遊戯王の世界に転生したがろくな事が起きない   作:アオっぽい

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4月6日
追記:台詞などを付け足したり減らしたりしました。
デュエルや話の流れは変わっていませんのでご安心を。


第十一話 助けようとするとろくな事がおきない

あの後、公園に寄りベタ付く手を洗いハートピースを渡すために私はハートランドの入り口へと向かった。

 緑色に染められた長い階段を上がり、上までたどり着くとそこには見知った顔ぶれがいた。

 

「遊馬君に小鳥ちゃん?」

 

『ハートピースを揃えた……という感じじゃねぇみたいだな』

 

 ハートランドの入り口の前には遊馬君と小鳥ちゃんの他に赤茶の短髪で黒いコートを着た男性がおり手には簀巻きにされた小さな帽子をかぶりスーツのような服を着た少年を抱えている。

 その男性の後ろに藍色の髪に異様に長い前髪に薄紫のメッシュが入った白いスーツを着た女性が立っていた。

 両者の雰囲気は悪く、ブラック・ミストの言うとおりハートピースを揃えてやってきたというわけではなさそうだった。

 

「徳之助を連れて行きたいなら、俺とデュエルだ!」

 

 遊馬君の声が響き渡り、私は両者に近づきながら考える。

 場合によっては割り込むつもりだけど、どうしようかな…。

 

「デュエルだと? おもしれぇ! だが俺はつえぇぞ」

 

「ケッ、上等だ! 二人まとめてかかって来いよ!」

 

 ニヤリと笑う男性に遊馬君は買い言葉で2対1のデュエルを申し込んだ。

 すると後ろで黙ってみていた女性が口を開く。

 

「良かろう。デュエルは2対1、私たち2人とデュエルしてどちらか一人でも倒せれば、お前の勝ち。そいつのことは忘れてやる。ただし負けたときは、代わりに同じ罰をお前が受けてもらう」

 

 罰って……あの簀巻きにされている少年はいったい何をやらかしたんだか。

 遊馬君の強さはどのくらいか知らないけど、さすがに大人相手に2対1しかも負けたら罰を受けるって言うし見ているだけってわけにはいかないか……。

 

「ちょっと待ってください」

 

 私の声に反応してその場にいた人たちは一斉にこちらを見る。

 

「そのデュエル、私も参加して良いですか?」

 

「刹……なんで?」

 

 遊馬君は驚いた表情で問いかけ、私はポケットの中にある完成されたハートピースを取り出した。

 

「ハートピースが完成したから運営委員に渡しに来たんだけど……ね?」

 

 ハートピースをポケットの中に入れて遊馬君の隣に立ち、目の前にいる男性に目を向けた。

 

「部外者が割り込んでくるんじゃ……ん? お前」

 

 男性はうっとおしそうに言いかけたが急に私の顔をじろじろと観察すると思い出したかのように表情を明るくさせる。

 

「お前、カイトを倒したっていう黒峰刹か!」

 

「ゴーシュ、余計なことをいうな!」

 

 男性を諌めるように女性は声を荒げ、私はその言葉に目を細めた。

 なぜ、この2人が私のことを知っている?

 カイトはMr.ハートランドとつながっている。

 そしてWDCはハートランドが主催しており、目の前にいる2人はおそらくWDCの運営委員。

 ハートランドの部下だと考えるとカイトを倒したことを知っていてもおかしくないか。

 

「それで私は参加してもいいんですか?」

 

 先ほどの言葉に追求はせず、もう一度問いかけると小鳥ちゃんが慌てて私を止めた。

 

「ちょ、ちょっと待ってください刹さん! 負けたらデッキが没収されてこのハートランドシティから追い出されてしまうんです!」

 

 罰というのはそんな内容だったのか。

 大人だったらまだなんとか生きていけそうだけど、子供が身一つだけで追い出されたら最悪死ぬでしょうに。

 

「そんなの負けなければ良いんでしょ?」

 

「え……で、でも」

 

「大丈夫だから」

 

