遊戯王の世界に転生したがろくな事が起きない   作:アオっぽい

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第三十話 混乱するとろくな事がおきない

ギラグ LP:4000

モンスター:No.106巨岩掌ジャイアント・ハンド

伏せ:0

 

真月 LP:1400

モンスター:なし

伏せ:1枚

 

遊馬 LP:3400

モンスター:No.39希望皇ホープ

伏せ:1枚

 

 アストラルがいなくなり遊馬君は皇の鍵を見つめていたが、おもむろに皇の鍵についている紐を首から外すと小鳥ちゃんたちのほうを向いた。

 

「小鳥、こいつを!」

 

 そういって遊馬君は皇の鍵を投げる。

 皇の鍵はバリアンズ・スフィアフィールドのバリアを通り抜けて小鳥ちゃんの手に収まり、遊馬君はアストラルを頼んだぜと告げるとまたギラグに向き直った。

 あの中にはブラック・ミストもいるんだけど……まぁ、暫くはアストラルの様子を見て欲しいと思っていたから良いけど。

 

「このデュエル、絶対に負けねぇ! 俺が必ずアストラルも真月も守って見せる!」

 

「ふん、愚かなやつめ! アストラルなしでそいつを庇いながらこの俺に勝つだと?」

 

 ギラグは鼻で笑った後、カードも伏せずにターンを終了した。

 

「僕だって、自分の身くらい自分で! 僕のターン、ドロー! 僕はシャイニング・スライを召喚! このカードはフィールド上にモンスターエクシーズがいるとき、相手は僕を攻撃できなくなる!」

 

 真月君の場に体をすっぽりと覆うマントを着て白い仮面を被ったモンスターが現われる。

 

レベル3 シャイニング・スライ 攻撃力:1200

 

 これであのモンスターを除去しなければ真月君を攻撃できない。

 ひとまずは安心といったところか……。

 

「僕はカードを1枚伏せてターンエンド! 遊馬君、これで僕は大丈夫ですから!」

 

「分かった! 俺のターン、ドロー! 俺はゴゴゴゴーレムを召喚!」

 

 体は丸っこく大きな藍色の手足がついたゴーレムのモンスターが遊馬君の場に現われる。

 

レベル4 ゴゴゴゴーレム 攻撃力:1800

 

「行け、ホープ! ジャイアント・ハンドを攻撃! ホープ剣・スラッシュ!」

 

 あ、これはまずい。

 恐らく相手の場に伏せカードがないから攻撃するチャンスだと思ったみたいだけど、さっきのギラグの言葉が本当だとしたら……。

 ホープが遊馬君の指示に従って剣に手をかけたとき、突然ホープの動きが止まってしまった。

 

「ホープ、どうした!?」

 

 動こうとしないホープに遊馬君が声をかけていたが、その様子を見ていたギラグが可笑しそうに笑い出した。

 

「お前のモンスターはすでに終わっている!」

 

「なに!?」

 

 破壊音と共にホープの左胸に大きな穴が開いた。

 ホープは開いてしまった左胸を押さえて苦しげに呻いた後、爆発を起こして破壊されてしまった。

 あの箇所って確かギラグのジャイアント・ハンドの指が貫通してたところ?

 

「まさか、さっきのジャイアント・ハンドの効果で……?」

 

「その通りだ! ジャイアント・ハンドの効果を受けたモンスターはバトルを開始したとき、破壊される!」

 

 そんな! と遊馬君が声をあげるとギラグはそれだけじゃねぇとジャイアント・ハンドのモンスター効果を説明する。

 

「さらにプレイヤーに攻撃力分のダメージを与えるのさ! ジャイアント・ハンドの恐ろしさをたっぷり味わうが良い!」

 

「そうは行かない! シャイニング・スライの効果を発動!シャイニング・スライは効果ダメージが発生したとき、そのプレイヤーのコントロールするモンスター1体をリリースすることでダメージを無効にします!」

 

 シャイニング・スライのマントの中から小さな白色の小悪魔のようなものがピコピコハンマーを持ってゴゴゴゴーレムに近づきその頭をたたくと、ゴゴゴゴーレムは壁のような形に変わってしまった。

