猛暑が厳しい中、翼達は海に遊びに来ていた。時期?番外編なんだから気にしたら負けです。
「海だ~!」
「皆元気だね…」
「そうね…」
元気いっぱいに海へ走る十代、翔、三沢。それを呆れて見る万丈目。そしてそれを見守る吹雪、明日香兄妹にももえとジュンコと翼。吹雪はアロハシャツだがそれ以外の皆は水着だ。
しかし海に来てから明日香はどこか落ち着きがない。
「どうしたの明日香さん」
「ああ、実は亮が拘束を破って来てないか心配で…」
「ハハハ…」
「あいつならやりかねんな!」
カイザーは鎖で何重にも縛って放置してあるが翼の水着姿見たさに人類の限界を超えそうな気がしてならない明日香だった。
「おい翼、何でTシャツ脱いでないんだ?」
「あ、その…これを着てないとね、僕女の子と間違われるからさ、色々とまずいんだよ…」
翼の水着事情は憂鬱である。中学校時代は水泳の授業がなかったからまだ良かったのだが小学校高学年時代に翼が普通の男子用水着を着て授業をすると他の男子生徒の殆どが股間を抑えるのだ。それを重く見た先生が翼をほぼ強制的に授業を見学させる事態に陥ったのだ。これがあったせいで翼は少し人間不信に陥り、ボッチ街道を走り始めたのだ。
そういった事情もあり今の翼の格好はTシャツにボックスタイプの水着となっている。
「そんなこと気にするなよ!ほら脱げよ!」
「ちょっ、やめてよ十代君!」
だが十代は翼を生粋の男だと見ている。それが今回は裏目に出た。なんとTシャツを無理やり脱がそうとしたのだ。傍から見れば嫌がる女の子の服を脱がそうとする変態である。
「ほらこっちに来い!」
「おい離せよ!俺が何をしたってんだ!?」
「じゅ、十代くーん!?」
ということで遊城十代、海に来て数分で連行される。一応事情を説明したら直ぐに解放された。
「自業自得ね…」
「まさか遊びに来てわずか数分で逮捕されるとは思わなかったぜ…」
「本当誤解が解けて良かったよ…」
「物凄く疑ってたけどね…」
「アニキ、大丈夫だった?」
「おう、心配かけたな」
「自業自得だ馬鹿」
「それじゃあ気を取り直して思いっきり遊ぶぞー!!」
「おー!!」
そう言って十代は翔とともに海へ向けて走った。
「少しは落ち着きを持てないのかあいつらは…」
「私たちはまず日焼け止めね」
「天上院君!俺が塗ろうか!」
「万丈目君こそ落ち着きなよ…」
結局塗るのはももえとジュンコの希望で翼となったので万丈目はかなり不機嫌になった。
そして翼は海に入ることなく砂浜を歩いた。そして傍にいるミスティルとヴェーラーに話しかけていた。
「そう言えば精霊界に海ってあるの?」
『あるさ、だがこのように遊びに来ることはない』
『大抵は戦闘のためだよね』
「殺伐としてるんだね精霊界って…」
精霊界という清純な名前なんだからもっと優しい世界であって欲しかったと思う翼だった。
『だが大体は小競り合いや私的な仕合で大規模な戦争はない』
「それもそれでどうなの…あ」
「み、皆どこだろ…」
「おいそこのカワイコちゃん、一人なら俺達と一緒に遊ばな~い?」
翼が皆を探していると数人のチャライ男がナンパしてきた。
『なんかベターな展開だね…』
「あ、えと…」
「ほら、俺達とひと夏の思い出を作ろうぜ~?」
断ろうとしたら一人が翼の腕を握ってきた。振り払おうとしたら何かがチャラ男たちの後ろにいるのに気付いた。
「おい」
「あん?誰だテ…」
男たちは後にその男は人と思えないほどの修羅であったと語った。
「
『やっぱ来たね』
『この男にはほとほと呆れる…』
カイザーは
「食らえ!『エヴォリューション・バースト』!『エヴォリューション・レーザーショット』!『エヴォリューション・ツイン・バースト』!!『エターナル・エヴォリューション・バースト』!!!『エヴォリューション・レザルト・バースト、
明らかにオーバーキルである。というより
「これ
『凄いよねこれ…、使った理由がもうちょっとましならね』
チャラ男達はソリットビジョンなのに消し炭のように意気消沈した。
