パーティから帰ってきたその日に私はカードを保管している箱を取り出して中に入っているカードを取り出した。
さて、デッキの中身を丸々変えるのはさすがに時間的に間に合わないしカードを入れ替えるぐらいにしようかな……。
魔導デッキは念のためそのままにしておいて、エンジェルパーミッションと海皇水精鱗のカードをちょっとだけ変えよう。
デッキのカードをテーブルに綺麗に並べて何を入れるか考える。
「これをいれるとか? でも、そうするとなぁ……って効率を考えるな」
独り言を呟きながら私はデッキを少しずつ入れ替えていく。
2つのデッキのカード入れ替えが終わったのは11時近くだった。
明日から決勝大会なのだから早く寝ないと。
カードをまた箱の中に入れようとしたが思うことがあり手が止まる。
都賀原がカードを信頼とかカードがこたえてくれるとか言っていたけどそれって意思があるってことなんだよね……。
それだと箱の中に入れるのはいかがなものか……。
数秒考えたのち私はカードファイルとカードファイルが入りそうな棚を見つけるために立ち上がる。
「おい、寝るんじゃなかったのかよ」
後ろで眺めていたブラック・ミストが問いかけてきたので私は振り返る。
「カードをカードファイルに入れたほうがいいと思って……」
ブラック・ミストが小さな声でそれ以上大事にする気かよと言い放つと私から顔を逸らして部屋から出て行った。
おそらくリビングのソファで休む気なのだろう。
えーとジャンル別に分けないといけないから結構な数になりそうだな……カードファイルはあるはずだから早くやろう。
結局私が寝ることが出来たのは4時近くだった。
朝になって私は眠気を覚ますために今回は和食を作ることにした。
キャベツときゅうりとにんじんを切った後、ゆでてワサビと醤油で和えたものと三つ葉と里芋の味噌汁に温泉卵とご飯を用意する。
それでもやはりすこし眠い……。
「ブラック・ミスト、ご飯できたよ」
ソファで寝転んでいたブラック・ミストは浮かび上がってすぐに椅子に腰をかける。
いただきますの挨拶をしてからしばらく私たちは無言でご飯を食べていたが、急にブラック・ミストが口を開いた。
「お前は何でカードを……」
なぜか浮かない表情をしているブラック・ミストはそこまで言うがやっぱりなんでもないと首を振って残りのご飯を食べる。
私はここで追求をするべきか悩んだ。
おそらく聞きたいことは大事にしているかどうかって言うことだと思う。
でも、ブラック・ミストは何を考えてそれを聞こうとしたのか分からない。
……とりあえず聞くのはやめておこうか。
ご飯を食べた後は4つのデッキを腰につけてハートピースを持っていること、ほかに忘れ物がないかを確認をして私たちはハートランドへと向かった。
ハートランドにある決勝大会のスタジアムにたどり着くとすでに観客席はお客さんでいっぱいだった。
『おい、あれはなんだ? フィールド魔法か何かか?』
ブラック・ミストはおそらくスタジアムの中心にあるジェットコースターのレーンがいくつもある場所が気になったのか聞いてきた。
「(あれは現実の物。Mr.ハートランドが作ったものだと思うよ。おそらくジェットコースターだと思うけど)」
『ジェットコースター?』
「(レーンの上を猛スピードで走る乗り物だよ)」
説明をしながら私はスタジアムの中心に向かい、係りの人に案内されて自分が乗るジェットコースターの前まで行き扱い方の説明を簡単にされる。
このジェットコースターはDパットとリンクしており自分のLPが0になると椅子が空中に打ち上げられ、打ち上げられたらパラシュートが出てくるとのこと
これ、下手したら怪我人が出そうなんだけど……大丈夫なの?
