遊戯王の世界に転生したがろくな事が起きない   作:アオっぽい

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第三十五話 騙されるとろくな事がおきない

刹LP:8000

アーカイドLP:8000

 

「「デュエル」」

 

 私とアーカイドがデュエルの宣言をし、私は手札を見て固まった。

 昨日デッキにパーミッションデッキをデュエルディスクに差し込んだはずなのに、なんでブラック・ミスト専用のデッキに変わってるの?

 

「なんで……?」

 

「刹? どうした?」

 

 私の様子が可笑しいことに気づいたブラック・ミストは心配そうに問いかけてきた。

 

「……いや、問題ないから。大丈夫」

 

 そう、大丈夫。

 ただあのデッキだと有利だということだけだし、このデッキだってアーカイドと戦える。

 

「フフフ、刹っちゃん。先攻は譲るよ」

 

 アーカイドは笑みをたたえながら指を鳴らすと3:00と書かれた画面が現われる。

 それはアーカイドと私のそばに1つずつ設置され、私側にある数値が2:59とカウントダウンを刻み始めていた。

 

「私のターン、ドロー。召喚僧サモンプリーストを召喚。効果を発動。このカードは召喚、反転召喚に成功した時、守備表示になる」

 

 私の場に紫色の長いローブを着て、胡坐を組んでいる老人が現われる。

 

 レベル4 召喚僧サモンプリースト 守備力:1600

 

「さらに効果を発動。1ターンに1度、手札から魔法カードを1枚捨てることで、デッキからレベル4モンスターを特殊召喚する。私は終末の騎士を特殊召喚」

 

 サモンプリーストの隣に赤いボロボロのマフラーににび色の鎧、手には剣を持った騎士が現われた。

 

 レベル4 終末の騎士 攻撃力:1400

 

「終末の騎士の効果を発動。召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、デッキから闇属性モンスターを1体墓地へ送ることが出来る。私はレベル4の終末の騎士とサモンプリーストでオーバーレイ」

 

 2体のモンスターは紫色の光となって地面に現われた渦の中に入っていく。

 いつもの調子でエクシーズ召喚するモンスターカードをエクストラデッキから出そうとした。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構ち」

 

 エクストラデッキに手を入れてモンスターを探しているときだった。

 全身から血の気が引いていく感覚に陥り、私は途中で止まってしまった。

 

「おい、刹。さっきからどうした?」

 

「……No.が、ない」

 

 昨日まであった筈のものがなくなり私は混乱したままなんとかブラック・ミストに伝えた。

 

「なんだと!?」

 

 ブラック・ミストはエクストラデッキや他のデッキケースに触手を伸ばして探るが見つからなかったのか苦々しい表情を浮かべている。

 

「ねぇー? 制限時間ありだって忘れてるの? 早くしたほうが良いんじゃない?」

 

 アーカイドの言葉に我に返り、私はもとから召喚しようとしたカードをデュエルディスクに置いた。

 

「エクシーズ召喚。現われろ、交響魔人マエストローク」

 

 ランク4 交響魔人マエストローク 守備力:2300 ORU:2

 

 エクシーズモンスターが現われた瞬間、アーカイドは笑みを浮かべたような気がした。

 

「じゃあ! サルガッソの効果を受けてもらうよ!!」

 

「なっ!?」

 

 アーカイドがそういった瞬間、上空にある黒い渦を巻いている雲の中心から雷が落ちてくる。

 

「ああぁ!」

 

「刹!?」

 

 雷は私に直撃しその衝撃で吹き飛ばされた。

 

刹LP:8000→7500

 

 Dゲイザーの通信機能で他にデュエルをしている人たちの声が聞こえてくる。

 なんでもこのサルガッソにはあらかじめフィールド魔法が発動されており、エクシーズモンスターを特殊召喚するたびに500ポイント、そしてフィールド上にいるエクシーズモンスターをコントロールしているプレイヤーにターンの終わりにも500ポイントのダメージを与えるという効果だった。

 遊馬君たちもエクシーズ召喚をしたみたいでライフが500減っていた。

 

「自分達が有利になるフィールド魔法を張ってたってわけかよ」

 

 ブラック・ミストは忌々しそうに周りを見渡していた。

 まずい、時間はどうなんだろう。

 私は立ち上がり、ちらりと制限時間を見てみると既に1分をきっていた。

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

「はーい、おつかれー。じゃあ、効果ダメージを受けてね!」

 

 上空で再び雷が鳴ると同時に私に向かって落ちてくる。

 

「ぐ、うっ……」

 

刹LP:7500→7000

 

「僕のターン、ドロー」

 

「刹、いつNo.がなくなったか分かるか?」

 

 アーカイドのターンに回った直後、ブラック・ミストが問いかけてきたので私は首を振る。

 

「昨日の夜はあった……その後はデッキとか見てなかったから」

 

