遊戯王の世界に転生したがろくな事が起きない   作:アオっぽい

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第三十七話 親子デュエルはろくな事がおきない

 刹LP:4000

 コナミLP:4000

 

 先攻と後攻はデュエルディスクの機能でランダムに設定し、しばらくすると私のデュエルディスクに先攻だと告げる文字が現れた。

 

「先攻は私から、ドロー。水精鱗-アビスパイクを召喚。効果を発動。手札の水属性モンスターを墓地へ捨てデッキからレベル3以下の水属性モンスターを手札に加える。私は海皇の狙撃兵を手札に。そして墓地へ送られた海皇の竜騎隊の効果を発動。デッキから海皇の重装兵を手札に加える」

 

 フィールドにトビウオに似た兜を頭に乗せ、手には鉄製のグローブをつけた下半身が魚の体になっている金髪の男性が現れる。

 

 レベル4 水精鱗-アズスパイク 攻撃力:1600

 

「カードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

 ターンが終了し、私の隣にいるブラック・ミストがいつもと違う雰囲気だと感じ取ったのか小さな声で話しかけていた。

 

「なんか、ピリピリしてるな」

 

「……お父さんに一度も勝ったことがないからね」

 

 私の言葉にブラック・ミストは目を見開いた。

 まぁ、理由はほかにもあるけどねと呟き、睨み付けるようにお父さんを見た。

 

「ドロー。手札からワン・フォー・ワンを発動。手札からモンスター1体を墓地へ送り手札、デッキからレベル1モンスターを特殊召喚する。デッキからハウスダストンを攻撃表示で特殊召喚。さらにキングゴブリンを攻撃表示で召喚」

 

 お父さんの場に1頭身でそれぞれ違う形の角と尻尾が生えた白、赤、黄、青、緑の5体のモンスターが一塊となって現れる。

 その横に緑色の体色に赤色のマント、頭に王冠を被ったゴブリンが豪華な玉座に座った状態で現れた。

 

「キングゴブリンの攻撃力・守備力はフィールド上のこのカード以外の悪魔族モンスターの数×1000ポイントになる」

 

レベル1 ハウスダストン 攻撃力:0

レベル1 キングゴブリン 攻撃力:0→1000

 

「攻撃力0を攻撃表示だと?」

 

「バトル、ハウスダストンでアビスパイクを攻撃」

 

 ブラック・ミストが疑問の声を上げている間にもお父さんは指示を出して攻撃をする。

 

「攻撃力0で攻撃!?」

 

「あいつ、一体何が狙いなんだ?」

 

 観戦している遊馬君たちが驚きの声を上げていた。

 ハウスダストンはアビスパイクに突撃していくが逆にアビスパイクに殴られて破壊された。

 

 コナミLP:4000→2400

 

「ハウスダストンのモンスター効果を発動。表側表示で存在するこのカードが相手によって破壊され墓地へ送られたとき、自分の手札、デッキからダストンと名の付いたモンスターを任意の数だけ選び、お互いのフィールド上に特殊召喚する。デッキから自分フィールドにホワイト・ダストン2体とハウスダストン2体を特殊召喚」

 

 お父さんの場に白く四角い一頭身のモンスター2体と先ほど破壊された奴と同じモンスターが2体現れる。

 

レベル1 ホワイト・ダストン 守備力:1000(2体)

レベル1 ハウスダストン 守備力:1000(2体)

 

「相手フィールドにデッキからブルー・ダストン、イエロー・ダストン、グリーン・ダストン、レッド・ダストンを攻撃表示で特殊召喚」

 

 あぁ、まずいな……。

 私のフィールドに現れた青、黄、緑、赤の一頭身のモンスターを見て表情を険しくさせた。

 

 レベル1 ブルー・ダストン 攻撃力:0

 レベル1 イエロー・ダストン 攻撃力:0

 レベル1 グリーン・ダストン 攻撃力:0

 レベル1 レッド・ダストン 攻撃力:0

 

『これは、まずいぞ!』

 

 お父さんの狙っていることに気づいたアストラルは慌てた様子で声を上げた。

 

「え、何でだよ?アストラル」

 

『あのキングゴブリンはフィールド上にいる悪魔族の数だけ攻撃力を1000上げるモンスターだ。あのダストンというモンスターはすべて悪魔族、よってキングゴブリンの攻撃力は……』

 

