遊戯王の世界に転生したがろくな事が起きない   作:アオっぽい

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今回の話でブラック・ミストが入ったデッキが使用されます。
皆さん、いろいろと提案をしていただきありがとうございます!



第五話 大会に出るとろくな事がおきない

 

WDCが始まる少し前、オボットたちがコンピューターを操作しハートランドシティ全地域の異常が見られないか監視をしている場所でふちが太いメガネに黄色の奇抜なスーツを着た男性、Mr.ハートランドがその様子を見ていた。

 

「ところで、例の彼女は大会に来ているのかね?」

 

 不意に口を開き一つ下の段にいる、藍色の髪に異様に長い前髪に薄紫のメッシュが入った白いスーツを着た女性、ドロワと赤茶の短髪で黒いコートを着た男性、ゴーシュに問いかけた。

 

「えぇ、先ほど監視カメラにて姿を確認しました」

 

 ドロワの言葉を聞いてハートランドは満足そうにうなずいた。

 

「彼女は変わったNo.を持っているようですからね……ぜひとも回収しなくては。そうでしょう? カイト」

 

 そういって左後ろで待機している天城カイトのほうを向くと、カイトは無表情のままカメラの映像を見つめその問いには答えなかった。

 カイトはつい最近起こったNo.と黒峰刹のデュエルを思い出す。

 アストラルの記憶をたどっている時、オービタルからNo.の反応があると知らされ着いた場所で黒峰刹とアストラルと姿形が似ている黒いNo.がデュエルをしていたのだ。

 本来ならこのことを報告するつもりはなかったのだが、黒峰刹がWDCに参加しないと聞き、ハートランドがいる前でドロワとゴーシュに追及している最中で口を滑らせてしまったのである。

 

「ですが、大会の実績もない人間をハートランド学園の代表と勝手に決定していいのでしょうか?」

 

 ドロワは疑問に思ったことを口に出すと隣にいるゴーシュが口を開いた。

 

「カイトを倒すぐらいのノリをしてるやつだ。別に問題ないと思うが?」

 

「えぇ、そのとおり。彼女は優勝候補といわれているカイトを倒すほどの実力者。それに、ハートランド学園であった50周年記念デュエルで一度代表に選ばれている。理由はそれで十分でしょう」

 

 実はハートランド学園創立50周年記念デュエルというのが1年前にあった。

 プロのデュエリストを呼び、学園の生徒とデュエルさせるというもので、その記念デュエルの代表に選ばれたのが刹だった。

 代表を決めるためのトーナメントで披露された刹のデュエルタクティクスは映像で残されており見ていたハートランドはもちろんドロワやゴーシュも舌を巻いた。

 ここで重要になってくるのが、刹はそのデュエルがビデオカメラで録画されていることを知らなかった。

 記念デュエルの映像はハートランド学園のことを詳しく調べれば見れてしまう。

 なのでハートランドたちがこのデュエルの映像をみつけるのにさほど時間はかからなかった。

 実力は申し分なく、しかも明確に意思を持つNo.を所持している。

 ハートランドたちはすぐに動き出し、代表戦と記念デュエルの映像を理由に学園の代表に決めて大会に出場させようとした。

 学園側は刹の実力を知っていたので二つ返事で了承し正式に代表となってしまったのだ。

 

「さて、そろそろ始めましょうか。ワールドデュエルカーニバルを……」

 

 そういってハートランドはにやりと笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 WDCの大会当日、私は一人で大会の説明が行われる場所へと向かった。

 結とは大会の間は別々で行動しようと話し合いで決まり、単独行動をしている。

 次に会うときは決勝トーナメントでと楽しそうに言っていた。

 正直言うとこれはありがたかった。昨日の夜、ブラック・ミストと深夜までデュエルをしつつデッキを構築していたのでぎりぎりまで眠っていたかった。

 睡眠を必要としないブラック・ミストはけろっとしていたので少し憎たらしく思った私は悪くない。

 大会の参加者が集まる場所は、ハートランドシティの中心部にある建物が見える位置ならどこでも良いので私はWDCの参加者が集まりそうな広場のほうに来た。

 此処にくる途中、道路などがすごい賑わいだった。

 たくさんの人にオボットたちのパレードや飛行機による空中のパフォーマンス、飛行船によるWDCの宣伝などさすがは世界規模の大会だと思うほど。

 大会の説明時、Dゲイザーの着用必須と大会ホームページに書かれていたので現在はDゲイザーをつけている。

 そろそろ指定されていた時間となるので空中を見ているとハートランドシティの中心部の建物の付近で黄色のスーツを着た奇抜なファッションの男、Mr.ハートランドの姿が映し出された。