 ジャイアント・ハンドはモンスター効果を無効化にさせる効果、だからここでモンスター効果を発動しても……。

 

「フハハハ! 馬鹿め! 俺はジャイアント・ハンドの効果を発動! 相手モンスターの効果が発動した時、オーバーレイ・ユニットを1つ使いその効果を無効とする!」

 

 ジャイアント・ハンドの人差し指からドリルが出てくると、壁の形となったゴゴゴゴーレムを粉々に破壊しその後ろにいたシャイニング・スライの体に突き刺した。

 

「さぁ、改めて食らうが良い! ホープの攻撃力分のダメージを! 五死眼光!」

 

 ジャイアント・ハンドが輝き始めると指先からビームのようなものがいくつも放たれて遊馬君に攻撃をする。

 

「ぐうわああぁ!!」

 

遊馬LP:3400→900

 

「遊馬君!」

 

 効果ダメージに加えバリアンズスフィア・フィールドのダメージによる苦痛の叫びに顔をゆがめる。

 

「結局お前がやったことは仲間は守れずに無駄にモンスターをフィールドから消した挙句、自分のモンスターさえも攻撃できなくさせちまったってことだ!」

 

 遊馬君のフィールドにはモンスターが存在しない。

 召喚権はすでに使ってしまったから特殊召喚するか、他のカードで何とかするしか方法はないか……。

 

「遊馬君、僕が余計なことをしたばかりに……」

 

「大丈夫だって、別の方法を考えるさ」

 

 大きなダメージを受けてつらいはずなのに遊馬君は真月君を責めることなく許した。

 

「俺は永続魔法、炎の護封剣を発動! このカードがある限り、互いのプレイヤーは攻撃することが出来ない!」

 

 出てきたカードから剣が飛び出してくると中央にいくつもの剣が突き刺さり、青色の炎が纏った。

 

「ただし、自分フィールド上にモンスターが召喚された場合このカードは破壊される!」

 

 これで攻撃はされなくなるけど、次の相手のターンでどう動いてくるか。

 こういうデュエルってなんでこんなに心臓に悪いんだろうか……。

 

「遊馬君、僕が状況を悪くしてるのに……」

 

「気にすんなっていったろ! 俺たちは仲間だ」

 

「仲間……」

 

 だろ? と遊馬君が首をかしげると真月君は表情を明るくさせて頷いた。

 

「てめぇら善人面しやがって、友情ごっこかよ!!」

 

 2人のやり取りが気に入らなかったのかギラグは怒りの表情を浮かべて叫んだ。

 相手からしてみれば大事な仲間を闇討ちした敵が目の前で友情を深めているのを見せられているわけだから、気持ちは分からないでもない。

 実際私は真月君のこと疑ってるから、あまり良い気分ではない。

 

「てめぇらの化けの皮ひっぺがえしてやる! 俺のターン、ドロー! 来たぜ、来たぜ!! 貴様らを葬るカードが! 俺はRUM-バリアンズ・フォースを発動! このカードはジャイアント・ハンドをランクアップさせ、カオスエクシーズを特殊召喚する! 俺はランク4のジャイアント・ハンドでオーバーレイ!」

 

 頭上に現われた薄暗い渦の中にジャイアント・ハンドは紫色の球体となってその中に入っていく。

 

「1体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを! カオスエクシーズ・チェンジ! いでよ、CNo.106! 混沌なる世界を掴む力よ、その拳は大地を砕き、その指先は天空を貫く」

 

 渦の中から黒と深緑の光の爆発を起こし、球状の溶岩が現われる。

 そこから展開されて大きな手の甲に角が生え、左側には106という数値が刻まれている手の形をしたモンスターが現われた。

 

「溶岩掌ジャイアント・ハンド・レッド!」

 

ランク5 CNo.106溶岩掌ジャイアント・ハンド・レッド 攻撃力:2600

 

 これがギラグの切り札か……。

 

「ジャイアント・ハンド・レッドの効果を発動! カオスオーバーレイ・ユニットを1つ使い、フィールドにあるこのカード以外のすべての表側表示のカードを無効にする!」

 