 まさかなくなるとは思いもよらなかった。

 自分の迂闊さに唇をかんでいるとアーカイドがモンスターを召喚していた。

 

「いっくよ! 僕は手札からBF-逆風のガストを特殊召喚。このカードは自分フィールド上にカードが存在しない場合、特殊召喚できる。さらにBFと名のついたモンスターが自分フィールド上に存在する場合、BF-黒槍のブラストを特殊召喚」

 

 1体は青色の翼を背中から生やし緑色の体毛がある上半身は男性の姿をしたモンスターが現われ、その隣に大きな螺旋を描いた槍を持ち、二足歩行している黒い翼を生やした鳥のモンスターが現われた。

 

レベル2 BF-逆風のガスト 守備力:1400

レベル4 BF-黒槍のブラスト 攻撃力:1700

 

「この2体をリリース!!」

 

 アーカイドは嬉しそうに一枚のカードを掲げる。

 アーカイドの後ろに巨大な拳のような形をした物体が現われてリリースしたモンスターが光の玉となってそれに吸い込まれていった。

 

「現われろ、地縛神Aslla Piscu(アスラ・ピスク)!!」

 

 突然、轟音が鳴り響くとアーカイドの後ろに下からゆっくりとそのモンスターの頭が現われ、徐々にその姿を現わした。

 左右に広がる大きな翼に鋭く長いくちばし、それはハチドリをモチーフとしたモンスターだった。

 体は真っ黒で目などはオレンジ色の光が模様として描かれており、そのオレンジ色の光は体全体にも描かれている。

 

レベル10 地縛神Aslla Piscu 攻撃力:2500

 

 しかし現われたモンスターは何かを振り払うように翼や頭を動かして暴れていた。

 

「あー……これだから力の強いカードは面倒なんだよね」

 

 心底不愉快だというようにアーカイドが呟いているとアスラ・ピスクはその長いくちばしでアーカイドを攻撃し始めた。

 しかし途中でその動きは止まってしまう。

 

「時間制限ありなんだからさっさと言うこと聞けよ」

 

 指を鳴らすとアスラ・ピスクに銀色に光る大きな鎖がまとわりついた。

 苦しげに鳴いていたアスラ・ピスクだが、暫くすると鎖が溶け込むように消える。

 先ほどまで暴れまわっていたにもかかわらず今では大人しくなり、光っていたオレンジ色の部分が暗くなっているように見えた。

 

「いったい、なにを……」

 

 なんだかものすごく嫌なもの、デュエリストにとって絶対にしてはいけないようなことを見たような気がした。

 

「おい、カードたちを無理やり従わせているのか?」

 

「残念だけど、時間がなくてお話できませーん」

 

 ブラック・ミストが強い口調で問いかけるが、アーカイドは楽しそうに笑いながら制限時間が書かれた画面を指差す。

 

「効果説明をしようか。地縛神はフィールド魔法が存在しない場合、破壊される。フィールド魔法がある限りこのモンスターは攻撃の対象にすることが出来ない。そして、このカードは相手プレイヤーにダイレクトアタックすることが出来る」

 

 時間制限があるせいかアーカイドは早口で効果を説明した。

 地縛神――。

 時械神の次は地縛神か……しかも厄介な効果を持ってるアスラ・ピスクを出してくるなんて。

 

「攻撃力2500でダイレクトアタックだと!?」

 

「此処にはすでにフィールド魔法が張られている。あのモンスターにとって絶好の場というわけか」

 

 ブラック・ミストが地縛神の効果に驚き、雲雀は悔しそうにこぼしていた。

 

「じゃあ、行くよ? 地縛神Aslla Piscuでダイレクトアタック」

 

 アーカイドが指示を出すとアスラ・ピスクは動き出し、アーカイドに攻撃した時のようにくちばしを突きつけようとしている。

 これは、やばい。

 直感的にそう思って私は斜め後ろにいるブラック・ミストの腕を掴んだ。

 

「せ、つぅ!?」

 

 勢い良くブラック・ミストを雲雀に向かって投げた。

 宙に浮かんでいたためブラック・ミストは私の行動に驚きの声をあげながら簡単に飛ばされる。

 その直後、アスラ・ピスクの攻撃が私に当たった。

 訪れた衝撃に一瞬息がつまり、気がついたときには一度地面にたたきつけられ二度、三度とバウンドしながら後方に飛ばされた。

 

刹LP:7000→4500

 

「刹! 刹!! お願い、返事をして!」

 

「起きろよ、刹!!」

 

 璃緒ちゃんとブラック・ミストの声にいつの間にか閉じていた目を開いた。

 起き上がろうと体を動かせば、あちこちに痛みが走る。

 

「う……っ」

 

「刹!!」

 

 肩で息をしながら膝と手をついた状態で顔を上げると私のところにある時間表示の数値が減っていっているのに気づいた。

 どうやら一瞬だけ気を失っていたようだ。

 

「大丈夫。まだ、やれる」

 

