように、切り替えが重要なのだ。
ゆえにエリオが立つ全ては戦いの舞台になる。
何がなんでも勝たなければならなくなった。
(実戦は初めてだけど、僕の全力で挑む)
デバイスをギュッと握るしめるエリオに対して一刀は構えることなく、ただエリオを見据えるだけ。
甘く見られている。ならば、その油断につけ込む!!
エリオは意を決して一刀に向けて駆け出す。
槍の特性である突きを一刀に向けて放つ――――――――
――――だが
――――それとは関係なく
――――彼は『槍の柄』を掴んで止めた…………。
まるで見えていたかのように槍を止められたエリオはすぐさま振り払おうとした。
「遅い」
「ガハッ!?」
振り払う前に、一刀はエリオを槍ごと、棒についた虫を地面を叩きつけるように地へ叩きつけた。
そのダメージでエリオの肺から空気が吐き出される。
それでもエリオはすぐに立ち、一刀へ連続に突いた。
「くっ、ォォォォォッッッ!」
「ほう、食らいつくか」
右へ左へと簡単に回避される。しかも対して焦らず、余裕な表情で。
エリオは自身の無力さを悔やんだが、考える暇を与えまいと言わんばかり、一刀はここでやっと白い刀を振る。
キィィン! カラカラ…………
たった一撃でエリオのデバイスが手から離れた。
(そんな…………こんなに差が、グガッ!!)
一刀は容赦なく、エリオを蹴り飛ばす――――――――リニアモーターの外側へ。
しかも運悪く、長い橋の上を滑走していた。それはエリオが崖から落とされたことを意味していた。
「う、あァァァァァ!!」
「エリオくん!」
キャロはエリオを助けようと自身も飛び込む。一刀はそれを見届けた後、背中を向けて立ち去ろうとした。
「所詮は未熟者……か」
彼は二人に同情しない。
彼は二人を殺めたことを後悔しない。
なぜなら彼は様々な戦いで戦わされた子ども達やか弱き者達を見ていたからだ。
敵側で多くの者達は生きるか死ぬかの戦場で泣き、怒り、憎しみを持っていたりしていた。
当然、一刀もその憎悪を受けて悩み、苦しんでいた時期もあった。
そして彼はその者達を切り捨てることで、前へ進むことを決めた。全ては平和――――大義のためと決めつけて。
彼を最低と言うべきだろうか?
彼を人でなしと呼ばれるべきだろうか?
仮に彼に聞いて見たらこう答えるだろう――――
――――ワシは最低でいいよ。それで仲間達が生き残れるなら
全ては友のため、家族のため、仲間のため。
彼は乱世の世界でその覚悟を持って戦ってきたのだ。ならば、今ここでエリオとキャロは殺されても彼は『仕方がない』と考えていた。
それが彼の変わらぬ『覚悟』だから…………
『グオォォォォォ!!』
だが、天は二人の運命はここで死ぬと決めつけていない。
背後から獣のような雄叫びが聞こえた。それは彼女の使役龍のフリードが大人になった本来の姿だ。
「力を隠していたのか? いや、恐れてモノを克服したか…………」
エリオとキャロが降り立つときに一刀は彼らに向かってそう言う。その通りだ。キャロは自身の力を恐れていたが、エリオを助けたいあまりに解放したのだ。
勝負はまだわからない――――という人がいると誤解しているかもしれないがハッキリ言おう。
エリオとキャロだけでは北郷一刀には絶対に勝てない。
数々の戦いで生き残った歴戦の猛者である彼を相手に、新人の少年少女では勝てるはずはない。
――――ならば問おう。もし、『エリオとキャロ』じゃなければ勝てるのか?
もちろん、隊長達でも怪しいところだ。しかし、メタな発言だがシイの会話を思い出してほしい。
彼女の仲間はいったい今、『どこに』いるのか?
「よぉ、コイツは面白いことになってるな」
エリオとキャロは知らない声がした人物に振り返る。
青い髪に、やや童顔な少年とポニーテールで髪を纏めた少女がそこにいた。そして少年は――――
――――獰猛な笑みを浮かべていた。
獲物を見つけた猛獣のように。
「な、なんで一般人が!?」
「キャロ、早く彼を転移――――」
「その必要はない」
二人の言葉を遮るように少年は一刀に短刀を出して、向かって斬り込む。
一刀はそれを受け流し、少年に向けて拳を放つ――――――――が、それを手で受け流した後に、距離をとる。
「さすが『怒れる帝王様』ってことか。随分強力な拳だこと。おかげで掌がヒリヒリする」
「…………お前は何者だ?」
ただ者ではないと一刀は彼を睨む。少年はヘラヘラと笑いながら答える。
「五河四季。ただの『切り裂き魔』さ」
『帝王』と『切り裂き魔』。
二人の神器使いの戦いが始まろうとしていた。
「エリオ・モンデヤルいるかー?」
「モンディアルですって。てか、アオさん。今までどこに?」
「リニアの便所。快適だった」
アオと合流した二人がまずしたことは、便所でのんきにしてた彼を折檻することだった。
五河四季――――デート・ア・ライブの世界のオリ主ですが、容姿は『五河士道』と同じです。
なぜそうなのかは別の機会になりますが、彼は転生者であり、神器使い。
そして『錬金術師』です。
錬成はまだしませんが、いつか披露されるかもしれません。
また錬金術は『科学』の要素みたいなモノなので彼は科学者の端くれでもあります。
後に彼の暴走でとある敵キャラも涙目になります。
さて次回は『切り裂き魔』VS『怒れる帝王』です。
――――切り裂いてやるよ、全てを!!