 掌にある目玉から光が出てくると表側表示であった炎の護封剣の炎が消え去り、剣がなくなった。

 

「炎の護封剣が!」

 

「これで貴様らを守るものはなくなった! ジャイアント・ハンド・レッド、遊馬にダイレクトアタックだ! 万死紅掌!!」

 

 ジャイアント・ハンド・レットの拳が回転すると手に炎が纏い、遊馬君に向かって振り下ろされようとしていた。

 

「罠発動、シャイニング・スタンド! このカードの効果により、相手モンスターの攻撃を無効にしバトルを終了させる!」

 

 真月君はカードの効果なのか緑色の光を纏いながら遊馬君の前に飛び出した。

 

「そしてその攻撃力半分のダメージを僕が受ける!! うわああぁ!!」

 

真月LP:1400→100

 

 半分のダメージとはいえジャイアント・ハンド・レットの攻撃を受けた真月君は吹き飛ばされてバリアンズスフィア・フィールドのバリアに叩き付けられる。

 

「真月!!」

 

「遊馬君……少しは僕、役に立てたかな?」

 

 遊馬君を庇ってダメージを受けた……真月君の残りライフはたったの100。

 此処だけ見れば真月君は良い子に見える。

 だけどこれもすべて計算のうちだったら?

 自分のライフを削ってまで庇ってくれた人に悪い感情は抱きにくい。

 ……これ真月君が本当に良い子だったら相当ひねくれてるよね、私って。

 

「馬鹿め! 自分から進んでダメージを受けてくれるとはな!」

 

 ギラグは笑っていたが、途中で何かに耐えるように顔を歪めていた。

 さっきからモンスターを召喚するたびにダメージを受けてるみたいだけど……なんでだろうか?

 

「俺はカードを2枚伏せ、手札からフィールド魔法、浸食手の森(イローション・ハンド・フォレスト)を発動!」

 

 カードが発動されると周りに蔦が出現して丸く切り取られたバリアンズスフィア・フィールドの中を覆い尽くすように蔦が絡みつく。

 隙間なく周りを覆い尽くしたことで光がなく、中は薄暗くなったがすぐに蔦に炎が付けられ少しだけ明るくなる。

 

「この効果で俺のターンが回るたびに、すべてのプレイヤーは1000ポイントのダメージを受ける!」

 

 このフィールド魔法、バーンダメージを与えるのか。

 遊馬君は900、真月君は100しかライフが残ってないから真月君か遊馬君のターンでギラグを倒さなければならない。

 

「くっ、俺たちに残されたターンは一度きり……」

 

「遊馬君、今度こそ僕に何があっても決して助けようとしないで。僕はどうなったって良い……だから!」

 

 2人がしゃべっているとギラグが苛立った様子で何をしてやがる! と叫んだ。

 

「じたばた足掻こうがもう遅い! お前らはもう終わりなんだよ!」

 

「諦めてたまるか! 僕のターン、ドロー! 僕は手札からシャイニング・ラビットを召喚!」

 

 真月君の場に目つきの悪く、タキシードを着た二足歩行のウサギが現われる。

 

レベル2 シャイニング・ラビット 攻撃力:800

 

「さらに僕は魔法カード、シャイニング・ブリッジを発動! このカードの効果によりシャイニング・ラビットは相手プレイヤーにダイレクトアタックが出来る!」

 

 シャイニング・ラビットの近くに虹が現われ、それはギラグの目の前まで続いていきシャイニング・ラビットはその虹の上に乗った。

 途中でシャイニング・ラビットの影から黒いシャイニング・ラビットが現われる。

 

「さらにこのダイレクトアタックが成功した時、敵の魔法カードも破壊できる!」

 

「そうか! 狙いはフィールド魔法か!」

 

 確かにあのフィールド魔法が破壊できれば良いんだけど、ギラグはそれを許すかな。

 

「そうはさせるか! 罠発動、バイス・ハンド! このカードは自分のフィールドにハンドと名のつくモンスターがいるとき、相手モンスター1体の攻撃を無効にする!」

 

