遊戯王の世界に転生したがろくな事が起きない   作:アオっぽい

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今回のデュエルはいつものと違ってテンポが悪いです。
いつもの会話があまりないスムーズなデュエルが好きな方はご注意を。


第十九話 事実上優勝者とのデュエルはろくな事がおきない

 あの後、遊馬君と天城のデュエルを見ようかと思ったが私は都賀原から呼び出されて嫌な予感を胸に抱きながら病院に向かうと仁王立ちになって威圧感をかもし出している都賀原と珍しく怒りの表情をあらわにしている結の姿があった。

 あ、これはやばいと思ったがすでに遅かった、

 私は一度医師に容態を見てもらってから2人に説教をされ、ついでに治療を施された神代も私と一緒に30分ほどこっぴどく説教をされていた。

 

「遊馬君と天城のデュエルはもう始まってるかな……」

 

 結たちの説教が終わった後、私と神代は遊馬君と天城のデュエルを観戦するために神代のバイクに乗ってハートランドの広場に向かっていた。

 私が呟いた言葉が聞こえていたのか神代は肩をすくめる。

 

「さぁな。飛ばすからしっかりつかまってろ」

 

「法定速度は守ってよね」

 

 神代の肩をしっかり掴むとバイクのスピードはさらに上がる。

 ハートランドの広場近くについて遊馬君と天城が見える位置にバイクを止め、ヘルメットを取ってから私たちはバイクから降りる。

 Dゲイザーをつけてデュエルの様子を見てみるがもう終盤のようで、遊馬君の場にはホープとホープレイがおり天城の場にはギャラクシーアイズとネオギャラクシーアイズがいた。

 2体のギャラクシーが攻撃をすると遊馬君のライフは0となりデュエルは終了した。

 

「あー終わっちゃったか……」

 

「都賀原の説教が長かったからな」

 

 デュエルが終わり、観戦していた小鳥ちゃんたちが遊馬君と天城に駆け寄っているのを眺める。

 2人のデュエル見たかったんだけどな……。

 

「残念だったな、刹」

 

「残念に思っているのは神代も……」

 

 隣にいる神代に視線を向けたとき、あることに気づいた。

 

「いつの間に名前で呼ぶようになったの?」

 

 目を見開いて驚いていると神代は遊馬君たちがいる方向に視線を向けて口を開く。

 

「遊馬が、デュエルをしたらそいつはもう仲間だって言ってたんだよ」

 

 あー、確かに遊馬君の性格を考えるとそんなことを言い出しそう。

 それにしても神代も変わったなぁ……1年前とかはもっと人を寄せ付けない感じだったけど。

 私は思わず笑みを浮かべる。

 

「遊馬君のおかげでだいぶ性格が丸くなったんじゃない?凌牙」

 

 凌牙は驚いた表情を浮かべたが、すぐに笑みに変わりそうかもなと頷いていた。

 ふと遊馬君たちに視線を向けると遊馬君たちは何かを探すように周りを見渡していた。

 

「……なにしてるんだろ?」

 

 私の問いかけには答えずに凌牙も不思議に思いながら遊馬君たちを見守っていると私のDゲイザーから電子音が鳴り響いた。

 慌ててDゲイザーを見てみると連絡してきたのは小鳥ちゃんだった。

 首をかしげながら電話に出てみると、画面に小鳥ちゃんの顔が映る。

 

「小鳥ちゃん、どうしたの?」

 

「あ、刹さん! 急にごめんなさい、今どこにいますか?」

 

 私は小鳥ちゃんから見て右後方にある道路のほうを見るように指示し小鳥ちゃんがこちらを向いたのを確認して大きく手を振る。

 手を振っているのが私だと気づいたらしくあ……と声を漏らしていた。

 

「いまそっちにいくから待っていて」

 

「はい!」

 

 Dゲイザーの通話を切ってからポケットにしまい神代と向き合う。

 

「私は向こうに行くけど、凌牙はどうする?」

 

「俺はいい。さっさと行ってこい」

 

 そっけない返事にここら辺はかわらないなぁと思いながら、周りに一般人がいないか確認してブラック・ミストに頼んで下に降ろしてもらい、私たちは遊馬君たちのところへと向かった。

 近づいてくる私に小鳥ちゃんは手を振って、遊馬君と一緒にこちらに来た。

 

「何だよ刹! 来てたんならこっちで見ればよかったのによ」

 

「ごめんね、さっき来たばかりなんだ。デュエルのほうも最後の方しか見れなかったし」

 

 それでどうしたの? と問いかけてみると遊馬君と小鳥ちゃんが笑みを浮かべて横に移動すると天城が私の前まで歩いてきた。

 

