遊戯王の世界に転生したがろくな事が起きない   作:アオっぽい

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第十七話 気絶するとろくな事がおきない

 ふと意識が浮上するのが分かり私はゆっくりと瞳を開いた。

 目の前にはくすみもない真っ白な天井が見え、目が覚めたばかりのはっきりとしない頭でぼうっと天井を見ていたがほんの少し顔を横に向けて周りを見る。

 壁一面ガラス張りで出来た部屋で私はベッドに寝ていた。

 

「……ここは?」

 

「刹!! よかったぁ……」

 

 突然横から聞こえてきた声に視線を向けるとベッドの横で椅子に座っている結が安心した表情を浮かべていた。

 その隣で都賀原が腕を組んでこちらを見下ろしている。

 

「黒峰刹、起きたか」

 

「えっと……此処って」

 

 どこだろうと体を起こそうとするが腹部に走る痛みに眉間にしわが寄り、結からは無理しないで! と声をかけられた。

 

「此処は病院だよ。デュエルのあと、刹は気を失って……それで」

 

 結が話していくうちに目が潤んでいっているのが分かった。

 

「……デュエル、見てたよ。黒い霧で覆われてたけど、映像だけ映し出されてて」

 

 あのデュエル見られていたのか……あんなの子供が見たらトラウマになりそうなんだけど。

 のんきにそんなことを思っていると結の目から大粒の涙が流れ始め、結は自分の手で涙を拭いながら泣いていた。

 

「此処は病院だということはわかっている。だが、言わせてもらうぞ」

 

 都賀原は深く息を吸うと大きく口を開いた。

 

「このっ、馬鹿者!! あの黒いのを助ける為だとはいえ、こんな無茶をしくさって! もっと自分を大事にしろ!!」

 

 結は泣き、その隣で都賀原が怒りの表情をあらわにして立っている。

 私は動揺して視線を泳がせたあと顔を下へと向けてしまった。

 

「ごめん、なさい……」

 

 正直、ここまで心配してくれているとは思ってもなかった。

 それにあの時は夢中だったからな……他の方法を考えている余裕もなかったし。

 都賀原はため息を吐いたあと、微笑んだ。

 

「貴様が無事で本当に良かった。倒れたときは肝が冷えたぞ」

 

「本当にごめん。心配してくれてありがとう。結もごめんね? そんなに泣かないで」

 

 涙でぐしゃぐしゃになっている結の顔を撫でるとせづぅとすこし情けない声を出して私の手を握り締めた。

 

「それでアイツはどうなったの?」

 

「……キリヤのことか。デュエルが終わったときにはすでにいなくなっていた」

 

 そういえばジュノンの最後の攻撃で悲鳴も聞こえなかったからなにかの能力で逃げたということなのかな。

 

「トーナメントのほうは?」

 

「おそらく今は決勝をやっているころだろう。すこし待っていろ」

 

 都賀原は近くにあったリモコンを操作して部屋にあったテレビの電源を入れるとちょうどそこには顔の左側がブラックホールのような穴があり、それ以外はトロンと容姿が一致している少年と後ろ髪は金髪で前髪の部分と思われる箇所は赤色の何処か遊馬君と似た髪形をしており白く体にフィットしたライダースーツみたいなものに赤いプロテクターのようなものを装着している少年のデュエルが写し出されていた。

 

「え、誰これ……?」

 

「……トロンと九十九遊馬がデュエルをしているはずなのだが」

 

 可笑しいなと都賀原が首を傾げていると結と都賀原の反対側に黒いもやが現われて形成されるとブラック・ミストが現われた。

 

「あれはアストラルと遊馬だ。相手はおそらくトロンだろうな」

 

「え、ちょ……!」

 

 結と都賀原がいる前で出てきて私が驚いていると都賀原とブラック・ミストは普通に会話をし始めていた。

 あ、そういえばさっき都賀原は黒いのとか言っていたような……。

 デュエルを見られていたということはもしかしてあの場にいた人たち全員にブラック・ミストの存在がばれている?

