ももちゃんとデッキの相談をし、リチュアのレベル10軸にかえてグスタフ・マックスを入れておいた。
ライフ4000で2000のバーンは強いから、これで少しは変わることが出来るだろう。
ためしに近くにいた人に頼んでももちゃんとデュエルをしてもらうと、後攻1キルを決めていたのでこれで大丈夫だと思う。
ももちゃんからは何度もお礼を言われて、私たちはその場でわかれ私は他の場所に移動していた。
因みにももちゃんからもらったハートピースははめることが出来たので残りのハートピースは1つとなった。この調子でいけば今日中にはハートピースは集まるだろう。
広場の次に人が集まりそうな中心部に近い噴水や大きな池がある公園にやってくるとあちこちでデュエルをしている人がいた。
「さて、誰に相手してもらおうかな……」
『次もNo.を持った相手にしろ』
私の独り言に反応してブラック・ミストがそういった。
めんどうだなぁ……というか、そんな簡単にNo.をもった人なんて見つからないと思うけど。
周りを見渡して人を見ていると一人見たことがある男を発見し深いため息を吐いた。
「いちゃったわー……」
デュエル中なので左目の周りには青い模様が描かれ後ろだけ長い白いコートを着た男、天城カイトがデュエルをしていた。
あのロボット、オービタルはつれてきていないのかどこにも見当たらなかった。
少し気になって近くに行き、デュエルの様子を眺めてみる。
相手のライフは2800で場にはモンスターが存在せず、伏せカードが1枚あるが光っている鎖に縛られ使用できなくなっていた。
天城のライフは4000で場にはフォトン・ケルベロスと銀河眼の光子竜が存在しており、現在は天城のターンみたいだ。
「これで終わりだ!破滅のフォトン・ストリーム!!」
銀河眼の光子竜の口から光が漏れ出し力をためて一度顔を上に向け勢いよく振り下ろすと同時に口から光線が飛び出して相手を襲った。
「うわああぁぁ!!」
相手は吹き飛ばされて地面へとたたきつけられる。
デュエルの終了する音が鳴り響くと周りの景色に0から9の数値が流れ、元の風景へと戻っていく。
天城は倒れている相手に近づきハートピースを受け取ると身を翻してその場から離れようとしていた。
しかし体を向けた方向が悪かった。ちょうど私と対面するように体は向けられ天城は私の存在に気づいてしまった。
「お前は……」
「どうも」
近づいてきた天城に手を上げて挨拶をしてみるが天城はふんと鼻を鳴らすだけで何も答えなかった。
「俺にデュエルを申し込みに来たのか?」
「まさか。ただ観戦していただけ。デュエルの申し込みはしないよ。それとも天城から申し込む?」
私の問いかけに天城は首を振り、自分が持っているハートピースにいま勝ち取ったハートピースをはめ込んだ。
「お前とは決勝大会で決着をつける」
決着ねー……おそらく決勝大会はトーナメントだと思うし運よく当たればいいんだけれど。
「見つけたぞ! 黒峰刹!!」
突然公園に響き渡る男性の声にみんなして声がしたほうに顔を向ける。
そこにはこちらに走ってくる顔がよく似た二人の男がいた。
ひとりは短髪の赤毛に前髪に黄色のメッシュを入れており、もう一人は前髪に緑色のメッシュを入れている以外はもう一人の男と顔がそっくりである。
て、ん? なんか見たことがあるような……。
二人は私たちの前に立ち、二人そろって私に指を指し口を開く。
「「あのときの屈辱を今此処で晴らさせてもらう!!」」
えー……なんかむこうが勝手に盛り上がっているんだけど、こっちはまるで身に覚えが無い。
「あのさ、悪いんだけど……どちら様?」
「「な!?」」
私がそう聞くと二人は驚いた後、顔は怒りに染まり体を震わせた。
「お前、覚えてないだと!?」
「ふざけるな! 1年前、僕たちに屈辱を味合わせた鬼畜女め!!」
いらっときたがここは大人になって冷静に対応した後、パーミッションデッキで叩き潰そうか。
じゃなくて、1年前といわれたのでそのときのことを思い出してみる。
1年前は普通にデュエルをしていたこと以外は、たしかハートランド学園の50周年記念デュエルの代表戦にでて代表になったこと。
そういえば、代表戦で一度だけ2対1で戦ったような……あ。