 

「ハートランドシティに集まりしデュエリストの同志たちよ。これよりデュエルカーニバルのルールを説明する」

 

 そういって空中にハートランドシティの地図と3DAYと書かれた画像が現れる。

 

「会場はハートランドシティ全体。期間は今日から3日間を予選大会とする。参加者は挑まれたデュエルは必ず受けなければならない。デュエルで掛けるのは諸君らの手元にあるハートピース。これを失ったものはその時点で失格となる」

 

 参加者が持っているであろうハートピースが映し出され、かけらが一つずつはめられていき元からあったものを除き4つはまるとそれはハートの形になる。

 

「決勝大会へ出場するためにはハートピースを5つ集め完成させるのが条件だ。では此処でデュエルカーニバルの開始を宣言する。君たちデュエリストの熱いソウルでハートランドを燃やし尽くせ! ハート、バーニング!!」

 

映像だがMr.ハートランドは爆発を起こしその場から消えてなくなった。

デュエルを申し込まれたら断れないのか……。

 

「ねぇ、WDCの参加者だよね? 私とデュエルをしよう?」

 

 そうと決まればさっさとハートピースを集めて家に帰って寝よう。

 

 

 

 あれから5人のデュエリストと戦い、現在埋め込まれているハートピースは3つである。

 残りの3つははめ込むことが出来ず、おそらくパーツが違うのだろう。

 

「さて、次は……」

 

 きょろきょろと周りを見渡してみると何人かの人が怯えたように体を震わせて走り去っていってしまった。

 デュエルを観戦していた人たちはまだ残っているが、おそらく大会の参加者ではないのだろう。

 

「あー……やりすぎちゃったかな」

 

『ほとんど1キルだったしな』

 

 私の言葉に反応してブラック・ミストは呆れたように呟く。5人とのデュエルはほとんど水精鱗による1キルが多かった。

 で、それを見ていた大会参加者は勝てる見込みがないデュエルをするほどおろかではないようで次の標的にされる前に逃げていったと。

 参加者はもうここにはいないようなので移動することにした。

 

「狩り場を変えなきゃ」

 

『……それ、冗談だよな?』

 

「え、冗談だよ」

 

 心外というようにいうとなぜかブラック・ミストは黙ったままだった。

 よし、あとでじっくりお話をしようか。

 一度人気のないところに行ってブラック・ミストとお話をしようと思ったとき、後ろからお姉さん! と幼い子供の声が聞こえた。

 振り返ってみるとそこには小学五年生ぐらいだろうか、金色の髪をショートツインに縛り青色のカチューシャをつけた女の子が満面の笑みを浮かべて立っていた。

 

「さっきのデュエル見てたんだけど、お姉さん強いね」

 

「え、あぁ……ありがとう」

 

 突然のことだったのでうろたえながらも礼を告げると女の子はスカートのポケットからハートピースを取り出しこちらに見せてきた。

 

「あのね、私もWDCの参加者なの! だからお姉さんと楽しいデュエルしたい!」

 

 まさか相手からデュエルの申し込みをされるとは思わなかった。

 さっきのデュエルをみても挑んでくるってことは腕に自信があるのか、それとも本当にただ私とデュエルをしたいのか……。

 

「挑まれたデュエルは必ず受けないといけないからね。いいよ」

 

「やったー!」

 

『おい』

 

 私の返事にうれしそうにしている女の子を温かい目で見守っていると急にブラック・ミストが話しかけてきた。

 

「(人と会話をしているときは話しかけないでって……)」

 

『あのデッキを使え』

 

「(え……)」

 

