遊戯王の世界に転生したがろくな事が起きない   作:アオっぽい

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やばい、すごく長くなりました…。


第八話 ファンサービスはろくな事がおきない

朝、目覚まし時計の音で起床し服に着替えてから顔を洗い、身だしなみを整えてブラック・ミストがいるであろうリビングに向かった。

 リビングに入ると寝る前には付いていたはずのテレビと電気が消えていたのでテレビの前にあるソファに近づくとブラック・ミストが仰向けになり目を閉じていた。

 

「ブラック・ミスト?」

 

 私が呟くとブラック・ミストの瞼が開かれてこちらを見る。

 

「寝てたの?」

 

 睡眠を必要としないと自分から言っていたのに寝るとは……。

 

「まぁな。深夜だとテレビもろくなもんやってねぇし……1人だと暇なんだよ」

 

 そういってブラック・ミストは触手をテーブルの上にあるリモコンに伸ばしテレビの電源をつける。

 テレビにはいま開催されているWDCの話題に夢中なようで、ほとんど同じようなものしかやっていなかった。

 ブラック・ミストはそれをつまらなそうに見ている。

 

「じゃあ、朝食作ってくるから大人しくしててね」

 

「メニューはなんだ?」

 

 何故だろうか、心なしかブラック・ミストの目が輝いて見える。

 

「朝食だから軽いものだよ。パンと卵とベーコン、あとはインスタントのスープぐらい」

 

 朝はあまり食べない派なんだよね。

 ブラック・ミストはメニューを聞いた後、残念そうにそうかと返事してテレビに目を向けた。

 私はキッチンに向かい朝食を作る。

 パンはオーブンであまり焼き過ぎないようにして、卵とベーコンはフライパンで一緒に焼き、スープは買っておいたコーンスープをお湯で溶かせば出来上がり。

 時間にすると10分もかからない簡単なメニューである。

 テーブルに料理とコーヒー、あとはパンにつけるマーガリンとジャムを置いてブラック・ミストを呼ぶとソファから浮かび上がってこちら側に来ると椅子へと腰掛けた。

 

「いただきます」

 

「……いただきます」

 

 私が言った後に小さな声でそういうとブラック・ミストはご飯を食べ始め、私もパンにマーガリンを塗って噛り付いた。

 

「ねぇ、ブラック・ミストはNo.の気配を感じ取れるけど有効範囲はどのくらい?」

 

 食べている途中で聞いてみるとブラック・ミストは少し考えた後、口を開いた。

 

「大体100から200mぐらいだ。だが、No.を使っていたら遠くでも感じ取れる」

 

 意外と短いなぁ。

 そうなるとやっぱりハートランドシティを練り歩かないといけないってことだよね……面倒だ。

 こころのなかでため息を吐き、ふと気になることが頭に浮かんだ。

 

「No.って普通の人が持っていると心の闇だかが増幅するらしいけど、私にはそんな気配がまったくしないよね?」

 

 おそらく私にも心の闇というものが少なからずあるはず……ブラック・ミストはまぁ、例外だろうけどそれ以外のNo.を持っているから影響がまったくないというのはおかしい。

 

「……お前はたくさんのカードに守られている」

 

「……は?」

 

 予想外の言葉にぽろっと持っていたパンを皿の上に落ちてしまったが気にもとめずブラック・ミストにどういうこと?と聞くとブラック・ミストはイチゴジャムをたっぷりパンにつけながら呟くように言う。

 

「はじめは何に守られているか分からなかったが、昨日No.を手に入れたときお前が使用しているカードがお前を守っているのが見えたんだよ」

 

 ブラック・ミストの話を聞いていてわけが分からなくなってきそうだった。

 遊戯王の世界にはたしかに精霊とか信じればデッキが答えるとか、前世では到底信じられないことが実際にあるのだけれど。

 私がカードに守られているというのはおかしいと思う。

 

「……いろんなカードでデッキ構築しているのとお前、カードをスリーブに入れて傷つかないようにしてんだろ?」

 

 前半はカードの精霊とかが関係してなんとなく分かるが、後半の部分はどうなのだろう?

 この世界のカードは前世のカードと違って滅多に傷つくことがなく、こちらのデュエリストはスリーブケースにカードを入れたりしない。

 だけど私は生のカードを手に入れたとき、素のままでおいておくと細かい傷がつきそうだと思ってカードを透明のスリーブに2重にして入れた。

 もちろん昨日手に入れたNo.やブラック・ミストのカードもスリーブにいれている。

 

「でも、スリーブに入れるくらいでNo.から守るというのも……」

 

「……他にも理由があるんじゃねぇの?」

 

 私の疑問にブラック・ミストはパンを食べながら投げやりに答えていた。

 これ以上は何を聞いても分からないか……。

 皿の上に落としてしまったパンを手に取り朝食を再開し始めたときだった。

 Dゲイザーから音が鳴り響き、確認してみると結から連絡がかかってきたので通話モードにして電話に出る。

 

「もしもし、どうしたの?」

 

「聞いて聞いて、刹! すごいんだよ!!」

 

 普段からは想像も付かないくらいの大きな声が聞こえ、思わずDゲイザーを顔から離してしまった。

 

「あー……何がすごいの?」

 

 呆れながらもそう聞くが興奮している結には私の状態が分からないようでそのままの勢いで私の問いに答えた。

 

「アジアチャンピオンのⅣさんとね、デュエルすることになったの!」

 

「Ⅳ……?」

 

 Ⅳってなんか変わった名前の人だな。

 それにアジアチャンピオンか……どんな人なのだろうか?

