遊戯王の世界に転生したがろくな事が起きない   作:アオっぽい

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今回は驚きの16000文字。
といってもアーカイドとのデュエルはそこまで長くないんですよね・・・。


第十八話 バリアンとのデュエルはろくな事がおきない

アーカイドLP:8000

刹LP:8000

 

「じゃあ、今回も僕から行くよ。ドロー。自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、時械神メタイオンをリリースなしで召喚する」

 

現われるのは鎧のようなオレンジ色の細い腕と肩当て、体は雫のような形をしており足はない。

そして体の中央には鏡面があり、そこには男性の顔が映し出されたモンスターが現われる。

私はそのモンスターを見て内心首をかしげた。

なんだろう、なんか違和感が……。

 

レベル10 時械神メタイオン 攻撃力:0

 

「じゃあ、ギャラリーのためにまずは時械神の共通効果を教えてあげようか。時械神はデッキから特殊召喚できず、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合にリリースなしで召喚することが出来る。時械神は戦闘及びカードの効果では破壊されず、戦闘によって起こるダメージはお互いに0になる。そして次の自分のスタンバイフェイズ時にデッキに戻る」

 

「そんなモンスターをだしてどうするつもりなんだ……」

 

 ブラック・ミストは私の隣で眉間に皺を寄せ疑問の言葉を口にしている。

 

「カードを2枚伏せてターンエンドだよ」

 

 時械神――全部のカードを持っているって言っていたけどまさかこのモンスターが出てくるとは。

 私はデッキトップに指を置いて、カードをドローする。

 

「私のターン、ドロー。マンジュ・ゴッドを召喚し効果を発動。このカードが召喚、反転召喚に成功した時、自分のデッキから儀式モンスターまたは儀式魔法を1枚手札に加える。私は神光の宣告者(パーフェクト・デクレアラー)を手札に加える」

 

 私のフィールドに深緑色の体にいくつもの手が生えたモンスターが現われる。

 

レベル4 マンジュ・ゴッド 攻撃力:1400

 

「うわぁ……そのデッキ、魔導じゃないの?」

 

 アーカイドは嫌なものを見たというように呟いていたが私はかまわず続けた。

 

「手札からトランスターンを発動。自分フィールド上のモンスターを1体墓地に送り、同じ属性・種族でレベルが1つ高いモンスターをデッキから特殊召喚する。私は光属性・レベル5の光神テテュスを特殊召喚」

 

 銀色の髪を持ち、背中に青色の水晶から身長と同じくらいの大きさがある天使の羽があり、上半身に銀色や赤色の装飾がついたロングスカートをはいた女性が現われる。

 

レベル5 光神テテュス 攻撃力:2400

 

「特殊召喚成功時チェーンでオジャマトリオを発動。相手フィールド上にオジャマトークンを3体、守備表示で特殊召喚するよ」

 

 私の場に黄色の体色に頭から触覚が生え、唇が厚いモンスターと緑色の体色に一つ目のモンスターと黒の体色に鼻が大きいモンスターが現われる。

 その3体はピンク色のビキニパンツを履いていた。

 

レベル2 オジャマトークン 守備力:1000 (3体)

 

「……そして」

 

 次の行動に移ろうとしたときにバチバチと電気がはじける音が聞こえてきたのでそちらに視線を向けるとあのスフィアフィールドから赤い電流がDr.フェイカーに流れ、Dr.フェイカーは唸り声を上げていると細身だった体は筋肉が盛り上がり機械のような体に変わり果てる。

 簡単に言うとDr.フェイカーが突然マッチョ化したのだ。

 

「ブフッ!!」

 

 目の前で起きたことに呆然としているとアーカイドは口に手を当てて噴出し、おなかを抱えて体を震わせながら静かに笑っていた。

 向こうの4人はアーカイドの様子に気づくことなくデュエルをはじめている。

 

「刹、アイツはなんで笑ってるんだ?」

 

「あー……」

 

 ブラック・ミストの問いかけに私は目を逸らして答えることはしなかった。

 いや、前世の感覚があるから気持ちは分からなくもないし……。

 数分たって笑いが収まってきたのかアーカイドは目に浮かぶ涙を拭いながら顔を上げた。

 

「あーもう、笑っちゃった。僕ってば空気を壊さなかったんだから偉いよねー」

 

 じゃあ、続きをしよう! と時折Dr.フェイカーをみては噴出しているアーカイドを見て深いため息を吐く。

 

「手札から儀式魔法、高等儀式術を発動。手札の儀式モンスター、神光の宣告者を選択しこのカードと同じレベルになるようにデッキから通常モンスターを墓地に送る。そして神光の宣告者を儀式召喚」

 

 レベル6の逆転の女神を墓地に送って出てきたのはゴルフボールを2個くっつけたような体に上の部分には小さな腕が生えており、したの部分には小さな腕と足が生え、背中には緑、青、赤の天使のような羽が生えたモンスターが現われる。

 

レベル6 神光の宣告者 守備力:2800

 

「手札からリロードを発動。自分の手札をすべてデッキに加えシャッフルし、デッキに加えた枚数分だけカードをドローする。2枚をデッキに戻し2枚ドローする。テテュスの効果を発動。自分がカードをドローした時、そのカードが天使族モンスターだった場合、相手に見せることでもう1枚ドローできる。大天使クリスティアを見せてドロー、センジュ・ゴッドを見せてドロー、奇跡の代行者ジュピターを見せてドロー、マスター・ヒュペリオンを見せてドロー、創造の代行者ヴィーナスを見せてドロー……カードを2枚伏せてターンエンド」

 