「刹、お前にデュエルを申し込む」

 

 いきなりデュエルを申し込まれたのもそうだけど、天城も名前で呼んでいることに驚いた。

 これはあれだろうか、やっぱり遊馬君が関係しているんだろうな……。

 驚いている私に小鳥ちゃんから簡単にこうなった経緯を告げられた。

 事実上の決勝戦をして天城は事実上優勝者だから何か願い事はないかと遊馬君が言ったのがきっかけで、そこで天城は私とデュエルをしたいといったらしい。

 

「……わかった。そのデュエル、受けるよ」

 

 了承の言葉を言うと天城は口元を吊り上げた。

 

「お前の本気を見せてみろ。それを今度こそ俺が叩き潰す」

 

 

 

 先ほど遊馬とカイトがデュエルしていた場所で刹とカイトが向かいあう。

 

「デュエルモード、フォトンチェンジ!」

 

 その言葉とともにカイトが着ているコートの色が黒から白へと変わり左目の周りに青い模様が描かれ、目の色が赤へと変わる。

 刹は金色と青色の装飾がついたデュエルディスクを立ち上げ、レンズが水色のDゲイザーをつけるといつもの親しみやすい雰囲気が変わる。

 表情はなくなり何の感情もこもっていない目でカイトを見据えていた。

 

「くうぅ! すっげぇ楽しみだぜ!」

 

 2人の様子を見ていた遊馬が目を輝かせて言うと隣にいるアストラルが薄く笑みを浮かべて頷いた。

 

『刹もカイトも強力なデュエリストだ。おそらくすさまじいデュエルになるだろう』

 

「……どうだろうな」

 

 アストラルの発言に口を挟んだのはブラック・ミストだった。

 ブラック・ミストは今回、刹のエクストラデッキのほうではなく遊馬たちとともにデュエルを観戦していた。

 彼の発言に遊馬はムッと表情を変える。

 

「どういう意味だよ」

 

「別に天城カイトが弱いって言ってるわけじゃねぇよ。ただ、刹のデュエルは……」

 

 そこまで口に出すが、ブラック・ミストは見てれば分かると言いデュエルの観戦に戻った。

 

「先攻は俺がもらう! ドロー! 自分フィールド上にモンスターが存在しないとき、手札からフォトン・スラッシャーを特殊召喚できる!」

 

 カイトがデュエルディスクにカードをセットして現われるのは、顔は灰色のマスクのようなもので出来ており目の部分には十文字の穴が開いておりそこから赤色の丸い光が1つ見える。

 胴体には灰色と青のプロテクターのようなものがつけられ、プロテクターが着けられていない体の部分は青白く発光している。

 その人型モンスターは手にバスターソードを構えてカイトのフィールドに躍り出た。

 

レベル4 フォトン・スラッシャー 攻撃力:2100

 

「さらに手札から銀河戦士(ギャラクシー・ソルジャー)の効果を発動! 手札の光属性モンスターを墓地に送り、このカードを守備表示で特殊召喚する!」

 

 顔は金色の仮面のようなものをつけており、目の辺りに開いている穴からは緑色に淡く輝く光と暗闇しか見えない。

 体のほうは金色の装飾がついた白い鎧に胸の辺りには仮面の隙間から見える同じ色の光があり、手には3本のトゲがついたナックルを装備している人型のモンスターが現われる。

 

レベル5 銀河戦士(ギャラクシー・ソルジャー) 守備力:0

 

「銀河戦士のもう1つの効果を発動! このカードが特殊召喚に成功した時、デッキからギャラクシーと名のついたモンスターを1体手札に加えることができる。俺は銀河眼の雲篭(ギャラクシーアイズ・クラウドラゴン)を手札に加える! そしてフォトン・クラッシャーを召喚!」

 

 顔は頭の両側に小さな角がはえたマスクにT字の穴が開いており、目の部分には赤色の光が1つ覗かせる。

 緑と白の鎧を身につけ、武器は中央が細くその部分を手に持ち、両端が太いものを構えて現われた。

 

レベル4 フォトン・クラッシャー 攻撃力:2000

 

「俺はレベル4のフォトン・スラッシャーとフォトン・クラッシャーをオーバーレイ!」

 

 2体のモンスターは黄色の光の玉となり空中に舞い上がると地面に現われる穴の中に入っていく。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!! 現われろ、輝光帝ギャラクシオン!!」

 

 金色の装飾がついた白と藍色の鎧に身を包み両手には細長い剣に透明で黄緑色に輝く光が灯り、ビームサーベルのようになったものを持つ人型のモンスターが現われる。

 

ランク4 輝光帝ギャラクシオン 攻撃力:2000 ORU:2

 