 不安げな表情を見せる小鳥ちゃんに私は微笑んだ。

 遊馬君は天城みたく自分勝手な行動はしないだろうし理想としては2対2でやりたい。

 でも遊馬君しだいでは私だけで2人の相手をすればいい。

 2対1少し厳しいけど、まぁエンジェルパーミッションで特殊召喚を封じればなんとかなるでしょ。

 

「おいおい、簡単に言ってくれるなぁ! いいぜ、お前が参加するのを認める!」

 

「だが、2人になったのだ。ルールを変更する。どちらか一方を倒すのではなく私たち2人のライフを0にすればお前たちの勝ちだ。そしてお前たちのどちらかのライフが0になった時点でお前たちの負けだ」

 

 やっぱり普通の2対2のルールでやってくれないか……。

 どうしよう、エンジェルパーミッションはサポートできるから良いけど、カードの消費が多いからなー。

 

「どうする? それでものるか?」

 

 男性が遊馬君に問いかけると遊馬君は口をつぐみ、拳を握って考え込むようにうつむいた。

 

「遊馬君、もしなんだったら…」

 

「よっしゃあ! そのデュエル、受けてやる!!」

 

 私だけでやろうかという前に遊馬君が大声をあげてデュエルを受けた。

 そうなると今回は海皇水精鱗デッキを使おう。

 サポートカードは少ないけど、安定しているし。

 男性に拘束されていた少年は一時的に解放されて小鳥ちゃんの隣に立った。

 私たちは互いに距離をとり私と遊馬君がデュエルディスクとDゲイザーをセットしている間に男性の腕に炎がまとい、赤とオレンジ色の炎をイメージとしたデュエルディスクが装着され左目の周りに明るい赤紫色の模様が描かれると瞳の色が藍色から黄色へと変わる。

 女性の腕には光の粒子が集まると黒い蝶の羽のようなデュエルディスクが装着され長い前髪を払うと左目の周りに青色の模様が描かれ瞳の色がオレンジから緑色に変わる。

 

「「「「デュエル!」」」」

 

「遊馬君がんばれウラー!!」

 

 デュエルの宣言をすると先ほど拘束されていた少年の応援する声が聞こえた。

 ていうかウラ? なんか変わった語尾だな……。

 

「あったりまえよ! 俺から行くぜ! 俺のターン、ドロー! 俺はモンスターを裏側守備表示でセット、カードを1枚伏せてターンエンド」

 

 遊馬君の場に横にして伏せられているカードの後ろに縦に伏せられたカード1枚が現われる。

 初手としては普通か。

 

「ふん、でかい口を叩くわりにいきなり守備固めかよ」

 

「くっ……俺はこのデュエル、負けるわけにはいかないんだ!」

 

 男性の挑発に遊馬君は少し悔しげに呟いていた。

 私たちのどちらかのライフが0になった時点で負けるから慎重になっているのかな?

 

「私のターン、ドロー! 私は幻蝶の刺客モルフォを召喚!」

 

 腰の部分から青色の蝶の羽を生やし両手には黄緑色のナイフのようなものを持った足がない女性型のモンスターが現われる。

 

レベル4 幻蝶の刺客モルフォ 攻撃力:1200

 

「さらにカードを2枚伏せてターンエンド」

 

「じゃあ、次は私が。私のターン、ドロー」

 

 私のターンが回ってきた瞬間二人の表情が一瞬険しくなった。

 警戒している?