不安に思いつつも私は大会開始時間までそのまま待機することにしたのはいいが、時間が進むにつれて落ち着かなくなり何度か昨日カードを入れ替えたエンジェルパーミッションデッキの内容を確認する。
『何そわそわしてんだよ。今のお前、初の大会で緊張しているデュエリストだと思われるぞ』
「(いや、だってこれ。自分で入れ替えたけど手札事故起こしそうで……)」
思い出すのは前世で遊戯王のTFをやり始めて、初めて自分でデッキを作ったのはいいが手札事故で相手キャラに惨敗した記憶。
あのころはデッキの組み方とか知らなかったからなぁ・・・。
ブラック・ミストは深いため息を吐いてなにか呟いていたが私の耳に届くことはなかった。
そんなことをしているとMr.ハートランドが機械に乗って空中に現われるとその後ろには大きなホログラムが写し出される。
「ハート、バーニング!! これよりWDCの決勝大会を開始します!」
Mr.ハートランドの大会開始の宣言がされると周りの観客は声をあげて盛り上がっていた。
「ファーストステージはパークセクション。つまりはハートランドのすべての場所でデュエルをする! 名づけてデュエル・コースター!」
デュエル・コースター?
ジェットコースターに乗ってデュエルをするってのはなんとなく分かっていたけど、ルールとかどうするんだろ。
「さぁ、予選を勝ち抜き25名のデュエリスト達よ。己の知力と体力をすべてをかけて戦うがいい! 栄えあるデュエルチャンピオンの称号を目指すんだ!」
『おい、俺もデュエル・コースターに……』
「(駄目に決まっているでしょ。実体化すると周りの人に見られるんだから)」
服を着ていて普通の格好をしていたらまだいいけど、ブラック・ミストは全裸で肌は真っ黒、青緑色の刺青みたいなのもあるし私の隣に実体化をしてしまうと騒ぎになる。
『アストラルの姿は周りに見えねぇのに……』
ぶつぶつと文句を言っているブラック・ミストにため息を吐いたそのとき、一瞬だけ周りに違和感を覚えた。
「今のは……?」
『一瞬だが、時間が停止した。あのロボットがやったみてぇだな』
視線を動かしてブラック・ミストが言ったロボットを見てみるとそこには天城とその傍らにオービタル7がいた。
オービタルって時間停止とか出来るの?
高性能という枠をはみ出しているロボットだな……感情豊かだし。
「さぁ、まもなくゴングがなる! 勇士たちよ、戦いの準備を整えろ!」
Mr.ハートランドの言葉に私や周りのデュエリストはジェットコースターに乗り込む。
「そのコースターは君たちのDパットとリンクする! デュエルディスク、セット!」
デッキをデュエルディスクにセットした後、腕につけている金色の装飾がついたデュエルディスクを立ち上がらせDゲイザーを装着する。
「いよいよ、コースターに命を吹き込むときが来た! 予選で君たちが集めたハートピースはこのデュエル・コースターのスタートキーになっている。コックピットの所定の位置にハートピースをセット!」
ポケットからハートピースを取り出し、ハート型のくぼみがあるところにハートピースをはめ込むと腰にシートベルトが装着され目の前に地図のような画面が映し出される。
操作をしてみるとレーン上にMとTと書かれたマークがいたるところにあった。
『これはカードのことか?』
「(おそらく魔法カードと罠カードがセットしてあるんだと思う。このマークのところを通ったらライフ回復かダメージってところだね)」
本当、こんなこと良く思いついたよね……。
レール図を確認していると突然誰かの叫び声が響き渡った。
「うわああぁ!ハートピースがない!! どうしよおぉ!!」
あの声ってもしかして遊馬君?
