「しかしよくあんなに寝てたな」
「うん、お腹減ったよ…」
「どうだ翼!カッコいいだろ!」
「ハハハ、何かごちゃごちゃとしてるね…」
翼はテンションが低かった。十代達もテンションが低かった。何故ならあの後、大徳寺先生が姿を消したのだ。そのショックでみんな塞ぎ込んだ。だが十代達は何か別の理由で悩んでいるように見えた。みんな何かを翼に隠している。そのことも翼のテンションを下げる要因となっている。
そんな中翔が学園祭レッド寮名物コスプレ
明日香は《ハーピィ・レディ・
『しかしコスプレとは…』
『まぁまぁいいじゃん!でも翼はできなくて残念だったね』
「ま、まぁね」
翼はコスプレをしなかった。何故なら翼は前に万丈目との
「…」
「万丈目君?」
「いや、なんでもない」
万丈目が何かを言いたそうな眼をしていた。だが翼が何か聞くとそっぽを向いた。
『アニキ~、正直に友好
「五月蠅い黙れクズが!」
『ヒドイ!』
万丈目は茶々を入れたお邪魔イエローに鉄槌を下した。
「さぁ、まずはこの遊城十代に挑む命知らずのデュエルモンスターはいないのか?」
「いきなり俺か!よし翼、やろう…」
「ふん!」
十代が翼と
「いきなり何すんだよ万丈目!」
「この馬鹿は…俺たちの苦労も知らずに!」
「万丈目君、ごめん十代君、僕は遠慮しとくよ」
「え~」
翼は万丈目が自分のために色々としていたみたいだと気づいた。隠していたのはこれだったのかと翼は思い、十代の誘いを断った。他の人もいろいろあって断った。
「あの~」
相手が見つからないと思ってたらなんとあのブラックマジシャンガールが立候補してきた。本物そっくりな彼女に会場は大盛り上がりを見せた。だが翼だけは違和感を感じていた。
「ねぇミスティル、あのブラックマジシャンガール…」
『ああ、精霊だ』
そして十代とブラックマジシャンガールの
「でもみんなに見えてるんだけど…」
『力を使えば普通の人から見えるようにはできるよ、でもそうする必要はあまりないかな』
『私が人前に出てみろ、パニックになること間違いなしだ』
「だよね」
『ボクは…しても大丈夫だね』
「でもヴェーラーやブラックマジシャンガールのような人間みたいな精霊って精霊界ではどうなの?」
『普通に共存できてるよ』
「ふーん」
もしかしたらミスティルの王であるテンペストも人間みたいなのかなと想像する翼だった。
『しかしあのブラックマジシャンガールは精霊界出身ではないな』
「えっ、精霊界以外にも精霊がいる所ってあるの?」
ミスティルが興味深いことを呟いた。
『あるだろうし、あったとも言える』
「どういう事?」
『精霊界以外にも精霊が住む場所があるかもって話。ま、ボクは今住んでる精霊界以外知らないけどね』
『私もだ。あったというのは元々人間界にも精霊がいたということだ、我が王からそう聞いただけで詳しくは知らんが』
もしかしたら昔は精霊が見えるのが当たり前だったのかなと考える翼だった。
「こっちの世界にも精霊がいたときがあったんだね。でもなんで精霊界出身じゃないって分かったの?」
『精霊界の精霊は人の前に不用意に出ないと例外を除き心得ているからな』
『と言うより精霊界で人前に出るように力を使うなんてしないからね。と言うよりそういう力の使い方は知ってるけどやり方は知らないって精霊は多いよ。てかボク達も知らない』
「ふ~ん、精霊って色々複雑なんだね。というかミスティルやヴェーラーの知らないこともあるんだね」
『当たり前だ』
『人間だって誕生からすべての歴史を把握してるわけじゃないでしょ?精霊も同じってこと』
ミスティルとヴェーラーと精霊の話で盛り上がっていると
「あ、十代君が勝った」
この
そして翼は十代を待っているとブラックマジシャンガールが声をかけてきた。
『ふ~ん、やっぱり見える人みたいだね』
周りを見ると誰もブラックマジシャンガールに気づいてない様子だった。
「今は見えないようにしてるんだね」
『何の用だ、ブラックマジシャンガール』