 あのデッキとは昨日夜なべしてまで作ったブラック・ミストが入ったデッキのことだろう。

 しかし、相手は普通のデュエリスト。

 あのNo.と名のついたモンスターでしか戦闘破壊されないというインチキ気味の効果があるので使いたくはない。

 

『そいつ、No.を持ってるぞ』

 

 ブラック・ミストの言葉に驚いて女の子をじっと見つめるが、女の子は私が見ているのに気づいて不思議そうに首をかしげているだけだった。

 

「(本当なの?)」

 

『こういうことでは俺が嘘つくと思うか?』

 

 その言葉を聞いて私はそれもそうかとうなずいた。

 No.のことに関してはブラック・ミストが嘘をつくメリットは何もないし。

 腰につけてあるデッキケースを開き、現在デュエルディスクにセットしてあるデッキをいれ、その隣にあるデッキケースから例のデッキを取り出してセットした。

 

「それじゃあ、はじめようか」

 

「うん!」

 

 お互いに距離を開けて向かい合うように立った。

 

「デュエルディスク、セット! Dゲイザー、セット!」

 

 女の子は声高らかにそう言う中、私は黙ってDゲイザーとデュエルディスクを装着する。

 

「お姉さん」

 

 呼びかけられたのでふと女の子に視線を向けてみると、女の子の体から若干黒いオーラがまとい無邪気に輝いていた目はにごり始め、笑みは狂気を含むそれへと変化していた。

 

「私と楽しいデュエルをしようね?」

 

 あ、これアカンわ。

 私の心境をよそにARビジョンリンク完了という音とともに0から9の数値が地面や空を覆うとすぐにもとの景色へと変わる。

 周りにいる人たちは観戦をするためにDゲイザーをつけていたりしていた。

 

「「デュエル!」」

 

「先攻はもらうね! ドロー! 私は手札からシャドウ・リチュアの効果を発動するよ。このモンスターを墓地に捨てて、デッキからリチュアと名のつく儀式魔法カードを手札に加える。手札に加えるのはリチュアの儀水鏡だよ!」

 

 リチュアデッキか……あれはよく回るんだよね。

 すこし長くなりそうだ。

 

「そしてリチュア・ビーストを召喚!」

 

 首からリチュアの儀水鏡をぶら下げ、緑色の体色にドラゴンを彷彿させる顔をした二足歩行のモンスターが現れる。

 

レベル4 リチュア・ビースト 攻撃力:1500

 

「リチュア・ビーストの効果を発動。このモンスターが召喚に成功した時、自分の墓地のレベル4以下のリチュアと名のつくモンスターを守備表示で特殊召喚する。シャドウ・リチュアを特殊召喚するよ!」

 

 リチュア・ビーストの隣に黒いローブに杖をもった魚人のモンスターが現れるがすぐに腕を交差してしゃがみ、守備の体勢に入る。

 

レベル4 シャドウ・リチュア 守備力:1000

 

「それじゃあ、いくよ。お姉さん!!」

 

 女の子がまとうオーラが増えると左手の甲に50という数値が現れる。

 

『くるぞ、あいつのNo.が……』

 

「(いきなりか)」

 

「レベル4のリチュア・ビーストとシャドウ・リチュアをオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築。エクシーズ召喚!」

 

 リチュア・ビーストとシャドウ・リチュアが青い玉に変わり、地面に現れた黒い穴に入っていくと光が爆発を起こす。

 

「闇の海より浮上して、魂を奪い砲撃せよ! No.50ブラック・コーン号!!」

 

ランク4 No.50ブラック・コーン号 攻撃力:2100 ORU:2

 

 女の子の頭上に1隻の海賊船が浮上し一つある帆に50という数値が刻まれていた。

 あれがあの子のNo.か……。

 

「うふふ、私はカードを2枚伏せてターンエンドだよ。」

 

「私のターン、ドロー。手札抹殺を発動。お互い手札をすべて捨て、捨てた枚数分デッキからカードをドローする」

 

「む、お姉さん手札がよくないの?」

 

 まぁ、そうでもあるんだよねー。

 女の子は首をかしげながら手札を捨ててデッキから3枚ドローする。私は5枚手札を捨て5枚ドローした。

 