左右を見てみると右側の3つ隣に赤色のコースターに乗り慌てている遊馬君がいた。
「(ハートピースがないって……)」
『何やってんだ、馬鹿か?』
ブラック・ミストが吐き捨てるように言い放ち私は頭に手をやった。
こんな大事なときに忘れ物をするなんてある意味大物のような気がする。
「さぁ、時は来た! 史上最大の戦いの幕が今、切って落とされる!」
大丈夫なのかな……この場合って失格ってことに。
心配そうに遊馬君を見ていたがMr.ハートランドの10秒前のカウントダウンが開始される。
「3……2……1! ファイヤー!!」
ブザー音と共にコースターは猛スピードで動き出し私は体をこわばらせた。
そういえば、私ってジェットコースターとか初めて乗るんだよね……。
レーン変更、ブレーキなどができる操作装置を握り締める。
コースターはレーンに沿って一度上へとのぼりそして大きく回転するようにして目の前の景色が上下逆さになる。
浮遊感にさらに体が固まるがすぐに景色は元に戻り深く息を吐いた。
「あーもう……なんでジェットコースターなんだろう」
『俺が変わってやろうか?』
「結構です」
一応慣れるまでスピードは出さないでおこう。
ていうか、これってどうデュエルしていけばいいんだろう・・・。
「ほらほら、そこをどきやがれ!!」
後ろから声が聞こえたので振り返ってみると同じレーンに一台のコースターが迫ってきていた。
乗っている人は狼の毛皮をかぶっている男性だった。
「俺のターン、ドロー! 手札から賢者ケイローンを召喚!」
空中に出てきたのは下半身が馬の胴体で出来ており上半身が鎧を着た男性のモンスターだった。
レベル4 賢者ケイローン 攻撃力:1800
「ダイレクトアタックだ!」
「はぁ!?」
いきなり攻撃してくるとか、これどうなってるの!?
私は急いでデッキからカードを5枚ドローした後、1枚ドローをする。
「永続魔法、ヴァルハラを発動しアテナを特殊召喚する」
ケイローンの攻撃が決まる前に現われるのは長い銀髪で白色の顔が見える兜を被り右手には丸い赤い宝石のような装飾がつけられた三又槍を持ち、左手には白色の盾を持っている白い衣装に身を包んだ女性が現われる。
急いでいたから効果説明とかしなかったけど、別にいいよね?
レベル7 アテナ 攻撃力:2600
「いきなり攻撃力2600だと!?」
モンスターが召喚されたことにより巻き戻しが起こったのかケイローンは相手のフィールドに戻っていった。
いまなら場を整えることが出来そうだ。
「手札からトレード・インを発動し手札からレベル8の堕天使スペルビアを捨てデッキからカードを2枚ドローする。アルテミスを召喚」
頭に大きな天使の羽を生やし紫色のマントをつけたモンスターが現われる。
レベル4 豊穣のアルテミス 攻撃力:1600
「アテナの効果を発動。アテナはフィールド上に天使族モンスターが召喚、反転召喚、特殊召喚した時、相手に600ポイントのダメージを与える」
「なに!?」
アテナの槍の先から光が集まるとそれは打ち上げられて光の雨となって相手に襲い掛かる。
「ぐっ……」
男LP:4000→3400
「さらにアテナの効果を発動。自分フィールド上に表側表示で存在する天使族モンスターを墓地に送り、このモンスター以外の墓地にいる天使族モンスターを特殊召喚する。私は堕天使スペルビアを特殊召喚」
空中に黒い穴が現われるとそこから黒い壷みたいなものに顔と腕がつき下半身が傘のようなもので出来ており、赤い羽根を生やしたモンスターが現われる。
レベル8 堕天使スペルビア 攻撃力:2900
「堕天使スペルビアが墓地からの特殊召喚に成功した時、墓地から天使族モンスターを1体特殊召喚する」
レベル4 豊穣のアルテミス 攻撃力:1600
もう一度アルテミスが姿を現わすとアテナは効果発動のために槍の先に光を集め始めた。