「だいぶドローしたねー。僕のターン、ドロー。スタンバイフェイズ時、時械神メタイオンの効果でメタイオンはデッキに戻る。効果省略で時械神ミチオンを召喚」

 

 機械でできた天使の羽がいくつもあり赤い鎧のような体の中心にvの形をした赤い鏡面がありそこには凛々しい女性の姿が映し出される。

 

レベル10 時械神ミチオン 攻撃力:0

 

「ミチオンでパーデクに攻撃」

 

 相手は神光の宣告者の効果を知っているはず、さっき嫌そうな顔をしていたし・・・それなのにわざわざ攻撃か。

 ミチオンから炎が放たれて神光の宣告者に向かっていくが途中で消え去り互いにダメージも破壊もされなかった。

 

「ミチオンの効果を発動。このカードが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時、相手のライフを半分にする」

 

「バーン効果だと!?」

 

 ミチオンの効果を聞いてブラック・ミストは驚きの声をあげ、いまはデュエルしているはずの遊馬君や神代の心配する声が聞こえた。

 自分のデュエルに集中してなよ……心配してくれるのは嬉しいけどね。

 

「神光の宣告者の効果を発動。手札の天使族モンスターを墓地に捨てて魔法、罠、モンスター効果を無効にし破壊する」

 

「させないよー。カウンター罠、天罰を発動。手札を1枚捨ててモンスター効果を無効にし破壊する」

 

 カードから光が頭上に打ち上げられて一度光ると神光の宣告者に向かって落ち、神光の宣告者は破壊された。

 神光の宣告者はいくつチェーンを組もうともカードの効果を無効に出来るが、カウンター罠、墓地から魔法・罠の効果の発動は無効に出来ない。

 

「それじゃ、食らってね? ミチオン!」

 

 アーカイドが指示を出すとミチオンから放たれた炎が私を攻撃した。

 

「くっ……ああぁ!!」

 

「刹!」

 

刹LP:8000→4000

 

 後方へと吹き飛ばされて地面へと転がるが、私はすぐに立ち上がる。

 闇のゲームよりかはマシだけどこのARビジョンの衝撃はどうにかならないのかな……。

 

「カードを1枚伏せてターンエンド。さーてどうするのかなー? 刹っちゃん」

 

「私のターン、ドロー。テテュスの効果を発動。神光の宣告者を見せてドロー、天空の使者ゼラディアスを見せてドロー……マンジュ・ゴッドを手札から召喚し効果を発動」

 

「うわぁ、パーデクドローしてるよ……。マンジュ・ゴッドの召喚成功時にチェーンで永続罠、虚無械アインを発動して効果を使用するよ。手札の時械神1体を墓地に捨ててデッキからカードを1枚ドローする。僕は時械神ラフィオンを墓地に捨てドロー」

 

 嫌そうな声を耳にしながらマンジュ・ゴッドの効果を発動してデッキから儀式魔法を手札に加える。

 

レベル4 マンジュ・ゴッド 攻撃力:1400

 

「デッキから宣告者の予言(デクレアラー・プロフェシー)を手札に加える。手札から宣告者の予言を発動」

 

「発動にチェーンして自分フィールド上に表側表示で存在する虚無械アインを墓地に送って無限械アイン・ソフを発動。効果を使用するよ。相手ターン、手札の時械神1体を墓地に捨ててデッキから2枚ドローする。僕は時械神ハイロンを墓地に捨てて2枚ドロー」

 

「……自分の手札、フィールドにいるモンスターの合計レベルを6になるようにリリースしなければならない。レベル2のオジャマトークン3体をリリースし神光の宣告者を儀式召喚」

 

 先ほど破壊された神光の宣告者と一寸も変らない姿で私のフィールドに現われる。

 

レベル6 神光の宣告者 守備力:2800

 

「手札から天空の使者ゼラディアスの効果を発動。このカードを墓地に捨てることでデッキから天空の聖域を手札に加える。そして天空の聖域を発動」

 

 周りの景色が書き換えられ、白い雲が周りに漂い右前方には白い宮殿がたたずんでいる。

 

「手札の奇跡の代行者ジュピターを除外し、マスター・ヒュペリオンを特殊召喚。そして墓地に天使族モンスターが4体のみの場合、大天使クリスティアを特殊召喚」

 

 オレンジ色の炎に包まれながら姿を現わすのは金色と黒の装飾をつけ肩には金色の肩当てに同じ色のマントをつけた男性型のモンスターが現われ、その隣に白と赤色の鎧に身を包み天使の羽を生やした男性型のモンスターが現われる。

 

レベル8 マスター・ヒュペリオン 攻撃力:2700

レベル8 大天使クリスティア 攻撃力:2800

 

「うっわぁ……出て来ちゃった」

 

「クリスティアがこの方法で特殊召喚した時、墓地から天使族モンスター1体を手札に加える。私はマンジュ・ゴッドを手札に」

 

 ひと段落着いたところで私の場を見ていたブラック・ミストがなんかあっちの効果がマシに見えるぜ……と遠い目をして呟いているのが聞こえた。

 遊馬君たちのほうに視線を向けてみると遊馬君たちの場にはホープに白いシャーク・ドレイク、銀河眼の光子竜が存在しDr.フェイカーの場には黒く体が細長いドラゴンが存在していた。

 遊馬君たちなら大丈夫、いまは自分のデュエルに集中しないと。

 

「マスター・ヒュペリオンの効果を発動。1ターンに一度、墓地にいる光属性・天使族モンスターを1体除外することでフィールド上のカードを1枚破壊する。私は無限械アイン・ソフを選択」

 

 マスター・ヒュペリオンが手を掲げるとフィールドにある無限械アイン・ソフが燃え上がって破壊される。

 

「無限械アイン・ソフの効果発動。このカードが墓地に送られたとき、墓地にある虚無械アインを手札に加えるよ」

 

「私はこれでターンエンド」

 

「うーん、どうしよっかなぁ。僕のターン、ドロー。スタンバイフェイズ時、ミチオンの効果が発動されてデッキに戻る。効果省略で手札から時械神サンダイオンを召喚」

 

 先ほどのメタイオンと似たような形をしており、黄色の腕と肩当て灰色の体を持つ鎧のモンスターに体の中心には黄色の十字架の鏡面にいかつい男性の顔が映っている。

 アーカイドのモンスターを見てまた違和感を覚え、じっとそのモンスターを見て見るとそれが分かった。

 あの鏡面に写っている人の目に光がないんだ……あれってそういうモンスターだっけ?

