とある転生者の憂鬱な日々   作:ぼけなす

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「なんやろ……どっかで見たことある子やな」

by八神はやて


第八十四話

(はやてサイド)

 

 

天気は快晴。本日は洗濯日和とお天気お姉さんは言っていた。あの掴んでも有り余りそうかお乳を毎度見るために早起きしているわけだが、天気予報終了後のマッスル特集を放送されるため、憂鬱になるという毎朝だ。

 

なんで朝から筋肉特集を見なきゃあかんねん、衛くん…………。

 

それはさておき、今日から部隊の本格始動である。その演説を私は行うため、台に上がる。

 

「はじめまして、機動六課課長ならびに総部隊長の八神はやてです。新人でまだまだ可能性に満ちたフォアード陣。豊富な専門知識を持ったメカニック、バックヤードスタッフ。そして、実績と実力とともに申し分のない指揮官陣。私はこの部隊で一緒に仕事が出来ることをうれしく思います。がんばっていきましょうという最後の言葉で私の演説は終わります」

 

 

パチパチパチパチ

 

 

ペコリと一礼してから私は台から降りた。次に演説するのは――――――――…………ヤバい。

最近、自重しなくなったなのはちゃんや。

 

なんもなければええんやけど。

 

「スターズ分隊長の高町なのはです。フォアード陣のまたをみんなには頑張って指導していこうと思います」

 

…………あれ? 思ってたのと比べて普通?

そう考えてたときに彼女は言った。

 

「ちなみに逆らう人はドンと来てください。理由がはっきりなければスタラ。はっきりしてもスタラするつもりなので、ドンドン刃向かって来てくださいね。私としてはスタラを撃てる快感が得られるのでハッピーなのです、にぱー☆」

 

やっぱり言いおったァァァァァ!!

 

ほら見てみぃ! 初めて見る人とかドン引きしてるで!?

知ってる人は――――――――目が死んどる。「なんでここに来てしまったんだ」という絶望した呟きがチラホラ。

 

教育で何があったんやろか…………。

 

「はじめまして、ライトニング分隊長のフェイト・T・ハラオウンです」

 

次に上がったのはフェイトちゃんや。頼むから真面目に演説してな…………。

 

「ここでみなさんに出会えてホントに良かったと思います。私の理念は一つ――――子どもに明るい未来をです。子どもは宝です。希望です。だから、私達の手で守っていきましょう」

 

パチパチパチパチ、おォォォォォ!!

 

なんか士気が上がった。言葉からすれば素晴らしい演説やけど、台から降りた後にエリオとキャロの写真を血走った目で見んなや。台無しやっちゅうねん。

 

そして次に台に上がるのは、輪郭の整った爽やかそうな青年。彼は金髪のオッドアイだが、不気味とは言えず、カッコいいとも言わせるほどの顔立ちだ。服から見れば弱そうに見えるくらい細いが、私は彼の身体をよく理解している。

ホントはとてもすごい。脱いだらスゴいと言える。

 

そんな彼が演説する。普通の演説をするつもりだろう――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はじめまして諸君。我こそ、マッスル部隊隊長。八神衛である! さあ、さっそくだが筋肉について語ろうではないか!!」

 

 

――――――――筋肉の。てか、なんで新人や初対面の人に筋肉について語るねん。

 

私の旦那様の演説が軽く三十分過ぎたところでなのはちゃんが笑顔で砲撃を撃った。

ナイスと心の中で呟いた。その際に衛くんが無傷やったけど。

 

 

 

閑話休題

 

 

 

フォアード陣の自己紹介が終わりにさしかかる頃に、私が推薦した隊員がやっと来た。

 

黒髪の紅い瞳。どこか見たことある顔に、アホ毛が生えたまだまだ幼さが残る少年だ。

彼は息を荒く吐きながら、私達に向かって敬礼をとる。

 

「遅れてすみません、隊長!」

「たわけ!! なぜ遅れた?」

「いやー、空を見上げてボーとしていたらいつの間にか…………あだっ!」

 

衛くんの拳骨で涙目になる彼。どうなら衛くんの知り合いのようやね。

そんなことより自己紹介してや、と言うと衛くんは「仕方あるまい」と呟いて彼を前に出す。

 

「自分はアオ・S・カナメです! マッスル部隊の隊員です!」

「そうやの?」

「そうだ。しかもコヤツはテバイス無しで魔法が発動できる変わった逸材でな。Bランクなのに、Aランクと互角に戦う男だ。まあ、筋肉信者ではないのがおしいが」

「いやこれ以上増えたら私が困るから」

 

さすがにもう増えてほしくないで。この間、買い物に出掛けたら変な挨拶されたんやから。

 

「これは我がマッスル部隊の挨拶法だぞ。『マッスル、マッスル!!』」

「それ結構前に、衛くんが検挙したテロ組織の挨拶やないか。確か『エコ、エコ』やったっけ?」

「何者かによってヤツらの人類動物化計画を人類マッスル化計画にされたがな」

 

なにそれ怖い。

 

ちなみに犯人は衛くんやないで。他の筋肉信者や。

とにかく、そのテロ組織のリーダーが不憫やった。だって、本拠地に戻ったときには全員がボディービルダー顔負けのダイナマイトボディーになってたから。

 

私の犯罪者記録の中で一番面白おかしい組織やったと思う。

 

アオくんが隊のみんなに自己紹介をしている最中、衛くんは私の耳元に近づき、小声で話した。

 

「(コヤツの魔法を分析してみた。解析不能の未知なる魔法だったが――――――――彼らが使ってた魔法(・・・・・・・・・)だった)」

「(っ! それって…………)」

「(はやて、これは極秘情報だ。まだ上層部には知られていない。ヤツ自身にも口止めしている)」

 

衛くんの目が私をとらえていた。

 

彼が言いたいこと、それは――――――――『アオ・S・カナメ』が神器使いという可能性や。

最悪の話をすれば、『無血の死神』と繋がってる可能性があるってことや。

 

「…………一応、こちらでも神器使いは雇っとるで。管理局では神器はレアスキルとして扱っとるけど」

「というと?」

「あ、最初に言っとくけどソラくんの仲間やない違う神器使いや。傭兵という立場やけど、愛想のええ子やった。彼女はお金が目的やなくて、情報やったけど」

「情報だと?」

「『無血の死神』という男の情報全てや」

 

衛くんは何かを考え込む。どうやら傭兵の彼女を疑っているのだろう。ソラくんの仲間やないにしろ、彼の神器を狙う刺客というわけでもないのやからな。

 

「今は考えても仕方ないやろ。とにかく、私達は来るべき戦いに備えなあかんのや」

「わかっておる。我が友をできれば味方に引き込みたいが…………」

「無理やろ。彼は重犯罪者やし、なによりジェイル・スカリエッティと手を組んどる情報が今日、届いたで」

 

唸りながら彼は上を見上げる。来るべき災厄に、『無血の死神』という脅威に私はつい憂鬱なため息を漏らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところでみなさん、今日の下着はどんな――――」

「セクハラは駄目だよ♪」

「えっ、あ、ちょっ、高町くう――――…………ぎゃあァァァァァ!!」

 

アオくんがなのはちゃんの餌食になった。衛くんに聞いてみたけど、どうも彼はエロスを求める重度のスケベらしい。

 

…………なんやろ、この既知感。




アオが誰に似ているのかはまだ秘密です。

次回、邂逅する転生者

――――さてさてどうなるかな?

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