遊戯王の世界に転生したがろくな事が起きない   作:アオっぽい

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第三十二話 ラスボス役はろくな事がおきない

 あれから時がたち、今日は文化祭2日目である。

 準備に色々と手間を取ったり、途中で神代兄妹が100回目の喧嘩デュエルをするという事態もあったがこつこつと準備をしていたおかげでなにも問題なく1日目の演劇コスプレデュエルをすることができた。

 容姿が良い凌牙と璃緒ちゃんが出ていたおかげで結構盛況が良かったりする。

 そして2日目の演劇デュエルに参加するデュエリストの人数は結構多い。

 それにこの文化祭でもう1つ、学園の生徒のみが参加できるカップルデュエルに参加できないデュエリストの諸君が腹いせに此処にやってきて返り討ちというのがあったりしていた。

 

「しかし、中々ボスまで勝ち残るやつがいないな」

 

 中庭で行われているデュエルを眺めながら雲雀が呟いた。

 雲雀は水色の大きな肩当てのようなものをつけ、藍色の服に首から下までまっすぐに黄色の線が入っている。腕などには服と同じ色のベルトなどが付けられた人造人間-サイコ・ロードの格好をしている。

 演劇デュエルは中庭の真ん中で行われ、デュエルをしている人たちの間の位置に演劇のナレーション兼実況役が1人いる。

 その後ろには四天王役の玉座と2つ段差があってラスボス役の玉座が設置されている。

 反対側とかには観客用の席が作られていた。

 

「結、璃緒ちゃん、凌牙、雲雀に当たった人はことごとく負けてるからね」

 

 私が言ったとおり午前中からお昼まで何人ものデュエリストが挑んできたが、いつもいるメンバーの誰かに当たると相手は大体負けている。

 さすがはWDCの参加者というべきか……正直ラスボス役の私は暇である。

 

「皆さん、手ごたえがなさ過ぎますわ」

 

「もう少し骨のある奴とデュエルしたいぜ」

 

 璃緒ちゃんはつまらなそうにそういうと隣にいる凌牙が同意した。

 璃緒ちゃんは首にはネックレスをつけ、胸元が大きく開いた白いドレスを着ており頭には王冠、手には氷がモチーフとなった杖を片手に持っている。

 凌牙は氷を連想させるような明るい青色の鎧に背中には大きな剣を背負っている。

 璃緒ちゃんは氷の女王、凌牙は氷結界の虎将グルナードのコスプレをしているのだ。

 

「ん? そういえば先ほどから結の姿が見えないが、どこへ行った?」

 

「あら、結でしたらカップルデュエルが開催されているサッカー場のほうへ行きましたわ。なんでも真月君と一緒に出るそうです」

 

 雲雀が周りを見渡していると璃緒ちゃんが楽しそうに雲雀の質問に答えた。

 そういえば言ってたなぁ……真月君と一緒にカップルデュエルに出るんだって。

 演技とはいえ真月君は初心者以上にデュエルがへたくそみたいだから大丈夫かな……。

 

「決まりましたー!! 残念ながら挑戦者の敗北! 此処でリタイアとなります!」

 

話している間にもデュエルは進んでおり、挑戦していた人が負けてしまったみたいだ。

 

「それでは20分の休憩を挟みまーす! お客様の中で挑戦したい方は受付までどうぞー!」

 

 実況席にいるクラスメイトの女の子がそういうと演技をしていた人たちの肩から力が抜ける。

 今回は1回戦目で駄目だったか……。

 残念に思っていると観客席のほうから少し大回りしてこちらに来る人影があった。

 

「刹ー!」

 

 紺色と水色の縞々の長袖Tシャツにベージュ色の短パンを履いた水色のショートカットの少年が手を振ってこちらに来ていた。

 

「あ、ハルト君! 来てくれたんだ」

 

 私は持っている杖を椅子に立てかけ下まで降りて、ハルト君に駆け寄った。

 カイトに演劇デュエルのことをメールで送ったら2日目にいくという返信が来たので来るとはわかっていたが、やはりきてくれるのは嬉しい。

 

「今日は誘ってくれてありがとう! ねぇ、刹はなんのコスプレしてるの?」

 

