遊戯王 渓谷の戦士   作:Σ3

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「…亮、何よこれ」

「何って…我が嫁()の写真コレクションだが?」

「これ全部盗撮じゃない!全部処分するわよ!」

「そんな!」



第14話《VSダークネス 闇の龍VS風の龍》

 

 

 

 

 

明日香とカイザーと別れた翼はセブンスターズを捜索するためまず寮の部屋に戻ろうと歩いていた。

 

「取りあえずセブンスターズの刺客を探さないとね」

 

『そうだね、待つだけじゃ相手側が体制を整える時間を与えちゃうしね』

 

「でもどこにいるのかな?」

 

『やっぱり隠れられて人が訪れにくい場所かな?』

 

「それなら大分範囲が狭くていいね。早速探そう!」

 

するとオシリスレッド寮の一室が光っているのが見えた。

 

「えっ!?何あれ!?」

 

『早速仕掛けてきたね』

 

翼が部屋に向かおうとすると部屋から光が消えた。

 

「一体…」

 

『ムムム…火山の方に移動したみたいだね』

 

ヴェーラーは闇の力を感知して火山の方を指差した。

 

「分かるの?」

 

『うん、闇の力は精霊の力に近いところがあるからね』

 

「よし、火山に急ごう!」

 

翼とヴェーラーは直ぐに火山の方へ向かった。

 

火山の山頂へたどり着くとそこには十代が何やら不思議な白い床に座っていた。

 

「十代君大丈夫!」

 

「翼!どうしてここに!」

 

「そ、そんなことはいいから今からそっちに」

 

翼が十代の元へ行こうとしたら火山の噴火口から火の龍が飛び出してきた。

 

「うわっ!?」

 

「何だこれ!?」

 

『凄い派手な登場だね…』

 

驚く十代と翼だったがヴェーラーだけは慣れているのか反応が薄かった。

 

そして火の龍は白い床に落ちた。落ちた場所から人影がこちらに近づいていた。

 

「だ、誰だ!」

 

「我が名はダークネス、セブンスターズの一人」

 

十代が人影に名前を問うと火の龍が落ちた場所にできた火柱から黒い仮面をかぶった謎の男が現れた。

 

『だ、ダークネス!?』

 

ダークネスと謎の男が名乗るとヴェーラーが今までにないくらい驚いた。

 

「ど、どうしたのヴェーラー!」

 

『あ、ううん、なんでもない…』

 

「お前が…」

 

「遊城十代、貴様が私の最初の相手だ」

 

「やっぱ俺が一番強い!」

 

「十代君、それ自分で言って恥ずかしくないの?」

 

十代が調子のいいことを言っている中ダークネスはなぜか光っている首飾りを手に取った。それは十代が持っている首飾りと同じ、というより片割れみたいだった。

 

「それって…」

 

「なぜかは知らないがこのペンダントの光に導かれた。だが欲しいのはその胸に揺れる七星門の鍵!貴様からその鍵を奪って見せよう、闇の決闘(デュエル)で」

 

「闇の決闘(デュエル)!?」

 

「やっぱり…」

 

翼の予想通り闇の決闘者(デュエリスト)だった。

 

「そう、闇の決闘(デュエル)はすでに始まっている」

 

「何だと!?」

 

「十代~、風龍さ~ん」

 

「アニキー!風龍さーん!」

 

「翔!?」

 

「前田さん!?なんで二人を!?」

 

隼人と翔はまるで龍の鉤爪のような岩と透明な壁に閉じ込められていた。

 

「光の折に守られてはいるが、あの壁は時間とともに消滅する。この決闘(デュエル)が長引けば彼らはマグマの中に」

 

「どうして!二人は七星門には関係ないのに!」

 

「汚ねぇぞ!」

 

「生半可なこと言うなよ遊城十代とその仲間。七星門の鍵を賭けたこの戦い、伊様ら全能力を出し切って戦ってもらう。これはそのために用意した舞台」

 