 時間表示はすでに2分30秒になっている。

 アーカイドのフィールドにはアスラ・ピスクと伏せカードが2枚のみ。

 はやくドローしてアスラ・ピスクを何とかしないと……。

 

「刹、大丈夫なのか?」

 

 雲雀のほうに投げたはずのブラック・ミストが隣にいる。

 一応怪我はないようだけど。

 

「大丈夫。ちょっといいたいことがあるけど、後で。私のターン、ドロー。マエストロークの効果を発動。オーバーレイ・ユニットを1つ使い、相手フィールド上に表側攻撃表示でいるモンスター1体を裏側守備表示にする」

 

「罠発動、ブレイクスルー・スキル。このカードは相手モンスター1体の効果をターン終了時まで無効にする」

 

 オーバーレイ・ユニットを剣に宿したマエストロークが効果を発動しようとしたが、ブレイクスルー・スキルの効果で剣を下ろしそのまま動かなくなった。

 

「手札から暗黒界の取引を発動。お互いのプレイヤーはデッキからカードを1枚ドローし、その後手札を1枚選んで捨てる」

 

 フィールド魔法を破壊できればそれが一番良いんだけど、さっきアーカイドが此処はサルガッソだといっていた。

 フィールド魔法と同じで名前でしかも全体にその効果が行き通っている。

 もし破壊してこの空間まで崩壊してしまったら……。

 私は目を細めてドローしたカードを手札に加え、1枚を墓地へ捨てた。

 

「墓地へ捨てた暗黒界の刺客カーキの効果を発動。このカードがカードの効果によって墓地へ捨てられたとき、フィールド上のモンスター1体を破壊する。私はアスラ・ピスクを破壊する」

 

「亜空間転送装置を発動。自分フィールド上に表側表示でいるモンスター1体を選択して、エンドフェイズ時までゲームから除外する」

 

 墓地に送られたカーキが黒い穴から出てきてアスラ・ピクスに向かうが、途中でアスラ・ピスクがフィールドから消えてしまう。

 

「アスラ・ピスクの効果を発動。このカードがフィールド上から離れたとき、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスターをすべて破壊する。そして破壊したモンスターの数×800ポイントのダメージを与える」

 

 かわされたか……できればさっさと除去したかったんだけど。

 いまは効果が無効化になっているのでマエストロークの効果は使えない。

 マエストロークは青色の炎に包まれて破壊され、その爆発の衝撃で地面に倒れた。

 

「ぐっ、う」

 

刹LP:4500→3200

 

「……モンスターをセット。カードを1枚伏せてターンエンド」

 

「エンドフェイズ時、アスラ・ピスクは戻ってくるよ」

 

 アーカイドの後ろに再びアスラ・ピスクが現われる。

 相手のターンになって私はアーカイドのフィールドを見ながら口を開いた。

 

「ブラック・ミスト、雲雀のところに行って。此処はあぶな」

 

「触手で巻きついてでも此処にいるからな」

 

 私の言葉を遮ってブラック・ミストは不機嫌そうに表情をゆがめながら触手を出して言った。

 これは、引いてくれそうにないかな……。

 

「……強情」

 

「誰がだよ」

 

 ブラック・ミストは口元を吊り上げて笑っていた。

 私はもう一度アーカイドを見てみるとすでにドローは終え、メインフェイズに入っていた。

 

「手札から運命の宝札を発動。サイコロを1回振り、出た目の数だけデッキからカードをドローしする。その後、同じ数だけデッキの一番上からカードを除外する」

 

 アーカイドのフィールドに大きなサイコロが現われて回転しながら地面へと落ちる。

 暫く転がり、止まった時に出た数値は4だった。

 

「出た目は4。よって4枚ドローして4枚デッキの一番上からカードを除外する」

 

 除外されたカードを見てアーカイドは笑みを浮かべた。

 

「じゃあ、アスラ・ピスクでダイレクトアタック」

 

「ガード・ブロックを発動。戦闘ダメージを0にしデッキからカードを1枚ドローする」

 

 アスラ・ピスクのくちばしが途中でバリアのようなものに当たり、それ以上こちらに来ることはなかった。

 あの攻撃は何度も食らいたくないなぁ……。

 

「んー、じゃあカードを2枚伏せてターンエンド」

 

「私のターン、ドロー」

 

 私は自分の手札を見て苦々しい表情をしているだろう。

 まだあのアスラ・ピスクを何とかする方法はある。けど、No.がないのが厳しい。

 このデッキはほとんどNo.に頼るようなデッキ構成をしている。

 特にブラック・コーン号とか不乱健とかいまあればアスラ・ピスクを何とかできるのに……。

 

「モンスターを反転召喚。ライトロード・ハンターライコウのリバース効果を発動。フィールド上のカードを1枚破壊し、自分のデッキから3枚カードを墓地へ送る」

 

「あらら、ライコウだったかぁ……」

 