 アストラルの解説を聞きながら赤いオーラをまとったキングゴブリンの体が逞しくなり大きくなっていくのを見届ける。

 

 レベル1 キングゴブリン 攻撃力:1000→8000

 

「攻撃力8000!?」

 

 普通なら見ない攻撃力に遊馬君たちは声を上げる。

 私はただキングゴブリンを見据え、隣にいるブラック・ミストも大丈夫だと分かっているのか黙ってキングゴブリンを見ていた。

 

「バトル、キングゴブリンでレッド・ダストンを攻撃」

 

 キングゴブリンがレッド・ダストンに走ってきて筋肉質となったその腕を振り上げた。

 

「リバースカード、オープン。ガード・ブロックを発動。戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージを0にし、デッキからカードを1枚ドローする」

 

 レッド・ダストンはキングゴブリンによって破壊され私はデッキからカードを1枚ドローする。

 すると破壊された筈のレッド・ダストンが私の目の前に現れた。

 

「レッド・ダストンの効果発動。このカードが破壊された時、このカードのコントローラーは500ポイントダメージを受ける」

 

 短い両手と両足を振り、いかにも怒っていますと体で表現しようとしているみたいだがどこか可愛く見えてしまう。

 そして短い腕で私の頭に軽くパンチした後、満足げにお父さんの墓地へと送られていった。

 

 刹LP:4000→3500

 

 なんか、殴られた感触があったような……?

 レッド・ダストンに触られた箇所を摩りながら首をかしげる。

 

「メイン2、レベル1のホワイト・ダストン2体でオーバーレイ」

 

 お父さんの目の前の地面に穴が開き2体のホワイト・ダストンが黄色の光の玉となって穴の中に入っていく。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築。シャイニート・マジシャンをエクシーズ召喚」

 

 青色の長髪に露出が高めな服を着た少女が寝転がった状態で現れる。

 そして悪魔族モンスターが少なくなったことでキングゴブリンの体が一回り小さくなった。

 

 ランク1 シャイニート・マジシャン 守備力:2100

 レベル1 キングゴブリン 攻撃力:8000→6000

 

「カードを1枚伏せてターンエンド」

 

「私のターン、ドロー」

 

 私は自分のフィールドにいるダストンに目を向けた。

 ダストンはリリースもできずエクシーズや融合の素材にもできないモンスター。

 さらにダストンは破壊されることでカードのコントローラーにデメリットを与える。

 だからモンスターを墓地に送るか、デメリットを受ける覚悟で破壊、相手による攻撃で破壊されるぐらいしか残されていない。

 私のフィールドにはダストンが3体残っているのでモンスターゾーンの空きが2つしかない。そのうちの一つはアビスパイクがいる。

 実質2つのモンスターゾーンでやりくりしなければならないということだ。

 

「手札の水属性モンスターを2体墓地へ捨て水精鱗-メガロアビスを特殊召喚」

 

 私のフィールドに金色の鎧を着て幾つもの突起が付いた大きな剣を持った二足歩行の赤い鮫が現れる。

 

 レベル7 水精鱗-メガロアビス 攻撃力:2400

 

「墓地へ捨てた海皇の重装兵と海皇の狙撃兵の効果とメガロアビスの効果を発動。重装兵の効果で相手フィールド上に表側表示で存在するカード1枚、狙撃兵で裏側表示のカードを選択して破壊する。私はキングゴブリンと伏せカードを選択。メガロアビスの効果でデッキからアビスフィアーを手札に加える」

 

「停戦協定を発動。フィールド上の効果モンスターの数×500ポイントのダメージを相手に与える」

 

「なっ!?」

 

 私のフィールドにはアビスパイク2体にダストン達が3体。お父さんのフィールドにはキングゴブリン、シャイニートマジシャン、ハウスダストンが2体。

 合計9体でダメージは4500。

 まずい、これを受けたら負ける。

 

「リバースカード、オープン。ホーリーライフバリアーを発動。手札を1枚捨てこのカードを発動したターン、相手から受けるすべてのダメージを0にする」

 

 効果処理が行われ、停戦協定のカードから光の渦がこちらに向かってくるが、私の周りに青色の薄いバリアが張られその攻撃から守られた。

 その後、墓地につながる黒い穴が開くとそこから海皇の重装兵が現れ、キングゴブリンに突撃する。キングゴブリンは爆発を起こして破壊された。

 私は安堵の息を吐く。

 本当、お父さんとのデュエルは気が抜けない。

 