 必死に隠していた今までの努力は一体なんだったんだと内心頭を抱えながらもあの少年が遊馬君とアストラルだということに困惑する。

 いったい何をどうやったらあぁなるんだろうか……。

 

「さて、念のため貴様の容態を見てもらったほうが良いだろう。医者を呼んでくる」

 

「私はちょっと顔を洗ってくるね」

 

 話が終わったのか都賀原がそういうと結も立ち上がって病室から出て行った。

 2人きりになった病室で私はブラック・ミストに視線を向ける。

 ブラック・ミストは空中に浮遊したまま腕を組んで言いづらそうに視線を泳がせ何度か口を開くが声を発することはなかった。

 

「……色々とその、悪かった」

 

 数分たってぽつりと呟くように謝罪をし、私は笑みを浮かべ手招きをしてブラック・ミストを私に近づけさせる。

 怪訝な表情をしつつも素直に近づいてくるブラック・ミストの額を小突いた。

 

「はい、これでおしまい。怪我がないようでよかったよ、ブラック・ミスト」

 

「……俺の心配をするより自分の心配をしろよ」

 

 小突かれた額を撫でながら怒りに表情をこわばらせてブラック・ミストは言った時、テレビからデュエルが終了する合図が鳴り響いているのが聞こえ慌ててテレビを見てみるといつの間にかデュエルが終わっていて映像には遊馬君の画像にチャンピオンという文字が書かれていた。

 やばい、最後とかまったく見てなかった。

 

「でも、遊馬君が勝ったんだ」

 

「刹の方が強いのにな」

 

 ブラック・ミストの言葉に驚いて視線を向けてみるが、ブラック・ミストは顔を逸らしてこちらに表情が見えないようにしていた。

 私が口を開こうとした瞬間、ブラック・ミストの後ろのガラスの壁から見える外の景色に目を見開く。

 デュエルタワーだと思われる建物が崩壊し始めており、頂上にある黄色の球体が宙に浮かんでいた。

 ブラック・ミストも私の様子に気づいて後ろを振り返り外の様子に気づく。

 

「たしかあそこには遊馬とアストラルがいたはずだが……」

 

 あそことはあの球体のことを指しているのだろか?

 もしそうだとしたら、2人はあの中に取り残されているということ。

 私は立ち上がって今着ている服を脱いで自分の私服に着替えた。

 

「おい! もしかして行く気じゃねぇだろうな?」

 

「放っておけないでしょ」

 

 最後にデッキケースを確認して病室の扉に向かうとブラック・ミストはしょうがねぇな! と文句を言いつつエクストラデッキに戻っていく。

 病室の扉を開けて外に出たとき、近くで同じく扉を開ける音がしてそちらに目を向ける。

 

「え、神代?」

 

「黒峰!? おまえ、なんでここに?」

 

 ちょうど隣の病室から神代が姿を現わしたので私たちはお互いに驚いていた。

 

「色々とあって……そっちは?」

 

「こっちも色々とあった。て、話している場合じゃない。遊馬の所にいかねぇと!」

 

 短時間では説明できないような内容なのでそんなことをお互いに言っていると神代が急に走り始めたので私もそのあとを追っかける。

 

「遊馬君のところに行くんでしょ? 私もいく」

 

「お前入院してるんじゃ……」

 

「その台詞、そっくりそのまま返すよ」

 

 このまま病院を抜け出すと後が怖いような気がするが、放っておけるわけないよね。

 私と神代は運よく病院の人に気づかれることなく抜け出すことができ、走ってハートランドへと向かった。

 途中、スタジアムのデュエルタワーが崩壊したことにより逃げてきた観客の人たちを押しのけていくとハートランドの中心にあるハートの塔にスタジアムにあったあの黄色の球体が向かっていくのが見えた。

 

「遊馬……」

 

「無事でいてよ」

 

 私たちは再び走り出してハートの塔に向かっていく。

 崩壊しかかっているハートの塔に入り下へと向かっていると見覚えのある後姿が見えた。

 

「小鳥ちゃんにオービタル?」

 