 

「へぇ、よかったじゃん。でも何で急に?」

 

「Ⅳさんはね、たまにファンの人と定期的にデュエルをしてくれるの。それで今回は私とデュエルしてくれるんだって!」

 

 そのあとも結から詳しく話を聞いてみると1人で行くのは心細いから一緒について来てほしいということだった。

 2日目のWDC開始宣言がある10時ごろに待ち合わせをする約束をしてDゲイザーの通話を切る。

 今日のNo.集めはあまり出来なさそうかも。

 どうブラック・ミストに言うかと考えながらテーブルに戻ったとき、まだ残ってあった筈の私の卵とベーコンがなくなっていた。

 

「ブラック・ミスト?」

 

 低い声でブラック・ミストに呼びかけて見てみると卵を食べながら私から顔を背けた。

 

「……昼ごはん抜き」

 

「なに!?」

 

 

 

 Mr.ハートランドのWDC2日目開始の宣言をされ、私たちはⅣさんと待ち合わせ場所である人気がない空き地に来ていた。

 

「ふふふ、楽しみ」

 

 結はうれしそうに笑いながらⅣさんがくるのを待っているが私は周りを見渡して考え込んでいた。

 いくら有名人といってもこんな暗くてまったく人気がない場所を指定するとか、すこし信じられないなぁ。

 しかも相手は女の子なんだからもう少し考えてほしいよ。

 腕を組んで結と会話しながら待っていると後ろから複数人が走ってくる音が聞こえてくる。

 そちらに目を向けると見たことのある顔ぶれがこちらに向かってきていた。

 

「あれ、刹さん?」

 

「お、刹じゃねぇか!」

 

 先にたどり着いた武田君の後ろに等々力君がやってきて、その後九十九君と観月ちゃんがこちらに来た。

 

「みんな、どうして此処に?」

 

 私が疑問に思ったことを口に出すと武田君と等々力君が待ってましたといわんばかりに身を乗り出して説明し始めた。

 

「実は、僕たちこれからⅣさんとデュエルをするんです!」

 

「それで待ち合わせ場所であるここにやってきたってわけだ」

 

「え、あなた達もⅣさんに呼ばれたの?」

 

 2人の言葉に結が反応して首をかしげる。

 

「えっと、失礼ですけどあなたは?」

 

「あ、ごめんね。私は森沢結。Ⅳさんに呼ばれて此処にきたの」

 

 そこから結と九十九君たちの自己紹介が始まり、Ⅳさんのことで意気投合し始めた3人がⅣさんのことで語り合っていると九十九君が私に話しかけてきた。

 

「なぁ、刹。あれから大丈夫だったか?」

 

「今のところはうまくやってるよ」

 

 おそらくブラック・ミストのことを言っているのだろうと思って笑いかけながらいうと九十九君は安心したように笑いよかったぜというと急に空中に視線をやり話をし始めた。

 

「へ? 刹から? ……アイツじゃないのか?」

 

 ん? ブラック・ミストがどうしたというのだろうか……。

 

『……他のNo.の気配を悟られたか』

 

 ブラック・ミストの言葉でそういえばアストラルという人物がNo.を集めているって前に九十九君に聞いたな。

 とすると今の会話は私が持つNo.の気配を察知したっていう事か、アストラルもブラック・ミストと一緒でNo.の気配を感じ取れるのか……。

 

「なぁ、刹。アストラルが刹からNo.の気配が複数あるっていうんだけどさ……持ってるのか?」

 

「あぁ、昨日No.をもった人とデュエルしてね。回収しておいたよ」

 

 私がそういうと九十九君はええ!? と驚いていたので証拠を見せるためにケインズ・デビルのほうをみせた。

 

「すっげぇな、刹!」

 

「でもNo.と戦ったって大丈夫だったんですか?」

 

 観月ちゃんの問いかけに私は昨日のことを思い出して遠くを見つめる。

 天城とのタッグデュエルはNo.とのデュエルより大変だったなぁ。

 

「うん、まぁ……大丈夫だったよ。それでこのNo.なんだけど私も集めるのを手伝っても良いかな?」

 

「え、刹が?」

 

「ブラック・ミストにNo.を集めるように言われたし、それにNo.を持った人をそのままにしておくのは危険だと思って」

 

 No.とのデュエルはARビジョンが起こしている攻撃の衝撃ではなく、リアルなダメージがプレイヤーを襲う。

 それにNo.にとり付かれた人は普通じゃない、私がデュエルした人たちはそこまで周りの人に影響を及ぼすタイプじゃなかったけど、人によってはもっと危険な人もいるだろう。

 それに此処までかかわってきたら放っておけないし。

 

「どうする? アストラル……じゃあ、やっぱり……よし、決まりだな!」

 

 うーん、私はアストラルの存在が認識できないから九十九君が空中に向かって独り言を言っているようにしか見えない。

 なんだかシュールだ。

 

「No.を手に入れてすぐに渡してくれるなら良いってよ」

 

「じゃあ、これは渡して……」

 

 ケインズ・デビルを九十九君に渡そうとしたらⅣさんのことで話し合っていた3人から歓喜の声が上がるのが聞こえた。

 

「「「Ⅳさんだ!!」」」

 

 その声につられて視線を向けると前髪と右サイドの髪が黄色で残りが赤紫の髪色をした男性とピンク色の髪をした少年がこちらに歩いてきている。

 なんか、変わった格好をしてるなぁ。

 結と武田君と等々力君はⅣさんだと思われる前髪が黄色の男性に駆け寄った。

 

「フォ、Ⅳさんですね?」

 

「お待たせしました。等々力君、武田君、森沢さん」

 

 Ⅳさんはやさしげに笑みを浮かべてさっそく始めましょうかとデュエルをし始めようとしたが等々力君たちがDパットにサインを求めてサインペンとDパットをⅣさんに差し出した。