「ヴェーラー、二人をどうにかできないの」

 

『ごめんけど無理そう、ここはあいつを決闘(デュエル)で倒す以外二人を救う方法はないよ』

 

ダークネスが十代に語っている中翼はヴェーラーに二人を助けられるか聞いたがヴェーラーは首を横に振った。

 

「さらに貴様と私、どちらか負けた方がその魂をこのカードに封印される。お互いの魂、いや命を懸けて我々はこの決闘(デュエル)に挑まなくてはならない。それが、この私の闇の決闘(デュエル)

 

「魂を懸けた決闘(デュエル)…」

 

「…十代君」

 

翼はこのままじゃあ十代が闇の決闘(デュエル)に挑んでしまうと思い、翼は十代より前に出て十代を止めた。

 

「十代君、ここは僕にやらせてほしいんだ」

 

「おい、翼?」

 

「何だお前は?」

 

「貴方の相手は、この僕です!僕と決闘(デュエル)です!」

 

「おいおい翼、ここは俺に任せろって。それにあいつは俺を指名したんだぜ?」

 

「お願い」

 

翼は十代を下がらせようとした。しかし十代も二人の命がかかっているため引き下がらない。

 

「良いのか二人とも、闇の時間は刻々と迫っているぞ」

 

「…お前、なんか変だぞ。いつものお前なら一緒に戦おうって言い出すのに」

 

「…」

 

「前にもあったよなこんなこと、確か明日香を攫った似非闇の決闘者(デュエリスト)決闘(デュエル)するときだったな。一体どうしたんだ翼?どうして闇の決闘(デュエル)になるとそう頑なに自分だけで決闘(デュエル)しようとするんだ?」

 

理由を話せば十代は絶対に引き下がらないと翼は感じた。このままでは隼人と翔が。だから力づくで止めることにした。

 

「ヴェーラー、十代君を動けなくして。お願い」

 

『え?でもそうしたら翼を守れなくなるけど…』

 

ヴェーラーは翼の思いを知っているため止めようとはしなかった。

 

「僕のことは気にしなくていいよ。これは僕の我が儘なんだから」

 

『…分かった、無理だけはしないでね』

 

ヴェーラーが十代の背中に手をかざすと十代はその場に倒れこんだ。

 

「おい!なんだこれ!身体が…」

 

十代はじたばたするが精霊の力に抗えず全く起き上がれなかった。

 

『クリクリ~!』

 

十代から離れろと言わんばかりにハネクリボーがヴェーラーの頭をポコポコと叩くがヴェーラーは全く動じずにいた。

 

「ごめん十代君、理由は後で話すから…」

 

翼は倒れている十代に謝ってダークネスを睨み付けた。

 

「貴様が相手か、まぁいい。直ぐに蹴散らしてやる」

 

「貴方たちなんかに、僕の親友は誰ひとり傷つけさせない!」

 

「「決闘(デュエル)!!」」

 

始まった闇の決闘(デュエル)、翼は隼人と翔を見た。早くしないと二人が死んでしまう、そんな焦りからか翼は今までとは違う決闘(デュエル)をし始めた。

 

「僕の先行、ドロー!僕は《ドラグニティ-アキュリス》を召喚!《ドラグニティ-アキュリス》の効果でこのモンスターを装備カードとして手札からこのモンスターを特殊召喚します!今こそ現れよ、不屈の魂を持つ龍!《ドラグニティアームズ-レヴァテイン》!」

 

翼はなんと自分の意志で初めて先行を取りいきなり自身のデッキに入っている最強モンスターを出した。

 

「いきなり強力モンスターを…やっぱりいつもの翼じゃない!離せ精霊!」

 

『やっぱり僕のことが見えてるんだね…まぁいいか。流石に僕の服を着てるときは普通じゃなかったから別として、いつもの翼ならまず守りを固めるはず…まさかミスティルに教わったのかな?』

 