 小鳥ちゃんとオービタルが大きな瓦礫をどかそうとしておりその下に視線をやると天城が瓦礫の下敷きにされているのが見えた。

 

「小鳥ちゃん!」

 

 声をかけると小鳥ちゃんとオービタルがこちらに顔を向ける。

 

「刹さん!? それにシャーク!?」

 

「お前はあのときの小娘!」

 

 病院に搬送されたはずの私たちがここにいることに小鳥ちゃんは驚きの声をあげ、心配そうに私を見る。

 

「刹さん、もう大丈夫なんですか?」

 

「私のことは大丈夫。それよりも……」

 

 私は下敷きにされている天城を見やり神代と顔を見合わせて頷いた。

 

「俺たちが瓦礫を支える。その間にそいつを引っ張り出せ」

 

 私たちの提案に小鳥ちゃんは戸惑いながらも頷き、私と神代が瓦礫を支えている間に天城を引っ張り出した。

 天城を壁に寄りかからせて怪我がないかどうかチェックをしてみるが、どうやら大きな怪我はないようだった。

 

「ありがとうございます、刹さん。シャーク」

 

「礼はいい。さっさとそいつと一緒に逃げろ。いくぞ、黒峰」

 

 小鳥ちゃんの礼を突き放して神代は先に進もうとするが、天城が息絶え絶えに逃げるわけにはいかないと答えて立ち上がる。

 

「こうしている間にも、ハルトが……」

 

「え、ハルト君に何かあったの!?」

 

 ハルト君の名前が出てきて驚いていると小鳥ちゃんが驚きの声をあげた後、オービタルにハルト君に何があったのか問い詰めていた。

 

「実は、スフィアフィールド砲の一部となっているのです……」

 

「スフィアフィールド砲?」

 

 疑問の声をあげるとオービタルはスフィアフィールド砲の説明をし始めた。

 スフィアフィールド砲はアストラル世界を滅ぼすために作られた最終兵器でNo.の力でエネルギーを溜め、打ち出すというものらしい。

 

「それはどこにある!? スフィアフィールド砲はどこから発射される?」

 

「時間がない。いくぞ、オービタル」

 

 神代の問いかけに答えることなく天城は歩き始めるが神代が呼び止める。

 

「まて! まだ話は終わってねぇ!」

 

「……礼はいらないといってなかったか?あいにく、俺は感謝の言葉を持ち合わせていない。期待しても無駄だ」

 

 突き放すような物言いに神代はそんなんじゃない!と声を荒げて否定すれば天城は目を細めた。

 

「ならばデュエルの申し出か? それも後にしてもらおう」

 

「てめぇ……!」

 

 このままでは喧嘩に発展しそうな空気に私は大きな音が出るように一度手を叩いた。

 その音に反応して皆が視線をこちらに向けたのを確認して口を開く。

 

「2人とも、そこまでにして。喧嘩なんてしている時間はないはずでしょ?神代も遊馬君が心配なのは分かるけど、もう少し冷静になって」

 

「え?」

 

 私の言葉に驚いて小鳥ちゃんは神代に視線を向け、神代はすこし冷静を取り戻したのか静かに語り始めた。

 

「俺は遊馬を助けたい。スフィアフィールドの中にはまだアイツがいるかもしれねぇ。そのまま兵器にされたら……」

 

 遊馬君がいるかもしれないって……もしかしてデュエルタワーの頂上にあったあの黄色の球体がスフィアフィールドってことなの?

 それだと確かにまずいよね……。

 

「俺はアイツを見殺しにできねぇ。俺の代わりにトロンを倒してくれたアイツを!」

 

 ふと、此処でスフィアフィールド砲はNo.の力をエネルギーにして打ち出されるということを思い出す。

 そしてブラック・ミストはNo.がどこにあるのか探知できる。

 なので、天城やオービタルに聞かなくてもブラック・ミストに聞けば大雑把だがどこに遊馬君たちがいるか分かるというわけで……。

 私は神代と小鳥ちゃんが必死に天城を説得し、徐々に良い話になっていっているのを見て黙っていようと思った。

 此処で空気を壊すような真似は私には出来ない。

 

