遊戯王の世界に転生したがろくな事が起きない   作:アオっぽい

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第二十九話 初心者とのタッグはろくな事がおきないみたいだ

 私達はあの後、そのまままっすぐ家へと帰った。

 誰かに襲撃されることもなく、家にたどり着くころには日が落ちていた。

 いつも通り料理を作ってブラック・ミストと食事をし、リビングで一息入れたときだった。

 

「ミザエルが言ったこと、気にしてるのか」

 

 突然そんなことを言われて固まってしまった。

 テレビを見ていたはずのブラック・ミストはリモコンで電源を消し、じっと私を見ている。

 

「……顔に出やすいのかな?私って」

 

「さぁな。ただ、今のお前はVに言われたときと同じ顔してるぞ」

 

 あと心の闇が増えてると付け足されて納得してしまった。

 そういえば心の闇は悩み事とかにも含まれるんだっけ……それならすぐにばれるよなぁ。

 

「お前はアイツと同じじゃない」

 

 ブラック・ミストははっきりとそう言うが、私はそうは思えなかった。

 

「一緒だよ」

 

 デュエルに対しての気持ちとか心構えとか価値観も恐らくアーカイドと一緒だ。

 私達にとってデュエルはただの遊びでしかない。

 遊びだから勝っても負けてもどちらでも良い。絶対に勝とうという気持ちが薄い。

 皆はそれを分かっていても普通に接してくれている。

 デュエルに対してプライドが高い人からしてみればミザエルのような反応をしても可笑しくないのに。

 

「違う」

 

 ブラック・ミストはそれを察しているはずなのに尚否定した。

 

「確かにプレイングは一緒だ。お前らのデュエルは先が見えねぇから恐怖を感じた。だが、カードに対する気持ちは違うだろ。カードが反れてないか定期的に確認したり、傷つかなねぇようにスリーブに入れたり、使わねぇカードはフォルダに入れたりして……デュエルをするコレクターでもそんなことしねぇよ!」

 

 正直むず痒い! となぜか怒鳴られてしまった。

 普通、だと思うんだけどな……。

 でもこちらのデュエリストはスリーブに入れたりする人って滅多にいないんだよね。

 

「アイツはカードのことをただの紙程度にしか思ってない。刹は違うだろ?」

 

私は腰に付けているデッキケースからデッキを取り出し、一番上のカードを軽く撫でる。

 

「私は……はじめは何も思ってなかった。でも、Vに言われて雲雀に指摘されて自分のデュエルを振り返るとピンチのときとか欲しいと思ったカードが来てくれていることが、分かったんだよね。だから今では感謝してるし、これからも頑張ってくれると嬉しいなって……なに?」

 

 私なりに思っていることを語っているとブラック・ミストが途中で額に片手を当てていたので首をかしげる。

 

「いや、なんかズレてるような気がしてな……。でも、あと少しなんだよ」

 

 ブラック・ミストは何がとは言わなかったが、すぐに理解した。

 デュエル中で楽しむ心や勝ちたいと思う執念とかそれがまだないのだろう。

 

「最後のときに教えてやるよ。真のデュエリストのデュエルってやつを。そうすれば刹も嫌って言うほどに分かるだろうな」

 

 口元を吊り上げて告げられた言葉に思わず固まる。

 

「……最後って?」

 

「言ってなかったか?アストラルの使命が終えたら、俺たちはアストラル世界に戻る」

 

 使命とかアストラル世界に戻るとかそんなの初耳だし。

 でも、そっか……出会いがあれば別れもあるって言うけど。

 ブラック・ミストと離れるなんて想像もしてなかったからな。

 

「おい、そんな顔してんじゃねぇよ。永遠の別れってわけでもねぇのに」

 

「いや、想像したら寂しいなって思って……」

 

 素直に言ったら触手で軽く額をたたかれ、気がついたときにはブラック・ミストはそっぽを向いていた。

 

「最後のデュエル、楽しみにしてるね」

 

 私がそういうとブラック・ミストは小さな声で返事をしていた。

 

 

 