「そして捨てられた暗黒界の策士グリンと暗黒界の刺客カーキの効果を発動。このカードがカードの効果によって手札から墓地に捨てられた場合、グリンはフィールド上の魔法、罠。カーキはフィールド上のモンスターを1体破壊する。右の伏せカードとブラック・コーン号を破壊」

 

「えー!?」

 

 地面から現れた穴は縁に紫色の魔方陣のようなものが描かれ、その黒い穴から灰色の体色に顔は目も鼻もなく口だけが存在し緑色のマントを羽織ったモンスター、グリンとこちらも灰色の体に上半身が異様に大きく首がないナイフを持ったモンスター、カーキが顔をのぞかせる。

 グリンは左手で右の伏せカードを指すと頭上から伏せカードに向かって雷が落ち、その間にカーキは持っているナイフでブラック・コーン号を切り伏せると穴に戻っていった。

 伏せカードは王宮のお触れ……や、やばかった。

 

「まだブラック・コーン号の効果使ってないのに!」

 

 女の子は頬を膨らませて怒っているが、知らんなそんなこと。

 

「見習い魔術師を召喚。召喚に成功したとき魔力カウンターに置くことが出来るカードに魔力カウンターを置けるんだけど、いないので効果は不発。手札からクロクロ-クロウの効果を発動。自分フィールド上に闇属性モンスターが存在している場合、このカードを特殊召喚できる」

 

 私の場に杖を持ち紫色の服を着た魔術師と半目で翼が小さいカラスが現れる。

 

レベル2 見習い魔術師 守備力:800

レベル2 クロクロ-クロウ 守備力:600

 

「レベル2の見習い魔術師とクロクロ-クロウをオーバーレイ」

 

 2体は紫色の玉となり地面に現れた黒い穴へと入っていく。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築。エクシーズ召喚。現れろ、ガチガチガンテツ」

 

 ブラック・ミストが使っていた筋肉隆々の男が現れ、すぐに腕を交差してしゃがみ守備の体勢になった。

 

「ガチガチガンテツの効果はこのカードが表側表示で存在する限り、自分フィールド上のモンスターの攻撃力、守備力をオーバーレイ・ユニットの数×200アップする」

 

ランク2 ガチガチガンテツ 守備力:1800→2200 ORU:2

 

「カードを3枚伏せ、ターンエンド」

 

「もう本気でいっちゃうんだから! ドロー! 手札からヴィジョン・リチュアの効果を発動。このモンスターを墓地に捨ててデッキからリチュアと名のつく儀式モンスターを手札に加える。私はイビリチュア・ジールギガスを手札に加えるよ! そしてサルベージを発動して墓地にいる攻撃力1500以下の水属性モンスターを手札に加える。回収するのはシャドウ・リチュアとヴィジョン・リチュア!」

 

 あー……入っちゃったなぁ。

 昨日あんまり寝てないから長くなると眠くなりそう。

 

「手札からリチュアの儀水鏡を発動! 自分の手札、フィールド上から儀式モンスターとおんなじレベルになるようにモンスターをリリースしなければいけない。私はシャドウ・リチュアをリリースしてイビリチュア・ジールギガスを儀式召喚!」

 

 さっきリチュアの儀水鏡を捨てたはずなのにドローしちゃったか……。

 

『リリースしたのが1体のみだと?』

 

「(シャドウ・リチュアは水属性の儀式モンスターを特殊召喚する場合、シャドウ・リチュア1枚で儀式召喚のためのリリースとして扱えるカード。ちなみにヴィジョン・リチュアも同様の効果があるよ)」

 

 ブラック・ミストから疑問の声が上がったので代わりに解説をする。

 女の子の場に大きな鏡が浮かび上がり、鏡の中に1体のモンスターが写し出されると地面から大量の水が噴出し、鏡は水の中に消える。

 水の噴出が収まるとそこには鏡の代わりに四つの腕を持ち背中には黒い翼が生え体には金色の装飾がつけられている大きなモンスターが現れると雄叫びをあげた。

 

レベル10 イビリチュア・ジールギガス 攻撃力:3200

 