 

「そ、その前にこれにサインしてください!」

 

「俺も俺も!」

 

「あの、私も!」

 

「よろこんで、ファンサービスは僕のモットーですから」

 

 3人がサインをしてもらっている間、私たちは特にすることもなくその様子を眺めている。

 さすがに一般人の前でNo.を出すわけにはいかないよね…ケインズ・デビルは後で渡すとしよう。ブラック・コーン号は効果が強力だから出来れば手元に残しておきたい。

 

「ねぇ、九十九君と観月ちゃんはⅣさんがどんな人か知ってる?」

 

 私の問いかけに九十九君はなにか言いづらそうにえーとと言葉を濁しつつも口を開く。

 

「シャークが言ってたんだけど、勝つためには手段を選ばないデュエリストみたいなんだ」

 

「神代が?」

 

「でも鉄男くん達はちがうって……」

 

 2人の言葉に私は考え込む。

 神代がわざわざうそをつくというのはないだろうから、おそらくⅣさんは猫をかぶっているということになる。

 それとも……。

 

「(ブラック・ミスト、あのⅣさんからNo.の気配はする?)」

 

『……分からねぇ。だが、あいつらから別の力を感じる』

 

 もしかしたらNo.の影響で何かしら合ったのかと思ったけど、ちがうみたいだ。

 それにしても、別の力か……。

 

「前から思ったんだけど、わざわざ苗字じゃなくて名前で呼んでくれよ。なんか苗字で呼ばれるとむず痒くってさ」

 

「あ、私も名前で呼んでください」

 

 九十九君……いや遊馬君は自分の体を掻くしぐさをしてそういうと小鳥ちゃんも便乗して名前で呼ぶことを許してくれた。

 

「では、デュエルを」

 

 サインをし終えたのか3人がサインしてもらったDパットをうれしそうに眺めているとⅣさんはデュエルの催促をしている。

 3人は顔を見合わせて誰が先にデュエルをするか相談し始めるが、Ⅳさんが口を挟んだ。

 

「よかったら、4人一緒にやりませんか? ルールはバトルロイヤル、ハートピースはオールインで」

 

 まさかのⅣさんの申し出に3人は驚きの声を上げる。

 

「本気なの? だとしたらどんだけ自信があるんだか……」

 

「どういうことですか?」

 

 私の呟きに反応して小鳥ちゃんが疑問の声を上げたので解説をする。

 

「タッグデュエルとは違ってバトルロイヤルルールは自分以外の人に攻撃できるんだけど結と等々力君と武田君はおそらくⅣさんを狙う筈。実質3対1のデュエルになるってこと。2対1でもきついものがあるのにこれを提案するなんて何考えてるんだろ」

 

「そのかわり、僕のライフは8000で通常ドローは2枚でやらせてもらいますよ」

 

 あ、やっぱり3対1でライフ4000は厳しいか……でも通常ドローが2枚って結構有利じゃない?結たちはそんなに気にしてないみたいだけど。

 

「僕は君たちに知ってほしいんです。デュエルの無限の可能性を。君たちにだって僕を倒せるかもしれない! それがデュエルなんだって」

 

「なんかⅣっていいやつじゃんか!」

 

 Ⅳさんの言葉を聞いて遊馬君は笑顔になっているが、私はなにか違和感を覚えていた。

 なんだろう、いいたいことはなんとなく分かるけど…。

 なんか言葉の端々に上から目線な感じなのが含まれているような……本当に紳士的なデュエリストなのかな?

 そんなことを思っている間に4人は互いに距離をとる。

 

「「「デュエルディスク、セット! Dゲイザー、セット!」」」

 

 結、等々力君、武田君のデュエルディスクは一般向けに大量生産されているタイプのデュエルディスクを装着し、Ⅳさんはにび色の篭手を腕に付け、デュエルディスクは赤色の悪魔の羽のようなものを装着している。

 そして右手の甲に紋章のようなものが浮かび上がり、左目の周りに紫色の模様が描かれると赤紫色の目の色が青紫色に変化する。

 後ろにいる子も左目に緑色の模様が描かれると目の色も赤紫色に変わる。

 そういえばあの子はなんだろう? さっきから何も言わないけど……マネージャーは違うだろうし。

 

「「「デュエル!!」」」

 

「さぁ、君たちからどうぞ」

 

 デュエルの開始が宣言されると同時にⅣさんは先攻を結たちに譲ってきた。

 順番で言うと3人が終わった後にⅣさんのターンになるということだと思う。

 3対1で戦うわけだから後半になると不利になってくるっていうのに。

 

「俺が最初に行くぜ! ドロー! 俺はアイアイアンを召喚! バトルロイヤルルールでははじめのターンは全員、攻撃は出来ない。これでターンエンド」

 

 武田君のフィールドに両手にシンバルを持ったおもちゃのような犬型モンスターが現れる。

 

レベル4 アイアイアン 攻撃力:1600

 

 え、カードは伏せないの?

 

「では次は僕が行きます! 僕のターン、ドロー! デバッカーXを召喚しターンエンドです」

 

 出てきたのは昔のゲームに出てくるようなポリゴン型のモンスターが現れる。

 

レベル3 デバッカーX 攻撃力:900

 

 こっちもカードは伏せないのか……ブラフでも良いから魔法カードを伏せてもいいと思うけど。

 それとも手札にはモンスターしかいなかったのかな?