「ギャラクシオンの効果を発動! オーバーレイ・ユニットを2つ使い、デッキから銀河眼の光子竜を特殊召喚する!」

 

 ギャラクシオンの周りを漂うオーバーレイ・ユニットが2つなくなると体が輝き、カイトのデッキの中にある1枚のカードが金色に光りデッキから出てくる。

 そのカードを引き出し頭上に掲げると上のほうで光の粒子が渦巻く。

 

「闇に輝く銀河よ。希望の光となりて、我が僕に宿れ!」

 

 水色の装飾がついた赤い十字架のようなものを上へと投げると光の粒子が集まり形作られていくとギャラクシーアイズがフィールドに現われる。

 

「現われろ! 銀河眼の光子竜!!」

 

レベル8 銀河眼の光子竜 攻撃力:3000

 

「俺はカードを1枚伏せてターンエンドだ」

 

「カイトのやついきなり攻撃力2000のモンスターとギャラクシーアイズを!」

 

 遊馬は歓喜きわまったように声をあげ、その隣で小鳥が心配そうに刹を見ていた。

 

「刹さん、大丈夫かな……」

 

「さっきの遊馬とのデュエルと違って、カイトの場には1ターン目からモンスターが3体もいるからな……」

 

 鉄男は小鳥の呟きに難しそうな顔をして刹を見てみるが、当の本人は1度フィールドにいるモンスターと伏せられたカードを見ているだけだった。

 

「私のターン、ドロー。魔導書の神判を発動。このカードを発動したターンのエンドフェイズ時、このカードを発動後自分または相手が発動した魔法カードの枚数分まで、自分のデッキから神判以外の魔導書と名のついた魔法カードを手札に加える」

 

「刹のやつ本気のデッキでやってるな。まぁ、天城カイトに言われたからだろうけどよ」

 

 刹が今しがた発動したカードを見て苦々しい表情を浮かべてブラック・ミストは呟いた。

 

「え、あれって刹の本気のデッキなのか?」

 

「そうだぜ。あのデッキの恐ろしさは後々分かってくる」

 

 遊馬の疑問の声にこたえた後、2人は再びデュエルに目を向けた。

 

「そして逆境の宝札を発動。相手フィールド上に特殊召喚されたモンスターが存在し自分フィールド上にモンスターが存在しない場合デッキからカードを2枚ドローする。手札から魔導法士ジュノンの効果を発動。手札の魔導書と名のついた魔法カードを3枚相手に見せ、特殊召喚する。私はグリモの魔導書、魔導書廊エトワール、ネクロの魔導書を見せて特殊召喚」

 

 ピンク色の髪に頭には白いとんがり帽子に長い札のようなものが3枚ぶら下がったものを被り、金色の装飾がついた白い露出の高い服を着た女性型のモンスターが現われる。

 

レベル7 魔導法士ジュノン 攻撃力:2500

 

「永続魔法、魔導書廊エトワールを発動」

 

 カードが発動されると刹の後ろに長い廊下のようなものが現われるとそこから青色に光り輝く球体が浮かび上がった。

 

「このカードは魔導書と名のつく魔法カードが発動されるたびに魔力カウンターが1つ乗る。そして魔力カウンターの数×100ポイント、自分フィールド上にいる魔法使い族モンスターの攻撃力が上がる。手札からグリモの魔導書を発動。デッキから魔導書と名のついたカードを1枚手札に加える。加えるのはアルマの魔導書」

 

魔導書廊エトワール 魔力カウンター:1

レベル7 魔導法士ジュノン 攻撃力:2500→2600

 

「魔導法士ジュノンの効果を発動。手札または墓地の魔導書と名のつく魔法カードを除外しフィールド上のカードを1枚破壊する。墓地の神判を除外しギャラクシーアイズを破壊する」

 

 ジュノンが呪文を唱えて手を上げると周りに黄緑色に輝く文字のようなものが複数現われる。

 それはギャラクシーアイズへと向かっていき締め付けるとギャラクシーアイズは苦しげな鳴き声をあげて破壊された。

 

「くっ、ギャラクシーアイズ……!」

 

 カイトは破壊された際に起こった爆風に顔を守るように片腕を上げ、悔しげに声を出した。

 

「魔導書士バテルを召喚」

 

 青いローブに水色の水晶のような装飾がついた青い帽子を被り、左手には魔導書を持った男性型のモンスターが現われる。

 

レベル2 魔導書士バテル 攻撃力:500→600

 

「効果を発動。このカードが召喚に成功した時、デッキから魔導書と名のつく魔法カードを手札に加える。トーラの魔導書を手札に。バトル、バテルで銀河戦士を攻撃」

 