「大丈夫か?」
カイザーはかっこよく振り返った。しかし砂浜にいつもの服は少し浮いていた。
「あ、その…ありがとうございます」
「ハッハッハッハッ!では今から俺と海デートを…」
カイザーはそのままデートに誘おうとしたが後ろから声を掛けられた。
「君、ちょっといいかな?」
こんな砂浜の真ん中で暴れればそりゃ捕まります。
「ふ、ふざけるなぁああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
アカデミアのカイザー丸藤亮、連行される。それを見ていると明日香が走ってきた。
「ハァ、ハァ、今《サイバー・ドラゴン》の群れが見えたんだけど…」
「ハハハ…」
笑うしかない翼だった。
そして皆と合流すると十代が誘ってきた。
「おーい翼!今からあそこまで競争しようぜ!」
十代の指差す方は遠くの島だった。
「…いや、遠慮しとくよ」
「えー、じゃあ翔、三沢、いくぞ!」
十代は勢いよく泳ぎ始めた。
「おい!ずるいぞ十代!」
「待ってよアニキー!」
翼がそれを見守る中万丈目が声をかけた。
「…まさかお前、カナヅチか?」
「…はい」
翼は素質がないわけではないのだが色々とあったせいで泳ぐことがあまりなくそのせいでカナヅチになってしまったのだ。
「しょうがない、俺が教えてやる」
「本当?」
翼は万丈目に泳ぎを教えてもらうことになった。
『ねぇ、ちょっと思ったんだけど…』
『なんだ?』
それを見ていたヴェーラーがこんなことを言い始めた。
『今の状況、翼が女の子だったら逆ハーレムだよね』
『何の話をしている』
『だってさ、元気いっぱいで最初に気を許した同級生にちょっと犯罪じみているけど自分を一番に思ってる先輩とクールでちょっと嫌ってるだけど気にかけてくれる同級生。これが逆ハーレムじゃなくてなんなのさ』
否定の言葉が全く出ないミスティルだった。
『…それを翼の前で言うなよ』
『分かってるよ』
「そうだ、そうやって足をバタつかせるんだ」
「ごめんね、遊びに来たのに僕の練習に付き合わせちゃって…」
「気にするな、あいつらに付き合うよりましだ」
「あ、ありがとう…うわっ!?」
いい感じの雰囲気になったところで波が翼を襲う。
「あ…」
するとなぜかTシャツが脱げてどこかへ行ってしまった。
「なぜTシャツなのに波に流されるんだ!?」
お約束なので細かいことは気にしたら負けです。
「あわわ…」
「落ち着け!男だろお前!」
「う、うん」
「待ってろ、今探して…うおっ!?」
いきなりの事で涙目で慌てる翼を落ち着かせる万丈目だったが間髪入れずに波が二人を襲った。するとなんということでしょう。万丈目が翼を押し倒したような感じになってしまった。
「ま、万丈目君…」
顔を真っ赤で涙目で上半身裸、何かが万丈目の心を駆け巡る。Tシャツのことを忘れて万丈目は顔を近づける。すると後ろから肩を叩かれた。
「ちょっと来てくれるかな?」
万丈目グループの御曹司万丈目準、今日三人目の連行者となる。誤解は直ぐに解けたがベテランの雰囲気を持った警官に「乳繰り合うなら人の見てないところでやれ」と釘を刺されるという物凄い誤解と屈辱を受けた万丈目だった。
それからは細心の注意を払ってどうにか何もなく終わった。
「ふぅ、遊んだ遊んだ!」
「楽しかったっスね!」
「まさか俺まで逮捕されかけるとは…」
あの時の自分の撲殺したい気持ちでいっぱいの万丈目だった。
「本当ごめん…」
「気にすることないぜ翼、悪いのは万丈目なんだから」
「…そういえば亮は?来てたんだろ?」
「ああ、亮なら…」
「おい、これはどういうことだ」
「う…」
押収されたカメラのデータから現像された翼の盗撮写真を見せられて何も言えないカイザーだった。
「所持品を押収したら翼を盗撮したカメラが出てきてね…」
「あっ…」
アカデミアのカイザー丸藤亮、ついに前科者となる。
なんかカイザーだけじゃなく万丈目もヤバくなってきた気がする…。