 あどけない笑顔を浮かべて礼を言った後、ハルト君は目を輝かせて聞いてきた。

 

「これはね、時花の魔女-フルール・ド・ソルシエールってモンスターの格好だよ」

 

「うわぁ! すっごく似合ってるよ!!」

 

 あー、癒されるなぁ……。

 私は礼を告げながらそんなことを思っていた。

 先ほど言ったとおり、私はフルール・ド・ソルシエールのコスプレをしている。

 といっても頭に着いているあのひらひらとした物は一切つけていない。

 

「そういえば、カイトはどうしたの?ハルト君と一緒に来ると思ったんだけど……」

 

 気になっていたことを質問してみるとハルト君は何か企んでいる顔つきとなり内緒! と笑顔で告げられた。

 

「えー、きになるなー」

 

「すぐに分かるよ」

 

 でも一人きりで大丈夫かと聞いてみたら観客席のほうにフェイカーさんがいるので大丈夫だといっていた。

 そんな感じでハルト君と話していると璃緒ちゃんが隣にやって来た。

 

「刹、こちらの子は?」

 

 その後ろから凌牙と雲雀もやってきてハルト君を見ている。

 私はハルト君のことを3人に紹介し、3人もハルト君に自己紹介をした。

 4人で会話をしているといつの間にか休憩の20分が終わり再び演劇デュエルが開始されることとなる。

 ハルト君は観客席に戻り、私は一番上の椅子に座った。

 

「では、お次の挑戦者は――」

 

 マイクで実況席にいる女の子がそう告げると同時に誰からかメモを渡されてそれを見ている間に変化が起きた。

 どこからともなく口笛が聞こえ、いったいなんだと皆して周りを見ているとデュエルフィールドに空から誰かが落ちてきた。

 その人物は水色に輝いている機械的な羽を背中に取り付け、藍色の後ろの裾が長いコートを着ている。コートには水色の装飾があり、額の部分にはひし形の宝石が埋め込まれた赤色の飾りが付けられ目元をバイザーで覆っている。

 それは明らかに銀河眼の光子竜がモチーフになっている格好だった。

 彼は地面に綺麗に着地をすると何事もなかったかのように立ち上がる。

 

「人の心によどむ影を照らす眩き光、人は俺をナンバーズハンターと呼ぶ」

 

 何してんだアイツ。

 

『何やってんだアイツ』

 

 ブラック・ミストと同じ反応をしているとナンバーズハンターと名乗ったカイトがデュエルディスクを展開させた。

 いや、ハルト君の反応でカイトが挑戦するとは思ってたけど……まさかコスプレしてくるとは。

 それに口笛とか空から落ちてくる演出は一体なんだろうか。

 意味が分からないよ。

 

「次は突然現われた、謎のナンバーズハンターが四天王に挑戦です!!」

 

 周りも呆気に取られていたが実況席の子がそう告げると活気が戻り、騒ぎ始めた。

 最初にカイトとデュエルするのは四天王役でスカル・フレイムのコスプレをしているクラスメイトだ。

 

「では、デュエル開始ー!!」

 

 デュエルの開始の宣言がされて観客の歓声はさらに盛り上がっている。

 

「刹、あの者とは知り合いか?」

 

 私の様子で察したのか雲雀がカイトを指差しながら聞いてきた。

 

「知り合いというか、カイトだよ」

 

 雲雀はなんだと? と驚きを隠せないようでカイトをじっと見ている。

 

「あの方が天城カイトさんですか……。結構ノリがいい方なんですね」

 

「なんか、意外だな」

 

 若干引き気味に言った凌牙に頷いていると璃緒ちゃんがそうだ!と手をたたいていまの四天王役の1人に話しかけていた。

 暫くすると笑顔でこちらに来る。

 

「今回だけ四天王役を交換してもらいましたわ」

 

 今は雲雀、凌牙とクラスメイトの2人が四天王をしていたのだが、交換してもらったらしい。

 ということは次にデュエルをするのは璃緒ちゃんか。

 

「うわああああぁ!!」

 

 聞こえてきた悲鳴と共にデュエルが終了する合図が鳴り響く。

 あれ……はやくね?