 発動されたカードからアームが出てきて攻撃しようとしていたシャイニング・ラビットを掴んだ。

 そのせいでフィールド魔法を破壊しようとしていた黒いシャイニング・ラビットも消滅する。

 

「さらに攻撃を無効にしたモンスターの攻撃力800分のダメージをプレイヤーに与える!」

 

「そんな……!」

 

「終わりだ。地獄の炎に焼かれて、アリトへ詫びるが良い!!」

 

 焼きつく炎が真月君に向かって来ようとしている。

 これが決まってしまうと真月君は負ける……。

 炎があたり真月君の周りは煙に包まれ、暫くすると煙は晴れ青いバリアに守られた真月君の姿が見えた。

 真月君のライフは減っていなかった。

 

「罠カード、デスパレード・ガード。このカードはライフを半分支払い、そのダメージを無効にする! ぐわああぁ!!」

 

遊馬LP:900→450

 

 このフィールドだとライフコストでもダメージを受けるのか。

 本当に、遊馬君は無茶ばかりして……。

 思わず額に手を当ててため息を吐く。

 

「お前は馬鹿か!? 友情ごっこも大概にしろよ!」

 

「遊馬君! あれほど僕に何があってもかまわないでって……!」

 

「そんなこと……出来るわけねぇだろ!お前もアストラルも俺の仲間だ。だから俺は絶対に誰も、見捨てたりしねぇんだよ!!」

 

 遊馬君の意思の強い言葉を聞いて私は複雑な気持ちを抱いていた。

 真月君は恐らく、敵。

 でも遊馬君からしてみれば大事な仲間で、信用している仲間だからこそ疑うこともしない。

 まっすぐすぎるんだよな……。

 

「いくぜ。俺のターン、ドロー!」

 

「往生際の悪い野郎だ! 罠発動、デス・ハンド! このカードはモンスターをコントロールしていないプレイヤーがドローした時、発動しそのプレイヤーの手札1枚につき300ポイントのダメージを与える!」

 

 遊馬君の手札は今のドローを合わせたら3枚、よって900のダメージを受けることになる。

 

「これで本当の終わりだ!! 九十九遊馬!!」

 

 黒い手がカードから飛び出して遊馬君に襲い掛かろうとする。

 そのとき、真月君は一度私のほうを見た後動き出した。

 

「罠発動、シャイニング・リボーン!! 自分フィールドのモンスター2体をリリース。そして遊馬の手札をすべて墓地へ送る!」

 

 なんだか真月君の雰囲気が変わった?

 ていうか遊馬君のこと呼び捨てになってる……。

 驚いている間にも遊馬君に迫っていた黒い手は消滅した。

 

「相手に手札がなければ、デス・ハンドの効果は意味を成さない」

 

「貴様!!」

 

「さらにシャイニング・リボーンの効果で遊馬の墓地からモンスターエクシーズを遊馬の場に特殊召喚! 蘇れ、No.39希望皇ホープ!!」

 

 紫色の魔方陣が描かれた中心の穴に39の数値が浮かび上がるとそこからホープがフィールドから出てきた。

 

ランク4 No.39希望皇ホープ 攻撃力:2500 ORU:0

 

「ぐっ……No.まで呼び戻しやがった!」

 

「そしてシャイニング・リボーンの最後の効果。自分の手札1枚を相手フィールドにセットする! 遊馬、これを使え!」

 

 真月君がカードを投げ、遊馬君は困惑しながらも受け取ったカードを見る。

 

「え……これはRUM-リミテッド・バリアンズ・フォース?」

 

「なっ!」

 

 遊馬君が呟くように言った言葉は私の耳に届いていた。

 バリアンだとは予想していた。でも此処でその正体を明かしたのはなんで?