 アーカイドは残念そうに言ってライコウがアスラ・ピスクを破壊するのを眺めていた。

 

「破壊されたアスラ・ピスクの効果を受けてもらうよ」

 

 マエストロークと同じようにライコウは青い炎に包まれて破壊される。

 

「うぁっ……」

 

刹LP:3200→2400

 

「私はダーク・クリエイターを特殊召喚。このカードは墓地に闇属性モンスターが5体以上いて自分フィールド上にモンスターが存在しない場合特殊召喚できる」

 

 背中には黒い輪のようなものからオレンジ色の羽が生え、全体的に黒い人型モンスターが現れる。

 

レベル8 ダーク・クリエイター 攻撃力:2300

 

「ダーク・クリエイターの効果を」

 

「あー、ごめーん。ちょっとまってー」

 

 ダーク・クリエイターの効果を発動しようとした時、アーカイドが私側にある制限時間のカウントダウンを止めた。

 なに? もしかして奈落の落とし穴とか神の警告とか発動したいとか……でも時間を止める必要はないはず。

 不思議に思っていると私達の間に大きな画面が映し出され、そこにはアーカイドから死んだといわれていた真月君が立ち上がろうとしていた。

 近くにいたはずのベクターはどこにもいない。

 遊馬君は真月君が生きていたことを喜んで走り出したときだった。

 

「なぁんちゃって!!」

 

 突然笑い出した真月君が顔を上げて、その表情を見たときやっぱり敵だったかと思った。

 その後、真月君はミザエルなんかがしたバリアル・フォーゼと叫ぶとその姿を変えていきベクターへと変身した。

 いや、元に戻ったというべきか。

 

「なっ、真月がバリアンだったのか!?」

 

 雲雀が驚きの声をあげているが、私とブラック・ミストはただその様子を見ていた。

 

「じゃあ、結のことは?」

 

 真月もといベクターが結のことを好きじゃないとはうすうす思っていたが、なぜ結に告白したかそういう意味で私は問いかけた。

 

「はぁ? 俺があんな尻軽女に惚れるわけねぇだろ! 全部刹が、俺に手を出させないようにするための演技に決まってるだろ!!」

 

 ベクターがそういった後、アストラルがどういう意味だ?と聞くとベクターは意外にもあっさりと教えた。

 

「フン、教えてやるよ。脳内お花畑のお前らと違ってあの女は最初から俺を疑ってやがった! それで保険として黒峰刹のたーいせつな友達である森沢結に告白したってわけだ! これだと迂闊に手を出せないだろ? ウッハハハハ! そうとも知らずにあの女、俺に告白されてちょっと優しくしたら良い気になってよぉ。あー、顔が良いってつらいわー」

 

「ベクちゃんてば、それは僕が考えた作戦なのになぁ」

 

 飛行船に通信が繋がっているのかベクターの言葉を聞いて結が泣いている声が聞こえる。

 自然と拳は強く握っていて、静かに怒りが募っていくのが分かった。

 

「私は……お前らを絶対に許さない」

 

 画面越しだが私は顔を上げてベクターとアーカイドに向かってそういった。

 

「へぇ……」

 

 アーカイドは感心したようなそんな声を出して意味ありげに笑った。

 

「……刹?」

 

 そしてブラック・ミストはなぜか困惑した表情をしていた。

 

「でーもー、これって刹っちゃんが結ちゃんに言えばここまで傷つかなかったんじゃないの? 刹っちゃんは真月零がバリアンだって最初から分かってたんだし。結ちゃんのこと本当に好きだって思ってないことも分かってたんでしょー?」

 

「ほんとう……なの?」

 

 不意にかすれた結の声が聞こえ、私は答えられなかった。

 

「な、何で言ってくれなかったんですか刹さん!?」

 

 何故教えてくれなかったと結の代わりに小鳥ちゃんとキャットちゃんが問いかけ、それにアーカイドが答えた。

 

「アハハッ、そんなこと言ったら最悪仲間割れだよー? 刹っちゃんを信じる組と真月零を信じる組に分かれてバリアンと戦わなくちゃならないところだったんだよ? でも、まぁ、自分を犠牲にして言っちゃえばよかったのにねー? そうすれば結ちゃんも遊ちゃんも此処までショックを受けなかったよねー?」

 

 可哀想にと笑いながら言うアーカイドを見る。

 なぜか、不思議と怒鳴り散らすとか睨みつけるとかそんなことをする気が起きなかった。

 ただ、こいつにデュエルで勝ったら他のバリアンともデュエルをしなければならないとそう思った。

 

「反応なし……ね。まぁ、良いけどね。刹っちゃんのことも少し分かったし。じゃあ、再開しようか」

 

 私の近くにあるカウントダウンが動き出し、私はダーク・クリエイターの効果を使おうとした。

 

「ダーク・クリエイターの効果を発動。墓地の闇属性モンスターを1体除外することで自分の墓地の闇属性モンスターを1体選択して特殊召喚する。私は堕天使ゼラートを特殊」

 

 いつもより低く抑揚がない声で淡々とデュエルを進めていると突然横から頬めがけて叩かれた。

 勢いが良かったのか叩かれた音は周りに響き渡り、頬がじんじん痛んだ。

 

「はっ? え、ちょっ?」

 

 目をぱちくりとさせながら私の頬を叩いた張本人、ブラック・ミストを見た。

 え、なんで私叩かれたの?