 刹が指示を出すとバテルは水の玉を生み出して守備表示となっている銀河戦士に攻撃し、破壊した。

 

「ジュノンで輝光帝ギャラクシオンを攻撃」

 

「させるか! リバースカードオープン、光子化(フォトナイズ)を発動! 相手モンスターが攻撃してきたとき、その攻撃を無効にし攻撃してきたモンスターの攻撃力分だけ選択したモンスターの攻撃力をアップさせる!」

 

「手札から速攻魔法、トーラの魔導書を発動。フィールド上の魔法使い族モンスター1体を選択し、このカード以外の魔法カードの効果を受けないか罠カードの効果を受けないかのどちらかを選択できる。私はジュノンに対し罠カードの効果を受けない方を選択。よって光子化の効果は受けず、攻撃は続行される。さらに魔導書と名のついた魔法カードが発動されたことによりエトワールに魔力カウンターが1つ乗る」

 

 宙に浮かぶ青い光の周りを二つ目の黄緑色の小さな光が巡回する。

 

魔導書廊エトワール 魔力カウンター:1→2

レベル7 魔導法士ジュノン 攻撃力:2600→2700

レベル2 魔導書士バテル 攻撃力:600→700

 

 そしてジュノンの後ろから黄緑色の光の玉がいくつも出現し、腕を振るうとその玉はギャラクシオンに向かっていき、爆発を起こして破壊される。

 

「ぐうぅ!」

 

カイトLP:4000→3300

 

「カードを2枚伏せ、ターンエンド。エンドフェイズ時、魔導書の神判の効果が発動される。このターンで発動した魔法カードは3枚、よってデッキから魔導書院ラメイソン、トーラの魔導書、ヒュグロの魔導書を手札に加える。そして神判のもう1つの効果を発動。手札に加えたカードの数いかのレベルを持つ魔法使い族モンスターを特殊召喚できる。私はレベル3の魔導教士システィを特殊召喚」

 

 ベージュ色の髪に深緑の帽子に黒と灰色の装飾が施されており、着ているローブにも同じ装飾がある。

 右手には短剣、左手には天秤をモチーフにしたものを持っている女性型モンスターが現われた。

 

レベル3 魔法教士システィ 攻撃力:1600→1800

 

「デッキサーチに加えて特殊召喚だと?」

 

 優秀すぎる効果にカイトは表情をゆがめる。

 

「さらにエンドフェイズ時、システィの効果を発動。魔導書と名のついた魔法カードを発動したエンドフェイズ時、このカードを除外してデッキから光属性または闇属性の魔法使い族・レベル5以上のモンスター1体と魔導書と名のついた魔法カードを手札に加える」

 

 システィの足元に緑色の魔方陣が現われて中心の黒い穴に飲み込まれフィールドから消え去った。

 

「私はジュノンと魔導書の神判を手札に加える。これで終わり、天城のターンだよ」

 

『これは……』

 

 刹のターンがようやく終わりを向かえアストラルは信じられないといった様子で呟いた。

 

「どうしたんだよ? アストラル」

 

 アストラルの様子に気がついた遊馬が不思議そうに首をかしげて問いかけるとアストラルは小さなため息を吐き、分からないのか?と若干呆れていた。

 

『遊馬、カイトと刹の手札を良く見てみるんだ。カイトはモンスターの召喚などをして手札が2枚、刹はモンスター2体にあれだけの魔法カードを使ったのにもかかわらず手札は最大の6枚だ』

 

「えっと……それって?」

 

 説明を聞いても良く分かっていない遊馬に次はブラック・ミストが説明をしだした。

 

「わかんねぇのかよ。それだけハンド・アドバンテージがあるってことだ。ま、手札にあるほとんどのカードが相手にばれているがな」

 

「じゃあ、カイトがやばいって事か!?」

 

『どうだろうか……。このデュエル、どうなっていくのか私にも予想がつかない』

 

 話がいったん終わり、3人はカイトへと視線を向ける。

 カイトは刹のフィールドにいるジュノンを睨みつけながらデッキからカードをドローした。

 

「俺のターン、ドロー! 手札からフォトン・サブライメーションを発動! 墓地に存在するフォトンと名のついたモンスター2体を除外しデッキから2枚ドローする! 墓地に存在するフォトン・クラッシャーとフォトン・スラッシャーを除外し2枚ドロー!」

 

 2体のモンスターが除外されると光となってデッキに向かっていき、カイトはデッキからカードを2枚ドローする。

 

「手札から銀河眼の雲篭を召喚する!」

 

 地面から光があふれてそこから出てくるのはギャラクシーアイズを小さくしたようなドラゴンが現われる。

 