 驚きながらフィールドに視線を向けるとクラスメイトの子が地面に倒れこんでいた。

 

「な、な、なんと! 四天王の1人を瞬殺です!! さすがナンバーズハンター!!」

 

「フン、俺に勝つには貴様の心は弱すぎる」

 

「決め台詞も忘れません! 格好良いぞー! ナンバーズハンター!!」

 

 観客もさらに盛り上がってナンバーズハンターの名前を連呼している。

 本当にノリノリだな……ハルト君に何か言われたのかな?

 

「ふん、スカル・フレイムがやられたようだな」

 

「彼は四天王の中でも最弱」

 

「わ、我らデュエル四天王の面汚しよ」

 

 雲雀と璃緒ちゃんはノリノリで言っているにもかかわらず、凌牙は嫌そうな顔をしながら台詞を言っている。

 

「では、次はこの氷の女王がお相手いたしますわ!」

 

 璃緒ちゃんが立ち上がってデュエルフィールドへ足を運び、カイトと向かい合いデュエルが開始される。

 結果から言うと璃緒ちゃんは負けてしまった。

 良い線までいっていたのだが、銀河眼の光子竜によって止めを刺された。

 その後は雲雀と凌牙もデュエルをしたが、2人とも負けてしまった。

 全力でやっていたらしく負けた男2人はすごく悔しがっていた。

 

「ついに、ついにナンバーズハンターは四天王をすべて倒しました! なんというパワー! なんというタクティクス! 私、驚きを隠せません!!」

 

 いままで四天王すべてを倒すデュエリストはいなかったので実況席にいる女の子は興奮を隠し切れずにマイクを持ったまま叫んでいた。

 やっと私の出番か……。

 

「まさか、私の部下がこうも簡単にやられるとは……」

 

 椅子から立ち上がって笑顔を浮かべながらデュエルフィールドに下りていく。

 

「このときを待っていたぞ、時花の魔女」

 

「ふふふ、来なさいナンバーズハンター。私を止められるものなら止めてみるといい」

 

 バイザーの奥にある目が私を睨みつけ、カイトはデュエルディスクを構えた。

 私もデュエルディスクを展開させて構える。

 

「四天王を束ねる、時花の魔女-フルール・ド・ソルシエールとナンバーズハンターのデュエル! 最後のデュエルが今、開始されます!! それでは、デュエル開始ー!!」

 

「先攻は俺から行く、ドロー! 手札からトレード・インを発動! レベル8モンスターを墓地へ送りデッキから2枚ドローする。さらにフォトン・スラッシャーを特殊召喚!」

 

レベル4 フォトン・スラッシャー 攻撃力:2100

 

 フィールドに現われたフォトン・スラッシャーは手に持っている剣を振り回してから、地面へと着地する。

 

「俺は銀河騎士(ギャラクシー・ナイト)を通常召喚! このモンスターは自分フィールド上にフォトンまたはギャラクシーと名のついたモンスターが存在する場合、リリースなしで召喚できる。そしてこの方法で召喚に成功した場合、攻撃力が1000ポイント下がり、自分の墓地にいる銀河眼の光子竜を守備表示で特殊召喚する!」

 

レベル8 銀河騎士(ギャラクシー・ナイト) 攻撃力:2800→1800

 

 西洋の剣を携え、プロテクターに似た白い鎧を着ている人型のモンスターが現われた。

 カイトは傍らに現われた十字架に似た赤色の物体を手に掴むと上空に投げる。

 

「闇に輝く銀河よ、希望の光となりて我が僕に宿れ! 光の化身、此処に光臨! 現われろ、銀河眼の光子竜!!」

 

 光の粒子が集まり、形成された体は黒ずんでおり銀河眼の光子竜が咆哮を上げると青白く光り輝き始めた。

 

レベル8 銀河眼の光子竜 守備力:2500

 

「でましたぁー! ナンバーズハンターのエースモンスター、銀河眼の光子竜です!! 1ターン目から飛ばしています!」

 

「手札から共振装置を発動。自分フィールドにいる同じ種族・属性のモンスター2体選択し、選択したモンスター1体のレベルをエンドフェイズ時まで、もう1体のモンスターのレベルと同じになる! 俺はフォトン・スラッシャーをレベル8にする!」

 

 解説というより実況している女の子の声を諸共せずにカイトはデュエルを続けている。

 いきなりレベル8モンスターが3体揃ったけど、1ターン目からネオギャラクシーは出てこないよね?