「天使族モンスターが2体特殊召喚されたことにより、合わせて1200のダメージを与える」
先ほどより大きな光が打ち上げられて雨となって相手に襲い掛かる。
「ぐああぁ!」
男性LP:3400→2200
「全モンスターで攻撃」
私が指示を出すと3体そろって相手に向かっていき、アテナがケイローンを切り伏せると続いてアルテミスとスペルビアが男性に攻撃をしていった。
「うわあああぁ!」
男性LP:2200→0
男性が座っている椅子から煙が噴出すと椅子は打ち上げられて、男性は空中に飛ばされる。
しかし椅子からパラシュートが開いてゆっくりと下に落ちていった。
「はぁ……ちょっとびっくりした」
「なさけねぇな」
隣から声が聞こえてきたので勢い良く隣を見てみるとブラック・ミストが座っていたのだが、なぜか体が透けていた。
「ちょっと、なんで出てきてるの? ばれたらどうするの?」
「見られねぇように実体化のぎりぎりを保ってるから大丈夫だろ」
確かに良く見ないと分からないぐらいには体が透けている。
そんなにジェットコースターに乗りたかったのか……。
「……わかった。でも、放送で隣にいるのは誰だとかそんなのが言われたらすぐに戻って」
「わかったよ」
ブラック・ミストは素直に頷いて口元を吊り上げ笑みを浮かべたまま正面を見る。
『おぉっと、ハートランド学園代表の黒峰刹選手が1人デュエリストを倒したぞー!!』
コースターに何かしら設置されているのかMr.ハートランドの声が聞こえてくる。
私の名前を出されて驚き、ブラック・ミストのことがばれるんじゃないかと思ったがそんな様子はなくMr.ハートランドは別のデュエリストのデュエルの解説をしていた。
「いきなりいいノリしてるな、黒峰刹」
右隣にあるレールから声をかけられそちらを見てみると赤茶の短髪の男性で紫色のタートルネックに灰色の足元まで裾があり裾のほうだけオレンジ色で首元の部分には裾と同じオレンジ色のファーがついているコートを着ていた。
左目には赤紫色の模様に瞳の色が黄色に変わっておりその人は黄色のコースターに乗っている。
「えっと、確かゴーシュさん?」
「おう! それにしても相変わらずの展開力だな」
ゴーシュさんは私の目の前にいる3体のモンスターを見て笑みを浮かべてそういった。
「だが、緊張しているのか? 表情が硬てぇぞ」
「あ、はは……」
表情とかいつもどおりなんだけどな……て、いつもどおりだと駄目じゃん。
ゴーシュさんはいいたいことだけ言い放つとまた会おうぜ! といってコースターのスピードを上げてさきに行った。
「やっぱりすぐには変われないか……」
「……」
呟くようにいうがブラック・ミストは反応せず腕と足を組んで前を見ていた。
それにしても手札事故が起こるって思っていたんだけどまったくそんなことはないな。
地図の表示でドローレーンに突入カードを1枚ドローしてくださいと書かれ私はカードをドローする。
「あー……なんか、なぁ」
いまドローしたカードをみてこれがデッキが答えてくれているという状況なんだろうけど複雑な気持ちでいっぱいであった。
贅沢……なんだろうなぁ。
私はため息を吐いてコースターのスピードを上げることにした。
出来るだけ魔法、罠カードがセットされているレーンは避けて進んでいく。
何回か知らないデュエリストとデュエルはしたが特に苦戦をすることなく相手を倒したり逃げられたりしていた。
そしてレーンを進んでいくとモンスターの顔を象った地下へと繋がる入り口に入る。
周りは暗闇に包まれており、良く目を凝らさなければ先のほうが見えないぐらいだ。
『熱戦が繰り広げられたパークセクションもこれにて終了! ここを突破したものは次なる難関、地下セクションへ突入だ!』
地下に入ってからしばらくするとMr.ハートランドの声が聞こえ、コースターの目の前に写る映像から7という数字が書かれていた。
これって7番目に地下セクションに入ったってことかな?