『あ、私のことはマナって呼んでください』
マナ、と名前を名乗ったブラックマジシャンガール。翼はブラックマジシャンガールというのが名前だとカードに書かれているのが名前だと思っていたが違うのかと疑問に思った。
「ミスティルとかヴェーラーとかが名前と思ってたけど普通に名前があるんだね…」
『え?普通精霊に名前なんてないよ』
「え、そうなの?ならなんで君にはあるの?」
『あ、え~と昔は人間だったの』
「へ!?」
人間が精霊化するの!?でも昔は精霊と人間が共存していたんだから珍しくもないのかなとも思った翼だった。
『詳しくは話せないけどね』
『人間が精霊化か…騒動が収まった後に我が王に聞いてみるか』
「で、何か用なの?」
『あ、いや、
ブラックマジシャンガールは困りながら答えた。
『ま、見える人なんて珍しいからね』
確かに翼を含めて翼が知っている中で精霊が見えている人は三人だけだ。
『お前の主人も見えるのだろう?』
『はい!』
すると翼は思いだした。ブラックマジシャンガールは確か一人しか使ってなかったはずだと。
「もしかして君の主人って…武藤遊戯さん?」
『正解です!』
「やっぱりね、前に
『
「そう言えば十代君と万丈目君も精霊がいたね…」
十代のハネクリボーと万丈目のおジャマトリオを思い出す翼だった。
『もし童実野町に来たら会いに来てね~!』
そう言ってブラックマジシャンガールは手を振りながらどこかへ去って行った。
『なんだったんだあいつは…』
『いいじゃない。でも
「…」
翼はヴェーラーの冗談に真剣に考え始めた。
『どうしたんだ?』
「僕、そういったのに興味ないんだ」
『…え?』
『…は?』
ミスティルとヴェーラーは絶句した。普通向上心のある人間なら上を目指そうという気持ちになるのになぜ興味なしなのか理解に苦しむ。
『…普通
『元からこういう性格とは思ってたが普通なら「なら僕も
『夢を追う気持ちが足りないね…』
「なんでそんな非難されないといけないの…」
翼は苦笑いをしながら語り始めた。
「僕はね、
『何故だ?
『もしかして自信がないとか言わないよね?』
「いや、自信がないって訳じゃないよ。でも…」
翼は言いにくそうにミスティルを見た。
『もしかして私たちがいないから
「…うん。というよりミスティル達の頼みでデュエルモンスターズを始めたけどそれが終わった後の目標が見つからないんだ」
『…』
ミスティルは呆れた、だが考えてみると当たり前だった。翼はミスティルの王であるテンペストを救うためにデュエルモンスターズを始めた。それ以外の目的もなくただそれだけのために
「勿論デュエルアカデミアはきちんと卒業するよ。でも卒業してからは多分デュエルモンスターズは止めると思う…」
『…まぁ翼を巻き込んだのはボク達だし翼の決めたことに異存はないけど…』
『そうだな…』
何か重い空気になってしまった。
「おーい!」
しかし十代が来たおかげでその空気が変わった。
「あ、十代君!」
「待たせてごめんな。ほら、学園祭を回るぞ!」
「うん!」
そして十代と翼は手を繋いで一緒に歩き始めた。傍から見るとカップルにしか見えない。
そんな楽しそうに学園祭を楽しむ二人を見守りながらヴェーラーは口を開いた。
『ねぇミスティル、質問してもいい?』
『なんだ?』
『なんでテンペストは翼を選んだの?』
『…それは全くわからん。確かに精霊の力を受け入れやすいし頭もいい。普通なら適任とも思える。だがあの遊城十代みたいに、というより他の
『でも翼は
『…』
『考えてみるとボク達って翼にかなり重荷を背負わせてるんだね…』
落ち込むミスティルとヴェーラーだった。
『翼は今までの自分を打開してくれた私たちに恩を感じてここまでしてくれているのだろう。だが…』
『…うん』
ミスティルとヴェーラーは学園祭を楽しむ翼を見ながらある決意を固めた。
ちなみに十代はブラックマジシャンガールと
「学園祭、楽しかったなぁ…。大徳寺先生も居ればよかったなぁ…」
『…そうだな』