 あれから日がたち、遊馬君たちは無事に退院できた。

 退院した次の日にギラグに洗脳された人たちから襲撃を受け、アリトというバリアンに助けられたという良く分からない状況になっていたらしい。

 その後、アリトと遊馬君がデュエルをしたらしいが私たちがその場に駆けつけたときには既にデュエルは終わっていた。

 しかも度重なるバリアンとの戦いとバリアンズ・スフィアフィールドの影響でアストラルが倒れてしまった。

 ブラック・ミストに聞いてみたところ、バリアンズ・スフィアフィールドには私達の体に少しずつダメージを与えていたらしい。

 アストラルの場合はダメージを受ける量が多いみたいで、それに加えてデュエルでのダメージがあり倒れてしまったというところみたいだ。

 ブラック・ミストもあの中にいるとアストラルほどではないが私達よりもダメージを受けるといっていた。

 これからあのフィールドで戦う場合は気をつけたほうが良いみたい。

 その日は珍しく1人で帰ろうと校門に差し掛かったとき、小鳥ちゃん、鉄男君、真月君が慌てた様子で私の横を走っていった。

 

「どうしたんだろう……」

 

『普通じゃねぇな。追いかけるか?』

 

 私は頷いて後を追いかけるように走り出した。

 のだが、体力的にずっと走り続けることは出来ず何度か休みながらブラック・ミストに案内されてたどり着いたのは人気が少ない廃工場だった。

 そこには小鳥ちゃんたちの他に遊馬君、奥のほうに怒りの表情を浮かべているギラグがいた。

 

「バリアンズ・スフィアフィールド、展開!」

 

 ギラグはミザエルが持っていたあの黒いキューブを投げる。

 恐らく遊馬君とギラグがデュエルをする。アストラルが負傷している今、1人でデュエルさせるのは危険だ。

 そう思い立って私は走り出した。

 フィールドが展開され始め、周りのものが壊れ瓦礫が落ちるなか遊馬君とアストラルそして真月君が光の粒子となって中に入る。

 

「え?刹さん!?」

 

 小鳥ちゃんの驚いた声を聞きながら、広がりつつある赤いバリアに触れると私もスフィア・フィールドに入ることが出来た。

 気がついたら空中に浮かび上がっており、近くには遊馬君、アストラル、真月君がいた。

 その向かい側にはギラグが現われる。

 

「なっ!黒峰刹!?いつの間に」

 

「刹、なんで此処に!?」

 

 この場にいる全員が驚いている中、私は走った影響で息が上がっておりきちんとしゃべれるまで待ってから話した。

 いや、だって学校から廃工場まで結構遠かったし……。

 

「小鳥ちゃんたちが走っているのが見えてね。追いかけてきてみれば、こうなってたから」

 

 まさか入れるとは思わなかったけどね。

 ギラグは舌打ちをした後、真月君と遊馬君を指差した。

 

「わりぃが今用があるのはこいつらだ!黒峰刹、お前は後で相手をしてやる!」

 

 こいつらということは2対1のデュエルをするってことか……。

 真月君のデュエルの強さは知らないけど、2対1ならなんとか大丈夫かな。

 

「なら、私はここで見ていても良いよね?」

 

 私の質問にギラグは頷き、真月君をにらみつけた。

 

「真月、よくもアリトを闇討ちしやがったな!このフィールドでてめぇをズタズタにしてやる!」

 

「一体何のことです!?僕がなにを……」

 

 アリトって確かこの前遊馬君とデュエルをしたバリアンだったと思うけど。

 その人を真月君が闇討ちをした……ギラグは嘘をつくタイプじゃないことは分かっている。

 

「やはり真月は黒か」

 

 エクストラデッキからブラック・ミストが出てきて私に聞こえるように呟いた。

 

「ブラック・ミスト、外に出てていいの?」

 

「少しぐらいなら平気だ。それより、アストラルだな」

 

 いや、真月君もいるからそれも含めてなんだけど……まぁ、真月君が黒だったらブラック・ミストのことは知ってると思うし。大丈夫か。

 ブラック・ミストにつられてアストラルに目を向けるとアストラルはこのフィールドのせいかつらそうな顔をしている。

 

「下手すれば、デュエル中に倒れるだろうな」

 

「それってまずいんじゃ……」

 

「アイツは聞きゃしねぇよ。遊馬と一緒にデュエルをする」

 

 バリアンとの戦いは命がけだから仕方ないとはいえ、倒れたら元も子もないと思うんだけど。

 ブラック・ミストと話している間にも2人はデュエルディスクを展開しDゲイザーを装着した。

 

「バリアル・フォーゼ!!」

 