『さぁ、パークセクションを生き残ったデュエリスト18名が次なる戦いの場へと突入していく! 青空と太陽に包まれたスタジアムから光なき暗黒の地下セクションへ!』
私の目の前には自分の画像とデュエルの経歴などデュエルに関する個人情報が幾つか掲示されていた。
これってここに表示する意味あるのかな……。
『それではここで地下セクションの見所を紹介しましょう! ここでの目的はズバリ、一騎打ちの相手を決めること!その舞台は――マグマ、スペース、ジャングル、キャニオン、アクア、ファクトリー、スカイハイ、セメタリー。8つの特性をもつフィールド! さぁ、自分に有利なフィールドに相手を誘い込み、デュエルをするのだ!』
現在は18名のデュエリストが生き残っていて一騎打ちを出来るのは16名ふるい落とされるのは2名か……意外と少ないなぁ。
さて、誰とデュエルをするか……。
まぁ、先にフィールドのほうに行って相手を待っているって言う手もあるんだけどさ。
いくとしたらアクアフィールドかな。
考えていると目の前に映像が展開され、そこには都賀原の顔が映し出されていた。
『黒峰刹、本来ならば決勝で相見えるはずだったがファクトリーフィールドでデュエルをしようではないか』
ドヤ顔でそういってきたので私はすこし考えて口を開く。
「……一騎打ちしたい相手が私以外いないんだね」
『う、うるさい!』
図星だったのか都賀原は動揺を隠しきれずに声をあげ、ひとつ咳をして落ち着いてから付いて来いと一言言うと映像が消える。
「ほう、お前にデュエルを申し込むやつがいるとはな」
「都賀原とは何回もしているよ。本当、数え切れないぐらいに……」
私がそういうとブラック・ミストは目を見開いて驚き感心したように呟く。
「よく心が折れねぇな」
私のデュエルって人の精神にまでダメージを与えるようなものなのかな……。
口元が引きつるのが分かり、それを誤魔化すように地図のほうを操作して都賀原のコースターがどこにいるのか調べるとすこし前のほうに都賀原のコースターがいる。
このまま付いていけばファクトリーフィールドにたどり着く。
うーん、ファクトリーフィールドはどんな効果があるんだろう……。
ファクトリーって工場だよね。
なんか嫌な予感がするなぁ。
『絞られてきた! 25名の決勝大会進出者のうち、パークセクションを生き残ったのは18名!そしてここまでの地下セクションで6名が脱落し残るは――12名! さぁ、ここからは一騎打ちのデュエルだ! 目指すデュエルフィールドは8つ! そして残念ながら16名以下となってしまったので特別ルールを設けることにする! 1人の状態でフィールドにたどり着き10分以上待っても相手が出てこなかった場合、2名のみ次のステージへといける! しかしフィールドがとかれた後に待っていても意味がないので注意をするように。選手たちよ、戦うがいい!ハート、バーニング!!』
ここに入ってからデュエルをしてないけどいつの間にか誰かとのデュエルで減っていってしまったらしい。
都賀原のあとを追ってしばらくするとファクトリーフィールドへとたどり着く。
フィールドは機械工場のようで機械の部品やモンスター型のロボットが生産されている。
ブラック・ミストはここに着く前にエクストラデッキに戻ってもらった。
「……ねぇ、都賀原。ここのフィールドの効果は知ってるの?」
「知らん」
ものすごく嫌な予感がして都賀原に聞いてみるがきっぱりと答えられてしまった。
「だが、調べてみるか……すこし待っていろ」
デュエルを始める前にコースターのほうを操作してフィールドの効果を調べ、都賀原は戻ってきたのだがその表情は複雑なものだった。
「このフィールドは、フィールド上にいるモンスターの種族がすべて機械族になる……という効果だった」
あ、これはまずい。
嫌な予感が的中してしまい私は頭を抱えそうになる。
「こちらに有利になってしまう効果だが、手加減はせん。貴様も全力でかかって来い!!」
「まぁ、来ちゃったものはしょうがないし。やろうか」
私たちはお互いに離れてデュエルディスクを構える。
そしてデュエルの宣言をしようとした時だった。
「うわあああぁ!」
「きゃああぁ!」
男女の悲鳴が聞こえてくるとレーンのところに赤いコースターが1台降りてきていた。
「遊馬君に小鳥ちゃん!?」
遊馬君はまだ分かるけど、なんで小鳥ちゃんまで一緒にいるの?
2人は私に気づくと手を振ってコースターから降りていた。
「知り合いか?」
「かわいい後輩だよ」
都賀原にそう答えた後、私も2人に手を振って笑みを浮かべる。
「さて、じゃあはじめようか」
私たちは向かい合ってその言葉を合図にもう一度デュエルディスクを構えた。
「私のサイバー流で今度こそ貴様を倒してやる!」
「「デュエル!」」