レベル1 銀河眼の雲篭(ギャラクシーアイズ・クラウドラゴン) 攻撃力:300

 

「銀河眼の雲篭の効果を発動! このカードをリリースし手札・墓地からギャラクシー・アイズと名のついたモンスターを特殊召喚する! 再び現われろ、銀河眼の光子竜!!」

 

 クラウンドラゴンが消え去ると紫色の魔方陣の黒い穴からギャラクシーアイズが飛び出してくる。

 

レベル8 銀河眼の光子竜 攻撃力:3000

 

「さらに手札から銀河遠征(ギャラクシー・エクスペディション)を発動! このカードは自分フィールド上にフォトンまたはギャラクシーと名のついたレベル5以上のモンスターが存在する場合、デッキからフォトンまたはギャラクシーと名のついたレベル5以上のモンスターを守備表示で特殊召喚する! フォトン・カイザーを特殊召喚!」

 

 青い鎧に肩当てと兜の部分が金色の装飾がついており、右手には剣を左手には大きな青い盾を持った人型モンスターが現れる。

 

レベル8 フォトン・カイザー 守備力:2800

 

「フォトン・カイザーは2体分のエクシーズ素材となる。いくぞ、刹!!」

 

 カイトが刹に向かって叫ぶと右手を上げた。

 

「俺はレベル8のエクシーズ素材が2体分となったフォトン・カイザーと銀河眼の光子竜をオーバーレイ!」

 

 2体のモンスターは光の玉となり頭上に現われた穴の中に入っていき、カイトの体から赤色のオーラが現われ赤い槍のようなものが隣に出現するとカイトはそれを掴んで頭上の渦に向かって投げる。

 

「逆巻く銀河よ、今こそ怒涛の光となりてその姿を現わすがいい! 光臨せよ、我が魂!」

 

 渦から赤い光が爆発を起こすとそこから銀河眼の光子竜とは打って変わり赤色に体が輝いているドラゴンが現われる。

 

「現われろ、超銀河眼の光子龍(ネオギャラクシーアイズ・フォトンドラゴン)!!」

 

ランク8 超銀河眼の光子龍(ネオ・ギャラクシーアイズ・フォトンドラゴン) 攻撃力:4500 ORU:2

 

 ネオギャラクシーはフィールドに現われると共に大きな咆哮をあげた。

 

「ネオギャラクシーアイズの効果を発動! フォトン・ハウリング!!」

 

 ネオギャラクシーの口から紫色の波紋がフィールド全体に行き渡ると刹のフィールドにいるモンスター達は苦しげに膝を着き、エトワールの光の球体から光が失われた。

 

「ネオギャラクシーアイズがエクシーズ召喚に成功した時、このカード以外のフィールド上に表側表示で存在するカードの効果を無効にする! よって魔導書廊エトワールの効果で上がっていた攻撃力も元に戻る!」

 

「なっ……!」

 

 刹はモンスター効果を聞いてかすかに目を見開いて驚いた表情を浮かべていたが、すぐに眼を細めた。

 

レベル7 魔導法士ジュノン 攻撃力:2700→2500

レベル2 魔導書士バテル 攻撃力:700→500

 

「うわあぁ! これでネオギャラクシーアイズがバテルを攻撃したら……」

 

「刹さんの負けウラ!」

 

「キャット……刹さん、どうするのかしら?」

 

 ネオギャラクシーでバテルを攻撃してしまったらライフちょうどの4000ダメージが刹を襲うことになり、その事実にいつも皆から委員長と呼ばれている孝と徳之助が慌てていた。

 

「刹がそんな簡単に負けるかよ!」

 

 思わずブラック・ミストは声を荒げて言ってしまい、慌てていた2人は小さな悲鳴を上げて一歩下がった。

 

「もう! No.96、気持ちは分かるけど少しは落ち着いたらどうなの?」

 

 小鳥はムッとした表情を浮かべているブラック・ミストに言うが、彼は何も反応を見せずたまらず聞いてるの!? と言い放つ。

 

「あ? あっ、あー……聞いてる」

 

 すこし驚いた後、何かに気づき視線を泳がせてブラック・ミストは頷いた。

 その反応を見て小鳥はさらに言葉を続けようとするがアストラルに遮られた。

 

『小鳥、No.……いやブラック・ミストは普段、刹からブラック・ミストと呼ばれている。恐らくだがそちらが定着してしまって反応できなかったのだろう』

 

「なっ!?」

 

「え、そうだったの?」

 

 アストラルの言葉にブラック・ミストは何度も口を開けたり閉じたりしているがそこから言葉が出てくることはなく、その様子を見て小鳥は納得したように頷いた。

 