 さて、次は結のターンか……デッキ内容を変更するって言っていたけどどんな帝デッキになっているだろう。

 

「わ、私のターン、ドロー! 永続魔法、召喚雲(サモンクラウド)を発動し効果を使います。自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、手札または墓地からレベル4以下の雲魔物(クラウディアン)と名のついたモンスターを特殊召喚します! 私は雲魔物(クラウディアン)-キロスタスを特殊召喚!」

 

 体が雲で出来ておりひげのようなものが生えた丸っこくてかわいらしいモンスターが現れる。

 

レベル4 雲魔物-キロスタロス 攻撃力:900

 

「次に雲魔物-アルトスを召喚します! そして効果を発動!召喚に成功した時、フィールド上に存在する雲魔物と名のついたモンスターの数だけこのモンスターにフォッグカウンターを置きます。フィールドにいる雲魔物は2体、よってアルトスにフォッグカウンターが2つ乗ります」

 

 黄土色の雲が浮かび上がるとそれもモンスターの形を作り太った印象を与える雲のモンスターが現れた。

 

レベル4 雲魔物-アルトス 攻撃力:1300

 

「そして手札から永続魔法、雲魔物のスコールを発動します! このカードは自分スタンバイフェイズ毎にフィールド上に表側表示で存在するすべてのモンスターにフォッグカウンターを1つ置きます。カードを1枚伏せてターンエンドです!」

 

 雲魔物か、あのカードなら戦闘破壊もされないしリリース要員も確保できるから帝デッキに合うんだよね。

 

「へぇ、3人ともユニークなモンスターを出しますね。そうこなくっちゃ僕も戦い甲斐がありませんからね」

 

 私は眉間に皺を寄せて首をかしげる。

 

「(ねぇ、ブラック・ミストはⅣさんのことどう思う?)」

 

『周りから見ればうまく隠しているように見えるだろうが、俺からして見れば本性を隠しきれてねぇな』

 

 あ、やっぱりそうなんだ。

 まずいなぁ……結だけでもデュエルに参加させなければよかった。

 

「僕のターン、ドロー! 僕はモンスターを裏守備表示でセット、カードを3枚伏せて手札からエクシーズコロッセオを発動」

 

 フィールド魔法が張られたことにより周りの景色は空き地から廃墟と化しているコロッセオに変わる。

 観客席だったであろう場所の下には墓のようなものが建てられており、雰囲気があるフィールド魔法だった

 

「このカードはフィールド上にいるモンスターエクシーズの攻撃力を200ポイント上げ、モンスターエクシーズ以外の攻撃を禁止する」

 

 景色のすべてが書き換わるとどこからか鐘の音が鳴り響いてくる。

 エクシーズコロッセオ、エクシーズモンスター専用のフィールド魔法か。

 エクシーズモンスターを入れない人なんて私が作ったデッキ以外では見かけたことないしそうなると。

 

「エクシーズモンスターを出させることが目的かな?」

 

「え、どういうことだ?」

 

 あ、聞こえないように言ったつもりだったんだけど聞こえてたか…仕方ない解説でもしようか。

 

「エクシーズモンスターは大体の人が使っているでしょ? なのに、わざわざロックをしてくるってことは相手にエクシーズモンスターを出させることが目的だと思うんだよね。デッキによってはエクシーズモンスターを出さなくても相手に勝てるし」

 

「でも、それでどうやって勝つつもりなんだよ?」

 

「考えられるとしたらバーンかコントロールかな? 攻撃力分のダメージを与えるとかなら攻撃力が200上がっているしランク3以上のモンスターだと大ダメージを受ける。」

 

 ランク3でも攻撃力2000のモンスターがいるしね。

 私が持っているブラック・コーン号とケインズ・デビルは相手の攻撃力が高ければ高いほどこちらが有利になるし。

 私の解説を聞いて遊馬君と小鳥ちゃんはぽかんと口を開いて驚いていた。

 

「1枚のカードでそこまでわかるんですか!?」

 

「なんか良くわかんねぇけど、刹ってすごいんだな!」

 

 遊馬君と小鳥ちゃんから賞賛の声が上がり私は苦笑いを浮かべる。

 こんな知識があるのも前世で遊戯王やっていたおかげだしなぁ。

 

「これで僕のターンは終了です」

 

「俺のターン、ドロー! 俺はブリキンギョを召喚!」

 

 出てきたのは前世で見かけたことがある貯○魚のようなモンスターが現れる。

 

レベル4 ブリキンギョ 攻撃力:800

 

「このカードの召喚に成功した時、手札からレベル4モンスターを1体特殊召喚できる! 俺はブリキンギョを特殊召喚!」

 

 2体目のブリキンギョが現れたことで武田君の場には3体のモンスターが並んだことになる。

 やはり此処は危険を冒してでもエクシーズ召喚をするべきなんだろうか…。

 

「(どう思う?)」

 

『俺に聞くな』

 

 ブラック・ミストに話題を振ってみたがそっけなく返されてしまった。

 まさか昼ごはん抜きのことでまだ根に持っているというのか?

 あれは私の朝ごはんを勝手に食べたブラック・ミストが悪い。

 

「俺はレベル4のブリキンギョ2体とアイアイアンでオーバーレイ!」

 

 ブリキンギョは青色の球体、アイアイアンは橙色の球体になると地面に出てきた穴の中に入っていく。

 

「3体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!! 現れろ、ブリキの大公!!」

 

 光が爆発すると上から西洋の剣を右手で持ち、金髪で口元にひげを生やし体と腕が球体で出来ているブリキのモンスターが現れる。

 

ランク4 ブリキの大公 攻撃力:2200 ORU:3

 

「すごいよ、もうモンスターエクシーズを召喚するなんて!」

 

『ふん、白々しいな……』

 

 ブリキの大公が出たときのⅣさんの反応が気に食わないのかブラック・ミストが口を挟んできた。

 そしてフィールド魔法、エクシーズコロッセオによりブリキの大公の攻撃力は200ポイント上がった。

 