何とか動こうとする十代を余所にヴェーラーは冷静に状況を分析していた。

 

「ミスティル?いつも翼が使ってるドラゴンの名前だよな…」

 

『でも翼とミスティルの決闘(デュエル)のスタイルは全く違う。今のデッキは翼のスタイルに合わせたデッキにしてある…ヤバいかも』

 

「僕はこれでターンエンド」

 

ヴェーラーの不安を余所に翼はターンを終了させた。

 

「私のターン、ドロー。私は手札から《黒竜の雛》を召喚」

 

マグマから赤い卵が現れ中から可愛く小さな黒い龍が現れた。

 

 

 

《黒竜の雛》

 

効果モンスター

星1/闇属性/ドラゴン族/攻 800/守 500

自分フィールド上に表側表示で存在するこのカードを墓地へ送って発動できる。

手札から「真紅眼の黒竜」1体を特殊召喚する。

 

 

 

「《黒竜の雛》の効果発動、このカードを生贄に手札から《真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》を攻撃表示で特殊召喚する!」

 

火山のマグマからまた火の龍が現れ、そしてダークネスのもとに落ちて真紅の目をした黒い龍が現れた。

 

 

 

真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)

 

通常モンスター

星7/闇属性/ドラゴン族/攻2400/守2000

真紅の眼を持つ黒竜。

怒りの黒き炎はその眼に映る者全てを焼き尽くす。

 

 

 

「私は魔法カード、《黒炎弾》を発動!」

 

真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》から放たれた炎の弾丸が翼に向かった。

 

 

 

《黒炎弾》

 

通常魔法

自分フィールド上の「真紅眼の黒竜」1体を選択して発動する。

選択した「真紅眼の黒竜」の元々の攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。

このカードを発動するターン「真紅眼の黒竜」は攻撃できない。

 

 

 

「う、うわあああああああああああああっ!!」

 

「《黒炎弾》は《真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》の攻撃力分のダメージを相手プレイヤーに与える」

 

黒炎弾を受けた翼は全身に倒れた。どうにかして焼けている部分を地面に擦り付けて火は消したがひどい火傷を負ってしまった。

 

翼LP4000⇒1600

 

『翼!』

 

「翼!どうなってるんだ精霊!俺が闇の決闘(デュエル)をしたときはダメージはあんなに実体化してないぞ!」

 

『…翼は精霊の力を受け入れやすい身体なんだ。だから精霊の力に似ている闇の力も受けやすいんだ。だから普通の人以上に闇の決闘(デュエル)でのダメージを受けやすい、まるで本物の攻撃のようにね』

 

ヴェーラーが十代に説明した通り翼は闇の決闘(デュエル)でダメージを受けやすい、だから精霊の力で守る必要があったのだ。

 

「そんな…だから翼は俺に…」

 

十代はなんで翼が闇の決闘(デュエル)をさせようとしないのかようやく理解した。

 

「風龍さん!」

 

「風龍さん!ってうわぁ!?壁がなくなったんだな!」

 

翔と隼人を守る壁がダークネスの言う通りなくなっていった。

 

「翔、隼人!」

 

「まだ私のターンは終わっていない、《真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》を生贄に、出でよ!《真紅眼の闇竜(レッドアイズ・ダークネスドラゴン)》!!」

 

真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》がマグマに自ら落ちた。そしてマグマの中から炎に包まれた龍が現れ、そして炎がなくなるとそこには先程より洗練された黒き龍の姿があった。

 

 

真紅眼の闇竜(レッドアイズ・ダークネスドラゴン)

 

効果モンスター

星9/闇属性/ドラゴン族/攻2400/守2000

このカードは通常召喚できない。

自分フィールド上に存在する「真紅眼の黒竜」1体を

リリースした場合のみ特殊召喚する事ができる。

このカードの攻撃力は、自分の墓地に存在するドラゴン族

モンスター1体につき300ポイントアップする。

 

