反省はしているが後悔は・・・してないと思います。
※追記
4月22日
今回の話、カード効果まで書いてましたがカード表記をいつものやつに戻しました。
地下セクションでのデュエルが終わり、私と都賀原は他のデュエルを映像で観戦した。
私たちが最初にデュエルをしていたらしく観戦するころにはトロンとドロワさんのデュエルが始まろうとしていたのだが、なぜか映像が見れなくなるというアクシデントがあった。
デュエルは最後まで見れなかったが、勝者はトロンになったようだ。
他に勝ち抜いたのは天城、神代、遊馬君とあとは知らない人が1人デュエルに勝っていた。
あとはデュエルをせずに勝ち抜いた人を含めて8人のデュエリストが残ったわけだ。
私は都賀原と別れたあと、家へと帰りデッキを変えたエンジェルパーミッション(仮)をまたいじくっていた。
デッキを回してみた感想としては、しっくりとこないこれに限る。
すでにパーミッションとも呼びづらいデッキでもあるしやはり前から考えていたパーデククリスティアマスターヒュペリオンという組み合わせにする事にした。
次の日、決勝トーナメントが行われるスタジアムに足を運んでいた。
といっても昨日のスタジアムと同じなのだが。
昨日よりも増えている観客の歓声を耳にしながら私は出番になるまで待機していた。
事前に運営委員から対戦相手と何番目にデュエルをするか聞かされており、私は1番最初にデュエルをし対戦相手はキリヤという人らしい。
そして問題なのが、私が勝った場合の次の対戦相手はトロンか天城なのだ。
天城ならまだ良いのだがトロンとは正直デュエルはしたくない。
何をされるか分からないし……。
「ワールドデュエルカーニバル、決勝トーナメント! 熱きデュエリストたちが戦う舞台はここだ!いでよ、デュエルタワー!!」
Mr.ハートランドの話を聞きながら入り口から見ているとスタジアムの中心部の地面が開いていき、下から大きなタワーが少しずつ上へと上がっていく。
タワーの途中にある4つの円型の台のうち1つが降りてくるのが見えた。
あそこでデュエルをするの?
台には柵とかないし危険じゃないのかな……。
「この天空を貫くデュエルフィールドで選手たちよ、思う存分戦うがいい!!」
空中に4つの画面が映し出されたものを見た。
遊馬君VS神代の画像にトロンVS天城の画像、私VSフードを顔まで被った人といった画像がありもうひとつは知らない人達の顔が映し出されていた。
「さぁ、いよいよ決勝トーナメント一回戦の始まりだ!」
おっと、そろそろ出番か。
私は壁から離れて暗い廊下から光あふれるスタジアムへと歩き出した。
「決勝トーナメントの中の紅一点! 少女ながらにして複数のデッキを使い分ける高度なデュエルタクティクスでハートランド学園の代表として選ばれた、黒峰ぇ刹!!」
スタジアムへと姿を現わすと観客の叫び声がさらに大きくなったような気がした。
こっちむいてやらうおおぉ刹ちゃーんやら聞こえてくるが私は前を向いてスタジアムの中心にあるデュエルタワーの台の上に乗る。
「対するは無名にして謎多きフード姿の男、しかしここまでこれたデュエルの腕は本物だ! キィリヤ!!」
向かい側に顔が見えないほど深くフードを被った男が立つと台は動き出して上へと上がっていく。
「これより上へいけるものは勝ち抜いたもののみ! さぁ、先にいけるのは刹かそれともキリヤか! いま戦いの火蓋が切って落とされる! ハート、バーニング!!」
「くっ、くくく……」
動いていた台が止まると同時にフードの男、キリヤが突然笑い出した。
「いやぁ、やっぱり生のハートバーニングを聞くと笑えるよねぇ」
何を言っているんだろう、この人……。
首をかしげてキリヤを見ていると突然、ローブの下から黒い霧のようなものがあふれ出てくる。
「じゃあ、はじめようか。闇のゲームをさ」
「なっ!」
キリヤが言った言葉に驚いていると黒い霧は台を包み込むほどに広がっていき、頭上までも黒い霧に覆い尽くされる。