「んじゃあ、俺たちもNo.96のことはブラック・ミストって呼ぼうぜ!」

 

「そうね。呼び方は統一したほうが良いわよね!」

 

 遊馬の提案にその場にいる仲間たちが賛成していると体を震わせていたブラック・ミストは勝手にしろ! 言い放ち、顔を逸らす。

 

「……向こうが騒がしいな」

 

 デュエル中だったカイトは遊馬たちが騒いでいるのを見てしまいため息を吐いて呟く、通信によってその呟きが聞こえた刹は微笑んだ。

 

「仲が良くていいと思うけど?」

 

 刹の言葉にカイトはどうだかなというが、口元はかすかに笑みが作られておりその表情は柔らかかった。

 

「……続けるぞ。ネオギャラクシーアイズで魔導書士バテルに攻撃! アルティメット・フォトン・ストリーム!!」

 

 ネオギャラクシーの口と肩から赤白いブレスが吐き出されてバテルへと向かっていく。

 

「罠カード、ハーフ・アンブレイクを発動。このターン、選択したモンスターは戦闘では破壊されず、戦闘によって発生するダメージは半分となる」

 

 発動されたカードから青色のシャボン玉が出てくるとバテルを包み込んでネオギャラクシーの攻撃からバテルを守った。

 

「ぐっ、ああぁ!!」

 

 刹は攻撃によって起こった爆風に顔を守るように腕を前に出すが耐え切れずに後方に吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。

 

刹LP:4000→2000

 

「俺はカードを2枚伏せてターンエンドだ!」

 

 カイトのエンド宣言後、刹はすぐに立ち上げるとデッキからカードをドローする。

 

「私のターン、ドロー。手札からジュノンの効果を発動。手札の神判、ラメイソン、トーラを見せて特殊召喚する」

 

 フィールドに出ていたジュノンの隣に姿形が一緒の女性型モンスターが現われる。

 

レベル7 魔導法士ジュノン 攻撃力:2500 (2体目)

 

「手札から魔導書の神判を発動しフィールド魔法、魔導書院ラメイソンを発動」

 

 刹がフィールド魔法ゾーンにカードをセットすると周りの景色は変わり街の風景と大きな灰色のタワーに水色の文字のようなものが周りに輪を描くように浮かんだ建物が現われる。

 空は本来なら青空が広がるはずが今の時間帯を考慮してかオレンジ色に染まっていた。

 

「先ほど特殊召喚したジュノンの効果を発動」

 

「速攻魔法、銀河爆風(ギャラクシー・バースト)を発動! このターンのエンドフェイズ時まで自分フィールド上の光子またはフォトンと名のついたモンスター1体の攻撃力を半分にし、相手フィールド上に表側表示で存在するカードを2枚まで効果を無効にする! 俺は効果を発動しようとしていたジュノンとラメイソンの効果を無効にする!」

 

ランク8 超銀河眼の光子龍 攻撃力:4500→2250 ORU:2

 

 呪文を唱えようとしていたジュノンに暴風が襲い、効果の発動が無効になる。

 

「……手札からヒュグロの魔導書を発動。このカードは魔法使い族1体の攻撃力を1000ポイントアップさせる。私はジュノンを選択」

 

レベル7 魔導法士ジュノン 攻撃力:2500→3500

 

「ジュノンでネオギャラクシーアイズを攻撃」

 

 先にいたジュノンの後ろに光の玉が現われて腕を振るい、光の玉がネオギャラクシーアイズに襲い掛かり爆発が起こる。

 爆発によって起こった煙が晴れてくるが、そこにはネオギャラクシーアイズとライフが250しか減っていないカイトの姿があった。

 

カイトLP:3300→3050

ランク8 超銀河眼の光子龍 攻撃力:4500 ORU:0

 

「俺は罠カード、プリベント・リボーンを発動した。このカードは表側攻撃表示で存在するモンスター1体が戦闘で破壊されたとき、戦闘ダメージを1000ポイントダウンしこの戦闘で破壊されたモンスターを1体特殊召喚する」

 

「ダメージは1250だったから250のダメージというわけね」

 

 刹が便利な効果だねと呟くとカイトの眉が瞬間的に動くが何も言わなかった。

 

「でも、モンスターを破壊したわけだからヒュグロの魔導書のもう1つの効果を発動。モンスターを戦闘で破壊した時 デッキから魔導書と名のついた魔法カードを手札に加える。私はセフィルの魔導書を手札に加える。バトルは終了。バテルを守備表示にする」

 

レベル2 魔導書士バテル 守備力:400

 