「さっきのキングゴブリンの攻撃力といい、今のバーンといい。刹のお父様は容赦がないようですわね」

 

「たく、肝が冷えるぜ」

 

 Dゲイザーから聞こえてきた声に苦笑いし私は自分の手札を見て、お父さんのフィールドにいるモンスターを見る。

 

「メガロアビスの効果を発動。自分フィールド上に表側攻撃表示で存在する水属性モンスターをリリースすることでメガロアビスは2回攻撃できる。私はアビスパイクをリリース」

 

 アビスパイクが光の粒子となって消えるとメガロアビスが持っている大きな剣がかすかに光った。

 

「バトル、メガロアビスでシャイニート・マジシャンを攻撃」

 

「シャイニート・マジシャンは1ターンに1度だけ戦闘では破壊されない」

 

「メガロアビスでもう一度シャイニート・マジシャンを攻撃」

 

 メガロアビスはその大きな剣を振り上げてシャイニート・マジシャンを攻撃するが薄いバリアに守られ防がれる。

 しかしそのバリアは一度の攻撃で破壊され、再びメガロアビスが剣を振るうとシャイニート・マジシャンは破壊された。

 メガロアビスが私のフィールドに戻ってきたのを見て考える。

 モンスターゾーンの空きは1つ。攻撃表示で出すとまたハウスダストンで自爆特攻される可能性がある。

 守備表示で出すのも良いけど、いざというときにモンスターの処理もできず何もできない状況になるかもしれない。

 ここはモンスターを召喚しないでおこう。

 メガロアビスの攻撃力は2400だからお父さんもうかつに攻撃できない……はず。

 ちらりとお父さんを見てみる。

 お父さんは帽子を深く被っているため目は見えないが口元は楽しそうに弧を描いていた。

 雰囲気も分かりやすく、わくわくと次は何をするのかと私をじっと見ていた。

 

「……ダストン達を守備表示に変更。カードを1枚伏せてターンエンド」

 

 その視線から逃げるように顔を下に向ける。

 

 レベル1 ブルー・ダストン 守備力:1000

 レベル1 イエロー・ダストン 守備力:1000

 レベル1 グリーン・ダストン 守備力:1000

 

「ドロー」

 

「ねぇ、お父さん」

 

 ドローした後に私はお父さんに話しかける。

 お父さんは不思議そうに首をかしげ、私が続きを話し始めるのを待った。

 言うか言わないか迷い、何回か口を開いたり閉じたりする。

 

「私は、捨てられたわけじゃ……ないんだよね?」

 

 言った瞬間に私は後悔する。

 でも、精霊世界に行っていたとしても一度もとの世界に戻って連絡の一つでも寄越せたのではないか?とかなんでカードを探しに世界中を回ることを言ってくれなかったのか?とかそんなことを思い浮かんでしまう。

 そして最後に思うのは私を捨てたからではないか?と。

 

「その 考えは まちがっている!」

 

 お父さんの言葉に恐る恐る顔を上げた。

 お父さんは真剣な表情でこちらを見ている。

 精霊世界にいたことで連絡が取れなかったこと、何も言わなかったのははやく終わらせるつもりだったこと、そして自分の娘を捨てるわけないと私に伝えた。

 

「……死んだんじゃないかって、思ってた」

 

 視線を下に向けぎゅっと拳を握り締めて搾り出すように声を出した。

 そのとき、私の目の前にぬっと青、黄、緑のダストン達が心配そうに覗き込んできた。

 驚いて固まっていると笑わせようとしているのかグリーンとイエローがブルーの顔を弄くりまわし変な顔をさせている。

 メガロアビスのほうに視線を向けてみると心配そうに此方を見た後、お父さんのほうに顔を向けていた。

 お父さんは私を見てわたわたと焦っている。

 

「ごめん」

 

 心配掛けさせて、不安にさせてごめんとそう言ってお父さんは深く、頭を下げた。

 

「帰ってきたら、色々とねだるつもりだから」

 

 覚悟してねと冗談半分で言うとお父さんは口元を引きつらせて笑っていた。

 さて、ブラック・ミスト用のおやつの在庫が少なくなってきたところだからそれをねだろうかな。

 

「それじゃ、続けよう。……て、え?このターンで終わらせる?」

 

