遊戯王の世界に転生したがろくな事が起きない   作:アオっぽい

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第二十一話 刺客というのはろくな事がおきない

 いつも通り食事を終えて皿などの片づけをした後、私はぬれた手をタオルで拭って学校に行く準備を始める。

 ふとリビングのほうを見てみるといつもならテレビを見ているはずのブラック・ミストの姿がなくなっていた。

 ソファのほうにもいないし、どこに行ったのだろう……。

 まずは一階にある部屋をいくつかのぞいていると仏壇が置いてある部屋にブラック・ミストはいた。

 

「ブラック・ミスト、何してるの?」

 

 部屋の中に入り、ブラック・ミストに近づきながら問いかける。

 ブラック・ミストはすこし言いにくそうにしていたが、口を開いた。

 

「お前の両親、いないと思ってよ……」

 

 そういってまた仏壇に目を向けている。

 

「私のお父さんとお母さんは死んだよ。……厳密に言えばすこし違うかもしれないけど」

 

「どういう意味だ?」

 

 昔のことを思い出し、私は目を細めて仏壇から目を逸らす。

 

「私が小さいころ、お父さんとお母さんはどっかに出かけたっきり帰ってこなくなった。お父さんはたまに何も言わずにふらーとどっか行って2、3日帰ってこなかったこともあったし、お母さんはそれについていくこともあった」

 

 2人でまたどっかに行くのかとそのときはそう、思っていたんだよね……。

 

「だけど、連絡も何もなしで一ヶ月以上たって……それ以上の月日がたって……おじいちゃんとおばあちゃんに聞いてみたら、何も答えてくれなかった」

 

 おかしいとは思ってたけど、子供の私では調べるすべもなかったし両親がどうなったかとか本当のことを知ることもできなかった。

 

「だから私は両親が死んだと思ってる」

 

 そう思ったほうが気が楽だったというのもあるけど……。

 口元に笑みを作り、ブラック・ミストに顔を向ける。

 

「でも、お父さんってすごく不思議な人なんだよね。何も口に出してないはずなのに言いたい事が分かるって言うか……あと、帽子とかよく被って」

 

 そこまで言うとブラック・ミストは私の顔を覆うように手を前に掲げて言葉を遮った。

 

「……もう学校に行く時間だろうが。いこうぜ」

 

 私の隣を通り過ぎてブラック・ミストはこの部屋から出て行った。

 その背中を見送って、浅く息を吐く。

 

「気をつかわせちゃったかな……」

 

 

 

 

 あの後、学校に行く準備を終えて私たちは家を出る。

 学校に近づいてくるにつれていろんな人が私に挨拶をしてきたので挨拶を返した。

W DCが終わってから私の周りでいろいろと変化が起きた。

 まずは私が決勝トーナメントまで勝ちあがったことにより、学校でいろんな人たちに声をかけられたり、デュエルを申し込まれたりするようになった。

 そしてもう1つ。

 

「おはよー、結」

 

「おはよう、刹。今日はちょっと遅かったね」

 

 教室にたどり着き、結に挨拶をしてから自分の席にカバンを置いてこちらに来た結と話していると教室の扉が音を立てて開く。

 

「おはよう、諸君!」

 

 左手を上げて雲雀は教室にいる生徒に挨拶をすると皆も委員長おはようと返していた。

 雲雀が入ってくるのに続いて凌牙が引きずられて教室に入ってくるのが見えた。

 

「雲雀、いい加減放しやがれ!」

 

「授業にきちんと出るというのなら離してやっても良いぞ」

 

 凌牙は言葉に詰まるが渋々わかったよといえば雲雀は掴んでいた手を離す。

 この光景は最近良く見るようになった。

 もう一つ変わったものというのは私たちの距離が縮まったということ。

 私と凌牙が名前呼びに変わったことで、それを目撃した結と雲雀がみんなでお互いに名前で呼ぼうと提案されて承諾。

 その影響か4人で一緒にいることが多くなった。

 そして距離が縮まったおかげで遠慮もなくなり、今まで授業をサボっていた凌牙をこのクラスの委員長である雲雀が引きずって参加させるようになった。

 2人は並んでこちらに来ると私たちに挨拶をする。

 

「刹に結、おはよう」

 

「……はよ」

 