 でもバトルロイヤルルールでは1ターン目からは攻撃できないしそこまで警戒するほどでもないと思うけどね。

 全力出して次の相手ターン、ブラックホールですべてのモンスターが消し飛びました、なんてことになったら目も当てられない。

 

「私は手札から水精鱗-メガロアビスの効果を発動。手札の水属性モンスター2体を墓地に捨てこのカードを特殊召喚できる」

 

 メガロアビスのカードをデュエルディスクにセットすると金色の鎧を身にまとった二本足で立つ赤色のサメが現れる。

 その手には突起がいくつもついた剣のようなものを持っていた。

 

レベル7 水精鱗-メガロアビス 攻撃力:2400

 

「この方法でメガロアビスが特殊召喚に成功した時、デッキからアビスと名の付く魔法・罠1枚を手札に加える。私はアビスコールを手札に。そして墓地に捨てられた水精鱗-アビスグンデの効果を発動。このカードが手札から墓地に捨てられた場合、自分の墓地から水精鱗と名の付いたモンスターを特殊召喚できる。水精鱗-アビスリンデを特殊召喚」

 

 私のフィールドに藍色のウェーブが入った髪は腰まで長く、赤と白の露出が高い服を着た人魚が現われる。

 

レベル3 水精鱗-アビスリンデ 守備力:1200

 

「あれ? アビスグンデが効果を発動したとき、アビスリンデはまだ墓地にいなかったよね?」

 

 小鳥ちゃんは隣にいる少年に問いかけていたが、自分が扱っているカードだし私が説明しよう。

 

「メガロアビスの効果でアビスグンデとアビスリンデが墓地に捨てられた後にアビスグンデの効果が発動されるから、もうアビスリンデが墓地にいる扱いになるの」

 

 私の説明に小鳥ちゃんはなるほどと頷いていた。

 本当なら海皇の効果であの女性が伏せたカードを破壊したかったんだけどな……手札にないから仕方ないんだけど。

 1枚のカードを右手に取りデュエルディスクにセットする。

 

「カードを1枚セットしターンエンド」

 

「初っ端から攻撃力2400のモンスターか。いいノリしてやがるぜ! 俺のターン、ドロー! 俺はハンマーラッシュ・バウンサーを特殊召喚!」

 

 赤茶の体にぴったりな服に両腕がハンマーでできた狼の獣人が地面から現われる。

 

レベル6 ハンマーラッシュ・バウンサー 攻撃力:2300

 

「このカードは相手フィールドにのみモンスターおよび魔法・罠カードがあるとき手札から特殊召喚できる! 俺はこれでターンエンド。さぁ、どっからでもかかってきな!」

 

 カードを伏せない?

 次の遊馬君のターンから攻撃ができるからカードぐらいは普通伏せるはず。

 それとも攻撃力2300だから安心してる……わけないか。

 相手は仮にも大人だしもしかしたらカードを伏せないことで効果を発揮するモンスターなのかも……。

 私は女性と男性の場にあるカードに目を向け、考える。

 狙うとしたら男性のほうかな。

 カードは伏せてないしまだ墓地にモンスターもない。

 もしかしたら手札から発動するタイプのもあるかもしれないけど、まだ安心して攻撃ができる。

 ちらりと遊馬君を見てみると遊馬君もどちらに攻撃をするか考えているのか2人のフィールドを見ていた。

 

「おっしゃ! 先に倒す相手が決まったぜ! 俺のターン、ドロー!俺は裏守備モンスターを攻撃表示にする!」

 

 伏せられていたカードがひっくり返り、ヘルメットと黒いマスクをつけバイクに乗った男性型モンスターが現れる。

 

レベル3 ライライダー 攻撃力:1200

 

「ふん、攻撃力1200。そんなノリの悪いモンスターで何ができる?」

 

「へん、見てろ! そして俺はタスケナイトを召喚!」

 

 赤と黒の鎧と顔を覆う兜をかぶり背中には剣と盾を背負ったモンスターが現われる。

 

レベル4 タスケナイト 攻撃力:1700

 

 レベルが統一されてない……エクシーズ召喚はしないのか。

 いまから魔法・罠カードを使う気配もないし、もしかしたら女性のほうから先に倒すつもり?