 

「俺はレベル8となったフォトン・スラッシャーと銀河騎士でオーバーレイ! 2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築、エクシーズ召喚! 現われろ、神竜騎士フェルグラント!!」

 

 2体のモンスターが渦の中に入るとそこから真っ白なマントをつけた白い鎧に金色の装飾がついているモンスターが現われる。

 

ランク8 神竜騎士フェルグラント 攻撃力2800 ORU:2

 

「カードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

「私のターン、ドロー。手札からブラック・ホールを発動。フィールドにいるすべてのモンスターを破壊する」

 

「くっ!フェルグラントの効果を発動!1ターンに1度、オーバーレイ・ユニットを1つ使いフィールド上にいるモンスター1体の効果を無効化にする変わり、このカード以外のカードの効果を受けない。俺は銀河眼の光子竜を選択する!」

 

 銀河眼の光子竜はフェルグラントが作り出したバリアに包まれるとフィールドにブラックホールが現われてフェルグラントが吸い込まれていった。

 実況席のほうでは実況をしている女の子と役目を終えた雲雀が今の動きについて解説と考察をしていた。

 

「アステル・ドローンを召喚」

 

 私の場に頭には白いメットに黒いベレー帽を被り、首には薄いピンク色のマフラーをつけ白と黒のワンピースを着ているデフォルメされた女の子のモンスターが現われる。

 

レベル4 アステル・ドロー 攻撃力:1600

 

「さらに簡易融合を発動。ライフを1000支払いレベル5以下の融合モンスター1体を特殊召喚する。エルシャドール・ミドラーシュを融合召喚」

 

 鳥のくちばしに似た口に頭には大きな角が生え、胴体が長い体はどこか人形のものを彷彿させ、いたるところに操る糸が付けられている。

 そのドラゴンの背には緑色の髪をポニーテールに縛り、黒い服を身にまとっている女の子が乗っていた。

 

刹LP:4000→3000

レベル5 エルシャドール・ミドラーシュ 攻撃力:2200

 

「この効果で特殊召喚したモンスターは攻撃できず、エンドフェイズ時に破壊される。そしてアステル・ドローンはエクシーズ召喚に使用する場合、レベル5モンスターとして扱える。私はレベル5のアステル・ドローンとエルシャドール・ミドラーシュでオーバーレイ」

 

 2体のモンスターは光の玉となって地面に現われた渦の中に入っていく。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築、エクシーズ召喚。現われろ、発条装攻ゼンマイオー」

 

 赤い装甲に右手には大きなドリルが取り付けられたモンスターが現われる。

 

ランク5 発条装攻ゼンマイオー 守備力:1900

 

「アステル・ドローンの効果でエクシーズ召喚に成功した時、デッキからカードを1枚ドローする。カードを2枚伏せてターンエンド」

 

「俺のターン、ドロー! 銀河眼の光子竜を攻撃表示に変更しゼンマイオーに攻撃! 破滅のフォトン・ストリーム!!」

 

 銀河眼の光子竜の口からブレスが放たれるとゼンマイオーはブレスによって破壊される。

 

「ぐっ」

 

「カードを1枚伏せてターンエンドだ」

 

「私のターン、ドロー。手札からワン・フォー・ワンを発動。手札のモンスター1体を墓地へ送り、デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。私はデッキから死の花-ネクロ・フルールを特殊召喚」

 

 赤い蕾がある植物がフィールドに出てくるがその花は枯れかけており、茎は細く葉は萎びて蕾のほうは垂れ下がっている。

 

レベル1 死の花-ネクロ・フルール 守備力:0

 

「特殊召喚成功時、激流葬を発動」

 

「なんだと!? 速攻魔法、禁じられた聖衣を銀河眼の光子竜に対して発動! エンドフェイズ時まで、選択したモンスターの攻撃力は600ポイント下がり、カードの効果の対象にはならず、カードの効果では破壊されない!」

