遊戯王の世界に転生したがろくな事が起きない   作:アオっぽい

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幕間なので文字数はいつもよりすごく少ないです。
これを二十話と称していいのかと思いますが、数字としてきりが良いですしこうさせていただきました。

そしてタイトルを見て分かると思いますが本作の主人公が出てきません。
今回はバリアンの連中が出てくるのでご注意を。


第二十話 幕間-そのころのアーカイド

 アーカイドはベクターの作戦が失敗に終わったのを見届けた後、どこかに行こうとしているベクターを紋章の力で縛り上げ一緒にバリアン世界へと帰ってきた。

 アーカイドの足取りは軽く、スキップをしながら鼻歌を歌っているようだ。

 その向かう先には大きな広場のような場所にいくつもの大きな水晶があり、奥のほうには階段の上に大きな玉座があった。

 玉座の下にある階段の前には4人のバリアンの戦士がおり、アーカイドはそれを見つけるとベクターを持っていないほうの手で大きく手を振った。

 

「ドルちゃーん、ミザちゃーん、アーちゃん、ギーちゃん、たっだいまぁ!!」

 

 フードを深く被っていてその表情を伺えないが恐らく満面の笑みを浮かべているであろうアーカイドに呼ばれた4人は一緒に声がしたほうに視線を向ける。

 

「ああ、おかえりアーカイド」

 

 白いフードを被っているドルベが返事するがその隣にいた黄色いフードを被ったミザエルが露骨に舌打ちをした。

 そのミザエルの反応にひどーいとアーカイドは非難の声をあげる。

 

「よー、アーカイド。どこ行ってたんだよ?」

 

「まさかベクターをおちょくりに行ってたんじゃないだろうな?」

 

 玉座の下にある階段に腰をかけている赤いフードを被ったアリトが片手を上げて質問したのに続いて茶色のフードを被ったギラグが若干呆れたように言う。

 

「確かにベクちゃんの作戦の茶々入れに人間界に行ってたけどさー!」

 

 口を尖らせて言いながらアーカイドは背中に抱えていたベクターを地面に下ろすとベクターを拘束していた紋章の力を解除する。

 ベクターはすぐに立ち上がるとアーカイドに詰め寄った。

 

「てめぇ、アーカイド! また俺の作戦を台無しにしやがって!!」

 

「……そうなのか? アーカイド」

 

 ベクターの発言にアーカイドがうるさいなぁと耳をふさぐしぐさをしているとドルベが問いかけた。

 

「ちがうよー。今回はどっちかって言うとベクちゃんの作戦の手助けをしたんだから! 感謝して欲しいよねー」

 

「ふざけた事を!」

 

 怒りに体を震わせているベクターにドルベが落ち着けと一言声をかけるとベクターは舌打ちをしてアーカイドを睨みつけた。

 

「これは本当だよ? もし僕があそこで介入してなかったらDr.フェイカーはベクちゃんが出てくる前に倒されてたんだから」

 

 いつものふざけているような声ではなく真面目に言っており、それを感じ取ったのかベクターは一応睨むのをやめたが納得がいかない顔をしていた。

 

「アーカイド、君は一体何をしたんだ?」

 

「んー簡単に言うと。4対1でデュエルしそうになってたから3対1にするために一番強いやつの相手を僕が引き受けてやったって感じー。ね? 僕悪くないでしょ?」

 

 アーカイドの発言にその場にいるバリアンたちは言葉を失った。

 そしてそそくさとアーカイドを除いた5人は輪となって固まり思ったことを口に出していた。

 

「あのアーカイドが適切な判断をするとは……」

 

「あれはアイツの皮を被った別のやつなのではないか?」

 

 信じられないといったようにドルベが呟くとミザエルが深刻そうに言う。

 それにギラクとアリトは頷いていた。

 

「そうかもしれねぇな」

 

「だって、ありえねぇもんな!」

 

 ベクターにいたってはニヤニヤと笑いながら頭上を気にするそぶりを見せている。

 

「空から槍でも降ってくんじゃねぇか?」

 

「ねぇ、聞こえてるんだけどー」

 

 アーカイドが頬を膨らませて不機嫌そうに言うとドルベだけすまないと謝っていた。

 

「で、本当のところはなんだよ?」

 

 ベクターの問いかけにミザエルとアーカイド以外のバリアンたちが首をかしげる。

 その反応に明らかに馬鹿にしたようにベクターは深いため息を吐いた。

 

「こいつが本当にそう思ってやると思うかぁ? どうせそれはついでなんだろ」

 

 指摘にアーカイドはあらら、ばれちゃったとまったく困った様子を見せずに楽しげに呟き、フードの中から覗かせる目を輝かせて聞いて聞いて! と声を張り上げた。

 

「あのね! 新しいおもちゃ見つけちゃった!!」

 

「おもちゃ?」

 

 おもちゃという単語にドルベの眉が瞬間的に動くが表情は変えずにいるのに対しミザエルは嫌悪感を隠す気もせずにアーカイドを睨む。

 

「黒峰刹って言うんだけどすっごく強いんだよ! 仲間思いで、クールで、本当壊しがいがある子なんだよね!!」

 

「……ゲスが」

 

 アーカイドの狂気に満ちた笑みを見てミザエルは吐き捨てる。

 いつもなら非難の言葉を告げるのだが、アーカイドはそんなものを気にせずに楽しそうにしていた。

 