「手札からアルマの魔導書を発動。除外されている魔導書と名のつく魔法カードを手札に加える。私は除外されている魔導書の神判を手札に加え、カードを1枚伏せターンエンド。エンドフェイズ時、神判の効果でデッキからグリモ、ゲーテ、ヒュグロを手札に加えデッキからレベル2の見習い魔術師を特殊召喚する」

 

 守備の体勢で紫色の服を着た金髪に赤いバンダナをつけ、杖を持っている男性型のモンスターが現われる。

 

レベル2 見習い魔術師 守備力:800

 

 刹のターンが終わりカイトのターンになろうとしているとき、小鳥は刹を見てすこし考え込んだあと呟くように言った。

 

「ねえ、遊馬。刹さんはデュエルを楽しんでるのかな?」

 

「はぁ? 何言ってるんだよ。こんなすっげぇデュエルなのに」

 

 そこまで言って遊馬は刹に視線を向け、小鳥が言っていた意味が理解した。

 刹は相手フィールドに4500という高い攻撃力のモンスターがいて不利な状況にもかかわらず刹は表情を変えていなかった。

 ただ何も込められてない目でネオギャラクシーを見ている。

 

『デュエルに集中している……というわけではなさそうだ』

 

「あぁ、その通りだ」

 

 アストラルの言葉にブラック・ミストは頷き、話し始めた。

 

「刹はデュエルを楽しんでない。今の状況も少しまずいなって思ってるぐらいだろうな。あぁ、勘違いするんじゃねぇぞ。刹はデュエル自体は楽しいと思ってる。ただデュエル中に気持ちが昂るとかそんなのがないって意味だ」

 

「な、なんで?」

 

「……しらねぇよ」

 

 周りには気まずい雰囲気が漂う中、遊馬だけは呻いていたが突然叫び声をあげて両手で頭を掻いた。

 

「難しいことはわかんねぇよ! とにかく、刹!! かっとビングだああぁ!!」

 

 突然の叫び声に刹は目を見開いて遊馬たちに視線を向けるが暫くして視線を泳がせた後、困ったように笑っていた。

 ブラック・ミストは腕を組んで深いため息を吐く。

 

「刹はお前らのように単純じゃないんだよ。そんなんで問題が解決するわけねぇだろうが」

 

 そこからブラック・ミストと遊馬のかっとビングについての痴話喧嘩が始まってしまった。

 話題となっている本人は浅く息を吐いた後、呟くように言った。

 

「普通にデュエルをしているだけなんだけどなぁ……」

 

「それが、お前が抱える悩みか?」

 

 カイトの問いかけに刹はそうだねと苦笑いを浮かべて頷く。

 

「私は昔からデュエル中に楽しいと思ったことがない。まぁ、それも最近気づかされたことなんだけど……」

 

「……そうか」

 

 目を伏せて考え込むようにしてカイトは言う。

 全体の雰囲気が落ち込んでいるのに気づいて刹は声を張り上げて続きをしようと告げるとカイトはかすかに頷く。

 

「俺のターン、ドロー! 墓地にいる銀河眼の雲篭の効果を発動! このカードはデュエル中に1度だけギャラクシーアイズと名のついたモンスターエクシーズのオーバーレイ・ユニットになることが出来る! そして手札から装備カード、フォトン・ウィングをネオギャラクシーに装備させる! フォトン・ウィングは1ターンに1度、モンスターエクシーズを1体選択しすべてのオーバーレイ・ユニットを墓地に送ることで装備モンスターの攻撃力はエンドフェイズ時までその選択したモンスターエクシーズのランク×200ポイントアップする!」

 

ランク8 超銀河眼の光子龍 攻撃力:4500→6100

 

「攻撃力6100!?」

 

「これはまずいぜ……」

 

 大幅に上がったネオギャラクシーの攻撃力を見て遊馬たちは驚きの声と刹を心配する声があがる。

 

「フォトン・ウィングの効果を発動したこのターン、装備モンスターは相手プレイヤーにダイレクトアタックをすることが出来る! 終わりだ! いけ、ネオギャラクシーアイズ! アルティメット・フォトン・ストリーム!!」

 

「リバースカードオープン、和睦の使者を発動。このターン、戦闘ダメージはすべて0となり自分のモンスターは戦闘では破壊されない」

 

 ネオギャラクシーのブレスが刹に届く前に青色のローブを来た女性が姿を現わして透明のバリアを張って攻撃から身を守った。

 

「くっ、ターンエンドだ。エンドフェイズ時、ネオギャラクシーアイズの攻撃力は元に戻る」

 

ランク8 超銀河眼の光子龍 攻撃力:6100→4500

 