 

「あら、避けられちゃった」

 

 フィールドにいるネクロ・フルールは破壊され、生き残った銀河眼の光子竜を見て私は残念そうに呟いた。

 デュエル中もちゃんと演技しろって言われたからやるけど、なんか慣れないなぁ。

 

レベル8 銀河眼の光子竜 攻撃力:3000→2400

 

「破壊されたネクロ・フルールの効果を発動。このモンスターがカードの効果によって破壊され墓地へ送られたとき、デッキから時花の魔女-フルール・ド・ソルシエールを特殊召喚できる」

 

 白いポンチョにオレンジ色のスリットが入ったローブを着た女性が現われる。

 頭には黄色、オレンジなどひらひらとしたものが付けられていて顔が半分ほど覆われている。

 

レベル8 時花の魔女-フルール・ド・ドルシエール 攻撃力:2900

 

「フルール・ド・ソルシエールの効果を発動。このモンスターが召喚・特殊召喚に成功した時、相手の墓地に存在するモンスター1体を自分フィールド上に特殊召喚する。銀河騎士を選択する」

 

 私の場にカイトが使用していた銀河騎士が現われるとカイトを心配する声が上がっていた。

 

レベル8 銀河騎士 攻撃力:2800

 

「バトル、銀河騎士で銀河眼の光子竜を攻撃」

 

「……銀河眼の光子竜の効果を発動!戦闘を行うモンスター1体と銀河眼の光子竜をバトルフェイズ終了時まで除外する!」

 

 銀河騎士が銀河眼の光子竜を攻撃しようと切りかかったとき、2体のモンスターの姿が消える。

 

「フルール・ド・ソルシエールでダイレクトアタック」

 

 フルール・ド・ソルシエールの周りに薔薇が舞い、杖をふるうと薔薇の花びらがカイトに襲い掛かる。

 

「ぐはっ!」

 

カイトLP:4000→1100

 

「バトルが終了し銀河眼の光子竜と銀河騎士は戻ってくる」

 

「そして1度除外されたことにより、銀河眼の光子竜の攻撃力は元に戻り攻撃力が上がるわね」

 

レベル8 銀河眼の光子竜 攻撃力:2400→3500

 

 あえて私が言うとカイトは怪訝な表情をして私を見ている。

 普段ならこんなこと言わないしね……。

 

「私はレベル8のフルール・ド・ソルシエールと銀河騎士でオーバーレイ。2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築、エクシーズ召喚。現われなさい、森羅の守神アルセイ」

 

 渦の中に2体の光の玉が入り暫くすると、体中に草と枝が生え首には荒縄に金色の鈴がついているバッファローに似たモンスターが現われる。

 

ランク8 森羅の守神アルセイ 守備力:3200 ORU:2

 

「アルセイのモンスター効果を発動。1ターンに1度、カード名を1つ宣言して自分のデッキの一番上のカードを捲り、それが宣言したカードなら手札に加え違った場合、捲ったカードは墓地へ送る。私は薔薇の刻印を宣言」

 

 そういってデッキトップを捲ってみると終末の騎士だった。

 

「一番上のカードは終末の騎士。よってこのカードは墓地へ送られる。そしてアルセイのもう1つの効果を発動。カードの効果によって自分のデッキからカードが墓地へ送られた場合、オーバーレイ・ユニットを1つ使いフィールド上のカード1枚を持ち主のデッキの一番上か一番下に戻す。私が選択するのはもちろん、銀河眼の光子竜」

 

「これが狙いだったのか……」

 

「その通り。銀河眼の光子竜は一番下にでもいって貰いましょうか」

 

 私がそういうとアルセイが高らかに吼え、草が風に舞って銀河眼の光子竜を襲う。

 渦の中に銀河眼の光子竜が閉じ込められ暫くすると、銀河眼の光子竜はその場から消えてしまった。

 

「これでターンエンド」

 