「ああ、確かロックデッキデスでやっちゃったときかな?」
バトルロワイヤル形式だと言われたから面倒だと思ってデッキ破壊のやつでやったんだよね。すっかり忘れてた。
確か名前は黄色のメッシュで一人称俺が志賀崎イノリで緑色のメッシュで一人称僕が志賀崎イノルだったような。
「やっと思い出したか! そうだお前はライフ2万以上あり俺たちは何も出来ないままただデッキ切れを待つことしか出来なかった!」
「ライフが2万だと……?」
志賀崎イノリの言葉に天城が反応し私のほうを見てくるが説明が面倒なのでスルーさせてもらう。
「その後、僕たちは1年生に負けたデュエリストといわれ、他のやつらに馬鹿にされ……」
「神代凌牙にアンティルールでデッキを奪われて……」
おい、神代。お前何やってるんだよ。
私は頭を抱えそうになったが、寸前のところでとどまることが出来た。
「「そういうわけだから、デュエルだ! 黒峰刹、ついでに隣の男も!!」」
「……は?」
2人の言葉に私は一瞬何を言ったのか理解できなかった。
天城もまったく関係ないはずなのにとばっちりを受けて不機嫌そうに眉間に皺を寄せている。
「なんで天城もデュエルするの? 私だけで良いんじゃ……」
「お前にはうらみは無い」
「だが」
「「イケメンは滅びよ!!」」
だめだこいつら、早く何とかしないと。
自分勝手な言い分に頭が痛くなってきそうで右手を額に当てる。
「ふん、くだらない。俺は帰らせてもらう」
天城はきびすを返してこの場から離れようとしたが志賀崎イノルが天城の前に立ちふさがり2つほどはまっているハートピースを掲げた。
「僕たちはWDCの参加者だ!」
「よってデュエルは受けなければならない!」
「「さぁ、タッグデュエルだ!」」
面倒なことになったなー。
私と天城はお互いに顔を見合わせて深いため息を吐いた。
「タッグデュエルのルールはタッグフォース形式でライフは4000でやらせてもらう!」
タッグフォース形式とは簡単に言ってしまえば前世であったTFのタッグデュエルと同じルールでライフは基本8000なのだが、4000に設定することも出来る。
・使用するフィールドは1チームに1つ
・モンスターフィールドは1チームにつき5箇所
・魔法・罠ゾーンは1チームにつき5箇所
・エクストラデッキは1チームにつき2つ(パートナーのエクストラデッキは使用できない)
・墓地ゾーンは1チームにつき1箇所(パートナーの墓地も利用可能)
・LPは1チームにつき8000又は4000
・フィールド魔法は通常の対戦と同じく、一つまで
・デッキは1人につき1つ(1チームに2つ)
・パートナーの置いたカードは、自分のターンでも使用可能。
この世界ではどちらかというとバトルロイアル形式が多いのであまりタッグフォース形式は慣れ親しんでいない。
それなのにタッグフォース形式をむこうから提案してくるってことは何かしらあるのかな?
『ちょうどよかったじゃねぇか。あいつら二人はNo.を持っている。これで今日は3枚のNo.を回収したことになる』
「(は? こいつらNo.をもっているの?)」
『No.の力によって若干暴走状態になってるがな』
だからこんなにうるさいのか……。
ほんの少しだけ納得しつつ私たちはお互いに離れて向かい合い、デュエルディスクとDゲイザーをセットする。天城だけフォトンチェンジとか言って変身していたが。
「「「「デュエル!」」」」
「先攻は僕から行くぞ! ドロー! ヴェルズ・カストルを召喚し効果を発動する! このモンスターが召喚に成功したターン、ヴェルズと名のついたモンスターを1体召喚することが出来る!!」
レベル4 ヴェルズ・カストル 攻撃力:1750
左半身には黒い鎧を身にまとい肩や膝には角のようなものがついており、右半身は白を基調とした鎧となっている、ぼろい赤マントをつけた戦士が現れる。
うげっ、ヴェルズか。1年前のデッキは確か志賀崎イノリがセイクリッドで志賀崎イノルが植物族デッキだったような気がする。
「僕はヴェルズ・カストルの効果を使用してヴェルズ・サラマンドラを召喚!」
黒いオーラをまとった二足歩行の恐竜が現れて咆哮を上げた。
「行くぞ! レベル4のヴェルズ・カストルとヴェルズ・サラマンドラをオーバーレイ!」
