ただダラダラとした話が展開されているだけなのでそういうのはちょっと…と思う方はご注意を。
あの出来事から私達と璃緒ちゃんとの距離も縮まり放課後や休みの日に女の子同士で買い物や甘いものを食べに出かけたりするようになった。
やはりこういうことは女の子同士で行ったほうが楽しいし璃緒ちゃんとは話が合うからあっという間に仲良くなることが出来た。
今日も放課後、廊下を3人で歩きながら話をしていた。
「ねぇ、この後ケーキでも食べに行きません?」
璃緒ちゃんは目を輝かせながらそう問いかけて来たので私と結は頷く。
「たしか学校の近くにあるケーキ食べ放題のお店、デュエルで後攻1キルしたら30%オフだって宣伝してたよ」
「あのお店のケーキおいしいし、そこにしようか」
でも店員とデュエルして30%オフか……相手のデッキはロック系のデッキかもしれない。
結の話だと4人組みまでで1人代表で店員とデュエルをすれば良いみたいだから難易度高めかも。
「それで誰がデュエルを……」
そう言い掛けて2人がじっと私を見ていることに気づいて苦笑いを浮かべる。
やっぱり私がやるのか……。
「刹、頑張ってくださいな!」
「私達のお財布のために!」
まぁ、あのお店ってケーキとかおいしいけど学生の身からしてみればちょっと値段が高めなんだよね。
しょうがない2人にために一肌脱ごうか。
「そういえば、ブラック・ミストは甘いものは平気ですの?」
「あぁ、平気だよ。というか甘いものが好物なんだよね」
ご飯の後は必ずといって良いほどデザートを要求してくるし。
ちなみに璃緒ちゃんにはすでにブラック・ミストのことを話してあり、お互いに自己紹介もしている。
「あら、でしたら今度食べに行くときは個室があるお店にしたほうがよろしいかしら?」
「いや、ブラック・ミストって結構食べるからお店で食べないようにしてるんだよね」
璃緒ちゃんの言葉に私は即座に首を振る。
もしお店でご飯を食べた日には財布の中身が大変なことになる。
食べ放題なら良いけど、食べ放題のお店で個室があるのはここら辺にはない。
「確かにいつも食べてるお弁当も大きいよね……」
「うん、だから……」
話を続けようとした時、近くの教室から言い争うような声が聞こえてきた。
この雀女! やら化け猫娘! とか言っている。
「この声、小鳥ちゃんとキャットちゃんかな?」
「どうしたのかな? もしかして、喧嘩とか……」
「行ってみましょう」
近くにある教室から聞こえて来たので私たちが教室に入ると小鳥ちゃんとキャットちゃんがにらみ合っており、周りには何とか落ち着かせようとしている男子1年組みがいた。
「皆さん、どうしたの?」
「り、璃緒さん!」
璃緒ちゃんが先陣きって問いかけると鉄男君が頬を赤くしてそうだ! と声をあげた。
「マスコットガール、璃緒さんにやってもらったら?」
マスコットガール?
もしかしてこの状況になったのってそれを決めようとしたのが原因だったり?