「俺のターン、ドロー! 手札からフォトン・トレードを発動! 手札のフォトンモンスター1体を墓地へ送りデッキから2枚ドローする! アクセル・ライトを発動! 自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、デッキからフォトンまたはギャラクシーと名のついたレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚する。デッキから銀河の魔術師を特殊召喚! さらに手札から速攻魔法、地獄の暴走召喚を発動! 自分フィールド上に攻撃力1500以下のモンスターが特殊召喚に成功した時、同名モンスターを手札・デッキ・墓地からすべて攻撃表示で特殊召喚する! 相手もフィールド上にいるモンスター1体の同名モンスターを呼び出せる」

 

「エクシーズモンスターしかいないから無理ね」

 

 体を覆う藍色のマントに白いローブを着た人型のモンスターが3体現われる。

 

レベル4 銀河の魔術師 攻撃力:0 (3体)

 

「銀河の魔術師の効果を発動! このカードをリリースしデッキからギャラクシーと名のついたカードを1枚手札に加える。俺は銀河遠征を手札に加える。残った銀河の魔術師の効果を発動! 1ターンに1度、銀河の魔術師のレベルをエンドフェイズ時まで4つ上げる!」

 

レベル4→8 銀河の魔術師 攻撃力:0 (2体)

 

「銀河遠征の効果を発動。自分フィールド上にフォトンまたはギャラクシーと名のついたレベル5以上のモンスターが存在する場合、デッキからフォトンまたはギャラクシーと名のついたレベル5以上のモンスター1体を守備表示で特殊召喚する。再び現われろ、銀河眼の光子竜!!」

 

 2体に減った銀河の魔術師の間に銀河眼の光子竜現れて咆哮を上げる。

 

レベル8 銀河眼の光子竜 守備力:2500

 

「俺はレベル8の銀河の魔術師2体と銀河眼の光子竜でオーバーレイ! 3体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築、エクシーズ召喚!!」

 

 3体のモンスターが光の玉となって上空に現われた渦の中に入っていくとかカイトの近くに槍の様な物体が現われる。

 カイトはそれを片手で掴んで渦の中へと投げ入れた。

 

「逆巻く銀河よ、今こそ怒涛の光となりて姿を現わすがいい! 降臨せよ、我が魂! 超銀河眼の光子龍!!」

 

 渦から金色の爆発が起こり、フィールドに現われたドラゴンの体は黒と光り輝く赤色で形成され、翼の部分に顔のようなものが存在していた。

 

ランク8 超銀河眼の光子龍 攻撃力:4500 ORU:3

 

「おぉー!! ナンバーズハンターの場に新たなモンスターエクシーズが現われました! 超銀河眼の光子龍、まさに銀河眼の光子竜が進化した姿です!!」

 

「超銀河眼に光子龍の効果を発動! エクシーズ召喚に成功したとき、このカード以外の表側表示で存在するカードすべての効果を無効にする! フォトン・ハウリング!」

 

 ネオギャラクシーアイズの口から波紋のようなものが放たれると私の場にいるアルセイが苦しげな声をあげて体をふらつかせていた。

 

「手札からエクシーズ・トレジャーを発動! フィールドにいるモンスターエクシーズの数だけデッキからドロー出来る。モンスターエクシーズは2体、よって2枚ドローする!」

 

 エクシーズ・トレジャーかあれって普通に強いんだよね。

 ほとんどの人がエクシーズ使ってくるし、最高で5枚ドローしたな……。

 

「ネオギャラクシーアイズの効果を発動! 1ターンに1度オーバーレイ・ユニットを1つ使い、相手フィールド上のオーバーレイ・ユニットを吸収し、その吸収した数×500ポイント攻撃力が上がる!」

 

 アルセイにあったオーバーレイ・ユニットが吸収され、超銀河眼の光子龍の輝きがさらに増した。

 

ランク8 森羅の守神アルセイ 守備力:3200 ORU:1→0

ランク8 超銀河眼の光子龍 攻撃力:4500→5000 ORU:3→2

 

「さらに手札からフォトン・スピアを超銀河眼の光子龍に装備させる! このカードは装備モンスターが守備モンスターに攻撃したとき、その守備力を上回っていれば、その数値だけ戦闘ダメージを与える! 懺悔の用意は出来ているか! ネオギャラクシーでアルセイに攻撃! アルティメット・フォトン・ストリーム!!」

 

「ぐぅ、ああぁ!」

 