外の様子はうっすらと見えてはいるが。
周りに気を取られている間にキリヤの右手の甲にVやⅣと同じような紋章の形をしたものがあり、それが銀色に輝くと紋章は私のほうに飛んできてエクストラデッキに当たると紋章はキリヤの下に戻っていき、キリヤの右上らへんに浮かぶように止 まるとそこに何かが形成される。
両腕が広げられた状態で紋章に張り付けられたブラック・ミストがいた。
「ブラック・ミスト!?」
「これは……あいつらと同じ力か!?」
ブラック・ミストも突然のことで驚いているようで拘束を外そうとするがびくともしなかった。
「……何者なの?」
睨みつけるようにして問いかけるとキリヤは怖い怖いと手を上げておどけるように言うとフードを取った。
キリヤの顔は正直言うとあまり印象が残らないような、そんな顔立ちをしており髪の毛は黒とこの世界では普通の髪型をしていた。
「一応人間体のときはキリヤって名乗ってるけど、本名はアーカイド。ま、バリアンだよ」
口元を吊り上げてアーカイドは笑った。
「バリアン?」
眉間に皺を寄せて呟くとアーカイドは不機嫌そうに表情を変えた。
「知らないフリとかやめてよねー。もう知ってるんだって、刹っちゃんも転生者だろ?」
アーカイドの言葉が一瞬理解できなくて固まる。
この人、いま転生者って言った?
私は自分の心臓が煩く鳴っているのが分かった。
私が動揺しているのがわかったのかアーカイドはまた笑みを浮かべる。
「あっれれー……もしかして他に転生者なんていないと思ってた? だけど残念! いるんだよねー」
アーカイドはケタケタと笑いながら話を続ける。
「僕もさー……まぁ、いないとは思ってたんだ。だけどベクちゃんの作戦に茶々入れようとしてこの大会に出たんだけど、刹っちゃんを見てピーンと分かったんだよね! ナンだろうね? 運命的なもの?」
ありえないけどね! と言い切るとアーカイドは左腕を掲げ天使の羽を黒くし羽先を尖らせたようなデュエルディスクを装着し左目が赤色に変わる。
「そんじゃ、デュエルしようか? そのための大会だし、それに僕に勝てばNo.96を取り戻せるよ?」
「……」
まだ分からないことがたくさんあるし、アーカイドに質問したいこともあるけど……。
ちらりと紋章に張り付けられているブラック・ミストを見る。
ブラック・ミストは不機嫌そうに拘束されている手足を見ていた。
やるしかないか……。
私はデッキを魔導デッキに変えたあとDゲイザーとデュエルディスクをセットするとアーカイドは満足そうに頷いていた。
「「デュエル」」
「先攻は僕から行かせてもらうよ。ドロー。モンスターをセット、カードを2枚ふせてターンエンド」
「私のターン、ドロー。手札から魔導法士ジュノンの効果を発動。手札のグリモの魔導書、トーラの魔導書、魔導書院ラメイソンを見せて特殊召喚する」
地面が光るとそこから白い露出が高い服を着たピンク髪の女性が現われる。
レベル7 魔導法士ジュノン 攻撃力:2500
私がジュノンの効果を発動した瞬間アーカイドは嫌そうに表情をゆがめ、うげっ魔導かよと零していた。
「効果は知ってるようだから省いても良い?」
「魔導のカードは全部知ってるからどーぞ、お好きにやってください」
投げやりにそう言って右手をひらひらと振り早くやれと催促している。
「手札から速攻魔法、魔導書の神判を発動。魔導書士バテルを召喚しデッキからアルマの魔導書を手札に加える」
水色の帽子を被り、コートの裾が足まである服を着た男性型のモンスターが現われる。
レベル2 魔導書士バテル 攻撃力:500
「手札からグリモの魔導書を発動しデッキからゲーテの魔導書を手札に加える。そしてフィールド魔法、魔導書院ラメイソンを発動」
フィールド魔法がセットされまわりは青い空と白い雲が広がり右前方には灰色の大きなタワーのような建物が現われ、その建物の周りには青色の魔法に使われるような文字が囲むようにいくつも浮遊している。