 あ、まずいと思ったときにはお父さんは動き出していた。

 

「自分の墓地にいるモンスターすべてをデッキに戻し究極封印神エクゾディオスを特殊召喚」

 

 お父さんの場に封印されしエクゾディアに似た筋肉隆々の男性型モンスターが現れる。

 

レベル10 究極封印神エクゾディオス 攻撃力:?→0

 

「このカードの攻撃力は自分の墓地にいる通常モンスターの数×1000ポイントアップする。手札から拡散する波動を発動。ライフを1000払い、自分フィールド上のレベル7以上の魔法使い族モンスター1体を選択。選択したモンスターは相手モンスター全てに1回ずつ攻撃しなければならない」

 

 コナミLP:2400→1400

 

 何を狙っているのかすぐに分かってしまい内心あせる。

 いや、でも私のフィールドにいるモンスターは4体だし

 

「手札からサイレント・ウォビーの効果を発動。相手フィールド上に特殊召喚する」

 

 終わった。

 心の中で呟き、私の場には黒色と暗い紫色の体色で機械のような体をした鮫が現れた。

 

 レベル4 サイレント・ウォビー 攻撃力:1000

 

「この特殊召喚に成功したとき、このカードのコントローラーはデッキからカードを1枚ドローし、このカードのコントローラーから見て相手プレイヤーは2000ライフを回復する」

 

 私はデッキからカードを1枚引き、効果によってお父さんのライフが回復した。

 

 コナミLP:1400→3400

 

「バトル。エクゾディオスでイエロー・ダストンを攻撃。エクゾディオスの効果を発動。攻撃宣言時、手札またはデッキからモンスター1体を墓地へ送る。デッキから封印されし者の右腕を墓地へ送る」

 

 レベル10 究極封印神エクゾディオス 攻撃力:0→1000

 

 通常モンスターが墓地へ送られたためエクゾディオスの攻撃力は1000ポイント上がった。

 そしてエクゾディオスの効果はもう一つあり、このカードの効果によって封印されしと名の付いたカードが自分の墓地に合計5種類そろったとき、自分はデュエルに勝利するという特殊勝利を狙えるもの。

 私の場にはモンスターが5体。

 エクゾディオスは拡散する波動で私の場にいるモンスターすべてに攻撃ができる。

 つまり、このターンで封印されしと名の付いたモンスター5種類が墓地へ送られるのだ。

 私は攻撃するたびにオレンジ色のオーラをまとい体が大きくなっていくエクゾディオスを見て、深く息を吐いた。

 

「やっぱり、まだ越えられないか……」

 

 私のデュエルには足りないものがあるといわれた。

 おそらくだけど、私が心の底からデュエルを楽しむことができるようになったときお父さんと同じぐらいになれる、そんな気がした。

 今回のデュエルは自爆特攻とライフコストを払っただけで私はダメージを与えていない。

 なんか、悔しいなぁ……。

 

「最後、エクゾディオスの攻撃宣言時にデッキから封印されしエクゾディアを墓地に送る。墓地に5種類の封印されしと名の付いたモンスターが揃った」

 

 お父さんがそういうとデュエルの終了を告げる合図が鳴り響き、ARビジョンが解除され、モンスターたちがいなくなった。

 

「あー……負けた」

 

 久しぶりの敗北にため息を吐く。

 お父さんは此方に歩み寄り私の頭を撫でた。

 幼いころにあった記憶と同じぬくもりに私は泣きそうになってしまった。

 

「刹!」

 

 遊馬君の声が聞こえてはっと我に返る。

 勢いよく遊馬君たちがいる方向に顔を向けると一部が温かい目で私たちを見ているのが分かった。

 あああぁ!私ってば遊馬君たちがいる前であんな、あんなことを!

 途中で静かだったのは空気を読んだからか!?

 恥ずかしさで蹲りたい衝動に掛けられるが我慢したが。

 

「よかったな、刹」

 

「やめろ、やめてくれ……」

 

 近くにいるブラック・ミストの言葉に両手で顔を覆った。

 しばらくして落ち着いた私は遊馬君たちも交えてお父さんと話をした。

 

「それで、父ちゃんが言ってた3枚のカードはどうなるんだ?」

 

 遊馬君が疑問の声を上げるとお父さんは懐からカードを3枚出して私に差し出した。

 

「これ……って」

 

 そのカードを見て私は動揺した。

 3枚のカードはオシリスの天空竜、オベリスクの巨神兵、ラーの翼神竜、神のカードだった。

 なんでこのカードが?