 

レベル10 時械神サンダイオン 攻撃力:4000

 

「攻撃力4000をリリースなしで召喚だと?」

 

「こんなので驚かないでよ。大げさだなぁ」

 

 サンダイオンの攻撃力を見たブラック・ミストが驚きの声をあげると面倒くさそうにアーカイドは言い、デュエルを進めた。

 

「サンダイオンでパーデクに攻撃」

 

「リバースカードオープン、攻撃の無敵化を発動。フィールド上のモンスターを1体選択し、選択したモンスターはバトルフェイズ中カードの効果および戦闘では破壊されない」

 

 サンダイオンから黄色の光線が放たれて神光の宣告者に向かっていくが透明のバリアに守られて神光の宣告者は破壊されずにすんだ。

 

「あーあ……サンダイオンの効果。戦闘を行ったバトルフェイズ終了時、相手に2000のダメージを与える」

 

「神光の宣告者の効果で手札の天使族モンスター、マンジュ・ゴッドを捨ててモンスター効果を無効にする」

 

 サンダイオンが雷に似た光線を私に向かって放つが神光の宣告者が前に出て緑、青、赤の光を放つと光線をかきか消して効果を無効にする。

 

「僕はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

 どこか投げやりにカードを伏せ、アーカイドはターンを終了した。

 

「私のターン、ドロー。テテュスの効果を発動」

 

「テテュスの効果にチェーンして虚無械アインを発動。どうする?」

 

 私はすこし悩んだ後、効果は使用せず続けた。

 

「効果は使わない。私は手札のヘカテリスを見せてドロー……。リバースカードオープン、強制脱出装置を発動。フィールド上のモンスター一体を持ち主の手札に戻す、私はサンダイオンを選択」

 

 サンダイオンはカードの効果によって光のたまになるとアーカイドの手札に戻っていった。

 

「神光の宣告者を攻撃表示に変更」

 

レベル6 神光の宣告者 攻撃力:1800

 

「バトル、マンジュ・ゴッドでダイレクトアタック」

 

 指示を出すとマンジュ・ゴッドはアーカイドへ向かっていく。

 

「速攻のかかしの効果を発動するよ」

 

「神光の宣告者の効果で無効にする」

 

「チェーンで虚無械アインの効果を発動してサンダイオンを墓地に送りデッキからカードを1枚ドローする」

 

 アーカイドの前に出てきた案山子は神光の宣告者の光によって破壊されマンジュ・ゴッドはアーカイドに向かって拳を振り上げ、殴りつけようとする。

 

「おっと、危ない危ない」

 

アーカイドLP:8000→6600

 

 空中で攻撃を避けアーカイドは戦闘で受けるはずの衝撃を受けなかった。

 それってありなの?

 

「大天使クリスティアでダイレクトアタック」

 

 大天使クリスティアは片腕を掲げると頭上に光が集まり始める。

 

「自分フィールドにモンスターが存在せず、相手モンスターからダイレクトアタックをしてきたとき手札から罠カード、女教皇の錫杖を発動」

 

「手札から罠だと!?」

 

「神光の宣告者の効果を発動。手札のヘカテリスを捨て無効にする」

 

 ブラック・ミストは驚いているが神光の宣告者の効果が使用されるとアーカイドはだよねーとため息を吐いて腕を下ろした。

 

「パーデクじゃ、分が悪いって……。しかもクリスティアとマスター・ヒュペリオンもとか鬼畜だよねー、刹っちゃん」

 

 やれやれと首を振るアーカイドにクリスティアの攻撃が向かうが、それも空中で避ける。それでも表示されているライフは減ってはいるけど。

 

アーカイドLP:6600→3800

 

「神光の宣告者、マスター・ヒュペリオン、テテュスでダイレクトアタック」

 

 私の場にいるモンスターが一斉に攻撃をし始め、アーカイドがいた場所は白い光に包まれた。

 

アーカイドLP:3800→0

 

 デュエルが終了する合図が響き渡るとフィールドにいたモンスター達が消え、周りの風景が元に戻る。

 

「いやぁ、つよいねぇ刹っちゃん」

 

 ぱちぱちと拍手をしているアーカイドの姿にまったく変化は見られない。

 もしかしてさっきの攻撃も避けていたってこと?