しかし私たちの周りに漂っている黒い霧は晴れることはなかった。
「魔導法士ジュノンの効果を発動。手札または墓地にある魔導書と名のついた魔法カードを除外してフィールド上のカードを1枚選択して破壊する。私はグリモの魔導書を除外し伏せモンスターを破壊」
「あーあ」
アーカイドが残念そうに声をあげている間にジュノンが呪文を唱えて光り輝く球体を伏せモンスターに放つと伏せられていたモンスターが一瞬だけ現われて破壊される。
破壊されたモンスターは紺色の毛並みをもつ熊のモンスター、グリズリー・マザーだった。
リクルーターを破壊できたのは良かった。
「手札からアルマの魔導書を発動。除外されているグリモの魔導書を手札に加える。バテルでダイレクトアタック」
バテルは片手に魔導書をもち呪文を唱え、右手を振るうと背後から複数もの水の塊が飛んでいきそれはアーカイドへ向かっていく。
私はアーカイドの様子に首をかしげる。
アーカイドは攻撃をされるというのに笑みを浮かべたまま向かってくる水の塊を見ていた。
そして水の塊がアーカイドに当たる寸前、水の塊は銀色の穴の中に吸い込まれていった。
「ぐ、があぁああ!?」
アーカイドLP:4000→3500
突然の悲鳴にびくっと体が震え、私は目を見開いたまま声の主であるブラック・ミストに視線を向ける。
「……え?」
バテルの放った攻撃が銀色の穴に吸い込まれた瞬間、紋章が光りブラック・ミストに電流みたいなものが流れているのが見えた。
その電流を浴びたブラック・ミストは肩で息をしている。
「そっちのモンスターの攻撃が残ってるよ? 早く攻撃してきなよ」
「まって……ちょっと待ってよ。なんでブラック・ミストに!」
アーカイドは楽しそうに私を眺めたあと、落ち着いてよと手札が見えないように両手を上げる。
「簡単だよ。僕が受けるはずのダメージをNo.96が代わりに受けてもらってるってだけー」
すごいでしょとまるで子供が母親に自慢するように満面の笑みでアーカイドは言った。
「なんで、そんなこと……」
「だってさー、このデュエルって攻撃されるとすごく痛いんだよ。自分からやったけど、やっぱり痛いのは誰だって嫌でしょ? それでどうすればいいか考えて、思いついたわけ! 代わりに誰かがダメージを受ければ良いんだって! この方法だと簡単なんだよねー」
なんて、自分勝手な……。
歯を食いしばってアーカイドを睨みつけるが当の本人は笑みを深めていた。
「嫌だよねー、仲間であるNo.96を攻撃するなんて! そんな刹っちゃんにジャンジャジャーン!! 今明かされる衝撃の真実ぅ~! なーんてね、これ言ってみたかったんだー」
まるで神経を逆撫でるような口調と声色に嫌悪感を覚えながら私は黙ってアーカイドの話が終わるまで待つことにした。
「じ・つ・はNo.96ブラック・ミストさんはー……刹っちゃんのこと、信頼信用はもちろん心も開いていませんでしたー!!」
アーカイドの言葉に私は動きを止め、ブラック・ミストは口を開くが声を出すことはせず表情を歪めて顔を背けていた。
「No.96の記憶を見たんだけどさ。最初は刹っちゃんのこと取り込もうとしてたんだけど、負けちゃったじゃん? でも刹っちゃんのおかげでアストラルの封印から逃れることが出来たから今度は刹っちゃんに取り付こうとしたんだけど、謎の力に阻まれて失敗」
アーカイドは肘を曲げたまま両手を左右に広げて首を振る。
「そのあと刹っちゃんといっぱいデュエルしてこいつにはかなわないと思ってしまったNo.96さんは刹っちゃんと交流を深めて心の隙が出来たら取り付こうとしてたんだよねー。刹っちゃんの言うことを素直に聞いてたのも、友好的に接してたのもぜーんぶ作戦の内! そして、最近刹っちゃんは悩みが出来て、心に闇が生まれ始めた。そのとき、No.96はチャンスだ! って思ったんだよ。このまま悩み続ければ心の闇が広がっていく、もっと闇が生まれれば取り付くことも出来るって! ひどいやつだよねー。刹っちゃんがこんなに悩んでるのにねー?」