「待って! シャークのおまけのその女がどうしてマスコットガールに!?」
「おまけ?」
キャットちゃんの言葉に璃緒ちゃんはぴくっと反応して一歩前に出た。
「喧嘩を売っているのでしたら、買いましてよ」
あれは完全に怒ってる。璃緒ちゃんって凌牙関係のことになると沸点が低いからな……。
「鉄男君、余計なことを……。はっきり言いますが」
「鉄男と璃緒さんじゃ美女と野獣ウラ!」
「な、なんだと!?」
孝君と徳之助君の言葉に鉄男君が怒ってそこから3人の取っ組み合いの喧嘩が始まり、それにつられて小鳥ちゃん、キャットちゃん、璃緒ちゃんも喧嘩をし始めてしまった。
カバンやら教科書やらが飛び交い、途中でバレーボールが結に向かって飛んで来たので叩き落とす。
「まったくもう……こういうのは雲雀のほうが得意なのにな」
「だ、大丈夫?」
「まぁ、がんばってみる」
雲雀なら説教をして相手に精神的ダメージを与えまくってその場で仲直りさせるけど、今は雲雀がいないから私がやるしかないか。
私は思い切り息を吸って口を開いた。
「やめなさい!!」
大声でそう怒鳴りつけるとみんなの動きは時間が止まったかのように固まった。
「せ、刹さん……」
誰かが私の名前を呼ぶと同時に私は腕を組んで皆に近づいた。
心なしか真月君を除く1年組の表情が蒼白になっていっているような気がする。
「座りなさい」
「せ、刹さんこれは……」
「座りなさい」
「あの、刹さん……」
小鳥ちゃんとキャットちゃんが何かいいたげ口を開くが、私はそれを遮って同じ言葉を繰り返し、もう一度強調して言い放った。
「座りなさい」
「はい……」
喧嘩していた組はそろって返事をすると教室の後ろにある空いているスペースに並んで正座をした。
座りなさいとは言ったけど、正座をしろとは言ってないんだよね。
あれ? なんか前にもこんなことがあったような……。
『観察結果、刹は怒らせると恐ろしい……記憶しておこう』
いつの間にか現われたアストラルの呟きを聞きながら私は順番に説教を始めたのであった。
「それで、あれで仲直りできたのかよ」
「たぶん出来てない」
夕食のデザートであるマドルチェ・シャトー店のティラミスを食べながらブラック・ミストは聞いてきた。
私の説教は30分ほどで終わり、時間も遅かったのでその日はケーキバイキングに行くことはなくそのまま帰ってきた。
帰るとき、皆は一度も顔を合わせることなく帰ってしまったので恐らく私の目論見は失敗に終わっただろう。
「はぁ? じゃあ、説教した意味ねぇじゃん」
「うっ、おっしゃる通りで……」
氷を入れて冷えている麦茶を飲みため息を吐く。
雲雀だったら無理やりにでも仲直りさせるんだろうけどな…。
明日、仲直りできていたら良いんだけど。
次の日、教室に入って璃緒ちゃんの様子を見てみるがいつも通りで怒っている様子は見られなかった。
これなら仲直りできるかなと思っていた放課後、昨日いけなかったケーキバイキングに結と璃緒ちゃんとで行ってみるとお店の前に大きな看板がありそこには店員とデュエルをして後攻1キルしたら30%オフと書かれていた。
中に入り、テーブルのほうでデュエルをするみたいで案内され私が行こうとした時、璃緒ちゃんに止められた。
「私がお相手いたしますわ」
そういって店員とデュエルをはじめたが、ブリザード・ファルコンの効果をフルに活用してバーンで後攻1キルを決めていた。
そのときの璃緒ちゃんの表情がすごく生き生きとしていたので恐らく昨日のことをまだ根に持っているのだろう。
そして結もそのことが分かったのかちょっとだけ怯えていた。
ケーキを食べ始めてから数十分経ち、私は昨日の事についてすこしだけ話してみようと思い口を開いた。
「ねぇ、璃緒ちゃん。あれから小鳥ちゃんたちとは」
そういいかけて璃緒ちゃんはタンと持っていたティーカップをソーサーに置いた。
「なにか?」
にっこりと笑みを浮かべて昨日と似たようなオーラを纏っている璃緒ちゃんに私と結は顔を見合わせる。
これは簡単に仲直りできないような気がする。
それからは小鳥ちゃんたちの話題を出さないように会話をしつつケーキを食べて私は帰宅した。
「だめだったな」
「だめだったよ」
いつも食事を食べているテーブルに向かい合って座りブラック・ミストと話していた。
「まったくよぉ。バリアンの刺客がいつ来るかもわからねぇ状況なのにお気楽なやつらだな」