 ギラグがミザエルと同じようにそう叫ぶとサスペンダーの金色の金属部分が外れて上半身の服が破けた。

 胸の辺りが赤く輝くとギラグの体に炎が纏い、姿が変わってくる。

 頭には人間だったころと同じ緑色のモヒカンに灰色の仮面をつけ、茶色の首元を覆うタイプのライダースーツのような服を着ている。

 突っ込んじゃ、駄目……うん、突っ込んではいけない。

 ARビジョンが展開され私もDゲイザーを装着した。

 

「「「デュエル!」」」

 

 始まる前にギラグからデュエルの説明をされる。

 このデュエルはバトルロイヤルルールで3人とも最初のターンは攻撃できない。

 そして先攻はギラグとなった。

 

「まずは俺のターンだ! ドロー! 俺はファイヤー・ハンドを召喚!」

 

 ギラグの足元から炎が出てきて覆うように燃え盛る。

 炎は頭上へと浮かび上がると炎を纏った手のモンスターが現われる。

 

レベル4 ファイヤー・ハンド 攻撃力:1600

 

 ファイヤー・ハンドの下から機械じみた手が出てくるとギラグの肩を掴んだ。

 モンスターが肩を掴んだ瞬間苦しげな声をあげている。

 モンスターを自分に装備させたの? 一体何のために……。

 

「貴様たちはこの俺のすべてをかけて倒す! 骨も残さぬよう、焼き尽くしてやる!!」

 

 ファイヤー・ハンドの手が開かれたときに突風が吹き荒れて腕で顔を覆う。

 ただのレベル4モンスターなのに、此処まで……。

 

「俺はカードを1枚伏せて、ターンエンド!」

 

「遊馬君、僕から行きます!」

 

 真月君からやるのか、どんなデッキを使うのかわからないけど大丈夫だよね?

 

「僕のターン、ドロー! 僕だって、遊馬君のお役に立ちます! まずは守備固めだ。僕はシャイニング・ボンバーを召喚!」

 

 真月君の場にオレンジ色の潜水服とヘルメットが繋がった格好をしているモンスターが現われる。

 その手には下は四角の箱でT字で押すタイプのスイッチを握っている。

 

レベル3 シャイニング・ボンバー 攻撃力:0

 

 シャイニング・ボンバーを攻撃表示か……。手札にオネストとか、何か伏せカードで対策するのかな。

 そんなことを考えていると遊馬君とアストラルが真月君のプレイングに驚いており、真月君はしまった! と声をあげた。

 

「うっかり攻撃表示で出してしまいました……」

 

「「は?」」

 

 私とブラック・ミストは揃って声を零した。

 暫く理解が出来なかったが、嫌な予感が頭の中をよぎる。

 つまり、真月君はデュエル初心者だということ。

 

「こいつは傑作だ! 攻撃力が0のモンスターを攻撃表示で召喚して守備固めだと?」

 

 ギラグは真月君の致命的なプレイングミスに嘲笑っている。

 シャイニング・ボンバーの効果は戦闘で破壊されたとき、全体にバーンダメージを与えるというもの。

 これを守備表示で出していれば意表は付けたかもしれないけど……。

 でも、表側守備とか出来ないのに裏側守備と攻撃表示を普通間違えるかな。

 

「なんだかわざとくさいな」

 

「やっぱりそう思う?」

 

 周りには聞こえないように会話をする。

 こんな基本的なことを間違える人なんてそういない。

 その間にもアストラルと遊馬君が真月君のプレイングミスについて話をしている。

 

『遊馬、これは基本中の基本だぞ。もっとミスをした彼に……』

 

「ミスなんて誰にでもある! 俺だってあるしさ」

 

「遊馬君……」

 

 真月君は不安げな表情を浮かべ、遊馬君は安心させるように明るい笑顔を見せて真月君を元気付けた。

 

「うじうじすんなって。失敗してもかっとビングだ! 真月!」

 

「は、はい!」

 

『遊馬、今我々が相手にしているのはバリアンだ。このミスは必ず後で響いてくる』

 

 アストラルはそう忠告するが、遊馬君はだからこそ必ず真月君を守るとそう告げていた。

 これは少し、まずい状況じゃないんだろうか。

 2人の仲が簡単に悪くなるとは思えないけど、意見がすれ違ってミスをしなければ良いんだけど。

 

「僕はカードを1枚伏せて、ターンエンドです!」

 

「いくぜ! 俺のターン、ドロー! 俺はドドドバスターを特殊召喚!」

 