 雲雀はいつも通りに挨拶をするが、凌牙は不機嫌そうな態度のまま挨拶をした。

 私たちも挨拶を返していつも通りの日常を送っている。

 バリアンとの戦いなどあの非現実的な出来事が起きたのが嘘のように平和だった。

 でもバリアンは複数いるみたいだし、また襲ってくる可能性は高い。

 あまり油断しすぎないようにしないとな……。

 授業がすべて終わり、私は帰る支度をして1人で下校する。

 結は何かやることがあるらしく学校に残り、雲雀は風紀委員会の仕事で居残り、凌牙は妹の見舞いに行くためバイクで行ってしまった。

 なので、ブラック・ミストと会話をしながら帰宅している。

 

「(今日のご飯は何にしよう?)」

 

 帰り道にある土手の上を歩きながら私が呟くように言うとブラック・ミストは悩むように呻いた。

 

『……この前、テレビでやってた中華料理ってやつが食べてみてぇ』

 

「(中華料理か……。確か冷蔵庫に豚肉があったから酢豚にしようか)」

 

 あと汁物はワンタンスープで副菜はナムルで良いかな。

 そんな感じに夕飯の献立を組み立てていっているときだった。

 

『この感じは!?』

 

 ブラック・ミストの驚く声が聞こえて、足を止めた。

 どうしかしたのかと聞いてみるとブラック・ミストは深刻そうな声を出して言う。

 

『あいつらだ……バリアンがこの世界にやって来やがった』

 

「バリアンが!?」

 

 思わず声を出してしまい、我に返って口を塞ぐ仕草をして周りを見てみると幸いなことに私以外に人の姿はなかった。

 

「(それで、バリアンはどこ?)」

 

『詳しい位置はわからねぇ。ただ、この世界に来てるってことだけは分かる』

 

 どうしよう……これだとどこに向かえば良いか分からない。

 おそらくカイトなら分かっているとは思うんだけど、連絡先が分からないので聞けない。

 とりあえず遊馬君と凌牙にバリアンが来ていることを知らせないと。

 Dゲイザーを取り出して連絡を取ろうとしたとき、道路のほうからけたたましいバイクの音が聞こえた。

 そちらに目を向けてみると大型バイクに乗った暴走族がこちらに向かってきているのが見えた。

 そしてバイクは私たちがいる場所のすぐ下で止まるとバイクに乗っている人たちは降りてこちらに目を向けた。

 

「お前が黒峰刹だな?」

 

 男たちは疑問系ではあるが確実に私が黒峰刹だということは分かっている。

 その証拠にすでに男たちの腕にあるデュエルディスクは起動していた。

 

「バリアン世界のため、消えてもらうぞ!」

 

 こいつら、なんでバリアンのことを?

 私が疑問に思っている間にも男たちはデュエルの催促をしてくる。

 人数はぱっと見で恐らく10人以上。この人数を相手にするのはすこし時間がかかりそうだ。

 

『手伝うか?』

 

「平気」

 

 Dゲイザーを左目につけ、デュエルディスクを起動し構える。

 

「人数が多ければ勝てるとでも思ってるんだ? いいよ、相手になってあげる」

 

 

 

 

 最後の一人を倒して私は深く息を吐いた。

 やっぱり、すこし時間がかかってしまった。

 地面に倒れて苦しげに呻いている暴走族に目を向けた後、Dゲイザーとデュエルディスクをしまう。

 

「くっ、くくくく……」

 

 この場所では落ち着いて連絡も取れないのでこの場から離れようとした時、倒した男の1人が突然笑い出す。

 足を止めてその男を見てみると男は笑いながら語り始めた。

 

「こうしている間に、お前のお仲間さんたちはどうしているだろうな……?」

 

 そういわれ、一瞬頭が真っ白になった。

 すぐに一歩前に踏み出し男を睨みつけて問いかける。

 

「どういう意味?」

 

「俺たちの仲間が九十九遊馬たちのいる学校へ向かっているころだ。さぁて、どうなるんだろうな?」

 

 私は男が言い終わると同時に学校に向かって走り出した。

 学校にはまだ結と雲雀もいたはず……それにあの男の態度から見て遊馬君も学校にいるみたいだし。

 走って学校にたどり着くと先ほどの暴走族と同じようなバイクを乗った男たちが学校に入ろうとしていた。

 

「待ちなさい!!」

 

 私が大声を上げると男たちは振り返ってこちらを見る。

 

「く、黒峰刹!?」

 

 息を整えながら歩いて男たちに近づいていくと、彼らは驚いた声をあげていた。

 口々に足止めはとか早すぎるとか呟いている。

 