 

「うわぁ、あぶな!」

 

 急にアーカイドが叫び横へと浮かんで何かを避けると、その何かはそのままこちらに飛んできた。

 

「え、ちょっ!?」

 

「は!?」

 

 とっさに隣にいるブラック・ミストの腕を掴んで横へと飛ぶとDr.フェイカーがぼろぼろの状態で私とブラック・ミストがいた場所に落ちてきた。

 Dゲイザーの表示されているライフなどを確認してみるとDr.フェイカーのライフは150となっていた。

 まだ向こうは終わってないのか……。

 

「あきらめろDr.フェイカー。もう終わりだ。今すぐハルトを開放しろ!」

 

地面に叩きつけられたDr.フェイカーはぼろぼろの体を起こして口を開く。

 

「カイト……貴様、自分が何をしているのか分かっているのか?」

 

 そこからDr.フェイカーは語り始めた。

 なんでもハルト君は生まれたときから虚弱で、その命は長くないとされていた。

 そのハルト君を助けるためトロンと遊馬君のお父さんを生贄にして異世界に行き、バリアンと取引をしてハルト君を生かす力を得る代わりにアストラル世界を滅ぼすことを約束された。

 もしアストラル世界を滅ぼさなければハルト君はバリアンに連れ去られてしまう――らしい。

 私はいまだに宙に浮かんでいるアーカイドに視線を向ける。

 フードで表情は見えないがやはり彼の口元には笑みが浮かんでいる。

 アーカイドはバリアンだったはず、ならハルト君を奪いにきたの?

 でも、奪うならとっくのとうに行動しているはず……。

 

「それが、真実だというのなら。どうして、どうしてそれを言わなかった!?」

 

 攻め立てるような口調で天城が言うとDr.フェイカーは顔を下に向けて呟くように語る。

 

「いえなかった……言えば必ずお前は、1人でその業を背負おうとするだろう」

 

 確かにそんな内容なら天城の性格を考えると1人でやろうとするよね……。

 実際、No.の集めとかタッグのときとか1人で何とかしようとしていたし。

 

「感謝していた、カイト。お前は何も言わず、ナンバーズハンターとしてハルトのために戦ってくれた。だから私はこれ以上、お前を苦しませたくなかった……だから」

 

 Dr.フェイカーの語りを天城が遮りそれは違うと否定した。

 

「何故家族を信じない? 何故そいつらを信じ、俺を信じてくれない!? 父さん!!」

 

 天城の表情はいつもの不適な笑みや冷徹なナンバーズハンターのものではなく、家族を思う1人の男の顔をしていた。

 

「そいつらがハルトの命を奪いに来るというのなら、俺がハルトを守る! 絶対に守り抜いてみせる! この命に代えても!!」

 

「カイト、俺も力を貸すぜ! バリアンだかなんだかしらねぇが俺が一緒にぶっとばしてやる!」

 

 天城の決意を聞いて遊馬君はこぶしを握って言うと、神代が俺もだと口を挟み遊馬君は嬉しそうに声をあげた。

 

「勘違いするな。そいつらには貸しがある……俺がぶっ潰してやるぜ」

 

 皆の決意を聞いて、ちらりとアーカイドのほうを見てみるとアーカイドは口元に手をやり、体を震わせながら笑い声を上げないようにしていた。

 

「俺たち4人が力を合わせれば、バリアンなんか敵じゃねぇ! やってやるぜ!」

 

 私は遠くにいるから何もいえいなかったけど、数に入っているようだ。

 力を貸すって言いたかったけど……うん、しょうがないよね。

 

「父さん、もう何も捨てなくていい! 俺たちを信じてくれるだけで、俺たちが何もかもけりをつけてやる!」

 

「カイト……」

 

 天城の言葉にDr.フェイカーが涙を流しているとき、突然Dr.フェイカーの様子が変わった。

 何かに怯えるように悲鳴を上げると尻餅をついて壁際に後退していく。

 周りにはアーカイド以外に脅威と呼ばれるようなものはいない、アーカイドを見てみるが何かをしている様子はない。

 

「おい! 刹、離れろ!!」

 

 ブラック・ミストに引っ張られて後ろに下がるとDr.フェイカーから赤色の煙が渦巻いていく。

 赤色の煙は先ほど存在していた黒いドラゴンを生み出し、Dr.フェイカーの背後に赤い煙のような体に羽が生え、顔には目だけが存在する者が現われDr.フェイカーに取り憑いた。

 

「九十九遊馬、天城カイト、神代陵牙。デュエルの決着がついていないぞ」

 

 目がうつろなDr.フェイカーの前にデュエルディスクが装備される。

 

「誰だ、お前は!?」

 

 遊馬君が叫んで問いかけるとその存在はフフッと笑みを零した。

 

「我こそは、バリ」

 

「ベークちゃあぁん!!」

 

 名乗り上げようとした瞬間、その空気すべてがアーカイドによって吹き飛んでしまった。

 

「いやいや、格好良い登場だねぇベクちゃあん!」

 

 ひゅーひゅーと口で言っているアーカイドにベクちゃんと呼ばれる存在は心なしか体を震わせているような気がした。

 

「我こそはバリアン。さぁ、デュエルの決着をつけようではないか」

 

「ぶー、無視とかひっどーい!」

 

 アーカイドのことは無視してデュエルを続けようとするベクちゃんなる存在に同情する。

 そしてバリアンという言葉に遊馬君と神代が反応した。

 

「バリアンだって!?」

 

「キリヤもバリアンなのか?」

 

 遊馬君と神代の言葉にアーカイドは深々と一礼して顔を上げる。

 

「はじめまして、人間界のデュエリスト諸君。僕はバリアンのアーカイド。今後ともよろしく」

 

 満面の笑みを浮かべてアーカイドは珍しく真面目に自己紹介をした。

 そういえば、なんでアーカイドとアイツの姿が同じじゃないんだろう……なにか条件でもあるとか?