 

 

「何だよこのモンスターは!?」

 

『これはヤバいね…』

 

「ドラゴンたち地底からの叫びが《真紅眼の闇竜(レッドアイズ・ダークネスドラゴン)》の地となり肉となる。《真紅眼の闇竜(レッドアイズ・ダークネスドラゴン)》の攻撃力は一体につき300ポイントアップする」

 

「攻撃力、3000…」

 

『ヤバいヤバいヤバい!これはヤバいよー!』

 

十代が《真紅眼の闇竜(レッドアイズ・ダークネスドラゴン)》の姿に呆然としている中ヴェーラーはこのピンチに慌てていた。

 

真紅眼の闇竜(レッドアイズ・ダークネスドラゴン)》攻撃力2400⇒3000

 

「思い上がった少女よ、闇の恐ろしさをとくと知るがいい!《真紅眼の闇竜(レッドアイズ・ダークネスドラゴン)》で《ドラグニティアームズ-レヴァテイン》を攻撃!『ダークネスギガフレイム』!」

 

真紅眼の闇竜(レッドアイズ・ダークネスドラゴン)》の放った火の光線で《ドラグニティアームズ-レヴァテイン》はなす術もなく破壊され、翼もその衝撃で吹っ飛ばされた。

 

翼LP1600⇒1200

 

「ターンエンド」

 

翼はどうにか立ち上がった。だが戦意はほぼ消失していた。

 

「う…僕のターン、ドロー」

 

翼は虚ろな目でドローしたカードを見てそのまま決闘盤(デュエルディスク)に置いた。

 

「モンスターを伏せて、カードを伏せて、ターンエンド…」

 

『すっかり意気消沈してる、あれじゃあもう…』

 

「翼…」

 

今すぐにでも翼の元に向かいたい十代とヴェーラーだったが翼の気持ちを考えるとこの決闘(デュエル)を見届けることしかできない二人だった。

 

「私のターン、ドロー。魔法カード《抹殺の使徒》を発動、その伏せモンスターをゲームから除外する」

 

甲冑を付けた騎士が現れ翼の伏せモンスターを切り付けた。

 

 

 

《抹殺の使徒》

 

通常魔法

フィールド上に裏側表示で存在するモンスター1体を選択して破壊し、ゲームから除外する。

それがリバース効果モンスターだった場合、お互いのデッキを確認し、

同名カードを全てゲームから除外する。

 

 

 

除外されたのは《ドラグニティ-ジャベリン》だった。もしもここで伏せられていたカードが装備されて効果を発揮するカードだったら本当に手詰まりになるところだった。ここは翼が集中してなかったのが幸いした。

 

「ふん、ただの雑魚か。私は《軍隊竜》を召喚」

 

ダークネスは剣と盾を持った緑のドラゴンを出した。

 

 

 

《軍隊竜》

 

効果モンスター

星2/風属性/ドラゴン族/攻 700/守 800

このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、

自分のデッキから「軍隊竜」1体を特殊召喚する。

 

 

 

「バトルだ、《真紅眼の闇竜(レッドアイズ・ダークネスドラゴン)》でダイレクトアタック!『ダークネスギガフレイム』!」

 

「翼!!目を覚ませ!!」

 

「罠発動、《くず鉄のかかし》!攻撃を無効にしてこのカードをもう一度セットします!」

 

スクラップで出来た案山子が、《真紅眼の闇竜(レッドアイズ・ダークネスドラゴン)》の攻撃を受けた。どうにかして《真紅眼の闇竜(レッドアイズ・ダークネスドラゴン)》の攻撃を防いだ翼だった。

 

「やはり攻撃を無効にする罠だったか、ならば《軍隊竜》でダイレクトアタックだ!」

 

「う、うわっ!?」

 

《軍隊竜》は翼を切り付けた。先程の《黒炎弾》よりはダメージは少ないがそれでもダメージを受けやすい翼の体を容赦なく痛めつけた。

 