「最初の相手は誰?」

 

 Dゲイザーをつけてデュエルディスクを立ち上げながら言うと男たちは怯えたように1歩後ろに下がった。

 

「俺たちが相手になってやろう」

 

 男たちの中から黒い髪は肩まであり赤いバンダナをつけた男が他の人たちを押しのけて前に出てきた。

 そしてもう1人、赤いバンダナの隣に鼻と唇にピアスをつけた茶髪の男がいる。

 

「2対1でやろうってこと?」

 

「いや、2対2だろ?」

 

 隣にブラック・ミストが現われ、私が驚いているとブラック・ミストは口元を吊り上げて笑った。

 

「お前がNo.96ブラック・ミストだな? いいぜ、やってやるよ!!」

 

「オラ、かかってこいや!!」

 

 2人はデュエルディスクを起動させ1人はDゲイザーをつけるが赤いバンダナをつけた男は左目が赤く変化した。

 

「いくよ、ブラック・ミスト。速攻で終わらせよう」

 

「おう」

 

 デッキを変更してARビジョンを作動させると周りは0から9の数字で埋め尽くされ一瞬で消えていく。

 ARビジョン、リンク完了という音声と共に私たちはデッキからカードを5枚ドローする。

 

『デュエル!!』

 

 全員そろってデュエルの宣言をして赤いバンダナの男が先攻はもらう! と声をだした。

 

「俺のターン、ドロー! 俺は手札から切り込み隊長を召喚! そして効果を発動! 手札からレベル4以下のモンスターを1体特殊召喚する! 現われろ、バルキリー・ナイト!」

 

 後ろに赤いマントをつけ鎧を着て2本の剣を持った男性型のモンスターが現われ、その隣に羽の装飾がついた兜を被り赤い鎧に身を包んだ女性型のモンスターが現われる。

 

レベル3 切り込み隊長 攻撃力:1200

レベル4 バルキリー・ナイト 攻撃力:1900

 

「くくく……ターンエンドだ!」

 

 いきなり攻撃ロックか……。

 切り込み隊長とバルキリー・ナイトはこのカード以外に攻撃が出来ないという効果があって、その結果こちらは相手モンスターに攻撃が出来ないという状況が生み出される。

 まぁ、普通に除去してしまえば良いんだけど。

 私はブラック・ミストに視線をやり、向こうと目が合うとお互いに頷いた。

 

「私のターン、ドロー。手札からトレード・インを発動。手札のレベル8モンスターを墓地に送りデッキからカードを2枚ドローする。私は堕天使スペルビアを墓地に。さらに暗黒界の取引を発動。お互いデッキからカードを1枚ドローし、その後手札を1枚捨てる」

 

 この場合は前のターンの相手、赤いバンダナの男に効果が発動してお互いにドローして手札から1枚墓地に捨てた。

 

「墓地に捨てられた暗黒界の刺客カーキの効果を発動。このカードがカードの効果によって墓地に捨てられた場合、フィールド上のモンスター1体を破壊する。バルキリー・ナイトを破壊する」

 

「な、なにぃ!?」

 

 赤いバンダナの男が驚いている間に墓地に繋がる紫色の魔方陣の中心にある黒い穴から肌の色が灰色で上半身が異様に大きく、首同じ太さになっているのか頭と体がそのまま繋がっているように見えるモンスターが現わる。

 カーキは穴から出てくると持っているナイフでバルキリー・ナイトをすばやく斬りつけた。

 破壊すると同時にカーキは墓地へ繋がる穴に戻る。

 

「モンスターをセット、カードを2枚伏せてターンエンド」

 

「いくぜぇ、俺のターンだ! ドロー! 俺は手札から永続魔法、炎舞-「天キ」を発動! このカードの発動時、デッキからレベル4以下の獣戦士族モンスターを手札に加えるぜ。俺は暗炎星-ユウシを手札に加え、そのまま召喚!」

 

 赤い装飾がついた黒い鎧を身に包み、背後に炎で出来た熊が浮かび上がっている男性型のモンスターが現われる。

 

レベル4 暗炎星-ユウシ 攻撃力:1600→1700

 

「そして発動した炎舞-「天キ」は自分フィールド上の獣戦士族モンスターの攻撃力を100ポイントアップさせる! ターンエンドだ!」

 