 

「お前らがバリアン!?」

 

「そうだ、アストラル世界を滅ぼすためにやって来た。バリアン世界の使者だ」

 

 ベクちゃんという者はそういうとDr.フェイカーと一体化する。

 Dr.フェイカーの容貌は変化して額に青い十字架のような形をし真ん中に赤い装飾がついたものがつけられ皮膚も赤色に変色しており背中から赤い羽根が生えていた。

 

「見るが良い、ハートアースドラゴンの効果を! このモンスターはオーバーレイ・ユニットがない状態で破壊されたとき、一度だけ復活できる!よみがえったハートアースドラゴンの攻撃力は除外されたカードの数×1000ポイントとなる」

 

ランク9 No.92偽骸神龍Heart-eartH Dragon 攻撃力:0→4000

 

「攻撃力4000だと?」

 

 攻撃力0から一気に4000となり天城が驚きの声をあげる。

 

「さらにハートアースドラゴンの特殊召喚に成功した時、相手フィールドにいるすべてのモンスターを守備表示にする!」

 

ランク8 超銀河眼の光子龍 攻撃力:5000→守備力:3000

 

 遊馬君たちのフィールドにいたギャラクシーアイズに似た赤いモンスターは羽根の部分を自分の体を守るように包み込んで守備の体勢に入ってしまった。

 

「馬鹿なっ……ネオギャラクシーアイズが!」

 

 天城がそういった瞬間、なにかあったのか天城は苦しげに地面に膝をついてしまった。

 え、ちょっとまって……もしかして遊馬君以外重傷人とかそんなんじゃないよね?

 

「倒れるのはまだ早い。いくぞ!私のターン、ドロー! 永続魔法、バリアンズ・ゲートウェイを発動! このターン、墓地に送ったモンスター1体につき800ポイントのダメージを与える!」

 

 慌ててDゲイザーで遊馬君たちのライフを確認してみるとたったの100しかなかった。

 ハートアースドラゴンの攻撃でモンスターが破壊されたら、バーンダメージで遊馬君たちが負けてしまう。

 

「これでお前たちはおしまいだ! いけ、ハートアースドラゴン! ネオギャラクシーアイズに攻撃! ハートブレイクキャノン!!」

 

 ハートアースドラゴンの口からオレンジ色のブレスが放たれてネオギャラクシーアイズに向かっていった。

 

「罠発動、フォトン・エスケープ! このカードはフォトンモンスターが攻撃されたとき、そのモンスターを除外しバトルを終了させる!」

 

 ネオギャラクシーは青白く光ってその場から消え去った。

 

「まだたて突く力が残っていたか……。だがこの瞬間! ハートアースドラゴンの攻撃力は除外されたカード1枚につき1000ポイントアップ!」

 

ランク9 No.92偽骸神龍Heart-eartH Dragon 攻撃力:4000→5000

 

「攻撃力5000!」

 

 さらに上がった攻撃力に遊馬君が声を上げ、神代が眉間に皺を寄せている。

 その間に天城は頭上にいるハルト君を見た後、ゆっくり立ちあがった。

 

「バリアン! 貴様たちがハルトを奪いに来たというのならば奪ってみろ! 俺が此処で決着をつける!! ハルトオオオォ!!」

 

 天城はハルト君の名を大声で叫び、手札にあるカードを1枚手にとって前に掲げた。

 

「俺はディメンション・ワンドラーのモンスター効果を発動! モンスターが除外されたとき、手札のこのカードを墓地に送ることで除外されているモンスター2体の攻撃力を合計し相手にダメージを与える!」

 

 フィールドに黒色文字に緑色の輝く魔方陣が2つ現われてそこからネオギャラクシーアイズと白いシャーク・ドレイクが現われる。

 

「俺が選択するのはシャーク・ドレイク・バイスとネオギャラクシーアイズ! よってお前に与えるダメージの合計は7300だ!」

 

 この効果は下手すれば先攻1ターンキルも可能じゃない?

 場違いにもいいな……と思っているとネオギャラクシーアイズとシャーク・ドレイク・バイスが攻撃をし始めてバリアンへと向かっていく。

 

「良い手だカイト。永続魔法、バリアンズ・ゲートウェイのもう1つの効果を発動!このカードを墓地に送ることで相手のモンスターの効果を無効にする!」

 

 墓地に送られたバリアンズ・ゲートウェイから緑色の光線が放たれるとネオギャラクシーとシャーク・ドレイク・バイスの攻撃を相殺した。

 

「いまの一撃をかわしただと?」

 

 悔しげに拳を握り締めていた天城がまた膝をつき、それに続いて神代もお腹を押さえて同じく膝をついていた。

 もしかしてあれって、オボットに攻撃されたときの傷?

 

「怪我人ばかり!」

 

「お前もだよ」

 

 私は思わず頭を抱えて呟くと隣からジト目で私を見ながらブラック・ミストが突っ込みを入れていた。

 

「私はカードを1枚伏せてターンエンド! 残念だったな。これで残ったのは九十九遊馬、お前だけだ! フフフ、フハハハハッ!!」

 

 そのときだった。

 スフィアフィールド砲に埋め込まれているハルト君が虹色に光り輝き始め、スフィアフィールド砲の先端にあった球体の輝きが薄れるとその球体はゆっくり降りてくる。

 遊馬君たちが何か話した後、遊馬君はバク転などをして後ろに下がると勢い良く走り出してスフィアフィールドに向かってジャンプした。

 

「え、ちょ!? あれ、大丈夫なの!?」

 

 このままだと落ちると思った瞬間、遊馬君のペンダントが輝き、透明なバリアに包まれてスフィアフィールドに入った。

 

『遊馬!!』

 

「アストラル!! 俺とお前でオーバーレイ!!」

 

 そんな声が聞こえてくるとスフィアフィールドから赤色と青色に輝く何かが飛び出して上に向かっていく。

 

「俺たち2人でオーバーレイ・ネットワークを構築!」

 

『遠き二つの魂が交わるとき、語り告がれし力が現われる!』

 

「エクシーズチェンジ!」

 

 二つの光が激突した時、金色の光があふれ出し、遊馬君は白いライダースーツに赤いプロテクターを着けた姿に変わる。

 顔つきも若干変わっており、左目はDゲイザーで緑色に見え、右目が黄色に変化していた。

 

「ゼアル!!」

 

 私の今の表情はあのポカーンという顔文字そのままの顔をしているだろう。

 皆は遊馬君のその姿を見て嬉しそうにしている。

 あれ? 取り残されているのは私だけ?