 2つのトゲが生えた兜を被り、その手には大きなモーニングスターが握られている。オレンジ色の鎧を身にまとった男性型のモンスターが遊馬君の場に現われた。

 

レベル6 ドドドバスター 攻撃力:1900

 

「このカードは自分フィールドにモンスターがいない時、レベルを2つ下げることで特殊召喚できる!」

 

レベル6→4 ドドドバスター 攻撃力:1900

 

『待て、バリアンの狙いはNo.だ! 今は守備を固めるんだ!』

 

「そんなことしてたら真月が攻撃されちまう! 俺が真月を守らないと駄目なんだ!」

 

 アストラルは悲しげに顔を伏せるが、次の瞬間また苦しそうに顔を歪めていた。

 

「チッ。意見が割れてるんだったら、皇の鍵に入っていれば良いものの……」

 

 たしかにブラック・ミストの言うとおり、いつも通りアストラルに指示をされながらデュエルをするのならまだ分かるが今は遊馬君が自分の判断でデュエルをしている。

 こういってはなんだけど、1人でやるならアストラルは鍵の中とやらに入っていたほうが良いと思う。

 すごく具合悪そうだし、あまり無理はして欲しくない。

 

「さらに俺はガンバラナイトを召喚!」

 

 両腕に盾をつけ、甲冑を身にまとっている男性型モンスターが現れる。

 

レベル4 ガンバラナイト 攻撃力:0

 

「俺はレベル4のドドドバスターとガンバラナイトでオーバーレイ!」

 

 2体のモンスターはオレンジ色と黄色の光と玉となって渦の中に入っていき、暫くすると光の爆発を起こす。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚! 現われろ、No.39希望皇ホープ!」

 

ランク4 No.39希望皇ホープ 攻撃力:2500

 

 確かにホープの効果があれば攻撃されても無効にすることが出来る。

 でも、相手もその効果を知ってるから無効化にするカードを用意しているはず。

 遊馬君、デュエルでは絶対にホープを出すからなぁ……。

 

「俺はカードを1枚伏せて、ターンエンド!」

 

「フフフ、早速No.のお出ましか。俺のターン、ドロー! 俺はアイス・ハンドを召喚!」

 

 周りに吹雪が吹き始め、出てきたのは氷で出来た手の形をしたモンスターだった。

 

レベル4 アイス・ハンド 攻撃力:1600

 

 アイス・ハンドはファイヤー・ハンドと同じように下の部分から機械じみた手を出してギラグの左肩を掴んだ。

 ギラグの体に赤い電流が走っているのが見える。

 

「俺はレベル4のファイヤー・ハンドとアイス・ハンドでオーバーレイ!」

 

 2体のモンスターはクロスさせるように腕を曲げると青色と赤色の光の玉となって頭上に現われた渦の中に入っていく。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!」

 

 渦の中から炎が噴出してギラグに襲い掛かっているように見えた。

 

「この世のすべてを握りつぶせ! No.106巨岩掌ジャイアント・ハンド!」

 

 上下に緑色のパーツをもった岩状の物体から開かれて手の形へと変わり、手の平と指の先に瞳に似たものがついている。

 

ランク4 No.106巨岩掌ジャイアント・ハンド 攻撃力:2000 ORU:2

 

 ランク4のモンスターなのに意外と攻撃力が低い?

 もしかしたらモンスター効果が強力なのかも……。

 

「卑怯者の真月よ。アリトの仇をとらせてもらうぜ! いけ、ジャイアント・ハンド! シャイニング・ボンバーを叩き潰せ!」

 

「うわああぁ!!」

 

 ジャイアント・ハンドがシャイニング・ボンバーへと襲い掛かろうとしたとき、その迫力に真月君は悲鳴を上げる。

 

「ホープの効果を発動! オーバーレイ・ユニットを1つ使い、モンスター1体の攻撃を無効にする! ムーン・バリア!」

 

 ホープは自分の翼を盾へと変形させて攻撃に防御しようとする。

 

「ジャイアント・ハンドのモンスター効果を発動! 相手モンスターの効果が発動した時、オーバーレイ・ユニットを1つ使うことでその効果を無効にする! 食らえ! 秘孔死爆無惚!」

 

 ジャイアント・ハンドの人差し指にドリルのようなものが生えてホープを突き刺した。

 ホープが展開していた盾は元の翼に戻ってしまった。

 

「さらにジャイアント・ハンドがフィールドにいる限り、貴様のモンスターは効果を使えない!」

 

「だが、攻撃力はホープのほうが上だ!」

 

「そう思うなら攻撃してみろ! そのときがお前の最後だ!」

 

 あのモンスターにはもう1つの効果があるってこと?