右手で頬杖をついて呆れた様子で言った言葉に何も反論が出来なかった。
まだバリアンが何人いるかとかいま刺客で送り出しているバリアンはどんな人物なのかいまだに分かっていない。
本当にいつ襲ってくるかも予測がつかない。
はやく仲直りしないとそこをついてくるかもしれないし……。
深いため息を吐いたとき、Dゲイザーから音が鳴り響き私はカバンから取り出して画面を見てみる。
連絡してきたのは遊馬君みたいだ。
「はい、もしも」
「刹! 今度の日曜日空いてるか!?」
いきなりで驚きつつも空いているといえば遊馬君は嬉しそうに声をあげていた。
「日曜日になにかするの?」
「ああ! スポーツデュエル大会をやるんだよ。これで皆と力を合わせてデュエルして仲直りさせるんだ!」
スポーツデュエル大会か……正直なところあのルールはいまいち良く分からないんだよね。
「へぇ、それで他には誰が来る予定?」
そう聞くと遊馬君はいつも一緒にいる1年組のメンバーの名前や結、璃緒ちゃん、凌牙、雲雀の名前を挙げていき最後にはギラグという知らない名前を言っていた。
詳しく話を聞いてみると2年生の制服を着た人でこのスポーツデュエル大会の計画を立ててくれたのも彼らしい。
なんでも遊馬君のファンらしくて仲間の仲が悪いと聞いて話しかけて来たらしい。
正直言うと怪しい……。
「あっ、ご飯の時間だ……。じゃあ、刹」
「ちょっとまって、遊馬君」
通信を切ろうとしている遊馬君を呼び止める。
近くにアストラルがいるかどうか聞くと通信からアストラルの声が聞こえてきた。
「アストラルと話がしたいんだ。ちょっとだけいいかな?」
遊馬君は不思議に思いつつも頷いて通信をきらずに夕飯を食べに行くと画面にアストラルの姿が映し出された。
『どうした、刹?』
「ギラグっていう人のことで聞きたくて」
私がそういうとアストラルはすこし目を見開き、浅く息を吐いた。
『君にはやはりギラグという人物は怪しく思うか?』
「思う。ファンだとしても普通ならそこまでしないだろうし」
『……遊馬はあっさり信じたがな』
やれやれといったように首を振ってアストラルは呆れたようにいっていた。
「じゃあ、アストラルもギラグのこと」
『私も彼は怪しいと思う。恐らくいままでと同じバリアンの刺客の可能性がある』
やっぱりアストラルも怪しいと思っていたか。
遊馬君はあまり人を疑わないからな……そういう意味でもこの2人って良いコンビなのかも。
「何が目的で近づいたのかは分からないけど、日曜日は気をつけないと」
『そうだな。今の状態で襲われたら非常に危険だ』
ギラグについて話し終えた後、まだ遊馬君が戻ってこないのでアストラルと世間話をしつつ時間を潰していた。
大体においては言葉や物の意味についての質問ばかりだったが……。
そういえばブラック・ミストも最近あれはなんだ、これはなんだって聞くようになって来たような……。
こういうところは似るもんなのか。
しみじみと思いながら遊馬君が戻ってくるまでアストラルの質問責めは続いたのであった。
「黒峰さーん、1年生がよんでるよー」
昼休みに皆と食事を取ろうとお弁当を取り出したとき、クラスメイトに呼ばれて教室の扉まで行くと小鳥ちゃんが立っていた。
「あれ、小鳥ちゃん? どうしたの?」
「刹さん、頼みたいことが……」
真剣な眼差しで見つめてくる小鳥ちゃんに驚きつつも話してみてと続きを促すが私の後ろに視線をやった後、場所を移しましょう! と提案された。
おそらく璃緒ちゃんがいるからそんなことを言ってきたのだろう。
「あー、うん。分かった。お弁当持ってくるから待ってて」
私は教室に戻って結たちに小鳥ちゃんとご飯を食べることを告げてからお弁当を持って人気がない裏庭へとやって来た。
地面にシートを敷いてブラック・ミストにお弁当を渡してから小鳥ちゃんの話を聞こうとしたら、突然小鳥ちゃんは頭を下げてきた。
「私にデュエルを教えてください!!」
「……え?」
びっくりして固まっていたが、そういえば小鳥ちゃんはデュエルをしていないことを思い出す。
「私、デュエルをしたこともデッキも組んだこともなくて……簡単なルールだったら遊馬のデュエルを見ていたので分かるんですけど……」
初心者がデッキを組むと内容がひどいことになるし……。
今は皆と喧嘩中だから聞けるのが私ぐらいしかいなかったって所かな?