 

「お前がアストラル世界の力、ゼアル……」

 

「バリアン! お前が俺たちの前に立ちはだかろうと闇に煌めく希望が! この胸に熱く燃えるかっとビングが! お前を倒す!! 俺のターン!!」

 

 遊馬君が右手をゆっくり上げると右手に金色の光が現われる。

 

『最強デュエリストはドローカードさえ創造する!』

 

 それってチートじゃん。

 聞こえてくる声に私は心の中で突っ込みを入れてしまう。

 わかってる。突っ込みを入れてはいけないのは分かっているけど……前世の感覚で 突っ込んでしまう!

 

『これが、我々の運命の一枚!』

 

「シャイニング、ドロー!!」

 

 遊馬君がドローしたカードは金色に輝き、引いた際に周りには光が漂っていた。

 

「俺はZW-玄武絶対聖盾(アルティメット・シールド)を召喚!」

 

 青く円形のモンスターが横回転しながら現われ、止まると頭と足が生えその形は亀に良く似ていた。

 

レベル4 ZW-玄武絶対聖盾 攻撃力:0

 

「アルティメットシールドの効果発動! このカードを召喚した時、除外されたモンスターエクシーズを効果を無効にして守備表示で3体まで特殊召喚できる!」

 

「なんだと!?」

 

 アルティメットシールドが横回転し始めるとそこから竜巻が発生する。

 

「よみがえれ、CNo.39!希望皇ホープレイ!!」

 

竜巻の中から希望皇ホープに良く似た黒いボディのモンスター、ホープ・レイが現われる。

 

ランク4 CNo.39 希望皇ホープレイ 守備力:2000

 

「吼えろ、CNo.32!シャーク・ドレイク・バイス!!」

 

「蘇れ、我が魂!超銀河眼の光子龍!」

 

 神代と天城がそういうと竜巻の中からシャーク・ドレイク・バイスとネオギャラクシーが守備の体勢で現われる。

 

ランク4 CNo.32 海咬龍シャーク・ドレイク・バイス 守備力:2100

ランク8 超銀河眼の光子龍 守備力:3000

 

「そして除外されている3体のモンスターがフィールドに戻ったことにより、ハートアースドラゴンの攻撃力は3000下がる!」

 

ランク9 No.92偽骸神龍Heart-eartH Dragon 攻撃力:5000→2000

 

 ハートアースドラゴンの攻撃力は除外されているカードの数×1000だから現在除外されているカードの数は2枚ということになる。

 

 

「見たか、これが俺たちの底力だ!」

 

「チートドローしてるくせに良く言うよねぇ……」

 

 アーカイドはつまらなそうにデュエルを見ながら3人に聞こえないように呟いていた。

 

「ふざけた真似を! だが、お前らの終わりは変わらん!! 見るが良い!」

 

 そしてバリアンが腕を掲げるとスフィアフィールドはまたスフィアフィールド砲にセットされると赤く輝き始めた。

 

「アストラルは取り逃がしたが、スフィアフィールド砲のエネルギーとしては十分だ!もうどんなことをしようがこいつを止めることは出来ない!!」

 

 ハートアースドラゴンがスフィアフィールドの周りを徘徊していると、そのスフィアフィールドを口にくわえてフィールドに戻ってきた。

 

「全員まとめてアストラル世界と共に消え去るが良い!」

 

 バリアンの言葉に天城と神代が遊馬君に向かって激励の言葉を送り、遊馬君はおう! と答えてデュエルを進めた。

 

「俺はアルティメットシールドをホープレイに装備! これによりホープレイの守備力は2000アップする!」

 

 アルティメットシールドは変形すると大きな盾となりホープレイの手に持たされる。

 

ランク4 CNo.39希望皇ホープレイ 守備力:2000→4000

 

 守備力は上がっているけど、それだけだと相手は倒せない。

 どうするつもりなんだろうか……。

 

「さらに手札から装備魔法、エクシーズ・ユニティを発動! このカードの効果でホープの攻撃表示に変更! さらにこのターン、ホープレイの攻撃力に自分のフィールドにいる守備モンスターの攻撃力を加える!」

 

 ネオギャラクシーとシャーク・ドレイク・バイスが光の粒子となってホープレイに吸収されると表示されている攻撃力が上がった。

 

ランク4 CNo.39希望皇ホープレイ 攻撃力:2500→9800

 

「なんだと!?」

 

「いっけぇ、ホープレイ!!」

 

 遊馬君が指示を出すとホープレイはハートアースドラゴンに向かっていく。

 

「無駄だ! 攻撃力をいかにあげようとハートアースドラゴンはバトルのダメージを無効にしてお前たちに反射する!」

 

 あのモンスターそんな効果があったのか……蘇生に反射とか話の流れ的に他にもモンスター効果がありそうだけど。

 

「俺は装備魔法エクシーズ・ユニティのもう1つの効果を発動! この効果で俺はシャーク・ドレイク・バイスを墓地に送り、ホープレイの攻撃回数を1回増やしてお前にダイレクトアタックが出来る」