翼LP1200⇒500

 

《軍隊竜》の攻撃を受け翼は立ち上がれなかった。痛い、そんな辛い感情しかわかなかった。先程の《くず鉄のかかし》を発動したのも遺体の外野で発動しただけ、何も決闘(デュエル)に勝とうという気持ちがあっての行動じゃなかった。

 

「これでターンエンド」

 

立ち上がりドローすることもできない、そんな翼を見たダークネスは情けのつもりでこんな提案をした。

 

「ふん、サレンダーするならお前だけでも見逃してやらんでもないぞ?」

 

その言葉を聞いて翼は怒りと意地で我に返った。

 

「ふざけないで…下さい!」

 

翼は何とか立ち上がった。しかしフラフラで指でつつけば倒れそうなほど弱っていた。翼自身もう自分がダメージで倒れそうなのは分かっていた。だが諦めなかった、

 

「ぼ、僕のターン…」

 

ドローしようと決闘盤(デュエルディスク)のデッキに手を伸ばしたが、気が遠くなりその場に倒れそうになった。

 

「つ、翼!」

 

十代が翼の名前を叫んだその時、倒れかけた翼の体を支える手が現れた。

 

『全く、なぜボロボロになっている』

 

それは人の手ではなく、翼がよく知っている手だった。そしてその手の持ち主は、

 

「ミ…ミスティル…なの?」

 

今まで精霊界で力の回復に勤しんでいたミスティルだった。

 

『なんか物凄くかっこいい登場の仕方だね』

 

『ヴェーラー、なぜ翼を護っていない』

 

なぜ翼を護らずに十代を押さえつけているヴェーラーを睨み付けるミスティルだった。

 

「それは…僕が…」

 

翼が言いにくそうに自身の責任だと言うとミスティルはこの状況を大体理解した。

 

『…まぁいい、フィールドを見たところ絶体絶命のピンチみたいだな』

 

ミスティルは翼を立ち上がらせて翼の肩に手を当てて精霊の力を翼に与えた。

 

『さあ、反撃開始だ』

 

「うん!」

 

すると翼の体に変化が現れた。翼の背が伸び、髪も長くなり、大人びた顔つきになった。その変化に十代も翔も隼人も、そしてダークネスさえも絶句した。

 

「え?あれ?…なんか僕、大きくなってない?」

 

翼も自身の体の変化に気が付き大きくなっている自分の手や足、髪などを見た。

 

『精霊の力を受けると体が若返ったりするとは聞いていたがまさか成長までするとはな…』

 

「えっ!?ってことはこれが未来の僕の姿なの!?良かった~、もう身長が伸び!?」

 

身長がまだ伸びるとほっと胸をなでおろした瞬間翼の顔から汗が噴き出し始めた。

 

『いや絶対にそうなるわけでは…どうした』

 

「い、いやいやいやいや何でもない何でもないです!」

 

ミスティルが気になって聞くが翼はかなり焦りながら全く誤魔化せてないが誤魔化そうとした。翼はもう一度自分の胸に手を当てた。するとかすかにだが柔らかい感触があった。なんと男なのに胸が成長しているのだ。下にはまだ男の象徴がある感覚はある。まさか未来では身体がどんどん女に近づいているのかと言い知れぬ絶望に襲われる翼だった。

 

『?まぁいい、今は目の前の決闘(デュエル)に集中するぞ!』

 

「う、うん!」

 

絶対にこの姿にはならないでほしいと切に願う翼だった。

 

「あれが…翼なのか?」

 

『そうだね、まさか成長するくらい精霊の力を受けやすい体質とは思わなかったけど…』

 

「う、美しいんだな…」

 

「こんな目にあったけどあの風龍さんを見れたらもうどうでもよくなってきたッス…」

 

命の危機が迫っている中翼の美しい姿にメロメロになる隼人と翔だった。

 

「僕のターン、ドロー!」

 