「俺のターン、ドロー! 手札からおろかな埋葬を発動! デッキからモンスター1体を墓地に送るぜ。そしてマリスボラス・ナイフを召喚!」

 

 赤く細い体に黒い鎧のようなものを着け、頭に2本の角を生やし手にはバターナイフのような剣を持った小さなモンスターが現われる。

 

レベル2 マリスボラス・ナイフ 攻撃力:600

 

「マリスボラス・ナイフの効果を発動! 召喚に成功した時、墓地からマリスボラスと名のついたモンスターを1体特殊召喚できる。来い、マリスボラス・フォーク!」

 

 地面に現われた穴から手にもつ金色のフォークを肩にかけ、マリスボラス・ナイフと似た姿をしているモンスターが現われる。

 

レベル2 マリスボラス・フォーク 攻撃力:400

 

「レベル2のマリスボラス・ナイフとマリスボラス・フォークでオーバーレイ!」

 

2体のモンスターが紫色の球体となって地面に現われる渦へと入っていく。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築、エクシーズ召喚! 現われろ、ガチガチガンテツ! ガチガチガンテツはフィールド上にいる限り、自分フィールド上のモンスターの攻撃力・守備力はオーバーレイ・ユニットの数×200ポイントアップする! オーバーレイ・ユニットは2つよって400ポイントアップだ!」

 

 灰色の肌をした筋肉質な体を持つ屈強なモンスターが現れる。

 

ランク2 ガチガチガンテツ 守備力:1800→2200

 

「俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ」

 

「俺のターン、ドロー! 手札から波動共鳴を発動! 俺の場にいる切り込み隊長のレベルをエンドフェイズ時まで4にする!」

 

レベル3→4 切り込み隊長 攻撃力:1200

 

「俺のフィールドにレベル4モンスターしかいない場合、手札からトラブル・ダイバーを特殊召喚!」

 

 トラ模様のダイバー服とマスク、スノーケルを着たブルドッグのようなモンスターが現われる。

 

レベル4 トラブル・ダイバー 攻撃力:1000

 

「そしてレベル4となった切り込み隊長とトラブル・ダイバーをオーバーレイ!」

 

 切り込み隊長はオレンジ色の球体となり、トラブル・ダイバーは紫色の球体となって地面に出現した渦に入り込む。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!! 現われろ、ズババジェネラル!!」

 

 金色の装飾がついた白い大きな鎧を身にまとい、背中には赤いマントをつけ大きな剣を持った人型モンスターが現れる。

 

ランク4 ズババジェネラル 攻撃力:2000 ORU:2

 

 そのモンスターが現われた瞬間、男は突然笑い出した。

 

「クハハハ!! お前らに見せてやる、バリアンの力を!!」

 

 赤いバンダナの男はそういって手札にあるカードを1枚、前に掲げると男の額の部分にフェイカーさんがバリアンに操られたときと同じ赤い装飾がついた青い十字架のようなものが現われる。

 

「俺は手札からRUM-バリアンズ・フォースを発動!! このカードは自分のモンスターをランクアップさせ、CX(カオスエクシーズ)を特殊召喚する!」

 

「RUM?」

 

 聞いた事のないカード名に首をかしげていると、ズババジェネラルは頭上に生まれた黒い渦の中へと入っていく。

 

「俺はランク4のズババジェネラルを再構築。カオスエクシーズ・チェンジ!」

 

 普段見るような明るい色の爆発ではなく、黒色と緑色の爆発が起こると大きな球体が現われてその中にモンスターが形成されていく。

 周りを覆っていたものがはがれるとそこには外形がすこし変わったズババジェネラルが現われる。

 そして本来オーバーレイ・ユニットとしてモンスターの周りに漂っているはずのものがなく、代わりにそのモンスターの前に赤色に輝く十文字の形のものが置いてあった。

 

「現われろ、CXズババ最強ジェネラル!」

 

ランク5 CX(カオスエクシーズ)ズババ最強ジェネラル 攻撃力:2300 ORU:3

 

 私が持っているFA-ブラック・レイ・ランサーとは似ているけど違う召喚方法……だけど、その前に。

 ネーミングが気になる……。

 

「そしてRUM-バリアンズ・フォースは相手フィールド上に存在するモンスターエクシーズのオーバーレイ・ユニットをすべてエクシーズ召喚したモンスターエクシーズのカオスオーバーレイ・ユニットにすることが出来る!」

 

「なに!?」

 