ランク4 ブリキの大公 攻撃力:2200→2400

 

 そのときのブリキの大公の目がぐるぐる回っていてちょっと不気味なんだけど……。まぁ、人形なんだから仕方ないとは思うんだけどね。

 

「行くぜ、ブリキの大公の効果発動! オーバーレイ・ユニットを一つ使うことで相手モンスターの表示形式を変更する!」

 

 3つ浮かんでいたオーバーレイ・ユニットの一つがブリキの大公が持つ剣に宿る。

 

ランク4 ブリキの大公 攻撃力:2400 ORU:3→2

 

「まさかこうもあっさり僕の裏守備モンスターが……。君はなんてデュエリストなんだ!」

 

「そ、そうっすか?」

 

 なんか気味が悪くなるくらい持ち上げてくるなぁ。

 3人はアジアチャンピオンのⅣさんに褒められたという事実に夢中でそんな考えにまでは及ばないらしい。

 それとも、私がひねくれているだけ? いや、ブラック・ミストが言うには本性を隠しているみたいだから私は正常だろう。

 

「俺はⅣのモンスターを攻撃表示に!」

 

 ブリキの大公が剣を振るうと衝撃波みたいなのがⅣさんのフィールドにあるセットモンスターを表側表示に変えた。

 出てきたモンスターはポニーテールに縛りピンク色のドレスを着た西洋人形だった。

 

レベル1 ギミック・パペット-ベビーフェイス 守備力:0 → 攻撃力:0

 

「僕がセットしていたのはギミック・パペット-ベビーフェイス」

 

 攻守が0のモンスターか……。

 おそらく効果モンスターだろうし、警戒しとかないとまずいだろうなぁ。

 

「これはチャンスですよ!」

 

「分かってる。ブリキの大公でギミック・パペット-ベビーフェイスに攻撃! 大公の一撃!!」

 

 ブリキの大公の剣がベビーフェイスを押しつぶしてモンスターを破壊した。

 なにもない……ということは墓地にいて効果を発揮するモンスターか?

 

「ぐぉ!」

 

LP:8000→5600

 

「罠カード、リペア・パペットを発動!」

 

 ベビーフェイスが破壊されⅣさんは焦った様子で罠カードを発動した。

 

「このカードはレベル4以下のパペットモンスターが破壊されたとき、同じモンスターをデッキから特殊召喚することが出来る!」

 

 そういって現れたのは先ほどのベビーフェイスとは色違いの青色の西洋人形が守備表示現れる。

 

「けど、そんなモンスター俺には通用しねぇ! ブリキの大公のモンスター効果を発動! オーバーレイ・ユニットを一つ使うことで相手モンスターの表示形式を変更する!!」

 

ランク4 ブリキの大公 攻撃力:2400 ORU:2→1

 

 1ターンに何度も使えるのか……これは便利だけど採用までにはいたらないかなぁ。

 

「エクセレント。ブリキの大公は1ターンに何度も効果を使えるのですか! というか、これはまずい……」

 

 Ⅳさんは苦笑いを浮かべて額に手を当てる。

 たしかに今の状態は結たちが有利なんだけど……仮にもアジアチャンピオンになった人物なんだから油断はできない。

 

「僕のターン、ドロー! 僕はデバッカーZを召喚! デバッカーZの召喚に成功した時、フィールドにデバッカーXがいれば……とどのつまり、デバッカーYをデッキから特殊召喚できます!」

 

 デバッカーZは体が四角になっており顔が小さめで、デバッカーYは細身の人型のモンスターでマスクをつけ両手を手術前の医者のように上げた状態で現れる。

 

レベル3 デバッカーZ 攻撃力:700

レベル3 デバッカーY 攻撃力:400

 

 なんかバクマンXYZのモンスターと同じ効果だよね……。

 これで等々力君の場にはレベル3のモンスターが3体そろった。

 

「おぉ、これでレベル3のモンスターが3体!」

 

「レベル3のデバッカーX、Y、Zでオーバーレイ!」

 

 3体のモンスターは黄色の球体となり地面に現れた穴の中に入っていく。

 

「3体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚! 現れろ、ワクチンゲール!」

 

 ワクチンゲールはエクシーズ召喚するための穴からゆっくり出てくるとその全貌が明らかとなる。

 デフォルメされたポリゴン型のナースの女性で右手に大きな注射を抱えていた。

 

ランク3 ワクチンゲール 攻撃力:1800→2000

 

「いっけー! ワクチンゲール!」

 

 等々力君が指示を出すとワクチンゲールはベビーフェイスに向かってとっしんしていくと注射の針から電撃が飛び出し、それはベビーフェイスを襲った。

 

「ぐ、くぅ……罠カード、ダメージ・コンデンサーを発動! 手札を1枚捨て、戦闘ダメージを受けたときその数値以下の攻撃力をもつモンスターを1体特殊召喚する。僕はギミック・パペット-マグネ・ドールを特殊召喚!」

 

LP:5600→3600

 

レベル8 ギミック・パペット-マグネ・ドール 守備力:1000

 

出てきたのは灰色の顔がない、まるでデッサン人形のようなモンスターが現れる。

 

「僕はこれでターンエンドです。結先輩、後は任せました!」

 

「う、うん! 私のターン、ドロー! 自分スタンバイフェイズ時、雲魔物のスコールの効果が発動されます。フィールド上に存在する表側表示のすべてのモンスターにフォッグカウンターを1つ置きます!」

 

 結の場にある永続魔法から雲が出てくるとそれらはフィールドにいるモンスターすべてにくっついた。

 

「私は雲魔物-タービュランスを召喚します」

 

 結の場に雲が現れるとそれは形を作り目と口だと思われる黒い穴が開く、顔の横からは腕が生え、頭のてっぺんには穴が開いているモンスターが現れる。

 