「助けたければついて来い。地下のごみ処理場にハルトと遊馬がいる」

 

 天城はそういって歩き出したのを見て、私たちもその後を着いていった。

 地下へと続く階段の前へときたのだが、階段の入り口は瓦礫で埋め尽くされており通ることが出来ない状態だった。

 

「何処か他の道はねぇのか!?」

 

「調べろ、オービタル」

 

 神代の問いかけに天城はすぐさまオービタルに調べるように指示を出すが瓦礫のせいでポストコンピューターが破壊されておりアクセスできないと語った。

 

「できねぇのかよ! この役立たずのくそロボットが!!」

 

「キィー! それならばお前が何とかしろ! このロン毛男!!」

 

 私は神代たちの会話に耳を傾けながらハートの塔の地図を探すためにDパットを起動させる。

 

「刹さん、なんとかできますか?」

 

「うん、いけそう。すこし待ってて」

 

 私たちがいる場所を特定して他に地下へといける場所を探してみると此処から3ブロック先の階段から地下へといけるようになっているのが分かりみんなに声をかける。

 

「他にいける道を見つけたから、私についてきて」

 

 私が走り出すと後ろから皆が走ってついてきているのが分かった。

 階段を下りて廊下をまっすぐ走っていくと自動扉が開かれて部屋へとたどり着く。

 上からスタジアムで見た、浮かぶ機械に乗ったMr.ハートランドが私たちの目の前に現われた。

 

「やはり来てしまったな、カイト。弟の叫び声が君の耳に聞こえたのかな?」

 

 不適に笑うMr.ハートランドに天城は一歩足を勧めて貴様!と声をあげ、その頭上にある装置に気がついた。

 私たちもその機械に気がついて目を向ける。

 黄色の球体に青白色の電流が発生しており、機械のところにはハルト君が埋め込まれ黄色の球体の中にはテレビで見た姿が変わっている遊馬君が苦しげに膝を付いていた。

 

「ハルト、ハルトオォ!!」

 

「遊馬!!」

 

 天城と小鳥ちゃんが叫んでいる間、私はMr.ハートランドを睨みつける。

 

「Dr.フェイカーの邪魔をするものは誰だろうと容赦しない。さぁ、やってしまいなさい! 邪魔者を排除するのだ!!」

 

 Mr.ハートランドがそう告げた瞬間、部屋の壁の一部が上へと上がりそこから大量のオボットたちがオソウジと声を発しながらこちらに向かってくる。

 オボットは変形して戦闘態勢に入り、私たちを取り囲んだ。

 

「迎え撃て、オービタル!!」

 

「カシコマリ!」

 

 天城が指示を出すとオービタルはいずぞやで見た戦闘モードに変形して手にあるドリルを回転させ謝りながらオボットたちを攻撃する。

 

「おいおい、こういう時こそ俺を呼べよ」

 

「ブラック・ミスト……」

 

 口元を吊り上げて笑みを浮かべながら出てきたブラック・ミストはそういうと何十本もの触手を出した。

 触手はオボットたちをなぎ払ったり叩きつけたりして次々と壊していき、ブラック・ミストが壊し損ねた分は私たちがそこらへんに落ちているオボットの腕の残骸を使って攻撃をする。

 まさか、リアルファイトをする事になるなんて……。

 やっぱりデュエリストは体も鍛えないと駄目なのかな。

 

「くそ、きりがねぇぜ……」

 

 そんなことを真剣に考えていると神代が周りを見て愚痴をこぼす。

 確かにブラック・ミストのおかげで何とかなっているがオボットたちの数は減っていく様子はない。

 

「このままではハルトが……」

 

「案ずることはない。ハルトは立派に役に立つ。父であるDr.フェイカーのためになるのだから彼もきっと本望でしょう」

 

 ハートランドの言い分に天城はふざけるな!と声を荒げるとハートランドは笑みを浮かべて話を続けた。

 