私は聞こえてくる声を耳にしながら顔を下に向けた。
「No.96も災難だねー? せっかく作戦通りにいってたのに僕が暴露しちゃって……ごめんね?」
ブラック・ミストは顔を逸らしたままこちらを見ようともせず、まったく心がこもってない謝罪をブラック・ミストにした後、アーカイドはさてと声をあげた。
「わかったでしょ? No.96は仲間でもなんでもないんだよ。一方的に刹っちゃんがそう思ってただけ! 裏切られたんだよ? 嘘ついてたんだよ? だから、安心して攻撃してきなよ」
最後はやさしく囁くように言い、私はゆっくりと顔をあげる。
「は?」
私の顔を見た瞬間、アーカイドはいままで保っていた笑みが驚きに変わり暫く呆然としていたがつまらなそうにブラック・ミストを見やる。
「……あー、そう。No.96、残念だったねー。刹っちゃんも君のこと心許してなかったみたいだよ? あーあ、かわいそうに」
アーカイドは嘲笑いながら同情の言葉を口にする。
「ブラック・ミストは最後どうなるわけ?」
私の質問に楽しげな笑みを浮かべて手を叩いた。
「気になる? 気になるよねー! でも残念ながら死にはしないよ。此処ではね。最終的には抜け殻となって人形エンド! って感じ?」
「人形?」
表情を変えずにアーカイドがいった言葉を繰り返して言うとアーカイドは元気良くうんと頷く。
「力を根こそぎ吸い取ってNo.96は消滅しモンスターのほうは真の姿に変わり人形となる……って思ったんだけど刹っちゃんそこらへん見てないの?」
見るとは……アニメのことなんだろうか?
私はすこし悩んだあと、正直に言うことにした。
「見てない……というか知らない」
「えー!! それってこの世界に転生した意味ないじゃん! あ、でも遊戯王の世界に転生して俺Tueeeってしたかっただけとか?」
分かる分かると頷いているアーカイドを睨みつけると怖ーいとおどけるように言った。
「さーてと、長くなっちゃったけど続きを……」
「最後に1つ。あなたは攻撃してこいって言うけど、負けても良いの?」
アーカイドの言葉を遮って問いかけるときょとんとした顔をしたあと、笑みを浮かべた。
「べっつにー今回勝つために来たわけじゃないし。作戦の茶々いれついでに封印されてないNo.96を見かけたから回収しようと思ってデュエルしてるだけ! 刹っちゃんが攻撃すればNo.96がダメージを受けて弱らせることも出来るし、今後のことを考えるとどっちかって言うと負けたほうがいいかもねー」
「そう……」
私は目を伏せたあと、右手を動かした。
「私はカードを2枚伏せてターンエンド」
「は?」
アーカイドは私のとった行動に呆然としていたが先ほどのこともあってか、すぐに我に返ると深く息を吐き顔を下に向けて後頭部を掻いた。
視界の隅でブラック・ミストが目を見開いているのが分かる。
「あーあー……そういうタイプね。そっか、そっか……」
何度も頷いた後、アーカイドは顔を上げた。
途端に背筋に嫌な寒気が走った。
アーカイドはすごく楽しそうに笑っていた。その笑顔は子供がもつ無邪気さ故に虫の羽を平気で千切るような、そんなものを持っていた。
「じゃあ、続けて良いよ。エンドフェイズ時、やることあるでしょ?」
「……魔導書の神判の効果でデッキからネクロの魔導書、トーラの魔導書、グリモの魔導書を手札に加え、3以下のレベルを持つ魔法使い族であるシスティを特殊召喚」
深緑色のローブを着た、ベージュ色の髪を持つ女性が現われると同時にシスティは呪文を唱え始めるとシスティは宙に現れた黒い穴の中に吸い込まれていく。
レベル3 魔導教士システィ 攻撃力:1600
「システィの効果を使用しシスティを除外。デッキから魔導書の神判と魔導法士ジュノンを手札に加える」