 アルセイが破壊され発生した爆風で顔を腕で覆い、勢いで吹き飛ばされる。

 

刹LP:3000→1200

 

「カードを1枚伏せてターンエンドだ」

 

「私のターン、ドロー。手札から薔薇の刻印を発動。自分の墓地の植物族モンスター1体をゲームから除外し、相手モンスター1体に装備させコントロールを得る」

 

「なっ、貴様!」

 

 超銀河眼の光子龍の体に薔薇の形をした刻印が浮かび上がるとこちらのフィールドに移動した。

 

「ふふふっ、これで終わり。ネオギャラクシーでダイレクトアタック」

 

「フォトン・スペクターの効果を発動! 相手モンスターがダイレクトアタックしてきたとき、このカードを除外して自分の墓地から光子またはフォトンと名のついたモンスター1体を攻撃表示で特殊召喚する! 現われろ、銀河眼の光子竜!」

 

レベル8 銀河眼の光子竜 攻撃力:3000→2000

 

「この効果で特殊召喚されたモンスターの効果は無効化され、さらに攻撃力は1000ポイントダウンする。そしてこのターン、銀河眼の光子竜は戦闘では破壊されない!」

 

 あ、明らかにあの伏せカードで何かするつもりだ……。

 うーん、どうしようか……。

 周りを見てみると見に来た子供達とかがナンバーズハンターであるカイトを熱心に応援しているのが見えた。

 

「……そのモンスターをいまさら出しても意味はない! ネオギャラクシーアイズで銀河眼の光子竜に攻撃」

 

「フォトン・ショックを発動! 自分フィールド上に存在するフォトンまたは光子と名のついたモンスター1体の戦闘によって発生する先頭ダメージはお互いが受ける!!」

 

「え?」

 

まさかの効果ダメージを与えるカード……って、これだと。

 

「ぐわああぁ!」

 

「わああぁ!」

 

カイトLP:1100→0

刹LP:1200→0

 

 戦闘破壊された銀河眼の光子竜から爆発が起こって私達は吹き飛ばされる。

 デュエルの終了を知らせる合図が鳴り響き、賑わっていた筈の観客達は驚いているのか静かになっていた。

 

「ぐっ、よくもやってくれたわね……ナンバーズハンター」

 

 痛みをこらえながら立ち上がる演技をしてカイトを睨みつける。

 

「今は引く。しかし、私は必ず戻ってくる! この世界を支配するために!」

 

 私は高笑いしながらその場から去ると我に返った観客の人たちはまた盛り上がりを見せていた。

 あー……これでよかったのかな。

 

 

 

 デュエルが終わり休憩時間になってから私はカイトたちと合流した。

 コスプレをしたままのカイトに嬉しそうにしているハルト君とオービタルとフェイカーさん、雲雀や凌牙、璃緒ちゃんも集まって話をしている。

 

「いや、まさかカイトがコスプレをしてくるとは思わなかった」

 

「……ハルトと父さんに言われてな」

 

 私がそういうとカイトはため息を吐いていまは璃緒ちゃんと話しているハルト君を見やった。

 話を聞いてみると演劇コスプレデュエルのことをしったハルト君が兄さんはコスプレしないの? という素朴な疑問から始まりフェイカーさんも交えて話をしていたら、いつの間にかカイトがコスプレをして四天王に挑戦をするということになっていたらしい。

 

「それにしてもノリノリだったね」

 

 笑っているとカイトはふんと顔を逸らしそのままオービタルの元に歩いていった。

 なんか、すこし機嫌が悪い?

 不思議に思っていると腕の袖が引っ張られて下に目を向けるとハルト君がいた。

内緒話をするように口元に手を当てていたので私は屈んで話を聞く。

 

「あのね、最後のターンで刹はわざと攻撃したでしょ? それでちょっと機嫌が悪いみたいなんだ。演劇だったから仕方ないって割り切ってはいるけど……」

 

 デュエリストとして悔しかったのか……。

 まぁ、そうだよね。わざとなんてやるほうもやられるほうも嫌だし。

 やっぱりこういうのは性に合ってないかも。雲雀にラスボス役を変わってもらおかな。

 


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