 普通に考えたらそうだと思うんだけど、遊馬君はどうするんだろう。

 焦って無策のまま攻撃しないと良いんだけど。

 

「そのときがくれば分かるさ。だが、今は腐れ根性の卑怯者を叩き潰すのが先だ! さぁ、ジャイアント・ハンド!今度こそシャイニング・ボンバーを叩き潰せ!」

 

 ジャイアント・ハンドがシャイニング・ボンバーに迫ると手の平からオレンジ色の波紋が飛び出し、それがシャイニング・ボンバーを破壊した。

 

「うわああぁ!!」

 

真月LP:4000→2000

 

 真月君は吹き飛ばされてスフィア・フィールドの壁に叩きつけられる。

 

「シャイニング・ボンバーの効果を発動! このモンスターは破壊されたとき、相手に600ポイントのダメージを与えます!」

 

「あれ?」

 

 効果の説明に私が首をかしげるとブラック・ミストがどうした? と声をかけてきた。

 

「いや、シャイニング・ボンバーの効果は破壊されたとき、すべてのプレイヤーに600ポイントのダメージを与える効果だったような」

 

「なんだと?」

 

「えっ……す、すべてのプレイヤーに……?」

 

 私が言った言葉が聞こえたのか真月君は体を震わせていた。

 まぁ、カードの効果を間違えて覚えてしまうこともたまにはある。

 カードの効果を履き違えて覚えてしまうこともあるし、これはまだ許せる範囲だけど……真月君だからなぁ。

 

「貴様、自分のモンスターの効果もまるでわかってねぇようだな。罠発動、リヒューズ・ハンド! このカードは自分フィールド上にハンドと名のつくモンスターがいるとき発動できる。自分が受ける効果ダメージを無効にする!」

 

「そんな!?」

 

 これだと遊馬君たちがダメージを受けるだけか。

 墓地から現われたシャイニング・ボンバーは両手で握っているスイッチを押すと爆発を起こした。

 

「「「ぐわああぁ!!」」」

 

真月LP:2000→1400

遊馬LP:4000→3400

 

 3人は爆発によって吹き飛ばされスフィア・フィールドの壁に叩きつけられた。

 これはまずいよな……。

 普通のデュエリストでも誰かを守りながら戦うのは難しいこと。

 真月君のミスを遊馬君が慰めているとアストラルはダメージが大きかったのかまだライフが3400だというのに体が点滅していた。

 

『やはりこのデュエル、彼を守りながら戦うのは危険だ』

 

「でも、でも……。それじゃあ、真月を見捨てろって言うのか!」

 

『遊馬、君の気持ちは分からないでもない。だが……』

 

 遊馬君の仲間を大切にするその気持ちは確かに良いものだけど、こういう場面では弱点となる。

 そのせいで勝てるデュエルも勝てなくなってしまう。

 

「だがもしかしもねぇ! 俺は真月を見捨てねぇぞ!!」

 

 アストラルの言葉を跳ね除けて遊馬君は叫んだ。

 その瞬間、アストラルの体は崩れ落ちて倒れこんでしまった。

 

「アストラル!?」

 

「これ以上のデュエルは無理だな」

 

 ブラック・ミストは遊馬君たちの下に飛んでいき、アストラルに肩を貸して立ち上がらせた。

 

『まってくれ、ブラック・ミスト……遊馬に言いたいことが』

 

「……さっさと済ませろよ」

 

 ぶっきらぼうにそう告げるとアストラルはすまないと一言告げて遊馬君に顔を向ける。

 

『遊馬、どうやら私が付き合えるのは、ここまでのようだ。ギラグ、彼の実力はアリトにも匹敵する。共に戦えずにすまない……君にカードを託す』

 

 言い終えたと判断してブラック・ミストはアストラルと一緒に光の粒子となって皇の鍵の中へ入っていった。

 ブラック・ミストがアストラルについてるから良いけど、遊馬君はアストラルがいない状況で真月君を守りながら戦えるのかな……。

 




今回は全部書いてしまうと長くなりそう&投稿が遅くなりそうだったのでデュエルの途中で区切りました。
さて次はよかれ警部が出てくるのか?

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