レベル4 雲魔物-タービュランス 攻撃力:800

 

「そしてタービュランスの効果を発動します! このモンスターが召喚に成功した時、フィールド上の雲魔物と名の付いたモンスターの数だけこのモンスターにフォッグカウンターを置きます。雲魔物の数は3体よってフォッグカウンターを3つ置きます。さらにタービュランスの効果を発動! このモンスターに置いたフォッグカウンターを1つ取り除くことで自分のデッキまたは墓地から雲魔物-スモークボールを1体特殊召喚します!私は2つ取り除き、2体のスモークボールを特殊召喚!」

 

 スモークボールは他の雲魔物とは違い、小さい雲のモンスターで見た目は愛らしいものだった。

 

レベル1 雲魔物-スモークボール 守備力:600

 

「リバースカード、オープン。レベル・マイスターを発動! 手札のモンスターを墓地に送り、2体のスモークボールを選択!その選択したモンスターは墓地へ送ったモンスターのレベルと同じになります! 私が墓地へ送ったのはレベル6の光帝クライスです」

 

レベル1→6 雲魔物-スモークボール

 

「すっげぇ! フィールドに5体のモンスターが並んだ!」

 

 遊馬君の声を聞きながらⅣさんに視線を向けると彼は笑顔を浮かべたまま結の行動をただ見ていた。

 

「私はレベル6となったスモークボール2体でオーバーレイ!」

 

 2体のスモークボールは青色の球体となって地面の穴へと入っていく。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築、エクシーズ召喚!! 現れろ、セイクリッド・トレミスM7(メシエセブン)!」

 

 穴の中から行きおいよく翼を羽ばたきながら空中に躍り出たのは白く、ドラゴンの形をした機械仕掛けのモンスターだった。

 

ランク6 セイクリッド・トレミスM7 攻撃力:2700→2900 ORU:2

 

「さらにレベル4のタービュランスとアルトスとキロスタスでオーバーレイ! エクシーズ召喚!現れろ、ヴァイロン・ディシグマ!」

 

 3体のモンスターは青色の球体となり地面の中に入っていくと光の爆発がおき、そこから現われたモンスターは金色と黒のボディに腕の先には鋭いつめがあり腕にはこうもりのような金色と黒で出来た飛膜があった。

 

ランク4 ヴァイロン・ディシグマ 攻撃力:2500→2700 ORU:3

 

「なんてすばらしいんだ! この1ターンで2体のモンスターエクシーズをそろえてしまうなんて!」

 

「そ、そうですか?」

 

 Ⅳさんの褒め言葉に結は照れたように笑い、こちらに目を向けてさらにうれしそうに笑っている。 

 

「それじゃあ、行きます! セイクリッド・トレミスM7の効果を発動! オーバーレイ・ユニットを1つ使い、フィールドまたは墓地にいるモンスターをそのモンスターの持ち主の手札に戻します。私はギミック・パペット-マグネ・ドールを選択します!」

 

「なんと!? そのモンスターエクシーズにはバウンスまであるのですか! あぁ、これはまずいことになりました…」

 

 セイクリッド・トレミスが一つのオーバーレイ・ユニットを口のなかに入れると体が光り始め、その大きな翼をはためかせるとⅣさんのフィールドにあったマグネ・ドールが手札に戻る。

 

ランク6 セイクリッド・トレミスM7 攻撃力:2900 ORU:2→1

 

「これはもしかして、もしかしますよ!」

 

「いっけー、結先輩!!」

 

 武田君と等々力君の声援に結は力強く頷くと2体のモンスターに指示を出した。

 

「まずは、ヴァイロン・ディシグマでダイレクトアタック!」

 

 ヴァイロン・ディシグマの両腕から光の玉が生まれ、それが一つに合わさるとヴァイロン・ディシグマは光の玉をⅣさんに向かって解き放つ。

 光の玉はまっすぐⅣさんに向かっていった。

 

「ぐあぁ!」

 

LP:3600→900

 

「これで終わりです! セイクリッド・トレミスでダイレクトアタック!!」

 

 セイクリッド・トレミスの口に光が集まりだし、十分に力がたまったところでセイクリッド・トレミスは口から光線を吐き出して攻撃した。

 

「おぉ、このままじゃ!」

 

 Ⅳさんは焦ったように言うと、セイクリッド・トレミスの攻撃がⅣさんにぶつかりあたりは煙に包まれた。

 

「やりましたか!?」

 

「フォ、Ⅳさんに……勝ったの?」

 

 3人はⅣさんに攻撃が決まったと思い、喜んでいるがいつまでたってもデュエルの終了合図が聞こえてこないのでまだデュエルは終わっていないことが分かる。

 

「いやぁ、見事ですね。素晴らしい攻撃だ」

 

 煙の中からⅣさんの声が聞こえてくる。

 

「でも、僕はダメージを受けていません」

 

 Dゲイザーに表示されているライフポイントを見てみると確かにⅣさんのライフは900と変わらないままだった。

 3人が困惑している間に煙がすべて消え、Ⅳさんのフィールドが見えてくる。

 

「残念ですが、今の攻撃で僕は永続罠、ギミック・ボックスを発動していた。このカードはバトルでダメージが発生した時、ダメージを無効にして罠カードからモンスターカードに変換し特殊召喚される」

 

 Ⅳさんの頭上に不気味なデザインの機械仕掛けのモンスターが現われる。

それは変な笑い声を上げており不気味さに拍車をかけていた。

 

「そしてダメージを無効にした数値がこいつの攻撃力となる」

 

レベル8 ギミック・ボックス 攻撃力:0→2900

 

 トレミスの攻撃力は2900だからギミック・ボックスは同じ2900。

 これはまずいなぁ。

 

「兄様急ぎましょう。今の攻撃で繰り出してこないなら、彼らはNo.をもっていない……」

 

 なっ、あのピンク髪の子いまNo.っていった?