遊馬君は性格からして教えるのが得意そうじゃないし。
「ねぇ、小鳥ちゃん。教えるのは良いけど、大会が終わった後、小鳥ちゃんはデュエルを続ける?」
小鳥ちゃんの返答によっては教え方を変えるつもりでいる。
続ける気があるのなら本格的に教えるが、そうじゃなかったら基本的なことしか教えないつもりだ。
「……私、デュエルを続けたいです」
小鳥ちゃんの目をしっかり見ると何か決意をした瞳をしていた。
私は笑みを浮かべて分かったと頷く。
「じゃあ、日曜日まで時間がないわけだからみっちり教えてくからね」
「お、お手柔らかにお願いします」
今日は金曜日なので、放課後にカードショップに行ってカードを買い基本的な説明を軽くした後、土曜日に私の家に泊まってデッキ構築やチェーンなどについて話をするということに決まった。
「ちなみに小鳥ちゃんはどんなデッキを使いたい?」
「えっと、天使族のデッキを使ってみたいです」
んー、なら私のデッキとすこし被るけどあのデッキにしてみようかな。
あれだったら綺麗なモンスターとか多いしね。
そんなこんなで私と小鳥ちゃんのデュエル講座が2日間行われたのだった。
放課後、璃緒ちゃんに小鳥ちゃんと帰るから一緒に帰れないと告げたら拗ねたという事件が起きたが、日曜日にデザートを用意してくることを約束して機嫌を直してもらった。
日曜日の朝、私はみんなの分のお弁当を作るために台所に立って色々な料理を作っていた。
遊馬君は何も言ってなかったが、おそらくスポーツデュエル大会はお昼までやるとおもうし念のため全員分を作っている。
といっても昨日のうちに仕込みは済ませているのでそんなに時間はかからないしスポーツデュエル大会は10時からやるのでまだ時間に余裕がある。
揚げたライスボールをテーブルに置いたら、いつの間にか椅子に座っているブラック・ミストがから揚げに手を伸ばしているのを見て軽くその手を叩いた。
「つまみ食いしない」
「ぐっ……」
悔しげに声をあげるブラック・ミストに朝ごはんのシーチキンのおにぎりを渡していると小鳥ちゃんが目をこすってリビングにやって来た。
「おはようございます……」
「おはよう小鳥ちゃん」
「はよ。眠そうだな」
ブラック・ミストの言うとおり小鳥ちゃんは眠気眼で歩いていた。
昨日は夜中までデュエル講座をしていたので仕方ない。
「小鳥ちゃん、もう少し寝てて良いよ? 8時30分ぐらいになったら起こすから」
「はい……」
小鳥ちゃんは眠そうに返事をした後、ソファに寝転がって寝始めてしまった。
すこしやりすぎたかな……スポーツデュエル大会に支障がおきないと良いけど。
料理が作り終わり後は弁当箱に詰めるだけとなったのだが、すでに時間が8時45分になっていたので小鳥ちゃんを起こすと今度はしっかりと起きていた。
お弁当を作るのを手伝えなかったことを謝りながら朝食を食べて、料理を詰める手伝いだけはやらせてくださいといわれたので手伝ってもらった。
小鳥ちゃんと2人で大きな弁当箱を持って学校へと行くとすでに皆が着ていた。
その中に1人だけ、大柄で筋肉質な体を持った2年の制服を着た男性が立っている。
おそらくあれがギラグというひとなんだと思う。
「えー、それでは第一回ハートランドシティスポーツデュエル大会を始めます!」
皆がそろったところでギラグはそういうと喧嘩した組以外の人たちは拍手をする。