 

「戻った、か……」

 

「あーらら」

 

 ブラック・ミストは安堵の表情を浮かべ、アーカイドはつまらなそうにしていた。

 いったい何が起きたし。

 

「ほら、はやく続きをやれよ」

 

「えー」

 

 特に説明もなくデュエルの続きを促されて納得できないまま、私はゼラートのカードをデュエルディスクに置いた。

 

レベル8 堕天使ゼラート 攻撃力:2800

 

「バトル。2体のモンスターでダイレクトアタック」

 

 ダーク・クリエイターとゼラートがアーカイドに向かって攻撃をし始め、アーカイドは前のときとは違って攻撃を食らって後方に飛ばされていた。

 

「ぐううぅ!」

 

アーカイドLP:8000→2900

 

「あーもう。なんで刹っちゃんのモンスターはいつも全力で攻撃するかなぁ」

 

 ぶつぶつと文句を言いながらアーカイドは立ち上がる。

 

「私はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

「じゃあ、僕のターン……あっ」

 

 突然アーカイドが飛行船のある方向に視線を向けて声を漏らしていた。

 気になって振り返ってみると飛行船が奥のほうに出現したブラック・ホールに吸い込まれそうになっていた。

 

「あれはいったい……」

 

「うーん、説明したいんだけどー」

 

 アーカイドはもったいぶった言い方をしてカウントダウンを刻む画面を見る。

 

「時間を止めてもいいから説明しなさい」

 

「しょうがないなー。ここ、サルガッソはね。たまにブラック・ホールが出現して吸い込もうとするんだよね。もしかしたら生贄でも欲しがってるんじゃないのー?」

 

 無邪気に笑いながらそう告げて飛行船のほうに目を向けた。

 どうしよう、あの中には結や小鳥ちゃんたちがいる。ブラック・ホールに吸い込まれたらひとたまりも……。

 

「現われろ、サイバー・エンド・ドラゴン!」

 

 どうするべきか考えている雲雀の声が聞こえた。

 雲雀のほうを見てみると宇宙空間にサイバー・エンド・ドラゴンを召喚してその背に乗り込もうとしていた。

 え、モンスター召喚できるの?

 でもさっきもみんな普通にモンスターを召喚してたし……。

 

「刹。飛行船は私が何とかする。だから此方に集中していろ」

 

 雲雀の言葉に頷いて飛行船のことを頼むとサイバー・エンド・ドラゴンに乗って向かっていった。

 飛行船に繋がっている通信機から小鳥ちゃんたちが頑張っている声が聞こえる。

 そして雲雀が飛行船にたどり着く前に飛行船はブラック・ホールに吸い込まれないように此方に発進しようとした時だった。

 

「きゃあああぁ!!」

 

「小鳥ちゃん!?」

 

 小鳥ちゃんの悲鳴に驚いていると次に聞こえてきたのは暴れるような音や悲鳴だった。

 

「どうしたんですか!? 結さん!」

 

「し、正気にもどるウラー!!」

 

 孝君と徳之助君の声に私は固まった。

 結が何かをしている? でも、結はそんなことをするような子じゃない。

 暫くすると私の前に画面が現われる。

 そこには結が映っていた。

 

「すべては、アーカイド様のために……」

 

 しかしその目には光がなく、明らかに正気な状態ではなかった。

 

「アッハハハハ!! そう簡単にやらせるわけないでしょ? ばあぁーか!!」

 

 心底可笑しそうに笑いながら遊馬君が映っている画面と飛行船を映し出している画面に向かってそういった。

 

「アーカイド。結に何をした?」

 

 結の口からアーカイドの名前が告げられた。

 普通に考えるなら洗脳されている状態だと思われるが、アーカイドはさぁ?と首をかしげた。

 

「ねぇ、刹っちゃん。疑問に思わなかった?……なんでデッキ内容が変わってるかとかー」

 

「刹、どういうことだ?」

 

 アーカイドの言葉にブラック・ミストが反応して私に問いかけてくる。

 私は嫌な予感が胸を渦巻き始めていて答えることが、出来なかった。

 

「なんでNo.がないとかさー。さぁてここで問題です!! 昨日の夜、刹っちゃんのデッキを入れ替えてNo.を盗んだのは誰でしょーか!?」

 

 そういったアーカイドの手には私のエクストラデッキに入っていたNo.のブラック・コーン号と不乱健などが握られていた。

 

「お前! 結を洗脳してNo.を盗ませたのか!?」

 