「リチュア・アビスを召喚! そして効果を発動! 召喚に成功した時、デッキからこのモンスター以外の守備力1000以下のリチュアと名のついたモンスターを手札に加える。手札に加えるのはシャドウ・リチュア! シャドウ・リチュアの効果を発動してデッキからリチュアの儀水鏡を手札に加える。ヴィジョン・リチュアの効果を発動して2体目のイビリチュア・ジールギガスを手札に加えるよ」

 

「その効果にチェーンしてリバースカードオープン。永続罠、死霊の巣を発動し効果を使用する。墓地に存在するモンスターを任意の数だけ除外し、その数と同じレベルのモンスターを破壊する。私は2体のモンスターを除外しリチュア・アビスを破壊する」

 

 私が発動したカードから霊のようなものが2体現れるとリチュア・アビスに纏うとリチュア・アビスは苦しみだして破壊される。

 

「あ、破壊されちゃった。まぁ、良いけどね! 手札からもう一度リチュアの儀水鏡を発動してシャドウ・リチュアをリリース、イビリチュア・ジールギガスを儀式召喚!」

 

 2体目のジールギガスが現れたことにより周りから賞賛の声と私が負けるのではと賭け事をしているのが聞こえてくる。

 んー、これはけっこうまずいなぁ。

 

「うふふ、楽しいね。お姉さん!」

 

 満面の笑みを浮かべている女の子に私も笑みを浮かべる。

 

「そうだね」

 

 私が肯定すると女の子はなぜか驚いた顔をし、次の瞬間憎らしげに私を見た。

 ん? なんでそんな目で見られないといけないんだろう?

 

「ジールギガスの効果を発動! ライフを1000払いデッキからカードを1枚ドローする!」

 

LP4000→3000

 

「そしてドローしたカードを確認しそのカードがリチュアと名のついたモンスターならフィールド上のカードを1枚デッキに戻す! ドロー!アハハ、モンスターじゃなかったけど、死者蘇生を引いたよ!! そういうわけで死者蘇生を発動してブラック・コーン号を復活させる!!」

 

 死者蘇生が輝くと女の子の後ろの地面から大きな波が出てくるとブラック・コーン号はその大きな波に乗って現れ空中に浮上する。

 

ランク4 No.50 ブラック・コーン号 攻撃力:2100 ORU:0

 

「リバースカードオープン! 速攻魔法、インスタント・オーバーレイを発動! このカードはモンスターエクシーズを1体選択し、そのモンスターエクシーズのオーバーレイ・ユニットとなる! もちろん選択するのはブラック・コーン号だよ」

 

 カードは白い光の玉となってブラック・コーン号の周りを徘徊しオーバーレイ・ユニットとなった。

 さて、どんな効果を持っているのやら。

 

「ブラック・コーン号の効果を発動! 相手モンスター1体を墓地に送り、相手プレイヤーにそのモンスターの攻撃力分ダメージを与える!!」

 

「墓地に送る!?」

 

 ガチガチガンテツは破壊に対する耐性だから墓地に送られるという効果ではガチガチガンテツのモンスター効果を使用できない。

 しかもそれに加えてバーンだと!?

 

「ほ、ほしい……」

 

 レベル4×2なんて闇属性レベル2×3と比べれば非常に楽、デッキ構築も楽。

 攻撃力は2100と少し低めだが、攻撃力分のダメージを与えられるしNo.だから戦闘破壊耐性もある。ブラック・ミストよりも……

 

『おい、いま失礼なこと考えなかったか?』

 

「(ナンノコトカナー)」

 

『こ、こいつ!』

 

 ブラック・ミストがなにか騒いでいるが聞こえないフリをしてブラック・コーン号を見る。

 ガチガチガンテツはすでに魂となってブラック・コーン号に吸い込まれていき、ブラック・コーン号に備え付けられている一つの砲台にガチガチガンテツの魂がセットされる。

 

「全砲門、ファイヤー!!」

 

 全砲門といっても砲台は一つしかないんだけど……。

 のんきにそんなことを考えていると砲台からガチガチガンテツの魂という名の砲弾を射出し私へと攻撃した。

 