 

「(ブラック・ミスト、今の言葉聞いた?)」

 

『ああ。だが、どういうことだ……。あいつらはNo.を持っているというのか?』

 

「(知っているってことはおそらくそうなんだろうね…)」

 

 私たちが相談している間に遊馬くんはあの男の子の言葉に驚きの声を上げていた。

 

「わかっている。そろそろ受けてもらおうか、俺の本当のファンサービスを」

 

 Ⅳさんははじめに見せたやさしげな表情とは一変してどこか人を見下しているようなそんな雰囲気に変わる。

 

「希望を与えられ、それを奪われる。その瞬間こそ人間は一番美しい顔をする。それを与えてやるのが、俺のファンサービスさ」

 

 そういってⅣさんは歪んだ笑みを浮かべた。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 おい待て、まだ結はエンド宣言してないぞ。

 

「お前たちのデュエルは素晴らしかった! コンビネーションも戦略も! だが、しかし、まるで全然、この俺を倒すには程遠いんだよね!!」

 

 ドローしたカードを掲げながらⅣさんは声高らかにそういった。

 

「俺はギミック・パペット-ギア・チェンジャーを召喚!」

 

 青いデッサン人形の頭の代わりにダイヤルロックの錠前に似たようなものがつけられたモンスターが現われる。

 

ランク1 ギミック・パペット-ギア・チェンジャー 攻撃力:100

 

「さらに相手フィールド上にモンスターが存在し自分フィールド上にギミック・パペットと名の付いたモンスターのみの場合、ギミック・パペット-マグネ・ドールを手札から特殊召喚できる! そしてギア・チェンジャーの効果を発動!」

 

レベル8 ギミック・パペット-マグネ・ドール 攻撃力:1000

 

 先ほど現われたデッサン人形のようなモンスターが現われるとギア・チェンンジャーのダイヤルの部分が回転し始める。

 

「このモンスターは自分フィールド上にいるギミック・パペットと名の付いたモンスターと同じレベルにすることが出来る。マグネ・ドールのレベルは8! よってギア・チェンジャーのレベルは8となる!」

 

 数値の回転が止まるとそこには8の数値が描かれ、Dゲイザーで表示されているレベルの数値が上がった。

 

レベル1→8 ギミック・パペット-ギア・チェンジャー 攻撃力:100

 

「とくと味わってくれよ……俺のファンサービスを!! 俺はレベル8のギア・チェンジャーとマグネ・ドールをオーバーレイ!」

 

 2体のモンスターは橙色と紫色の球体となりⅣさんのまえにある穴の中に入っていく。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!! エクシーズ召喚!現われよ、No.15」

 

 光の爆発が起きて、それが収まるとしたから出てきたのは黒い人形の腕などが一つに固まったモンスターだった。

 しかしそのモンスターは動き出し、形が変わっていくと頭上に糸をつるされている操り人形が現われる。

 

「地獄からの使者、運命の糸を操る人形……ギミック・パペット-ジャイアントキラー!!」

 

ランク8 No.15ギミック・パペット-ジャイアントキラー 攻撃力:1500→1700 ORU:2

 

 大きなモンスターが現われて私たちはそれを見上げる。

 ランク8なのに攻撃力が1500とすごく低い。エクシーズコロッセオで200上がったとしても下級モンスターで殴り倒せるレベルだ…No.だから戦闘破壊できないけど。

 これは強力な効果があると見て良いだろう。

 

「俺はジャイアントキラーの効果発動! ジャイアントキラーはオーバーレイ・ユニットを一つ使い。このターン、相手のモンスターエクシーズをすべて破壊する!」

 

ランク8 No.15ギミック・パペット-ジャイアントキラー 攻撃力:1700 ORU:2→1

 

 ジャイアントキラーの胸の部分から穴が開き、手から細い糸が飛び出してブリキの大公にくっついた。

 胸の部分にローラーのようなモノがついており、それが回転し始めた。

 

「ちょっ! 小鳥ちゃん、目つぶって!あと耳も!」

 

 この後に起きるできことに私は焦って小鳥ちゃんの耳をふさぎ、小鳥ちゃんは不思議そうな顔をしているが指示通り目をつぶった。

 細い糸に引っ張られブリキの大公はジャイアントキラーの胸の部分に引きすられていく。

 そしてブリキの大公の腕がジャイアントキラーの胸の部分の中に入り込んだ。

ローラーによってブリキの大公の腕は押しつぶされ、細い糸によってさらに中に入り込み、ブリキの大公の体がローラーによってつぶされながらジャイアントキラーの中に飲み込まれていった。

 これ子供が見たらトラウマものだろ!!

 

「そして貴様たちは破壊されたモンスターの攻撃力分のダメージを受けることになる」

 

 効果は強力だけどグロいよ!!