 

 シャーク・ドレイク・バイスが墓地に送られると半透明のシャーク・ドレイク・バイスがホープレイの前に姿を現わしバリアンへと向かう。

 

「そうはさせん! 永続罠、バリアンズ・バトル・バスターを発動! このカードは墓地のバリアンズカードを除外し1ターンに2度、モンスターの攻撃を無効に出来る!」

 

 それじゃ、もう一回エクシーズ・ユニティの効果を使用してネオギャラクシーを墓地に送っても攻撃が無効にされる……。

 

「私はバリアンズ・ゲートウェイを除外して、ダイレクトアタックを無効にする!」

 

 バリアンズ・バトル・バスターから赤い光線が放たれるとシャーク・ドレイク・バイスとホープレイにあたり、ホープレイは衝撃で吹き飛ばされる。

 

「くっ、まだだ! 俺はネオギャラクシーアイズを墓地に送り、攻撃回数を1度増やしもう一度ダイレクトアタックだぁ!!」

 

 ネオギャラクシーが墓地に送られ、半透明のネオギャラクシーがホープレイの前に現われる。

 

「おい、アイツ自棄になったんじゃねぇだろうな?」

 

「……たぶん、違うと思う」

 

 ブラック・ミストの言葉に私は首を振って遊馬君を見る。

 遊馬君は前をまっすぐ向いてデュエルをしており、まだあきらめている目をしてはいなかった。

 

「おろかな! 永続罠、バリアンズ・バトル・バスターの効果を発動! ダイレクトアタックは無効だ!」

 

 先ほどと同じく赤い光線がホープレイに当たってホープレイは後ろに吹き飛ぶ。

 

「さらにこのバリアンズ・バトル・バスターを墓地に送ることで、フィールドのモンスターを強制的にバトルさせる!」

 

 そうなるとホープレイの攻撃でバリアンが受けるはずの6800を遊馬君たちが受けることになる……。

 光り輝いているホープレイは背中の羽で大きな剣を握りしめ、それを振り下ろすと金色の光線が放たれてハートアースドラゴンへと向かっていく。

 ハートアースドラゴンが咥えている赤い球体に光線が吸収され、ブレスが放たれた。

 

「それはどうかな?」

 

「なに!?」

 

「アルティメットシールドの効果を発動! このカードが装備カードのとき、発生した効果ダメージを無効にしてその分だけこのカードの攻撃力に加える!」

 

 ブレスが青色の盾に吸収され、大きな剣に吸収された力が宿っていく。

 

「さらにハートアースドラゴンの効果はすべて無効となる!!」

 

ランク4 CNo.39希望皇ホープレイ 攻撃力:9800→16600

 

「16600!?」

 

「うわぁ……」

 

 1万越えの攻撃力を生で見たのはサイバーデッキぐらいだったんだけど、まさかここで見られるとは……。

 ホープレイが持つ大きな剣が青白く光り輝き、ホープレイはその剣を振り上げる。

 

「馬鹿な……馬鹿な! 馬鹿なあぁ!!」

 

「16600の攻撃をくらえぇ! いっけぇ、ホープレイ! ハートアースドラゴンに、バリアンに攻撃!! ホープ・剣・アルティメットスラッシュ!!」

 

 ホープレイの持つ大剣に電流が発生し始め、それを振り下ろすと大きな光線となってハートアースドラゴンへと向かっていく。

 ハートアースドラゴンはその攻撃を食らって爆発を起こして破壊される。

 

「うわああぁ!!」

 

Dr.フェイカーLP:150→0

 

 デュエルの終了する合図とともにDr.フェイカーに取り憑いていたバリアンが離れ、Dr.フェイカーは元の細身の体に戻った。

 

「おのれっ! きさまらぁ!!」

 

「あらら、ベクちゃん帰っちゃった。じゃあ、僕も帰ろうかなー。それじゃあ、また会おうね! 刹っちゃん!」

 

 バリアンはそういうと光の粒子となり消え、続いてアーカイドが手を振ってその場から消え去った。

 

「見たかバリアン! これが俺たちの絆の力だ!!」

 

 吹き飛ばされたDr.フェイカーは私たちがいる場所に落ちてきた。

 

「フェイカーさん!」

 

 私は駆け寄って容態を見てみようとするとデュエルの影響なのかスフィアフィールド砲が崩壊し始めていた。

 スフィアフィールド砲のハルト君が埋め込まれている場所が爆発を起こすとハルト君が青白い光に覆われて天城の元にゆっくりと落ちていくのが見えた。

 フェイカーさんの様子はデュエルで気を失っているだけのようで怪我はあまりなかった。

 

「うぅ……私は……」

 

「フェイカーさん、気がつきましたか」

 

 ホッと胸を撫で下ろすとフェイカーさんは私に気づいたようで君は……と口を開いたところで地面が揺れ始め、ちょうど私たちがいる床が崩壊した。

 

「う、うわああぁ!!」

 

「え、うそ!?」

 

「刹!!」

 

 突然訪れた浮遊感に悲鳴を上げるとブラック・ミストが触手で私とフェイカーさんを掴んで空中に浮かぼうとするが重いのかその表情は苦しそうだ。

 

「ブラック・ミスト! どこか下のほうで足場になりそうなところに移動して!」

 

「ぐっ、わかった!」

 

 ブラック・ミストはゆっくりと落ちていきながら、二人で乗れそうな足場にたどり着き私とフェイカーさんはそこに足を付ける。

 

「ブラック・ミスト。フェイカーさんをつれて上にいって」

 

「なっ!」

 

「なにを……」

 