 ブラック・ミストの場にはオーバーレイ・ユニットが2つあるガチガチガンテツがいる。

 ガチガチガンテツの周りを漂っていたオーバーレイ・ユニットはズババ最強ジェネラルに吸収され、カオスオーバーレイ・ユニットの数は5つとなってしまった。

 

「さらにその奪ったモンスターの攻撃力はオーバーレイ・ユニットの数×300ポイントダウンするが……まぁ、守備表示だから関係ねぇか」

 

ランク5 CXズババ最強ジェネラル 攻撃力:2300 ORU:3→5

ランク2 ガチガチガンテツ 守備力:2200→1800 ORU:2→0

 

「いくぜぇ! ズババ最強ジェネラルの効果発動!1ターンに1度、手札からモンスター1体を装備カードとして装備させることが出来る! そして装備カードとなったモンスターの攻撃力分をこのカードの攻撃力に加算させる! 俺が装備させたモンスターはバーバリアンキング! 攻撃力は3000だ!! よってズババ最強ジェネラルの攻撃力は5300!!」

 

 赤いバンダナの男がもつカードが光ってズババ最強ジェネラルの持つ大剣に当たると大剣は姿を変えて持っていた剣とはデザインがまったく違う、赤と黒の大剣と変わった。

 

ランク5 CXズババ最強ジェネラル 攻撃力:2300→5300 ORU:5

 

「攻撃力5300だと……」

 

 ブラック・ミストは眉間に皺を寄せながら呟いた。

 

「バトルだぁ! まずはNo.96貴様からだ!! 行け、ズババ最強ジェネラル! ガチガチガンテツを攻撃しろ!」

 

 ズババ最強ジェネラルがもつ大剣がガチガチガンテツを切り伏せると爆発が起こって破壊される。

 

「ふはははは! ズババ最強ジェネラルのもう1つの効果を発動!! オーバーレイ・ユニットを1つ使い、装備しているモンスターを自分フィールド上に特殊召喚できる!!」

 

「なっ……」

 

「なに!?」

 

 大剣が光り、オレンジ色の球体が出てズババジェネラルの隣に浮かぶ。

 それは形を作っていき、光の衣がはがれると手には大きな棍棒があり赤い肌に黒い鎧に身を包んだモンスターが現われた。

 

ランク5 CXズババ最強ジェネラル 攻撃力:5300→2300 ORU:5→4

レベル8 バーバリアン・キング 攻撃力:3000

 

「さぁて、バーバリアン・キングでダイレクトアタックだ!!」

 

 バーバリアン・キングが棍棒を掲げて走り出すとブラック・ミストは悔しげな表情を浮かべていた。

 

「リバースカード、オープン。攻撃の無敵化を発動。このカードは2つの効果があり、私はバトルフェイズ中、プレイヤーへの戦闘ダメージを0にする効果を選択する」

 

 カードを発動するとブラック・ミストの前にバリアが張られてバーバリアン・キングの攻撃を防いでいた。

 温存するためにさっきは使わなかったけど、まさかこんな効果があるなんて予想してなかった……。

 

「ごめん、ブラック・ミスト。さっき使えばよかった……」

 

 そうすればガチガチガンテツも生きていたし、バーバリアン・キングも出ることもなかった。

 

「気にすんじゃねぇよ。それに庇ってもらったのに文句とかねぇだろ」

 

 謝る私にブラック・ミストは手をひらひら振って、口元を吊り上げている。

 

「チッ! 防ぎやがったか……。俺はこれでターンエンドだ」

 

「私のターン」

 

 ドローという前に刹さん!? と驚いた様子で私の名前を呼ぶ声が聞こえて振り返ってみると、小鳥ちゃんが手に遊馬君がいつも持っているはずの皇の鍵を持ってそこにいた。

 

「小鳥ちゃん!? こっちにきちゃ、駄目!」

 

 私たち4人はデュエルをしているが見ている暴走族は自由に動ける。

 最悪の場合、小鳥ちゃんを人質に取ることだってできる。

 

「で、でも遊馬のところにアストラルを連れて行かないといけないんです!」

 

 小鳥ちゃんの言葉を聞いて目を見開いているとブラック・ミストが吐き捨てるように呟いていた。

 

「あの馬鹿、アストラルなしで戦ってるのかよ」

 

 私たちが話している間にも暴走族のやつらは少しずつ小鳥ちゃんに近づいていっている。

 どうすれば……と考えているときだった。

 