2体のモンスターは紫色の光の玉へと変わると地面に出てきた穴の中に入っていく。
「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築、エクシーズ召喚! 現れろ、ヴェルズ・オピオン!!」
ランク4 ヴェルズ・オピオン 攻撃力:2550 ORU:2
光の爆発が収まるとそこにいたのは、顔はどこか鳥のような顔つきで背中は虫の前翅のような形になっており羽は赤から青のグラデーションになっているドラゴンが現れる。
オピオンがきちゃったか……私のデッキはさっき使ってた闇属性レベル2軸だけど、天城は大丈夫だろうか。
ちらりと天城のほうを見てみると彼はただ志賀崎イノルがだしたモンスターを眺めているだけだった。
「カードを1枚セット、ターンエンドだ!」
「天城、私から先にやるけどいい?」
エンド宣言がされたので私は天城に聞いてみると、勝手にしろといわれたので私から先にやることになった。
まぁ、やることなんて少ないのだが……。
それにしても、タッグを組むんだからもう少し協力的になってもいいと思うんだけど。
「私のターン、ドロー。私はモンスターをセット、カードを2枚セットしターンエンド」
今はエクシーズ召喚が出来るモンスターはいないし守りに入るしかないか。
「俺のターンだ、ドロー! ヴェルズ・サンダーバードを召喚!」
レベル4 ヴェルズ・サンダーバード 攻撃力:1650
黒色の体色に首元から5本のツタのようなものが生え、腹には赤い宝石のようなものがいくつか埋め込まれている鳥のモンスターが現れる。
同じデッキにしてきたか……これはちょっとまずいかも。
「ヴェルズ・サンダーバードで伏せモンスターに攻撃だ!」
ヴェルズ・サンダーバードがこちらに飛んでくると伏せられていたカードはひっくり返り守備の体勢になっている紫色の服を着た魔術師、見習い魔術師が現れるがサンダーバードの鉤爪が見習い魔術師を襲い破壊される。
「破壊された見習い魔術師の効果を発動。このカードが戦闘で破壊された場合、自分のデッキからレベル2以下の魔法使い族モンスター1体を自分フィールドにセットすることが出来る。私は見習い魔術師をセットする」
「チッ、ヴェルズ・オピオンで攻撃だ!」
「効果を発動し、デッキから執念深き老魔術師をセットする」
よし、これで次のターンにはオピオンを破壊できる。
レベル2軸だけどこのデッキにはダムドも入ってるしオピオンは早めに除去しておきたい。
「オピオンの効果を発動する! オピオンはオーバーレイ・ユニットを一つ取り除くことでデッキから侵略のと名のついた魔法、罠を1枚手札に加える! そしてこの効果にチェーンしてサンダーバードの効果を発動!魔法、罠、効果モンスターの発動した時、サンダーバードを除外し、次のスタンバイフェイズ時にフィールドに戻ってくる。俺は侵略の侵食感染を手札に加え、カードを1枚伏せターンエンド!」
ランク4 ヴェルズ・オピオン 攻撃力:2550 ORU:2→1
サンダーバードは消え、志賀崎イノリはカードを手札に加えた後シャッフルをしてからカードを1枚伏せていた。
前は手札に加えたまますぐに伏せていたから何を伏せたかわかったけどさすがにそんな失態は何度もしないか。
「俺のターン、ドロー!」
「スタンバイフェイズ時、サンダーバードは効果によって戻ってくる! そしてこの効果で戻ってきたサンダーバードの攻撃力は300ポイントアップする!」
レベル4 ヴェルズ。サンダーバード 攻撃力:1650→1950
戻ってきたサンダーバードは黒いオーラに包まれると表示されている攻撃力が上がっていた。
「フォトン・サンクチュアリを発動。このカードは自分フィールド上にフォトン・トークンを2体守備表示で特殊召喚する。そしてこのカードを発動したターンは光属性以外のモンスターを召喚、反転召喚、特殊召喚できない」
レベル4 フォトン・トークン 守備力:0
二つの光の玉が現れるがすぐにそれは天城の次の行動によりすぐに消えてしまう。
「俺はフォトン・トークンをリリースし銀河眼の光子竜をアドバンス召喚」
そう宣言すると天城の隣に身の丈ぐらいある赤い十字架のようなものが現われ、天城はそれを掴むと頭上に投げる。