 

「なんだそのカード……。すごい力を感じるぞ」

 

「確かにこのカードがバリアンの手に渡ったら一大事ですわね」

 

 ブラック・ミストと璃緒ちゃんは神のカードの力が分かったのか眉間に皺を寄せていた。

 

「でも、お父さんが持ってたほうが安心じゃないの?」

 

 そういうとお父さんは首を振り、まだ精霊世界でやることがあるのだと言った。

 

「わかった。このカードは誰が持つ?」

 

 遊馬君たちに話を振ってみると満場一致で私が三幻神を預かることになった。

 どうしてこうなった。

 

「それじゃあ、次は父ちゃんが言ってたNo.を探しに行こうぜ!」

 

 遊馬君の宣言に私たちは頷いて歩き出そうとしたとき、お父さんに止められ私にカードが入るくらいの封筒を渡された。

 

「絶対に負けられないデュエルのときに使いなさい?」

 

 お父さんの言うことに私は首をかしげながら封筒を受け取る。厚みはないのでおそらく2、3枚入っているのだろう。

 すると今度は遊馬君たちに話があるから先に行ってなさいといわれた。

 ……まぁ、お父さんが言うから何か大切な話なんだろうけど。

 なんだかハブられたような気がしながら私はお父さんの言われたとおり先に飛行船に向かった。

 

 

 

 ブラック・ミストは刹がここから遠ざかっていくのを黙って見届け、コナミに視線を向けた。

 

「それで、俺達に何のようだ?」

 

 凌牙は睨み付けるようにコナミを見やり、問いかける。

 それにコナミは苦笑いをしながら言った。刹のことで大切な話があると。

 

「刹さんのこと、ですか?」

 

 コナミは真剣な表情で頷き話を始めた。

 刹は闇にも光にも染まりやすい存在なのだと。

 

「……最悪の場合、刹がこいつらの敵になる可能性があるということか?」

 

 コナミの話にブラック・ミストはサルガッソでの戦いを思い出していた。

 ベクターとアーカイドの策によって結を傷つけたあのとき、刹の中から闇が溢れた。

 尋常ではない闇の力、表情はなくなりいつもよりさらに淡々とデュエルを続けようとしていたあの姿。

 とっさに頬を叩いて正気に戻すことができたが、もし戻らなかったらと思うとぞっとした。

 

「刹が俺達の敵になるなんてあるわけないだろ!?」

 

「えぇ、そうね。刹は仲間思いのやさしい人ですもの」

 

 ブラック・ミストの発言に遊馬はブラック・ミストに食って掛かり、璃緒は遊馬の言葉に同意する。

 凌牙や小鳥も同じ思いなのか頷いていた。

 しかしコナミはブラック・ミストの言葉にそうだと頷いた。

 一緒にいる人物によって変わるのだと悲しげに告げるとブラック・ミストを見る。

 

『ブラック・ミストによって変わるというのか?』

 

 アストラルの言葉にコナミはまた頷く。本来ならアストラルが見えないはずなのだが、遊馬たちはそのことをすっかり忘れて話を続けた。

 

「なら、なおさら大丈夫だろ!」

 

 最初の頃はアストラルをのっとろうとしたりしていたが、刹と一緒にいたことでブラック・ミストは変わった。

 だから大丈夫だとそう遊馬は思った。

 

「……だと、いいがな」

 

 ブラック・ミストは遊馬たちに気づかれないように呟いた。

 ブラック・ミストの根本にあるものは怒りや憎しみなど負の感情だ。

 それに刹が感化されていたとしたら、あの闇の力にも納得がいってしまった。

 険しい表情を浮かべているブラック・ミストをコナミがじっと見つめて言った。

 刹をよろしく頼む、と。

 




TFSP遊馬のハート3イベントにて

「No.96!?なぜNo.96が此処に……?逃げたのか?自力で脱出を!?」

本当にこんな感じに思いました。
いや、まさか出てくるとは思わなかったので……。そしてデュエルが終わったらまた消滅するブラック・ミストぇ。
でも、まぁこれであれが心置きなくできる。

あと、活動報告にてデッキの提案をしてくださった方々、本当にありがとうございました!

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