「まったく、校門前で暴走族がいると聞いてやってきてみれば……こんなことになっているとはな」

 

 学校の校門のほうから聞こえてきた声に安堵の息を吐く。

 校門には仁王立ちになっている雲雀と怒った顔をしている結がデュエルディスクを腕に装着して立っていた。

 

「そして貴様ら! 複数人で女に手を出そうとするとは、男の風上にも置けん!!」

 

「さすがに許せないよ?」

 

 小鳥ちゃんに近づいていた暴走族に向かって指を指していうと彼らはいらだったようにあぁん? と声を出す。

 

「邪魔してんじゃねぇよ!ガキが!!」

 

「ふん、私のサイバー流で貴様らなんぞ滅ぼしてくれる。構えろ。まとめて相手になってやろう」

 

 雲雀の挑発に暴走族のやつらは頭に血が上がって、怒りの表情をあらわにしてデュエルディスクを構えた。

 

「私だって、やれるんだから!」

 

 その隣で結もデュエルディスクを構えて暴走族を睨みつけている。

 

「そこの……観月小鳥といったか? 此処は私達が食い止める。早く行くのだ!」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 小鳥ちゃんは礼を告げた後、私達の横を通って学校へと入っていった。

 

「刹、こっちは大丈夫だから。自分のデュエルに集中して!」

 

「ありがとう、結。雲雀」

 

 結は安心させるように笑みを浮かべて言い、私は頷いて前を向きデッキの上に指を置く。

 

「私のターン、ドロー。キラー・トマトを反転召喚しリバースカードオープン、リビングデッドの呼び声を発動。墓地にいる堕天使スペルビアを特殊召喚」

 

 ハロウィンにあるかぼちゃのように顔に目と口を象った穴が開いているトマトのモンスターが召喚された。

 地面から墓地に繋がる穴が現われるとそこから黒い壷みたいなものに顔と腕がつき下半身が傘のようなもので出来ており、赤い羽根を生やしたモンスターが出てくる。

 

レベル4 キラー・トマト 攻撃力:1400

レベル8 堕天使スペルビア 攻撃力:2900

 

「堕天使スペルビアが墓地からの特殊召喚に成功した時、墓地から天使族モンスターを特殊召喚する。私は堕天使ゼラートを特殊召喚」

 

 2本の角が付いた赤い兜をかぶり赤いマントのような、しかし悪魔を彷彿させる羽があり上半身は裸で下半身にはぼろぼろの布が腰についており、左手には歪な形をした剣を携えてゼラートがフィールドに現われる。

 

レベル8 堕天使ゼラート 攻撃力:2800

 

「堕天使ゼラートの効果を発動。手札の闇属性モンスター1体を墓地に送ることで相手フィールド上に存在するモンスターをすべて破壊する」

 

「なんだと!?」

 

「え、俺のもか!?」

 

 赤いバンダナの男と先ほどまで黙っていたピアスをつけた男が驚愕している間に堕天使ゼラートの剣から黒いオーラがカッターとなって相手モンスターに襲い掛かり破壊された。

 

「まずはそっちからにしようか。堕天使スペルビアとゼラートでピアスの男にダイレクトアタック」

 

「こ、こんなのってありかああぁ!?」

 

 スペルビアとゼラートの攻撃を受け、ピアスの男は吹っ飛ばされる。

 表示されているライフは0となり1人が脱落した。

 

「キラー・トマトでダイレクトアタック」

 

「ぐううぅ!!」

 

 キラー・トマトの体当たりが決まって赤いバンダナの男は苦しげに呻いていた。

 

LP:4000→2600

 

「私はレベル8のゼラートとスペルビアをオーバーレイ」

 

 紫の球体となって地面に現われる渦に入り込み、そこから光は少しずつ漏れていく。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築、エクシーズ召喚。現われろ、No.22不乱健」

 

 頭にカーキ色の布を巻きつけた筋肉隆々の男性型モンスターが現れる。

 

ランク8 No.22不乱健 攻撃力:4500 ORU:2

 

「カードを1枚伏せてターンエンド。ブラック・ミスト、後は頼んだよ」

 

 笑みを浮かべてそういうとブラック・ミストはまかせろよと笑ってうなずいた。

 

「俺のターン、ドロー! 手札のマリスボラス・フォークの効果を発動!手札にある悪魔族モンスターを墓地に送りこいつを特殊召喚する! リバース・バスターを墓地に送り特殊召喚!」