「じゃあ僕のターン、ドロー。リバースカードオープン。永続魔法、金剛真力を発動。相手フィールド上にモンスターが存在し自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、1ターンに1度手札からレベル4以下のデュアルモンスターを特殊召喚する。僕はマジック・スライムを特殊召喚」
アーカイドのフィールドの地面から水色の液体があふれ出てくるとそれは意思を持って動き出しゆらゆらとその場に鎮座した。
レベル3 マジック・スライム 攻撃力:700
「そしてマジック・スライムを再度召喚して手札から明鏡止水の心を装備させる。このカードは攻撃力1300以下の装備されたモンスターは戦闘、カード効果では破壊されない。じゃあ、いっくよー。マジック・スライムでジュノンに攻撃。マジック・スライムが戦闘を行ったとき自分が受ける戦闘ダメージは相手が受ける。あ、顔は駄目だよ。狙うならボディだよ、ボディ!」
腕を突き出して攻撃するしぐさをしている間にマジック・スライムはジュノンに襲い掛かるが魔法によって返り討ちにされ液体で出来たマジック・スライムははじけ飛び、液体がこちらに向かってくる。
攻撃に身構えているとマジック・スライムはひとつにまとまり、そのまま私の腹部に飛んできた。
「がっ!?」
刹LP:4000→2200
腹部に受けた衝撃に一瞬息が止まり、マジック・スライムが離れると同時に私は腹部を押さえて膝を付いた。
「は……くっ」
まるで本当に殴られたような痛みに顔をしかめる。
「痛いよねー? だってこれ闇のゲームだもん。ARじゃない。本物、現実、だよ?」
なに、それ……No.の戦いでのダメージは確かに痛かったけど、此処までではなかった。
これはモンスターが実体化しているってこと?
「ねね、どう? もういたいのは嫌だよね? 僕を攻撃すれば痛い目にあわなくてすむんだよ?」
私は腹部に走る痛みに耐えて立ち上がるとアーカイドは口元を吊り上げた。
「そうこなくっちゃ……。僕はこれでターンエンドだよ」
「私のターン……ドロー。スタンバイフェイズ時、ラメイソンの効果を発動し墓地にある魔導書と名の付いた魔法カードをデッキの一番下に戻し、デッキからカードを1枚ドローする」
魔導書の神判をデッキの下に戻してドローをしたのは良いが……攻撃も出来ないんじゃ、どうすればいいんだろうか。
「フィールドにいるジュノンの効果を発動」
「だめだよー。手札からエフェクト・ヴェーラーの効果を発動。相手フィールド上の効果モンスター1体を選択し、選択したモンスターの効果をターンの終了時まで無効にする」
背中から翼が生えた青い長い髪をした中性的な人型モンスターが現れてジュノンの効果を無効化にした後、消えていった。
「エフェクト・ヴェーラー!?」
たしかあのモンスターってチューナーモンスターじゃ……。
この世界にはチューナーもシンクロモンスターもいないはず、どうしてアイツが持ってるの?
「何驚いてるの? もしかして神様に全種類のカードを頼むの忘れちゃったとか?」
「神?」
神って神のカードとかじゃないよね……話の流れ的に。
「もしかして刹っちゃんは神様に頼んで転生させてもらったってやつじゃないの?」
「……意味が分からないんだけど」
私の反応にあーそっかーと1人だけ納得したように頷いたあと、気にせず続けてと手を振って催促する。
「……ターンエンド。手札が7枚のためカードを1枚墓地に捨てる」
「僕のターン、ドロー。マジック・スライムをもう一体召喚」
もといたマジック・スライムの横にもう一体のマジック・スライムが現われる。
「装備してないマジック・スライムでバテルを攻撃ー」
マジック・スライムがバテルを攻撃し破壊したあと、こちらに向かって液体を鞭のようにしならせてなぎ払うように攻撃してくる。
「ぐぅ……!」
刹LP:2200→2000
攻撃は腕にあたり、勢いの強さにバランスを崩して地面に倒れる。
「ほらほら、早く立ってー。ファイトー!」
誰のせいでこうなって……!