回転しながら上へと投げられた十字架から光の粒子が集まり、それは次第にドラゴンの形へと変わっていく。
「光の化身、此処に光臨! 現われろ、銀河眼の光子竜!!」
レベル8 銀河眼の光子竜 攻撃力:3000
あー、前のときはすぐに退場させちゃってじっくり見なかったけど、登場するシーンとかと合わさって格好良いね。
自分ではあの演出はやりたくないけど。
「銀河眼の光子竜でヴェルズ・オピオンを攻撃する! いけ、ギャラクシーアイズ! 破滅のフォトン・ストリーム!!」
「うわぁと! リバースカードオープン、和睦の使者を発動! このターン、俺たちのモンスターは戦闘では破壊されずダメージは受けない」
銀河眼の光子竜から放たれた光線は寸前のところで青いローブを着た女性の登場で阻まれる。
「ならば、ギャラクシーアイズのモンスター効果を発動! ギャラクシーアイズと戦闘を行う相手モンスター1体をバトルフェイズ終了時まで除外する」
「なに!?」
「なぜ今除外をするんだ?」
志賀崎イノリと志賀崎イノルの疑問をよそに2体のモンスターはフィールド上から消えるとしばらくしてから2体のモンスターは戻ってきた。
「ギャラクシーアイズの効果はそれだけではない。この効果で除外したモンスターがモンスターエクシーズだった場合、除外した時のオーバーレイ・ユニットの数×500ポイント攻撃力がアップする!!」
「「なんだと!?」」
ランク4 ヴェルズ・オピオン 攻撃力:2550 ORU:1→0
レベル8 銀河眼の光子竜 攻撃力:3000→3500
オピオンは除外されたことによりオーバーレイ・ユニットは墓地に送られるがその力は銀河眼の光子竜に吸収され力を与えてしまった。
なんというエクシーズメタ。この世界はシンクロもないしほとんどの人がエクシーズモンスターに頼りきっているからこの効果は強力だなぁ。
しかも除外するから相手のオーバーレイ・ユニットを強制的にはずせるし。
「俺はカードを1枚伏せてターンエンド」
……ん? いや、まぁセットされた執念深き老魔術師を反転召喚すると低い攻撃力のモンスターを晒すことになるから別にこれでも大丈夫か。
「僕のターン、ドロー! ふん、そういうモンスターは戦闘に持ち込まなければいいんだ! 僕はヴェルズ・オランタを召喚!」
レベル4 ヴェルズ・オランタ 攻撃力:1650
背中に昆虫の羽根を生やしおなかには丸い赤い宝石のようなものが埋め込まれた大柄な男が現われる。
「ヴェルズ・オランタの効果を発動!このモンスターをリリースし、相手フィールド上の表側表示で存在するモンスターを破壊する!」
オランタは自身を火の玉へと変わるとギャラクシーアイズへと向かっていき、両者が激突すると爆発が起こりギャラクシーアイズは破壊された。
……ん!?
「ちょ、ちょっと天城。私が伏せたカードを使えばギャラクシーアイズは……」
私は相手にばれないように天城に回線をつなげ小声で言うと天城はこちらを一瞥したあと目を細めた。
「俺はお前の助けを借りる気など毛頭ない。このデュエル、俺一人で十分だ」
「……あ゛?」
何を言っているの、この人?
『……おい、いまお前女としてしちゃいけない顔を』
「(ちょっと黙っててくれないかな)」
『……』
イラついてブラック・ミストに冷たい対応を取ってしまったが、あとで詫びを入れるとして。
深く息を吸ったあと吐いて気持ちを落ち着かせた…いや、でもちょっと無理だわ。
バトルロイアル形式なら好き勝手やってもいいよ?
でもさ、タッグフォース形式になってくると別なんだよ。
バトルロイアル形式ならそれぞれにモンスターゾーンや魔法・罠ゾーンがあるからいいけど、タッグフォース形式はその二つを二人で共用しなければいけないということ。
ただでさえ使用できるモンスターゾーンや魔法・罠ゾーンがバトルロイアル形式と比べて少ないというのに協力せずに自分勝手に動き回れるとお互いに足を引っ張るだけ。
しかも相手はデッキ統一でヴェルズを使っているときた。
「あー……どうしよう」
私は誰にも気づかれないように呟いた。
デュエルの途中で区切って次回をお楽しみに!というのをやってみたかったんだ…。
なので今回は文字数が少ないのです。具体的に言うと4000文字ぐらい。