「くっ……!」

 

LP:4000→3100

 

「ふふふ……。さてとじゃあ、ダメ押しにもう1体のジールギガスの効果を発動するよ! ドロー!」

 

LP:3000→2000

 

 ドローをしてカードを見た瞬間女の子は不機嫌そうな表情を浮かべてドローしたカードをこちらに見せる。

 

「むぅー。引いたのは罠カード、儀水鏡の瞑想術だよ。ま、でもこのターンでお姉さんは終わりだよね!! 楽しいデュエルだったよ! ジールギガスでダイレクトアタック!」

 

 私は公開されたカードをみて深く息を吐き、デュエルディスクの魔法罠を発動するためのボタンを押した。

 

「リバースカード、オープン。聖なるバリア-ミラーフォース-を発動」

 

「……え?」

 

 ジールギガスが私に向かってこぶしを振り下ろそうとした瞬間、透明のバリアが現れて攻撃をはじき返す、さらにバリアから光があふれ出しビームとなって他のジールギガスとブラック・コーン号を襲い女の子の場にいたモンスターは破壊された。

 

「え、あ……え?」

 

 女の子はいまだに現状を受け止められないのか困惑した表情で自分のモンスターゾーンを見渡している。

 

「ターンエンド?」

 

「うぇ!? た、ターンエンド。……て、あ!?」

 

「宣言したからもうだめだよー。エンドフェイズ時、除外された1体の異次元の偵察機の効果を発動。除外されたターンのエンドフェイズ時に攻撃表示で特殊召喚する」

 

『お前、本当鬼畜だよな……』

 

レベル2 異次元の偵察機 攻撃力:800

 

 ブラック・ミストの呆れた声が聞こえた気がするが気にしない。

 人はターンエンド宣言する前に相手は何も出来ないだろうと自分で判断して自分のターンにする人もいるし、その人たちに比べたら良心的だよね。

 私のフィールドに球体の機械が1体現れ空中に浮遊する。

 

「私のターン、ドロー。リバースカードオープン、闇霊術-「欲」を発動。自分フィールド上にいる闇属性モンスターをリリースしデッキからカードを2枚ドローする。だけど相手は魔法カードを見せることでこの効果を無効にすることが出来る」

 

「……魔法カードもってない」

 

 あれ? ちょっと涙目になってない?

 でもここで本気でやらないと私が負けそうだし、ごめんね?

 

「闇の誘惑を発動。デッキからカードを2枚ドローし、その後手札にある闇属性モンスター1体を除外する。除外するのはE-HERO(イービルヒーロー)ヘル・ブラット。そして墓地に闇属性モンスターが5体以上存在し自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、手札からダーク・クリエイターを特殊召喚する」

 

レベル8 ダーク・クリエイター 攻撃力:2300

 

 背中には黒い輪のようなものからオレンジ色の羽が生え黒い人型のようなモンスターが現れる。

 私の墓地には暗黒界のモンスターグリンとカーキ、異次元の偵察機、クロクロ-クロウ、見習い魔術師の合計5体いるので特殊召喚が可能だ。

 

「ダーク・クリエイターの効果を発動。墓地の闇属性モンスターを1体除外し墓地にいる闇属性モンスターを特殊召喚する。私は見習い魔術師を除外し、クロクロ-クロウを特殊召喚する」

 

レベル2 クロクロ-クロウ 守備力:600

 

「墓地に闇属性モンスターが3体のみの場合、ダーク・アームド・ドラゴンを手札から特殊召喚する」

 

 体にはカッターのようなものとトゲが生え顔には歪なナイフのような形をした牙が生えていた。尻尾の先端にもトゲが生えており体は黒で染められたそのドラゴンは、闇属性モンスターの中でもっとも凶悪なモンスター。

 そのモンスター、ダーク・アームド・ドラゴンがフィールドに現れると咆哮を上げた。

 

レベル7 ダーク・アームド・ドラゴン 攻撃力:2800

 

「あ、あぁ……」

 

 女の子は私のフィールドにいるモンスターを見て怯えたように後ろに下がった。

 

「こ、こんなの楽しく……ない。私も1ターンで相手に勝って楽しいデュエルがしたいの……だってみんながそうしてくるから。わたしも、わたしも……!」

 

 なんか精神的に不安定になっているようだけど、大丈夫かな?