 

レベル2 マリスボラス・フォーク 攻撃力:400

 

そしてブラック・ミストは笑みを深めて1枚のカードを掲げた。

 

「墓地にいる光属性モンスターと闇属性モンスターを1体ずつ除外し、カオス・ソルジャー-開闢の使者-を特殊召喚!」

 

 左手には剣を右手には盾を持った金色の装飾がついた青い鎧を身に着けた男性型モンスターが現れる。

 

レベル8 カオス・ソルジャー-開闢の使者- 攻撃力:3000

 

「さらにスナイプ・ストーカーを召喚!」

 

 手にはビームを撃つ拳銃を持ち薄紫色の肌に黒いボディスーツのようなものを着た、すこし小太りなモンスターが現われる。

 

レベル4 スナイプ・ストーカー 攻撃力:1500

 

「まさか、俺達がこんなガキに……こんなにも呆気なく……」

 

「カオス・ソルジャーとスナイプ・ストーカーでダイレクトアタック!」

 

 ぶつぶつと呟きだした赤いバンダナの男にブラック・ミストはモンスター達に指示を出した。

 カオス・ソルジャーは剣で切り、スナイプ・ストーカーは持っている拳銃でビームを撃つ。

 攻撃によって赤いバンダナの男がいた場所から爆発が起きて、男の悲鳴が聞こえてくると同時にデュエルが終わる合図の音が鳴り響いた。

 デュエルが終わりブラック・ミストに近づいて私達は軽くハイタッチをする。

 結たちに目を向けるとすでに片付け終わっているようで何人もいたはずの暴走族が地面に倒れていた。

 

「そっちも終わったようだな、刹」

 

「うん、まぁね」

 

 結たちに近づこうと歩き出すとバイクの音が聞こえ、警戒をしたがその独特な形をしたバイクを見てすぐにその警戒は解いた。

 

「凌牙!」

 

「お前ら……こんなところで」

 

 なにをしているのかと問いかける前に地面に倒れている暴走族を見て納得したように頷き、ヘルメットを取ってバイクから降りた。

 

「おい、遊馬は学校のどこにいる?」

 

 私も分からないのでそう答えようとした時、雲雀が凌牙の質問に先に答えていた。

 

「確かいつもデュエルをする中庭のほうが騒がしかったぞ」

 

 その言葉に凌牙はそこだなと言って急に走り出す。

 遊馬君が心配なのは分かるけど、勝手に行かないで欲しいなぁ……。

 私も凌牙の後に続いて走り、中庭のほうにたどりつき入り口のほうで立ち止まった凌牙の隣に立ち、丁度向かい側にカイトが空から着地しているのが見えた。

 中庭には遊馬君のほかに小鳥ちゃんやキャットちゃん、鉄男君、孝君、徳之助君がいて遊馬君と対峙するように灰色の髪の男が立っている。

 男は笑いながら立ち上がり遊馬君に指差す。

 

「忘れたんじゃねぇだろうな? バリアン世界の軍団が此処に向かっていることを! もうすぐだ、もうすぐここにやってくる!! ふはははは!!」

 

「「それはどうかな?」」

 

 男が大声で笑い出したとき、凌牙とカイトは同時にそう言い放った。

 ……いつ打ち合わせしたの?

 

「カイト! シャーク! 刹!」

 

 私達に気づいた遊馬君がうれしそうに声を上げ、カイトが口を開いた。

 

「残念ながら貴様の仲間は来ない」

 

「今頃、お前の仲間は良い気分で眠っているだろうぜ」

 

「私たちが倒したからね」

 

 2人に合わせて私も言葉を紡ぐ。

 私は最初に倒した人たちと学校前にいた2人ぐらいしか倒してないけど。

 そういえば土手の近くで倒したあの暴走族もまだ倒れてたりするのかな……。

 

「俺たちがいる限り」

 

「この世界をお前らの好きにはさせん!」

 

 男が悔しそうに呻いているとき、後ろからオービタルが忍び寄り男に電流を浴びせて気を失わせた。

 これで一安心かな……。

 

「刹、凌牙」

 

 雲雀の声が後ろから聞こえ私達は一瞬体を震わせてゆっくりと後ろを振り返る。

 そこには雲雀と結が一緒に立っていた。

 

「先ほどのことも含め、あの男が言っていたバリアン世界とやらのことを詳しく話してもらおうか?」

 


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