「ふざけてなどいない。私は嬉しいのだよ。Dr.フェイカーの長年の夢がまもなく達成されることが。それは私の夢にも繋がる。私はDr.フェイカー様にすべてをかけてきたのだ。だからこそ、誰にも邪魔させるわけには行かない。君たちもあの九十九遊馬と一緒に消えてもらおう!」

 

 ハートランドの夢? アストラル世界を滅ぼすことによってかなえられる夢って……。

 

「さぁ地獄の門よ、開け!!」

 

 ハートランドが持つステッキの先端が光ると床が急に揺れ始め、部屋の中心から床が開いていっているのが分かった。

 

「な、なんだ……いったい!?」

 

 床が開いていくことで下に見える大きな穴にオボットたちは落ちていく。

 

「この穴はアストラル世界に繋がっている。お前たちと永遠のお別れだ!」

 

 この穴がアストラル世界と繋がっている?

 なんでこんなところにそんな穴があるんだろうか・・・。

 でも、いま分かっていることはハートランドは私たちをこの穴に突き落とそうとしているということ。

 あの穴に落ちたら、ひとたまりもない。

 またオボットたちの攻撃が開始されて私たちはそれに応戦する。

 

「ぐぅ!!」

 

「神代、大丈夫!?」

 

 隙をつかれて神代はオボットの攻撃を受けてしまい、私は思わず声をあげるが神代に自分のことに集中してろ! と一蹴される。

 私は周りを見た後、オービタルに声をかける。

 

「ねぇ、オービタル! このオボットたちを指示しているポストコンピューターはないの!?」

 

「む、アリマスが……おぉ! そういうことでアリマスカ! 指示をしているポストコンピューターを破壊すれば止まるというわけでアリマスね!」

 

 なんでそんな簡単なことをと呟きながらオービタルは元の形態に戻りあたりを調べる。

 

「ポストコンピューターに強制的にアクセスし、大量の電流をかければ……ありました! あそこです!」

 

「説明はいい! はやくやらねぇか!!」

 

「命令するな! オイラはお前の僕ではない!」

 

 またもや神代とオービタルが喧嘩になりそうなところで天城が指示を出すことでオービタルはポストコンピューターに向かっていく。

 

「カシコマリングだ! オイラ!!」

 

 カ、カシコマリング?

 もしかして遊馬君がよく言っているかっとビングを言い換えていっているのだろうか……。

 

「ずっとオイラのターン! そしてポストコンピューターに容量をこえる電圧を……ギョエエエ!!」

 

 ポストコンピューターにアクセスしたオービタルは大量の電流を流すと共に浴びることになり暫くするとぼろぼろの状態で地面へと落ちた。

 すると動いていたオボットたちが動きを止める。

 

「え、ちょっと待って……誰か、助けてくださーい!!」

 

 ハートランドが乗っている機械にも異常がきたしたのかゆらゆらとゆれながら穴の中に落ちていくのが見えた。

 敵とはいえ、すこし同情する……。

 

「良くやった! オービタル!!」

 

「カイト様から、お褒めの言葉を……本望で、アリ……マス」

 

 オービタルは電流を浴びた影響で故障でもしたのかそこまで言うと停止してしまった。

 小鳥ちゃんはオービタルに駆け寄って涙を流してお礼を言っていた。

 オービタルは、自分を犠牲にしてまでやってくれたのかな……。

  近くできちんと見なければ状態は分からないのだが、そんなことを思っているとスフィアフィールドが青く輝き始め、遊馬君の叫び声が聞こえたと思ったら遊馬君が落ちてきた。

 

「遊馬!」

 

「遊馬君!」

 

 遊馬君はいててと言いながら立ち上がろうとすると突然男の笑い声が部屋に響き渡った。

 そしてスフィアフィールド砲の後ろにある壁が開かれると、そこには上は黒でしたが白のライダースーツのようなものに胸に緑色の結晶みたいなものがある服装をした男性が大掛かりな機械に設置してある椅子に座って現われた。

 

「余計なことをしてくれたな。だが、何をしようと無駄なこと! もうじきお前たちはアストラル世界と共に吹き飛ぶ!あのスフィアフィールド砲によってな!」

 