「それでねー。刹っちゃんとは2回も戦ったんだけど負けちゃってさー」

 

 重要なことをさらりと言い放ち、聞いていた5人は何も反応しなかったがアーカイドの言った言葉を理解して一瞬遅れて驚きの表情を浮かべていた。

 

「アーカイドが負けただと……?」

 

「うん! まぁ、最初は油断してたんだけどねー。でも2回目のデュエルは真面目にやったんだけど、負けちゃった!」

 

 ドルベの問いかけに笑顔でアーカイドは答えたがベクターを除いた4人は深刻そうな表情を浮かべている。

 

「手助けとか言いながら無様に敗北しちゃったんですかぁ? アーカイド君よぉ」

 

 わざと声を高くしてベクターがいうとアーカイドはムッとして腰に手を当てていた。

 

「しょうがないじゃーん。刹っちゃんの場にパーデククリスティアマスター・ヒュペリオンにテテュスまで居たんだからー」

 

「な、なんだそれ?」

 

 モンスターの名前を一気に言われたせいで何かの呪文のように聞こえたアリトは疑問の声をあげる。

 ギラグもいまいち分かっていないようで不思議そうにしているのを見て、アーカイドはひとつひとつ丁寧にモンスターの名前に効果の説明、そこから生み出されるコンボも語った。

 最後まで聞き終えた5人はまたもや言葉を失った。

 

「プレイングがてめぇ以上に鬼畜なんじゃねぇか?」

 

 顔を引きつらせながらベクターは呟く。

 アーカイドはのんきにそーかもねーと言いながらなにか考え込んでいた。

 

「で、あの場にいたんだろ? どいつだ」

 

「黒いやつの近くにいた女の子」

 

 あいつかと黒峰刹の容姿を思い出しベクターはほくそ笑んでいるとアーカイドの雰囲気が一変する。

 

「ベクター……手を出したら潰すから」

 

 ふざけた雰囲気など一切なくアーカイドはベクターをにらみつける。

 ベクターは怯えるそぶりを見せずに肩をすくめ、もったいぶるような言い方で語り始めた。

 

「さぁなー、もしその刹ってやつが俺の前に立ちはだかってきたらどうなるか分からないぜ? なんせてめぇを倒すほどのやつだからなぁ。全力でやらないと俺がやられるだろ?」

 

 両者が無言で睨みあっているとドルベからやめろ2人ともと制止の声が入り2人は同時に顔を逸らした。

 

「アーカイドってあんな顔も出来たのか」

 

「はじめてみるぜ。ふざけてないアーカイドなんて」

 

 様子を眺めていたギラグとアリトが2人に聞こえないように話していた。

 

「だが、黒峰刹はそこまでの実力者なのか……。アストラルと九十九遊馬以上の強敵かもしれん」

 

「大丈夫だよー。僕が何とかするから」

 

 ドルベが重々しい顔で思案しているとアーカイドが口を挟んだ。

 

「おやおやぁ、2回も負けちまったくせに偉そうに言うなー。おい」

 

 先ほど止めたと思ったのに再び煽り始めたベクターにドルベはひそかにため息を吐く。

 幸いなことにアーカイドは次は勝つもーんと言うだけで睨み合う事にならなかったのが救いだろう。

 

「デッキどうしようかなー」

 

 うーんとアーカイドが悩み始めるとベクターが背を向けてこの場から立ち去ろうとしておりドルベが呼び止める。

 

「待て、ベクター。どこに行くつもりだ?」

 

「俺はてめぇらと違ってやることが沢山あんだよ」

 

 じゃあなといって歩き出すがベクターは急に立ち止まって振り返った。

 

「そーいや、アーカイド君よぉ。ずっと昔になくなったって言っていたカードは見つかったのかぁ? そいつらがあればその黒峰刹ってやつも倒せるんじゃないのか?」

 

 楽しげに何のデッキを組もうか考えていたが途端に機嫌が悪くなりベクターを睨む。

 

「……うっさいなぁ。どうせその4枚のカードを入れたって重くなるだけだから別に良いんだよ。……先に潰そうか?」

 

 いまにもデュエルディスクを起動させるしぐさを見せる。

 ベクターはおー怖い怖い!笑いながら距離を離すとその場から消えてなくなった。

 その場の雰囲気が悪くなったが苛立っているアーカイドは放っておいて残された4人はいつも通りに過ごしている。

 アーカイドはというと盛大に舌打ちをした後、暫く考えているとあっと声を漏らしまた楽しげな表情を浮かべた。

 

「そーだ! あのデッキにしよっと!」

 

「なにか思いついたのか?」

 

 ドルベの問いかけにアーカイドはうん! と元気良く返事をする。

 

「先にフィールド魔法を発動するのが条件だけど、あのデッキならなんとかできるでしょー!」

 

 さっそくデッキ構築しよう! とアーカイドは走ってこの場から立ち去った。

 最大の問題児である2人がいなくなったことによりドルベは肩にのしかかった重みがなくなったような気分になり深く息を吐く。

 

「平気か、ドルベ?」

 

「……大丈夫だ。ミザエル」

 

 ドルベは言葉ではそう言いつつも片手で顔を覆っており何処か疲れているように見えた。

 そして腹部にかすかな違和感を覚え、顔にやっていた手を腹部に当ててドルベは遠い目をする。

 

「あぁ、ナッシュ……君がいてくれたら」

 




というわけでZAXAL第1期編が終了しました!
さて、第2期を見直してこなければ・・・。

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