「私のターン、ドロー。ラメイソンの効果を発動。自分フィールドまたは墓地に魔法使い族モンスターが存在する場合、墓地にある魔導書と名のついた魔法カードをデッキの一番下に戻し、デッキからカードを1枚ドローする」

 

 デッキからドローしたカードを見て刹はカイトを見据えて口を開いた。

 

「このデュエル、勝たせてもらうね」

 

「なに!?」

 

「魔導召喚士テンペルを召喚」

 

 カイトの驚いた声に気にも留めずにモンスターを召喚すると、オレンジ色のフードつきのローブに両手には杯を持った女性型のモンスターが現われる。

 

レベル3 魔導召喚士テンペル 攻撃力:1000

 

「さらに手札から魔導書の神判を発動しグリモの魔導書を発動。デッキからアルマの魔導書を手札に加える。そしてテンペルの効果を発動。魔導書と名のついたカードを発動した自分のターンのメインフェイズ時、このカードをリリースしてデッキから光または闇属性の魔法使い族・レベル5以上のモンスターを1体特殊召喚する。現われろ、魔導天士トールモンド」

 

 テンペルが紫色の魔方陣の穴に消えると空中に光が現われてそこから大きな白い羽を生やし白い衣装に身を包んだ男性型のモンスターが現われる。

 

レベル9 魔導天士トールモンド 攻撃力:2900

 

「トールモンドの効果を発動。このカードが魔法使い族または魔導書と名のついた魔法カードの効果によって特殊召喚に成功した時、自分の墓地の魔導書と名のついた魔法カードを2枚手札に加える。さらにこの効果でカードを加えたとき、手札の魔導書と名のついた魔法カード4種類を相手に見せることで、このカード以外のフィールド上のカードをすべて破壊する」

 

「なんだと!?」

 

 刹はグリモ、神判を墓地から回収し、グリモ・神判・ヒュグロ・ゲーテをカイトに公開してトールモンドの効果を発動させた。

 トールモンドの周りを漂っている4つの武器が回転し始めトールモンドが腕を振るうと4つの武器が回転しながらフィールド上を猛スピードで駆け回り、1つの武器がネオギャラクシーを襲い掛かり、苦しげな鳴き声をあげて破壊される。

 そして刹の場にいたモンスターやフィールド魔法もすべて破壊される。

 

「ヒュグロの魔導書を発動しトールモンドの攻撃力をあげる」

 

レベル9 魔導天士トールモンド 攻撃力:2900→3900

 

「トールモンドでダイレクトアタック」

 

 刹が指示を出すとトールモンドの右手から魔方陣が出現すると光が集まりだして暫くするといくつものビームとなってカイトに襲い掛かった。

 

「ぐわああぁ!!」

 

カイトLP:3050→0

 

 爆風によって吹き飛ばされたカイトが地面に叩きつけられるとデュエルの終了する合図が鳴り響き、周りの景色が元に戻った。

 

「うおおぉ! 刹が勝ったあぁ!!」

 

 デュエルが終了して暫くたった後、遊馬は歓喜極まったかのように腕を振り上げて叫んだ。

 その声に反応して刹はDゲイザーを取ってから遊馬たちに顔を向けると笑みを浮かべ、カイトの元へと歩み寄った。

 地面に倒れているカイトに手を差し出し、カイトは刹の手を掴んで立ち上がる。

 

「遊馬の越えるべき壁が俺であるように、俺の越えるべき壁はお前のようだな」

 

「そんな大層なものじゃないと思うけどなぁ……」

 

 そんな話をしていると遊馬たちが2人に駆け寄って今しがたのデュエルの感想を次々といってくる。

 カイトはそのほとんどに答えず、刹は礼を言いつつも落ち着くように告げていた。

 暫くしてカイトがオービタルを背につけてこの場から去ろうした時、刹の名前を呼んだ。

 

「次は俺が勝ってみせる。それまで負けることは許さない」

 

 刹はすこし驚いた表情を浮かべたあと、笑みをこぼしていた。

 

「勝ち星は今のところ誰にもあげる気はないからね。もちろんカイトにも」

 

 返答に満足したのかカイトはふっと笑った後、空を飛んでいってしまった。

 刹たちはカイトの姿が見えなくなるまで見ていた。

 




主人公視点だとデュエル中の周りの会話が書けなくなるので三人称にしてしまいました。
そして次の話が終わったらアニメZEXAL一期が終了しZEXALⅡ編に突入。
長かった・・・ような気がする。
1期のアニメ第22話からこの小説の物語が始まり最終話の73話まで次の話も含めて20話。
2期だとどのくらいかかるのやら・・・。

とりあえずこれからもがんばろうと思います。

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