 ジャイアントキラーの胸から大砲のようなモノが出てきて赤い玉が先端から現れる。

 

「ブリキの大公の攻撃力は2400! 俺のファンサービスだ。受け取れぇ!!」

 

 チャージして放たれたビームは鉄男君に向かっていく。

 鉄男君は吹っ飛ばされ地面にたたきつけられた。

 

LP:4000→1600

 

「鉄男……くん?」

 

「……武田くん?」

 

 倒れた鉄男君を結と等々木君は呆然と見ていた。

 

「次はお前だ!!」

 

 Ⅳさんの言葉に結と等々木君はひっと小さな悲鳴をあげてジャイアントキラーを見る。

 また手から細い糸が飛び出し今度はワクチンゲールにくっついた。

 そして、ワクチンゲールはジャイアントキラーの胸部分に引きずり込まれ破壊された。

 

「お前のモンスターエクシーズを破壊する! そして攻撃力分のダメージをお前に与える! くらえ!!」 

 

 ジャイアントキラーからビームが発射すると等々木君は威力に耐えきれず吹っ飛ばされ鉄男君の隣に倒れ込んだ。

 

LP:4000→2000

 

「さて、次だ!!」

 

 ジャイアントキラーは次に結のフィールドにいるトレミスとヴァイロン・ディシグマをローラーの中に引きずり込んで破壊すると、胸の部分からビームが発射して結を襲った。

 結の場には攻撃力が2000以上のエクシーズモンスターが2体。

 結は何も出来ずに効果ダメージを受けて地面へとたたきつけられた。

 

LP:4000→0

 

「結!!」

 

 今すぐ駆け寄りたいが、現在はデュエル中。割ってはいることはタブーとされている。

 

「素晴らしい……美しいよ。その苦しみに歪んだ顔! それでこそ俺もサービスのし甲斐があるってもんだぜ」

 

 何なのこいつ……。

 小鳥ちゃんの耳を押さえながら眉間に皺を寄せ私は思った。

 

「フハハハッ、本気のファンサービスはこれからだ!!」

 

 まだやるのかよ。この勢いだとこのターンで終わらせる気だな。

 

「墓地にいるギミック・パペット-ベビィフェイスの効果発動! バトルで破壊されたこのモンスターが自分の墓地にいて、これらを破壊したモンスターがまた自らの墓地にいる時、甦ったベビィフェイスを除外することでブリキの大公とワクチンゲールを特殊召喚することができる」

 

 説明の途中でBady Faceと書かれた墓の下からベビィフェイスがゾンビのごとく現れ、背中から歯車のようなモノが飛び出しそこから細い糸が鉄男君達の墓地へとつながる穴に入っていくと鉄男君達の目の前にブリキの大公とワクチンゲールが現れた。

 なんというか、使いづらい効果だったね。

 明らかにそのターンに破壊しないと向こう側に有利になっちゃう効果だし、戦闘破壊されて向こうのモンスターも墓地にいないといけないから正直微妙。

 

「ていうか、これはまずいよ……」

 

 ジャイアントキラーの効果で1ターンに1度とかいう制限がなかったら確実に鉄男君達は負ける。

 しかもエクシーズコロッセオの効果で攻撃力が上がっているから元の攻撃力が1800のワクチンゲールは2000となり等々木君のライフちょうどになってしまう。

 

「お前らは破滅の糸にからめとられた木偶人形。俺の支配からは逃れることはできん!!」

 

 そしてⅣさんはジャイアントキラーの効果を再び使用して、鉄男君達のモンスターを効果で破壊し攻撃力分のダメージを与えた。

 鉄男君達のライフは0となった。

 

「これはひどい……」

 

 私の中に怒りがこみ上げてくるのが分かる。今まであった中で最悪なデュエルを見せられた上に私の友達である結を傷つけた。

 あー……こいつ本気デッキでつぶしてやろうか。

 デュエルが終わると思って小鳥ちゃんの耳から手を離すとⅣは呟いた

 

「俺のファンサービスは終わらないぜ! ジャイアントキラー!!」

 

 すでに3人のライフは0。なのにⅣはジャイアントキラーに攻撃指示を出していた。

 

「待て! もう勝負はついただろ!!」

 

「お前には彼らがファンサービスに喜んでいるのが分からないのか?」

 

 遊馬君が止めようと声をあげるがⅣはまったく止めるそぶりも見せずにジャイアントキラーに指示を出した。

 結を含めて3人はジャイアントキラーの攻撃によって吹き飛ばされて地面へとたたきつけられる。

 

「鉄男! 委員長!!」

 

「結!!」

 

 私は結に遊馬くんと小鳥ちゃんは武田くんと等々力君に駆け寄り、結に声をかけて様子を見てみるが結は気絶しているようで目をつぶったまま動かなかった。

 あー……だめだわ、これ。

 

『お前からすっげぇ怒りの感情が流れてきてるぜ、刹?』

 

 ブラック・ミストは面白げにそう呟いているのが聞こえたが今は何も答えられない。

 

「こいつら本当にあんたに憧れてたんだぞ!! なのになんでだよ!?」

 

 遊馬君は湧き上がる怒りをそのままⅣにぶつけるが、Ⅳは涼しい顔をしている。

 

「フ、フフハハハッ。スターはファンにすべてをささげるモノ、そのすべてをなぁ」

 

 ぶちと何かが切れる音がしたような気がした。

 私は立ち上がりデッキケースからデッキを取り出して現在セットしているデッキと入れ替えてデュエルディスクを立ち上げた。

 

「おい、私とデュエルしろ」

 

 デュエルディスクをつけている腕をⅣに突き出して私は低い声で言うとⅣは口元を吊り上げて笑った。

 

「君も俺のファンになったのかな?」

 

 その時、バイクのエンジン音が鳴り響き、上から一輪車のバイクが降りてきた。

 てっ、上から!?

 驚き半分と音につられてみてみるとバイクには紫色の髪の毛が外側に跳ね、どこかタコの足に見える髪形をしている男、神代が現われた。

 え、なにしているの?

 

「やっと見つけたぜ、Ⅳ」

 

 神代がメットをはずしてバイクから降りるとⅣに向かって恨みがこもった言葉を吐き出したとき、私は思った。

 これ、出番とられたわ。

 




ちなみに主人公の本気デッキはまだ決まってません。
なににしようかなぁ…。

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