苛立ちを覚えながら立ち上がるとすぐにアーカイドは攻撃の指示を出した。
「もう1体のマジック・スライムでジュノンを攻撃」
先ほどと同じように襲い掛かってくるマジック・スライムをジュノンが返り討ちにするがはじけ飛んだマジック・スライムがこちらに飛んでくる。
今度は攻撃を避けようとマジック・スライムをじっと見つめる。
「もしかして避けようとしてる? いいのかなーそんなことしてさー。もしかしたら僕の手が滑ってNo.96に攻撃しちゃうかも」
避けようとしていた体を押さえて私は息を呑んで歯を食いしばりマジック・スライムの攻撃を受け、同じ腹部に攻撃を受けて両膝を付き咳き込んだ。
刹LP:2000→200
「刹っちゃんのライフも残りわずかだねー。そんな刹っちゃんにプレゼント!リバースカードオープン、ギフトカードを発動。相手のライフを3000回復させる」
私に光が降り注ぐが体のほうはまったく回復する気配がなく、表示されているライフだけ回復していく。
刹LP:200→3200
「ねぇ、刹っちゃん。僕の気分しだいでいつでもNo.96は攻撃できるんだよ? この意味分かる?」
何が言いたいのか理解し、私はアーカイドを睨みつけて強く拳を握った。
何もするなって、言いたいの?
「サレンダーは認めない。僕が飽きるまでこのデュエルは続けさせてもらうよ」
なにも言わない私にアーカイドが満足そうに頷いたときだった。
「……なんで抵抗しねぇんだよ」
呟くようにいったブラック・ミストの言葉ははっきりと聞こえた。
「俺はお前に取り付くために一緒にいたってこいつに言われただろう? なのに、なんでだよ……」
ブラック・ミストは顔を伏せていてどんな表情をしているのか分からない。
それでも私はブラック・ミストに微笑んだ。
「1人でご飯を食べるのって、結構寂しいんだよね」
「……馬っ鹿じゃねぇの?」
顔をかすかに上げたブラック・ミストの表情は今にも泣きそうになりながら薄く笑っていた。
「はいはーい、2人の世界に入らないでくださいなーと! それにしてもNo.96さん、君は悪意、憎悪、怒りで出来てる存在でしょー? それなのに何? その様!! もしかして刹っちゃんと一緒にいて変わっちゃったわけ?」
「ハッ! そうかもな。こいつに感化されたんじゃねぇの?」
はっきりとそう告げたブラック・ミストにアーカイドはうわーと引いた表情を浮かべて一歩下がった。
二人が話している間に私は考えを張り巡らせる。
あのブラック・ミストを拘束している紋章をどうにかできれば一気にやれるんだけど……。
視線だけ周りを見渡していると不意に私のフィールドにモンスター、ジュノンと目が合った。
そのときは何も感じずにふいと他に視線をやった後、私は固まって再びジュノンに視線を向ける。
A Rビジョンであるはずのジュノンがこちらを心配そうにちらちらと見ているのが分かった。
え、これどうなってるの?