「せーかいでーす!! 正解した方には何かプレゼントでもいかが?」

 

 ブラック・ミストはふざけるな!と声を荒げていた。

 

「いったい、いつから?」

 

「んー知りたい? 知りたいかー。じゃあ教えちゃおっかなぁ。実は真月零と結ちゃんの初デートの時です!」

 

 あの時? でも、結と真月がデートしてるときは私達が見てた。

 アーカイドの姿は見かけなかったし……。

 そこまで考えて私はあることに気づいた。

 

「いやぁ、びっくりしたよ。まさか刹っちゃんが尾行してくるなんてさー。思わずそこらへんの人間洗脳してデュエルさせちゃった!」

 

 あのときデュエルした男はNo.を持っていた。アーカイドが洗脳した際に持たせたのかもしれない。

 デュエルが終わった後、様子を見に行ったらなぜか結は寝てたし、そのときに……。

 

「はい、お話はおしまいです! 僕のターン、ドロー。スタンバイフェイズ時、異次元からの宝札の効果を発動。このカードが除外された次の自分のターンのスタンバイフェイズ時にこのカードを手札に戻し、お互いのプレイヤーはデッキからカードを2枚ドローするよ」

 

 宙に突然現れたカードを手札に加えそのカードから光が出てくると私のデッキとアーカイドのデッキに灯り、私達はカードを2枚ドローした。

 おそらくさっきの運命の宝札で除外されたのだろう。

 

「手札から永続魔法、黒い疾風を発動。このカードはBFと名のついたモンスターが召喚されたとき、そのモンスターの攻撃力より低い攻撃力を持つBFと名のついたモンスター1体をデッキから手札に加える。リバースカードオープン、早すぎた復活を発動。墓地にいる地縛神を自分フィールド上に特殊召喚する。その代わり、特殊召喚したモンスターは攻撃宣言することも出来ないし戦闘ダメージも0となる」

 

 現われたアスラ・ピスクの姿は体全体に紫色の液体がついており、体が完全に形を保っていないようだった。

 

レベル10 地縛神Aslla Piscu 攻撃力:2500

 

「BF-空風のジンを召喚。黒い疾風の効果でBF-蒼天のジェットを手札に加えるよ」

 

 アーカイドのフィールドに二足足で立つカラスのようなモンスターが現れた。

 

レベル1 BF-空風のジン 攻撃力:600

 

「あららー、あっち大変みたいだねー」

 

 笑みをこぼしながら不意に視線を画面に向けたのでつられて遊馬君が映っているはずの画面にはゼアルのような者がいた。

 その者は前にみたゼアルとは姿形は似ているが色が暗い色へと変わっている。

 

「あいつ、まさか悪に呑まれたのか?」

 

 あいつってアストラルのこと? アストラルが悪に呑まれるって……。

 疑問に思っている間にもアーカイドは制限時間があるためにデュエル進めていた。

 

「レベル1のチューナーモンスター、空風のジンとアスラ・ピスクをチューニング」

 

 チューナーモンスターである空風のジンが緑色の輪となってアスラ・ピスクを包み込み、アスラ・ピスクの体が透け始めた。

 

「いったい、なんだ?」

 

 エクシーズ召喚とは異なった召喚方法を目の当たりにしてブラック・ミストは困惑している。

 前にエフェクト・ヴェーラーを持っていた。それにこのフィールドはエクシーズモンスターが特殊召喚されたときに効果ダメージを受ける。

 だから、覚悟はしていた。

 

「シンクロ召喚、現われろ。星態龍」

 

 空中に赤色に輝く大きな球体が現われ、暫くするそこから赤と黒の体をもつ大きな翼を持ったドラゴンが出てきた。

 

レベル11 星態龍 攻撃力:3200

 

「シンクロ召喚?」

 

「説明は出来ませんのであしからず。あ、インチキはしてないからね? じゃあ、星態龍でゼラートを攻撃」

 

 ブラック・ミストの問いかけに早口で答えてから星態龍に攻撃指示を出した。

 星態龍は赤色の炎に似たブレスを吐いてゼラートを攻撃した。

 

「くっ」

 

刹LP:2400→2000

 

 なぜ、ダーク・クリエイターを狙わなかった?

 バトルが終えてから疑問に思う。

 普通なら攻撃力的にも効果のことも考えるとダーク・クリエイターを出したほうが有利に働くはず。なのに何故?