「よーし、皆頑張ってこうぜ!」
「良かれと思ってー!」
真月君その良かれと思っては意味が分からないよ。
拍手をしながらそう思っていると鉄男君と徳之助君は乗り気なれないと言ったり、璃緒ちゃんは闘志を燃やしてキャットちゃんが威嚇をしているという状況が生まれている。
「何で俺まで……」
「良いではないか。こういうのは皆で楽しむべきだ」
「私、スポーツデュエルって初めてなんだよね! 頑張ろう、刹!」
「うん、頑張ろうね」
璃緒ちゃんと1年組の険悪な雰囲気とは打って変わって私達は楽しげに話していた。
「では、ルールを発表します。スポーツをしながらのタッグデュエルで1勝するごとにポイントが1。上位2チームが決勝に進出」
これはトーナメントではなくリーグ戦になるのかな。
「それでは組み合わせを発表します。遊馬、シャークチーム。委員長、徳之助チーム。鉄男、璃緒チーム。キャットちゃん、小鳥チーム。雲雀、刹チーム。真月、結チームとなります」
組み合わせが発表されたことにより、小鳥ちゃんとキャットちゃんが文句を言っていたが真月君が優勝者にはナンバーズクラブのマスコットガールに選ばれるといわれてそれ以上は何も言わなくなった。
え、それって男チームが優勝したら男がマスコットガールになるってことになるんじゃ……。
でも、それ以上にちょっと結が心配だな……。
ちらりと真月君と話している結を見る。
今のところ真月君はバリアンではないかと警戒している人物。
一緒のチームだったら見張ることも、真月君がどんな人物なのか知ることも出来たんだけど。
仕方ないかとため息を吐いていると第一回戦のデュエルフィールドがスカイダイビングに決まっていた。
……え?落ちながらデュエルするの?
「つ、疲れた……」
私と雲雀の第1試合はバトミントンになり相手は璃緒ちゃん、鉄男君チームだったが何とか勝てた。
普通のデュエルなら良いんだけど、スポーツを交えるのはいけない。
体なんて鍛えてないから色々と危なかった。
「情けないぞ、刹! デュエリストは体も鍛えなければやっていけないぞ!」
「そんなの聞いたことないんだけど……」
スポーツドリンクを飲みながら私はうなだれていると小鳥ちゃん、キャットちゃんチームと孝君、徳之助君チームのテニスデュエルが始まっていた。
最初は小鳥ちゃんから始めるらしい。
「私のターン、ドロー! 神の居城-ヴァルハラを発動! ヴァルハラの効果を使用して光神テテュスを特殊召喚! 手札から奇跡の代行者ジュピターを除外してマスター・ヒュペリオンを特殊召喚!」
小鳥ちゃんが一気に上級モンスターを2体特殊召喚したことにより皆が驚きの声をあげていた。
その後はひどかった。二回目の小鳥ちゃんのターンには天使族モンスターを見せてドローを重ね、墓地に4体の天使族モンスターを揃えて大天使クリスティアも呼び出して総攻撃を仕掛けて勝っていた。
「おい、刹。確か小鳥はデュエル初心者だと聞いたが?」
「うん、初心者だよ」
この2日間で私がみっちりと教え込んだけど。
雲雀は小鳥ちゃんが扱うモンスターをみて察したのかじと目で私を見てくる。
「……やりすぎちゃった」
「馬鹿者」
目をそらしながらそういうと雲雀から軽く頭を叩かれてしまった。
くっ、怒られるようなことはしていない筈なのになんだろうこの罪悪感は……。