 

「バリアンズって、これは……」

 

「バリアンだと?」

 

 遊馬君は真月君に視線を向けるが彼はまっすぐ遊馬君を見て頷いた。

 ギラグも真月君がバリアンだという事実に驚きを隠せないでいた。

 

「真月、何故お前が……」

 

「説明は後だ。このデュエルに勝って、アストラルを助けたいんだろ?私を信じてくれ、遊馬」

 

 いままで見てきた真月君とは思えないほど凛とした姿に驚きを隠せないでいる。

 遊馬くん、どうするつもりだろう。

 やっぱり真月君から渡されたバリアンのカードを……。

 

「かっとビングだあぁ!! 俺えぇ!! 俺はRUM-リミテッド・バリアンズ・フォースを発動! このカードは自分フィールドにいるランク4以下のモンスターエクシーズを選択しそのモンスターよりランクが1つ上のカオスと名のつくモンスターエクシーズに進化させる! 俺は希望皇ホープでオーバーレイ・ネットワークを再構築! カオスエクシーズ・チェンジ!」

 

 ホープの姿は召喚される前の姿へと変わり紫色の球体となって頭上に現われた渦の中に入っていく。

 そして黒と深緑色の光が爆発するように穴から漏れ出した。

 

「いでよ、CNo.39! 混沌を統べる赤き覇王。悠久の戒め解き放ち赫焉となりて闇を打ち払え!降臨せよ、希望皇ホープレイV!」

 

 白と黄色のカラーリングだったホープの体はバリアンの力で変化してしまったのか黒味の強い濃紺色を基調に、深紅と銀色の配色が混じった闇を彷彿させるカラーリングに変わり果ててしまった。

 デザインもより鋭角的にしたようなものになっている。

 

ランク5 CNo.39希望皇ホープレイV 攻撃力:2600 ORU:1

 

「あれが……ホープ?」

 

 名前にある希望とは相反するような色合いになんだかホープが闇落ちしたような気分になる。

 

「馬鹿な、No.をランクアップだと!? そんな力を人間が持っているはずが……!」

 

「いけ、遊馬!!」

 

「おう!ホープレイVの効果発動! 1ターンに1度、カオスオーバーレイ・ユニットを1つ使ってフィールド上のモンスター1体を破壊する! 行け、ホープレイV! ジャイアント・ハンド・レットを破壊しろ!」

 

 ホープレイVは頭上に舞い上がると腰にある形が異なる大きな2つの剣を構える。

 

「ホープレイV! Vブレードシュート!!」

 

 持っている剣を合体させて1つの剣にするとホープレイVはそれを投げる。

 横回転しながら剣はジャイアント・ハンド・レットを切り裂き、破壊した。

 

「さらに破壊したモンスターの攻撃力分、相手にダメージを与える!」

 

「う、ぐわあぁ!」

 

ギラグLP:4000→1400

 

「まだだ、ホープレイV! ギラグにダイレクトアタックだ!!」

 

 え……相手モンスターの破壊でバーンダメージを与えても攻撃が可能なの?

 普通なら攻撃できないとか制約があるんだけど。

 便利な効果に驚いているとホープレイVは両手に持つ輝く剣を構えてギラグに迫っている。

 

「ホープ剣Vの字斬り!!」

 

「うわあああぁ!!」

 

ギラグLP:1400→0

 

 デュエルが終える合図が鳴り響き、周りを覆っていた蔦とフィールドにいたホープレイVが消える。

 攻撃を受けたギラグは大きなダメージを負っているらしくアストラルのように点滅していた。

 警戒しながら私は遊馬君と真月君に近づく。

 

「き、貴様……貴様は一体?」

 

「いずれ分かるさ……いずれな」

 

 ギラグの問いかけに真月君は口元を吊り上げて意味深に返答した。

 するとギラグの近くに赤色の粒子が集まってアーカイドが出現した。

 

「あ、アーカイド……」

 

「アーカイド!!」

 

 アーカイドの出現に驚きながらもギラグはか細い声で彼の名を呼ぶと同時に真月が警戒するように身構えていた。

 

「ぎーちゃん、迎えに来たよ。あらーこっ酷くやられちゃって」

 

 笑いながらもアーカイドはワープするための穴を出現させてそこにギラグを放り込み、こちらに視線を向ける。

 いま遊馬君はデュエルのダメージを受けている。

 やるなら私が相手するしかない。

 

「まさか君達の仲間にそいつが紛れ込んでたとは思わなかったなー……これはベクちゃんに伝えておいたほうが良いかもね」

 

「待て、アーカイド!!」

 