「Dr.フェイカー!」

 

 遊馬君は右手を上げて拳を握ろうとするが自分が持っているカード2枚を見て何かに気づいたようで、持っているカード1枚を神代に差し出した。

 

「シャーク、カイト、刹! 俺に力を貸してくれ!! アストラルに託された、希望と未来を守るんだ!!」

 

 希望と未来を守る……か。

 天城はエクストラデッキからカードを1枚取り出し、神代は差し出されたカードを受け取って3人はカードを上に掲げる。

 そして3人の目が私へと向けられた。

 ……え? 私もやるの? ど、どうしよう……遊馬君たちが持っているカードはエースモンスターみたいだけど、特定のエースモンスターはいないし……。

 持っているのはエクシーズモンスターみたいだからここはブラック・ミストのカードを……。

 

「させないよー、刹っちゃん」

 

 聞き覚えのある声に私はブラック・ミストがいる位置を確認して急いでそばによる。

 するとDr.フェイカーと私たちの間に突然フード姿のアーカイドが現われた。

 

「刹っちゃんまで加わっちゃったら完全に弱いものいじめになっちゃうからねー。また僕が相手になってあげるよ。あ、安心してね? 今回は闇のゲームじゃないから」

 

「お前は、キリヤ!? どうして此処に!?」

 

 遊馬君がアーカイドの登場に驚いている間、私はアーカイドを睨みつける。

 口元しか見えないが、アーカイドは楽しげに笑っているのが分かった。

 

 

「お馬鹿な遊ちゃんは黙っててよね。僕はいま、刹っちゃんとデュエルするんだから」

 

「キリヤ、貴様は一体何者なのだ? なぜ私に力を貸す?」

 

 ゆ、遊ちゃん? とアーカイドから言われたニックネームに遊馬君が困惑しているとDr.フェイカーが問いかけ、アーカイドは顔だけ後ろを向いて手を振る。

 

「後で分かるって。今は僕に盛大に感謝しながらそっちの三勇士カッコワライを相手にしてれば?」

 

 そういってアーカイドはさーてと!と声をあげると私に向き直った。

 そういえば、皆アーカイドのこと人間体のときの名であるキリヤって呼んでるけど……そういえば、結は映像だけって言ってたから会話までは流れてなかったってことか。

 

「受けてくれるよね? だってそうしないと……分かるよね?」

 

 アーカイドの視線が小鳥ちゃんへと注がれた気がして眉間にしわが寄る。

 

「おい、刹。無理はするなよ」

 

 心配そうに言うブラック・ミストの肩を叩いて笑みを浮かべる。

 

「分かってる……。アーカイド!そのデュエル、受けるよ」

 

 私がそういうとアーカイドはそうこなくっちゃ!と嬉しそうに声をあげて空中に浮かんだまま移動をする。

 私も移動しようとした時、遊馬君に呼び止められた。

 

「大丈夫なのかよ!? だってアイツは……」

 

 皆があのデュエルを見ていたということは遊馬君も見ていたというわけで、おそらく心配してくれているんだろう。

 私は微笑を浮かべて大丈夫といった。

 

「遊馬君たちはDr.フェイカーをお願い」

 

 歩きながら私は魔導からパーミッションデッキへと変更する。

 真剣なデュエルでは魔導とかでやってきたけど、デッキが私に答えて回ってくれていることもわかったしあいつを相手にするのはこっちのデッキの方が良いかもしれない。

 

「さぁ、やりましょう」

 

「さっきは調子に乗ってたけど、今回は真面目にやるよ」

 

 アーカイドはデュエルディスクを構えて起動させる。

 私もデュエルディスクを立ち上げてDゲイザーをつけた。

 

「あ、そうだ! 今回はさ、ライフ8000でやらない? 4000なんてあっというまに終わっちゃうしさ!」

 

「……勝手すれば?」

 

 私の反応に口を尖らせて冷たいなぁと文句を言いつつ設定ライフを変えていた。

 

「それじゃ、はじめようか!」

 

「「デュエル!」」

 


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