 たしかNo.を持っていると欲が増幅されるとかブラック・ミストが言ってたけど……。

 

「とりあえず、終わりにしようか。ダーク・アームド・ドラゴンでダイレクトアタック」

 

 ダーク・アームド・ドラゴンは腕を構えると黒い光が腕を包み、女の子に向かって腕を振るうと黒い光はカッターとなって女の子に攻撃をした。

 

「き、きゃあああ!!」

 

LP:2000→0

 

 女の子は攻撃の衝撃で吹き飛ばされて地面へと倒れこむ。

 危なかった……ジールギガスの効果でリチュア引かれてたら負けてた。

 

『おい、あの女の近くに行け。No.を回収する』

 

 本当は回収させないほうが良いんだろうけど、この女の子の様子を見る限り回収はしたほうが良いみたいなんだよね。

 私は倒れている女の子に駆け寄り、様子を見てみるためにしゃがむと私が持つエクストラデッキから薄い黒い靄が女の子の体に入り込み、数秒後カードの形となって私のエクストラデッキに戻ってくる。

 

「ねぇ、大丈夫?」

 

「う、うぅん……」

 

 体を揺らして声を掛けると女の子は呻き声を漏らし、ゆっくりまぶたを開けた。

 

「あれ?……わたし」

 

 きょろきょろと周りを見渡し、近くにいる私に気づくと慌てた様子でうつむいた。

 

「あ、あの……えっと」

 

 こちらに視線を向けないで目だけがせわしなく動いている。

 なんだかさっきの印象とだいぶ違うような……。

 

「あのさ、名前聞いていいかな?」

 

「え! あ……わ、私は柏木もも、です」

 

 小さな声だがはっきりと名前が聞こえたので私は笑みを浮かべて自分の名前を言う。

 

「私は黒峰刹。ももちゃん、最近デュエルは楽しいかな?」

 

 おそらくこの子の欲というか心の闇は自分が弱くていつもデュエルをすると相手に1ターンキルをされるということだと思う。

 さっきいってたからなんとなくわかったんだけどね。

 私が聞くとももちゃんは悲しそうに顔を歪めて手を強く握り締めた。

 

「あんまり、たのしく、ないです」

 

「そっか。じゃあ、強くなりたい?」

 

 そういうとももちゃんは勢いよく顔を上げ私の顔をじっと見てから何度もうなずいた。

 

「じゃあ、ちょっとデッキ見せてもらって良いかな? ここだとあれだし、ベンチに座ってお話をしようか」

 

「は、はい!」

 

 ももちゃんの手を取って立ち上がる私たちは広場に備え付けられているベンチへと向かった。

 さっきのデュエルで結構強いと思ったんだけど、あれはNo.効果なのかな?

 とりあえず、もうNo.を持ってる人と戦いたくないなー。

 




あ、あれ?ブラック・ミストさんが息してない…。

えっとデッキは闇属性レベル2軸のデッキとなっています。
暗黒界のモンスターがいるので手札抹殺とかでモンスターを墓地に肥やして死霊の巣でエクシーズ召喚する前の低レベルのモンスターを除去。
エクシーズ召喚されたり高レベルのモンスターが出たらカーキか運が良ければダムドさんで除去る。
1ターンでブラック・ミストを出すためにはフィールド上に何もない状態でヘルブラットssクロクロ―クロウss他の闇属性レベル2nsでブラック・ミストさんが召喚できます。
あとは死霊の巣で異次元の偵察機を3体除外すればいけます。
沢山除外する予定なので終焉の精霊も入っている…そんな感じです。

今回出てきたNo.は漫画版に出てきたNo.らしくアニメでは出てこないので登場させました。
もちろん効果は漫画版です。
残念ながら作者は漫画版は読んでいないので漫画版No.の使用キャラはオリキャラとなります。
これから主人公の前に出てきて回収するNo.は漫画版のNo.になりますのでご了承を。


ん?ミラフォは添えるだけ?この小説では違うようです。

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