 そう言って背を向けたアーカイドに向かって真月君が叫ぶ、アーカイドは顔だけをこちらに向け口元を吊り上げた。

 

「君の相手はまた今度ねー。いま僕は準備で色々と忙しいから」

 

 私を一瞥した後、アーカイドは穴の中に吸い込まれていきその場からいなくなった。

 敵がいなくなり一息ついたところで真月君は遊馬君の名を呼んだ。

 

「君が友を思う気持ちは本物だ。私もたった今から君を友と呼ぼう、真の友と」

 

「ちょっと待ってくれよ! 俺、何がなんだかさっぱりわかんねぇ!」

 

 別の人格になったような真月君の変わり具合に遊馬君は困惑の表情を浮かべている。

 

「そうだね。真月君、説明してくれるよね?」

 

 私が頷いて聞いてみると真月君は顔をうつむかせた後、しっかりと頷いた。

 

「私はバリアンズ・ガーディアンだ」

 

 

 

 真月君が自分はバリアンズ・ガーディアンだと告白した後、スフィア・フィールドは解除され小鳥ちゃんたちと合流した。

 そのときには真月君の態度はいつもの良かれと思ってが口癖のあの性格に戻っていた。

 その後、私と遊馬君と真月君は人気の少ない公園に集まり真月君の話を聞いた。

 話をまとめるとバリアンには善と悪があり真月君の任務は悪のバリアンであるアーカイドなどを排除すること。

 他のみんなに自分の正体を告げないのはそういう決まりらしい。

 この話を遊馬君と真月君が話しており私は一言もしゃべらずに聞いていた。

 

「よっしゃ!これから俺もバリアン警察のかっとビング」

 

「ねぇ、真月君」

 

 テンションが上がっている遊馬君の言葉を遮り、私は真月君に声をかけた。

 

「アリトを闇討ちしたの?」

 

 出来るだけ表情を出さずに問いかけると遊馬君は熱から冷めたように動きを止めた。

 

「……あぁ。本来なら仕留める筈だったが、しくじってしまったのだ」

 

「な、何でだよ。だってアリトは!!」

 

 思わず声を荒げる遊馬君に真月君は諌めるように名前を呼び、肩を掴んだ。

 

「それはただの見せかけだ。やつも悪のバリアン。あいつらは平気で人を騙すようなやつらなんだ」

 

「でも……」

 

「遊馬、私を信じてくれ!」

 

 私をよそに2人で話しているのを見ていた。

 というか傍から見ると1人の少年がもう1人の少年の肩を掴んで見詰め合っているという構図なんだが……。

 

「悪いけど、もう1つ質問させてくれる?」

 

 声をかけると2人はこちらを向いた。

 

「なんで結に告白したの?」

 

 じっと見つめていると真月君は遊馬君の肩から手を離し、悲しげに目を伏せた。

 

「バリアンズ・ガーディアンである私の周りには常に危険が伴っている。そのことは分かっている……だが!」

 

 自分の胸の辺りを片手で握り締め、顔を上げる。

 目はかすかに潤み、いまにも泣き出してしまいそうな表情をしていた。

 

「この思いを、留めることが出来なかった……!」

 

「真月……」

 

 なんだか、わけが分からなくなりそうだった。

 それから遊馬君と真月君がしゃべっているのを眺め、解散となったので家へと帰った。

 紅茶を入れて一息ついた後、真月君が話していた内容を思い出す。

 バリアンズ・ガーディアン。正直この役職が胡散臭いのだが、アーカイドが警戒しているそぶりを見せていた。

 まぁ、アーカイドは息をするように嘘を言いそうだから信じない方が良いかもしれない。

 アリトの闇討ちの件に関してはどうにもいえない。

 アリトという人物がどんな性格なのかしらないし。

 結に関しては完全に信用しないほうがいいだろう。

 色々と考えた結果、やはり真月君を警戒し続けるというものとなった。

 

「さて、ブラック・ミストご飯なにが……」

 

 いいかと問いかけようとしたとき、私はあることに気づいてしまった。

 ……ブラック・ミスト、皇の鍵の中にいたままだった。

 


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