『ふむ…今は虎視眈々と逆転の方程式を整えるぞ』

 

ドローしたカードと手札を見てミスティルは翼に指示を出した。

 

「うん!僕はモンスターを伏せる!カードを一枚伏せてターンエンド!」

 

先程と同じ形のターンだったがそのターンに込める意思が違った。

 

「なんかいつもの翼…というより休み前の翼みたいだ」

 

『やっぱり横にミスティルがいるとしっくりくるみたいだね』

 

十代とミスティルはさっきより安心して翼の決闘(デュエル)を見始めた。

 

「悪あがきを…私のターン、ドロー。魔法カード《おろかな埋葬》を発動、デッキから一枚カードを墓地に送る。墓地に送ったカードはドラゴン族、よって《真紅眼の闇竜(レッドアイズ・ダークネスドラゴン)》の攻撃力はさらに300ポイントアップする!」

 

真紅眼の闇竜(レッドアイズ・ダークネスドラゴン)》攻撃力3000⇒3300

 

「バトル、《真紅眼の闇竜(レッドアイズ・ダークネスドラゴン)》で伏せモンスターに攻撃!『ダークネスギガフレイム』!」

 

「攻撃力を上げても無駄だよ!罠発動、《くず鉄のかかし》!」

 

真紅眼の闇竜(レッドアイズ・ダークネスドラゴン)》の攻撃を案山子がまた防いだ。

 

「うっとおしい案山子だ!《軍隊竜》で伏せモンスターに攻撃!」

 

伏せられたモンスターは《ドラグニティ-ブランディストック》だった。あっけなく《ドラグニティ-ブランディストック》は《軍隊竜》の攻撃で破壊されてしまった。

 

「ふん、その案山子は手数を増やせばどうにでもなる!墓地の《真紅眼の飛竜(レッドアイズ・ワイバーン)》の効果発動!」

 

『やはり墓地で発動するカードを墓地に送っていたか』

 

「このカードを墓地から除外し、甦れ《真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》!」

 

真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》がまたダークネスのフィールド上に蘇った。

 

 

 

真紅眼の飛竜(レッドアイズ・ワイバーン)

 

効果モンスター

星4/風属性/ドラゴン族/攻1800/守1600

通常召喚を行っていないターンのエンドフェイズ時に、

自分の墓地に存在するこのカードをゲームから除外する事で、

自分の墓地に存在する「レッドアイズ」と名のついたモンスター1体を特殊召喚する。

 

 

 

真紅眼の闇竜(レッドアイズ・ダークネスドラゴン)》攻撃力3300⇒2700

 

墓地からドラゴン族が二枚減ったことで《真紅眼の闇竜(レッドアイズ・ダークネスドラゴン)》の攻撃力は減ったがそれでもまだ攻撃力は2700だ。

 

「カードを伏せてターンエンド」

 

「おいおいどうするんだよこの状況…」

 

攻撃力が下がったもののそれでも攻撃力2700の《真紅眼の闇竜(レッドアイズ・ダークネスドラゴン)》と攻撃力2400の《真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》、そしてリクルート効果のある《軍隊竜》、さらに一枚伏せられている絶望的な状況だった。

 

『…』

 

だが二人はこの状況でも諦めていなかった。ヴェーラーは二人がここから逆転して見せると信じた。

 

「僕のターン…ドロー!」

 

ドローしたカードを見て二人は勝利の方程式を完成させた。

 

「…来た!」

 

『よし、これで逆転のパーツは全て揃った!』

 

「相手フィールド上に同じ属性のモンスターが二体以上存在するとき、このカードは特殊召喚できる!来て、神の従者たる雄鳥!《神禽王アレクトール》!」

 

突風と共に鋼の鎧を身につけた鳥人が翼の前に現れた。

 

 

 

《神禽王アレクトール》

 