 

「カードを1枚伏せてターンエンド」

 

「私のターン、ドロー」

 

 ちらりと闇落ちしたゼアルのほうを見てみるとなぜか相手モンスターとの攻撃力差が100あるのに何度も攻撃し続けているのが見えた。

 現在のライフは600。あと一回攻撃してライフが500になったらサルガッソの効果で終わってしまう。

 そう思っているとゼアルの変身が解けて遊馬君とアストラルは地面に倒れていた。

 

「遊馬君!!」

 

 攻撃指示を出しかけていたのでいそいで遊馬君の名を呼ぶと他でデュエルしている凌牙とカイトがはやく攻撃を止めるように指示をしていた。

 これで一安心か……。

 

「ダーク・クリエイターの効果を発動してゼラートを」

 

「おっとD.D.クロウの効果を発動。このカードを墓地へ捨てゼラートを除外するよ」

 

 D.D.クロウの効果でダーク・クリエイターの効果は不発。

 ライフはすでに2000。

 今の手札であのモンスターを倒すには1つしかない……少し、リスクがあるけど。

 

「異次元の偵察機を召喚しクロクロ-クロウを特殊召喚。そして闇次元の開放を発動。除外されているジャイアントウイルスを特殊召喚」

 

レベル2 異次元の偵察機 攻撃力:800

レベル2 クロクロ-クロウ 守備力:600

レベル2 ジャイアントウイルス 攻撃力:1000

 

「レベル2の異次元の偵察機とクロクロ-クロウとジャイアントウイルスでオーバーレイ」

 

 3体のモンスターが紫色の光のたまになって目の前の地面に現われた渦の中に入っていく。

 

「3体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築、エクシーズ召喚。現われろ、No.96ブラック・ミスト」

 

 No.96が現われると同時にサルガッソの効果で雷が落ちてダメージを受ける。

 

「ぐっ……」

 

ランク2 No.96ブラック・ミスト 攻撃力:100 ORU:3

刹LP:2000→1500

 

「バトル。No.96ブラック・ミストで星態龍を攻撃。攻撃宣言時、ブラック・ミストの効果を発動。オーバーレイ・ユニットを1つ使い、相手モンスターの攻撃力を半分にしNo.96に加算させる」

 

レベル11 星態龍 攻撃力:3200→1600

ランク2 No.96ブラック・ミスト 攻撃力:100→1700

 

 No.96は星態龍の攻撃力を吸い取ったあと手を鞭に変えて星態龍を攻撃し破壊した。

 

「っ……」

 

アーカイドLP:2900→2800

 

「ダーク・クリエイターでダイレクトアタック」

 

「リバースカード、オープン。ガード・ブロックを発動。戦闘ダメージを0にしてカードを1枚ドローするよ」

 

 ダーク・クリエイターが黒色の光の玉をアーカイドに向かって放ったが、攻撃は防がれる。

 

「リバースカード、オープン。デストラクト・ポーションを発動。自分フィールド上のモンスター1体を破壊し、破壊したモンスターの攻撃力分ライフを回復する。私はダーク・クリエイターを破壊する」

 

 ダーク・クリエイターが破壊され、そこから緑色の光が現われて私を包み込んだ。

 

刹LP:1500→3800

 

「ターンエンド」

 

 エンド宣言したことによりサルガッソの効果が発動されて500ポイントのダメージを受けた。

 

刹LP:3800→3300

 

「僕のターン、ドロー。BF-極北のブリザードを召喚し黒い疾風の効果でBF-二の太刀のエテジアを手札に加えるよ」

 

 現われたモンスターは羽毛が青色で翼の先端や鶏冠の辺りが黒い鳥だった。

 

レベル2 BF-極北のブリザード 攻撃力:1300

 

「極北のブリザードの効果を発動。このカードが召喚に成功した時、自分の墓地にいるレベル4以下のBFと名のついたモンスターを1体守備表示で特殊召喚できる。僕は逆風のガストを特殊召喚。さらに手札から黒槍のブラストを特殊召喚」

 

 アーカイドのフィールドにチューナーモンスター1体に他のモンスターが並ぶ。

 またシンクロ召喚をするつもりなのだろうか……。

 

レベル2 BF-逆風のガスト 守備力:1400

レベル4 BF-黒槍のブラスト 攻撃力:1700

 

「チューナーモンスター、レベル2の極北のブリザードとレベル2のガスト、レベル4のブラストでチューニング」

 

 極北のブリザードが緑色の輪となり、そこに逆風のガストと黒槍のブラストが入っていく。

 

「シンクロ召喚。現われろ、魔王龍ベエルゼ」

 

 モンスターがいた場所がいっそう強く光り輝くとそこには頭があるにもかかわらず両肩に生きているドラゴンの顔をつけられ下半身が蛇のように長いモンスターが現れた。

 

レベル8 魔王龍ベエルゼ 攻撃力:3000

 

「刹っちゃんに教えてあげる。ベエルゼはカードの効果、戦闘では破壊されずまた戦闘、相手のカードの効果で自分がダメージを受けたときこのカードの攻撃力がその数値分アップするって言う効果なんだよ。じゃあ、ターンエンドしようかな」

 

 ……なぜわざわざモンスター効果を?