 私の言葉にブラック・ミストとフェイカーさんは驚きの声をあげるが私は話を続けた。

 

「フェイカーさんぐらいの重さなら空中に浮けるでしょ? 2人だと駄目みたいだけど1人なら……」

 

「上に行ってる間に刹が落ちたらどうする!」

 

 ブラック・ミストが怒りの表情のあらわにして声を張り上げた。

 

「何で自分を後回しにしようと……」

 

 そこまでブラック・ミストが言いかけてまた近くで爆発が起きて地面が揺れるとフェイカーさんがバランスを崩して下に落ちようとしているのをギリギリでうでを掴み下に落ちるのは免れた。

 

「くっ、うぅ……」

 

 デュエリストではあるがただの女子中学生に1人の男性を持ち上げられるほどの力がなく、フェイカーさんを握っている手が震えている。

 

「父さん! 刹!」

 

「天、城?」

 

 突然近くで聞こえてきた声に驚いていると私が掴んでいるフェイカーさんの腕を天城も掴む。

 

「カ、カイト……」

 

「父さん!」

 

 そのとき、私たちがいる足場までもが崩壊してまた浮遊感に襲われる。

 天城の左手首からデュエルアンカーが上へと伸びるとそれを遊馬君が掴んだ。

 私はいつの間にかブラック・ミストに支えられており、落ちることは免れた。

 

「何故だ? 九十九遊馬……。何故お前は私を?」

 

「あんたのことは憎いさ。けどあんたは一生懸命ハルトを生かそうとした。きっと父ちゃんなら仕方がないって笑う」

 

 そういって遊馬君は笑みを浮かべた。

 その笑みを見てフェイカーさんは何かを思い出したように目を見開くが、すぐに顔を下に向けた。

 

「もう良いのだ、九十九遊馬。私が犯した罪は大きい。私は許されるべきではない……」

 

「そうだよ」

 

 肯定をする言葉と共に遊馬君の後ろに紫色の宇宙を彷彿させる穴が現われ、そこにテレビで見た姿のトロンが現われた。

 

「君が犯した罪は大きすぎる」

 

 どうする、つもりなのだろうか……。

 台詞から考えればこのまま遊馬君共々突き落とすのだろうけど、トロンからは憎しみなどの負の感情が見られない。

 遊馬くんがやめるように口を出すとトロンは右手を前に掲げた。

 

「バ、バイロン……。頼むバイロン。カイトたちに罪はない。悪いのはすべて私だ」

 

 フェイカーさんがそういうとトロンは口元に笑みを浮かべ左側の目があったはずの部分から水色の紋章が輝き始めた。

 

「これが私の、最後の力だ!」

 

「うわああぁ!!」

 

 トロンがそういったと同時に遊馬君がいた足場が崩れ落ち、3人は下へと落ちていくが途中で私たちはトロンが現われたときに見た紫色の宇宙みたいな穴に吸い込まれた。

 気がついたときには別の場所に移動されたのか、目の前に小鳥ちゃん、ハルト君、神代、オービタルがいた。

 

「え、此処って……」

 

「刹、無事だったか……!」

 

 呆然としていると神代が地面に座り込んだままお腹を押さえて私に話しかける。

 

「……うん、トロンが助けてくれたみたい」

 

「トロンが?」

 

 首をかしげる神代に私はもう一度頷くと小鳥ちゃんが泣きながら遊馬君に本当に馬鹿なんだから!! と怒っていた。

 それを微笑ましそうに見ていたが、あることに気がついて神代に目を向ける。

 

「神代、ちょっと怪我見せてくれる?」

 

「……大丈夫だ」

 

「大丈夫じゃないでしょ」

 

 私は呆れたようにため息を吐いて神代の怪我の様子を見てみる。

 あーでも応急処置をしようにも道具も何もないし……はやく救急車をよばないと。

 私は天城にその事を言ってみるとドロワさんとゴーシュさんを飛行機で来させて病院に搬送するということになった。

 その飛行機を見送っていると、フェイカーさんがすまなかったとハルト君と天城に謝っていた。

 

『終わったようだな。デュエルカーニバル』

 

 遊馬君の後ろにいるブラック・ミストが……ん?

 私は隣にいる黒い肌に顔には赤い模様、体には青緑色の模様と装飾がついたブラック・ミストを見て、遊馬君の後ろにいる青白い肌にブラック・ミストと似た模様と装飾がつき、顔にある赤い模様がないブラック・ミストと瓜二つの存在を見る。

 皆が俺の願い事はとか余計なお世話だとか言っている間に考え込む。

 えーと……もしかしてあの人がアストラルなのだろうか?

 でも、なんで急に見え始めたんだろう。

 考えられるとしたら、アーカイドのデュエルか先ほどのバリアンとのデュエルで何かしらあったのか……。

 

「おい、刹。どうした?」

 

 ブラック・ミストの言葉に我に返るといつの間にかみんなの視線が私に向けられていることに気がついた。

 

「もしかしてアーカイドとのデュエルで……!」

 

 遊馬君が焦ったようにそういい始めたので私は慌てて首を振って違うと答える。

 

「あの、さ……。その人……アストラル、だよね?」

 

 此処で言って良いのかと迷いながらアストラルと思われる青白い人物を見る。

 

「お前、アストラルが見えるようになったのか!?」

 

『まさか、そんなことが……』

 

 姿は一緒でも驚き方も口調も違う2人に別人なんだな……としみじみ思っていると小鳥ちゃんからも驚くべき事実が伝えられた。

 

「あの、私もなんかアストラルが見えるようになったみたい」

 

 手を上げて控えめに告げられた言葉に遊馬君の驚きの声が辺りに響き渡った。

 


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