そういえばアーカイドが本物って言ってたから、モンスターも本物なんだろうけど。
私は浅く息を吐いて念じてみた。
「(ジュノン、声が聞こえてたらでいい。相手にわからないように反応して)」
駄目だろうかと不安になっているとジュノンは前を向いたまま相手に分からないように左手を後ろにやり手を開いたり閉じたりしていた。
「(え、えっと……。あのさ、ブラック・ミストを拘束してる紋章をどうにか出来たりする?)」
ジュノンはすぐに後ろにやっている左手の親指を立てて大丈夫だと合図をする。
「(それじゃあ、お願い。次の私のターン、ジュノンの効果を使うからそのときにブラック・ミストを救出して)」
「あー、何でこんなキャラ崩壊してるんだろ。ありえないだろ。ターンエンド!」
ちょうど良く、向こうも話が終わったのかアーカイドはこちらに向き直ってエンド宣言をする。
「私のターン、ドロー。ラメイソンの効果を発動してアルマの魔導書をデッキの下に戻しカードを1枚ドローする。ジュノンの効果を発動。手札のを除外して魔導書院ラメイソンを除外して明鏡止水の心を破壊する」
「は? いきなり……」
アーカイドがブラック・ミストに攻撃をする前にジュノンは速攻で呪文を唱え魔法をブラック・ミストに放つと紋章にひびが入り始めた。
「あ?」
目の前で起こったことにアーカイドは固まっているとジュノンが飛んでいきブラック・ミストの後ろにある紋章を殴りつける。
ガラスが割れる音と共にブラック・ミストの拘束が解かれて落ちる前にジュノンがブラック・ミストの首根っこを掴んで私のほうに向かって投げてきた。
「ちょっ、お前!!」
「ジュノン!?」
方向は私のほうなのだが、私に当たらないように調節されている。
しかしこのままではブラック・ミストが地面に叩きつけられてしまう。
私は走ってブラック・ミストを受け止めた。
「ぐぅ……あいつ!」
文句を言うぐらい元気そうなブラック・ミストを見て深く息を吐いた。
「良かった……」
胸を撫で下ろした後、私はブラック・ミストの前に出てデュエルディスクを構える。
「私の後ろにいて。ブラック・ミスト」
「あ、あぁ……」
なぜか複雑そうな表情を浮かべているブラック・ミストは気にせず、今はつまらなそうに立っているアーカイドを見た。
「強度のほうは考えてなかったなぁ。あーあ、失敗」
明らかにテンションが下がっており、アーカイドはため息を吐いた。
「どーぞ、さっさとデュエルを進めて」
「……手札から魔導法士ジュノンの効果を発動。手札のトーラ、ゲーテ、グリモを見せて特殊召喚。特殊召喚したジュノンの効果を発動し墓地の魔導書の神判を除外し再度召喚しているマジック・スライムを破壊」
もう1人のジュノンが現われると呪文を唱えて魔法を放ちマジック・スライムを破壊する。
「手札からグリモの魔導書を発動しデッキからヒュグロの魔導書を手札に加えて発動する。自分フィールド上の魔法使い族モンスター1体の攻撃力を1000ポイントアップさせる。私は1体のジュノンを選択」
赤い魔導書がブラック・ミストを助けたほうのジュノンの手に渡ると体から赤いオーラがまとい攻撃力が上がる。
レベル7 魔導法士ジュノン 攻撃力:2500→3500
「2500のジュノンでマジック・スライムを攻撃」
すでにもっている魔導書を開いて呪文を唱えるとジュノンの背後から光の弾が現われてマジック・スライムに向かっていき、破壊する。
「あー、調子乗ってたなぁ」
アーカイドLP:3500→1700
アーカイドはそう一言呟いて、すでに攻撃態勢に入っているジュノンを眺めていた。
「もう1体のジュノンでダイレクトアタック」
ジュノンが腕を上げると何十もある光の弾がアーカイドを囲むようにして現われる。
腕を振り下ろすと同時に光の弾もアーカイドに向かっていき、すべての弾が一斉に襲い掛かった。
アーカイドLP:1700→0
悲鳴も聞こえず、ただ破壊音だけが鳴り響き攻撃が終わったころにアーカイドのライフ表示が0になってデュエルが終わる合図が鳴り響いた。
それと同時に周りにあった黒い霧が消えてなくなり、モンスター達も姿を消した。
あぁ、終わった……。
安心したのか急に体から力が抜けて地面へと倒れこむ。
遠くでなにか声が聞こえたような気がしたが、私の意識は保っていられなかった。
ついにあらすじであったシンクロ、チューナーは一部(の人)を除き使用しませんのシンクロチューナーを使用できる人が出てきました。
主人公の敵であり同じ転生者のアーカイド。
ゲスくてベクターとキャラが被っている・・・おまけにチート能力も満載。
実のところ此処でブラック・ミストと友情のランクアップをしておかないとベクターごとく楽しかったぜぇお前との友情ごっこ!という風になりそうだったのでこんな形になりました。
急展開すぎだろ!って突込みがあると思われます・・・すみません。