他のチームと一通り対戦し終わるころにはいつの間にかぎすぎすしていた雰囲気がなくなり、仲直りをしていた。
なにが目的かは知らないけど、ギラグは良い計画を立ててくれて助かった。
あのままだと居心地も悪いしなぁ……。
決勝を始める前に時間が12時を過ぎていたので皆で昼食を食べることにした。
やはり何も言われてなかったからか鉄男君、孝君、徳之助君はお弁当を持ってきていなかった。
そしてなぜか遊馬君、真月君、ギラグまで持ってきていないという。
なのでお弁当を作って持ってきたのは結、璃緒ちゃん、雲雀、キャットちゃん、私の5人らしい。
「一応みんなの分も作ってきたから、良かったら遊馬君たちも食べて」
小鳥ちゃんと一緒に持ってきたお弁当をシートの上に置いていくと遊馬君たちは歓喜の声をあげた。
お弁当に詰められているおかずは洋食がメインに作ってきた。
「うおおぉ! うっまそー!」
「刹さん、ありがとうございます!」
「デュエルの神様仏様ウラ!」
徳之助君のはちょっと良く分からないです。
皆がシートの上に座り始め私はギラグの右隣に腰掛け、左隣には雲雀が腰掛けた。
私は雲雀と目を合わせて軽く頷く。
「ギラグ君、おかず取ってあげるよ。何か嫌いなものとかある?」
「い、いやとくにない」
ギラグの返答に私はチーズとミートソースが中に入っているライスボールとポテトサラダにアスパラガスのベーコン巻き、鶏挽肉の松風焼きを皿に取って渡した。
「あ、ありがとう」
「どういたしまして」
そういって私もご飯を食べるためにおかずを自分の皿に盛る。
その間、ギラグがうまいと呟いているのが聞こえた。
「ギラグ、といったか? その服は2年の制服のようだが、何組なのだ?」
雲雀からの質問にギラグは噴出しそうになっていたが、何とか口の中にあるものを出さずに飲み込んでから口を開いた。
「あ、あはは。俺はえーと、その……」
「ふむ、何か言いづらいことでもあるのか?」
雲雀の追求にいや、そういうわけではといっているがギラグの目は泳いでいるし心なしか顔に汗をかいているように見えた。
「そういえば学校ではあまり見かけたことないような……ギラグ君ってすごく目立ちそうなのにね」
可笑しいねと微笑みかけるとギラグはとうとう固まってしまった。
「まぁ、今日は何事もなく楽しいスポーツデュエル大会が出来れば良いよね」
「そうだな、何事もなく最後までやれればそれで良い」
何事もなくを強調してそう言い合うとギラグはそ、そうだな!と右手を後頭部にやり無理やり笑っていた。
ギラグの反応からしてこれだけ言っておけばおそらく何もしてこないだろうし、ギラグが何者なのかも分かった。
それにしてもバリアンってアーカイドみたいな計算高い人だけじゃなく、ちょっとお馬鹿なタイプもいるんだね。
でも、警戒は緩めないようにしないと……。
どんな方法で洗脳しているかも分かってないし。
ご飯を食べ終わった後、決勝に進出したのは遊馬君、凌牙チームと小鳥ちゃん、キャットちゃんチームだった。
遊馬君たちのチームには私の体力と運動能力で1敗しているのでいいとして小鳥ちゃん、キャットちゃんチームは女性ペアだと1万点とか良く分からないルールで決勝に進出したのだ。
その後は特に何事もなくスポーツデュエル大会は閉幕し皆は解散した。
さて、家に帰ったらバリアンのことについてちょっとまとめておこうかな……。