効果モンスター

星6/風属性/鳥獣族/攻2400/守2000

相手フィールド上に同じ属性のモンスターが表側表示で2体以上存在する場合、

このカードは手札から特殊召喚する事ができる。

1ターンに1度、フィールド上に表側表示で存在するカード1枚を選択する。

選択されたカードの効果はそのターン中無効になる。

「神禽王アレクトール」はフィールド上に1体しか表側表示で存在できない。

 

 

 

「このカード…」

 

十代は今までに見たこともないカードを見てこんな状況の中翼と決闘(デュエル)したいと思うのだった。

 

「だがそのモンスターでは足元にも及ばないぞ!」

 

「別にこのモンスターで倒すとは言ってません!《ドラグニティ-レギオン》を召喚!」

 

翼は続いて《ドラグニティ-レギオン》を召喚した。

 

「行きます!《ドラグニティ-レギオン》の効果発動!墓地の《ドラグニティ-アキュリス》を装備します!」

 

「《ドラグニティ-アキュリス》を墓地に送って《ドラグニティ-レギオン》のもう一つの効果発動!モンスターを一体破壊します!僕が選ぶのは…《真紅眼の闇竜(レッドアイズ・ダークネスドラゴン)》です!、『スタブ・ソード』!」

 

《ドラグニティ-レギオン》は剣となった《ドラグニティ-アキュリス》を《真紅眼の闇竜(レッドアイズ・ダークネスドラゴン)》の胸に突き刺し《真紅眼の闇竜(レッドアイズ・ダークネスドラゴン)》は爆風とともに破壊された。

 

「!?くそっ!」

 

「そして墓地に送られた《ドラグニティ-アキュリス》の効果発動!今度は《軍隊竜》を破壊します!」

 

今度は《ドラグニティ-アキュリス》の頭についていた刃の部分が《軍隊竜》に襲いかかり破壊した。

 

「くっ…」

 

一気にダークネスのフィールド上からモンスターが破壊されていった。

 

「凄ぇぞ翼!でもなんで《軍隊竜》を破壊したんだ?」

 

『《軍隊竜》はリクルート効果があるからね、それにデッキから守備表示で特殊召喚されるからダメージを与えられなくなるんだ。だから《真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》を残したんだ。どうやら二人はここでとどめを刺す気なのね…』

 

十代に今のプレイングを解説するヴェーラーだった。

 

「そして《ドラグニティ-レギオン》を生贄に捧げてこのカードを特殊召喚します!来て!《ドラグニティアームズ-ミスティル》!」

 

そしてミスティルを手札から特殊召喚した。

 

「《ドラグニティアームズ-ミスティル》の効果で、墓地にある《ドラグニティ-ブランディストック》を装備します!」

 

そして翼は先程破壊させておいた《ドラグニティ-ブランディストック》をミスティルの左手に装備させた。

 

「いつの間に…まさか伏せたモンスターか!」

 

「その通り!《ドラグニティ-ブランディストック》の効果で《ドラグニティアームズ-ミスティル》は二回の攻撃できます!まずは《神禽王アレクトール》で《真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》に攻撃!」

 

「甘い!リバースカードオープン、罠発動《聖なるバリア -ミラーフォース》!」

 

伏せカードはまさかの《聖なるバリア -ミラーフォース》だった。もう翼の手札はゼロ、ここでモンスターが全滅してしまえば翼は負けてしまう。

 

「翼!!」

 

十代が叫びダークネスがしてやったりと笑みを浮かべた。だが翼はまるでこうなることが分かっていたかのように決闘盤(デュエルディスク)のボタンを押した。

 

「読んでました、カウンター罠《大革命返し》発動!」

 

 

 

《大革命返し》

 

カウンター罠

フィールド上のカードを2枚以上破壊する

効果モンスターの効果・魔法・罠カードが発動した時に発動できる。

その発動を無効にしゲームから除外する。

 

 

 

「《聖なるバリア -ミラーフォース》の発動を無効にして除外します!」

 

「何だと!?」

 