 ほとんどのデュエリストは自分のモンスター効果は発動するときに説明する。

 でも、アーカイドは度々最初に効果を説明することもあった。

 疑問に思いながらも私はデッキの上に指を置く。

 

「私のターン、ドロー……え?」

 

 引いたカードを見て固まった。

 

「せ・つ・ちゃーん」

 

 わざわざ区切りながら私の名前を呼び、思わず視線をアーカイドに向けるとアーカイドは歪んだ笑みを浮かべていた。

 

「僕のプレゼント、気に入ってくれた?」

 

「刹! 何をドローした!?」

 

 アーカイドの言葉にブラック・ミストは声を荒げて私が引いたカードを見て目を見開いた。

 私が引いたカードはRUM-バリアンズ・フォースだった。

 

「お前、何のつもりで!?」

 

「さぁ? どうでもいいじゃん。ほらほら、制限時間があるんだから早くしないとー」

 

 まさかNo.を抜き取るだけでなく、バリアンズ・フォースをデッキに入れてくるなんて……。

 私は自分の手札を見て考え込む。

 今の手札であのモンスターを除去することもできない。できればあのモンスターを攻撃するなら一発で仕留めたい。

 ちらりとバリアンズ・フォースに目を向ける。

 ランクアップしたモンスターは大体モンスター効果が強化されていた。

 No.96がランクアップすればモンスター効果が強化されたものとなる、筈。

 でもバリアンズ・フォースを使ってブラック・ミストに何か影響が出る可能性もある。

 

「私はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

 何もせずにターンを終了させてサルガッソの効果である雷を受け、体をふらつかせた。

 

刹LP:3300→2800

 

「うーん、やっぱりもっと追い詰めないと駄目だったかー」

 

 残念だなぁと呟き、アーカイドはちらりと別のほうを見ると顔を明るくさせた。

 

「刹っちゃーん! あれ見て!! 今からすごいのが始まるよ!!」

 

 制限時間のカウントダウンを止めて遊馬君が映っている画面を指差した。

 一応私も遊馬君がどうなっているのか気になったので視線を向ける。

 遊馬君はアストラルと向かい合った状態で倒れており、2人は手を上げてそっと手を合わせた。

 すると光が2人を包み込み、アストラルが遊馬君に肩を貸して立ち上がるのが見えた。

 アストラルってたしか物に触れないんじゃ……。

 前に遊馬君が言っていたことを思い出していると2人はそれぞれ赤色、青色の光に包まれて上空に飛び出した。

 

「俺たち2人でオーバーレイ・ネットワークを構築!」

 

『真の絆で結ばれし2つの心が重なったとき、語り継ぐべき力が現われる!』

 

 2人でオーバーレイをしていつものゼアルになるのかと思ったら、黒いボディスーツにアストラルと同じ黄緑色の模様があり、肩と腰に大きな白いと赤のアーマーがついていた。

 髪は腰まであり、オレンジを基調として前髪が赤色に染められており目は双方とも金色になっていた。

 

「『エクシーズ・チェンジ! ゼアル!!』」

 

 仲間達は新たなゼアルに嬉しそうにしているのだが、私は前のゼアルとは姿形がまったく違うことに呆然としていた。

 ……あれって、進化するんだ。

 そしてやっと出た感想はこれだった。

 

「重なった熱き思いが、世界を希望の未来へ再構築する! リ・コントラクト・ユニバース!!」

 

 次は何をするつもりだと再び画面に目を向けるとゼアルが持っていたリミテッド・バリアンズ・フォースが光に包まれ、1度カードの形を残したまま砕け散ると再び光が集まりまったく違うカードになっていた。

 

「なにぃ!? カードを書き換えただと!?」

 

「うわあああぁ!?」

 

 ベクターの驚く声と同時に私は絶叫した。

 

「ブラック・ミストおぉ!! あれって大丈夫!? ルール的に大丈夫!? ジャッジキルとかされないよね!?」

 

「落ち着け刹うぅ!!」

 

 ブラック・ミストの肩を掴みながら混乱したまま詰め寄るように叫んでしまった。

 

「だよねー!! 刹っちゃんも思うよねー!! やっぱりあれってずるいよね!!」

 

「お前は黙ってろ!!」

 

 私達がギャーギャー騒いでいるといつの間にか遊馬君もといゼアルはベクターに勝っていた。

 安堵して良いのやら良く分からない感情が渦巻き、落ち着こうとした矢先にサルガッソの全体が揺れ始めた。

 

「あららー。サルガッソが壊れ始めちゃったね。今日は此処までだよ。じゃあね、刹っちゃん!」

 

 アーカイドは騒いでいたにもかかわらずころっと態度を変えてバリアンが使うワープでその場から消えた。

 

「え、崩壊? え?」

 

「いいから落ち着けよ! とりあえず飛行船に戻るぞ!」

 

 私はというとまだ混乱しているらしくその場に立ち尽くしているとブラック・ミストが肩を掴みフラッシュトランサーまで連れて行って飛行船に乗り込んで、サルガッソを脱出した。

 




アーカイドからの衝撃の真実回……になったのか?

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