カウンター罠で最後のカードを失ったダークネス、まず《真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》は《神禽王アレクトール》と相打ちとなってしまいこれでダークネスのフィールドは丸裸となってしまった。

 

「くっ…」

 

「これで終わりです!《ドラグニティアームズ-ミスティル》でダイレクトアタック!『閃空双剣』!」

 

『これで終わりだ、仮面の男!!』

 

「ぐ、ぐあああああああああああああっ!?」

 

ミスティルはダークネスを短剣と大剣で交互に切り付けた。

 

ダークネスLP4000⇒1900⇒0

 

「よっしゃー!翼の逆転勝利だー!」

 

『ふぅ、ギリギリだったね本当…』

 

十代は万歳をして喜んだ。いつの間にかヴェーラーも十代を押さえつけるのを止めていた。

 

『喜ぶのは早いぞ貴様ら!』

 

ダークネスが倒れると同時にあたりから火柱が上がった。その火柱は翼、ヴェーラー、ミスティル、ダークネス、十代を襲った。

 

誰もがもう駄目かと思った。だが不思議な光が全員を包んだ。

 

翔と隼人が目を開けるとそこは火山の麓だった。そこには十代、翼、そしてダークネスがいた。

 

「あれ…ここは…」

 

「十代…風龍さん?」

 

「翔、隼人!無事だったんだな!」

 

十代は翔と隼人の無事を確認して二人に抱きついた。

 

「よ、良かった…」

 

翼は勝利と皆の無事を確認してその場に倒れこんだ。さらにミスティルが精霊の力を渡すのを止めたため成長していた身体も元に戻っていった。

 

「ふ、風龍さん!?」

 

「つ、翼!?」

 

十代と翔と隼人の三人は倒れた翼の元に駆け寄った。

 

「おいドラゴン!翼は大丈夫なんだろうな!」

 

「風龍さん、俺たちのためにこんなに…」

 

『気を失ってるだけだ。仕方ない、初めて闇の決闘(デュエル)を経験したのだからな』

 

「うわ~!?」

 

「風龍さんが宙に浮いてる~!?」

 

ミスティルは気を失っている翼をお姫様抱っこした。翔と隼人には勝手に翼が宙に浮くというホラーだったという。

 

「おい…翼にもだけどお前にも聞きたいことが山ほどあるぞ」

 

『話すにしても翼が起きてからだな』

 

「で、こいつをどうするか、だ」

 

十代は倒れているダークネスを見た。魂を懸けた決闘(デュエル)に負けた、彼は無事ではないと皆分かっている。

 

『勿論連れて行くに決まってるでしょ、こいつから他のセブンスターズの情報が引き出せるかもしれないじゃない』

 

ヴェーラーは気絶しているダークネスを抱えた。これも精霊が見えない二人にとってホラーだったという。

 

「…ふぅ、取りあえず翼、翔、隼人、お前らが無事でよかったぜ」

 

十代は取りあえず三人が無事で一安心した。

 

三人とミスティルは先に保健室へと向かった。だがヴェーラーはあるものを探していた。それはダークネスが倒れていた場所の傍に落ちていた。

 

『あったあった、これは重要な物、重要な…手掛かりだね』

 

 

 

 

 






『今日の最強カードは《神禽王アレクトール》だ。フィールド上に一体しか存在できないが1ターンに一度だけカードの効果を無効にできる強力なモンスターだ』

『僕と違うところは魔法、罠も無効にできてさらに自分フィールド上のカードも無効にできるけど相手ターンに発動できないことと相手が効果を発動したタイミングで効果を発動できないことかな?』

「…ヴェーラー、アレクトールのほうが強いんじゃない?」

『そう思うかもしれないね。でも手札から発動とフィールドから発動じゃあ使い勝手の良さに天と地くらいの差があるよ。相手を妨害したいなら僕、自分に有利な状況を作りたいならアレクトールってな感じで使っていけばいいと思うよ』




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