 

「いけ、タスケナイト!…モルフォを攻撃!ヘルプッシュ!」

 

 タスケナイトが指示に従い、走り出すと女性は小さく笑みを浮かべる。

 

「永続罠、隷属の鱗粉を発動! このカードは相手モンスターが攻撃してきたとき、そのモンスターの装備カードとなり表示形式を攻撃表示から守備表示にする!」

 

「なに!?」

 

 女性から発動されたカードから紫色の鱗粉が放たれ、タスケナイトにまとわり付くと攻撃するために走っていたタスケナイトは元の場所に戻されてしゃがみこんだ。

 

レベル4 タスケナイト 攻撃力:1700 → 守備力:100

 

「どうやらお前のノリはいきなりアテが外れたようだな」

 

「……俺はターンエンドだ」

 

 攻撃力が1200のモンスターに守備力が100のモンスターか……次の女性がどう動くかで私も行動を決めないと。

 

「やっぱりアストラルがいなきゃ勝てっこないウラ! どうしてアストラルは出てこないウラ!!」

 

 少年の叫び声に私は内心首をかしげる。

 アストラルがいない?

 それはどういうことだろうか……というか遊馬君のデュエルはいままでアストラルから助言をされながらデュエルをしていたということ?

 

「(ねぇ、ブラック・ミスト)」

 

 心の中でブラック・ミストに声を掛けてみるが返事はなかった。

 

「(ブラック・ミスト?)」

 

 慌てて別のデッキケースに入っているNo.96ブラック・ミストのカードを確認してみたところカード自体はケースの中に入っていた。

 誰かに取り付くにしてもこのカードは必要の筈……いったいどこに?

 最近おとなしいと思ったのに……まずいなぁ。遊馬君から頼まれてたのに。

 私がため息を吐いてカードを戻しているとデュエルは進んでいた。

 

「私は幻蝶の刺客アゲハを召喚」

 

 アゲハ蝶のようなオレンジ色の羽を腰に生やしたモンスターが現われる。

 

レベル4 幻蝶の刺客アゲハ 攻撃力:1800

 

「そして永続罠、隷属の鱗粉の第2の効果を発動! このカードは1ターンに1度、装備モンスターの表示形式を変えることができる。私はタスケナイトを攻撃表示に!」

 

 タスケナイトが立ち上がるとDゲイザーに表示されているタスケナイトの表示形式が変更される。

 

レベル4 タスケナイト 守備力:100 → 攻撃力:1700

 

「幻蝶の刺客アゲハで攻撃してくるつもりか? けど、ダメージは攻撃力の差、100ポイントだけだぜ!」

 

「甘い。幻蝶の刺客モルフォのモンスター効果を発動! 1ターンに1度相手モンスターの表示形式が変わったとき、その攻撃力を1000ポイントダウンさせる!」

 

 モルフォが羽を羽ばたかせると鱗粉がタスケナイトに飛び、タスケナイトの攻撃力が下がる。

 

レベル4 タスケナイト 攻撃力:1700→700

 

 相手は表示形式を変えて戦うデュエリストか……これは面倒な。

 

「私は幻蝶の刺客モルフォでタスケナイトを攻撃! ブルースケール・ストリーム!」

 

 両手に持っている黄緑色のナイフが輝き、モルフォはそれを振るいながらタスケナイトに向かっていく。

 回転しながらタスケナイトをナイフで切るとタスケナイトは破壊された。

 

「ぐわぁ……くっ」

 

遊馬LP:4000→3500

 

「さらに幻蝶の刺客アゲハの効果を発動! このカード以外のモンスターが相手にダメージを与えたとき、相手のモンスターの攻撃力をそのダメージの数値分下げる」

 

 今度はアゲハが羽を羽ばたかせると鱗粉がライライダーに向かっていき攻撃力をさげた。

 

レベル3 ライライダー 攻撃力:1200→700

 

「そして幻蝶の刺客アゲハでライライダーを攻撃! リミットスケール・ストリーム!」

 

 アゲハの両手にオレンジ色の槍のようなものを手に持ち体がオレンジ色に輝き始めライライダーに突っ込んでいくとライライダーと接触した際に爆発が起こりライライダーは破壊された。

 

「ぐわあぁ!」

 

 襲い掛かってきたダメージに遊馬君は地面に仰向けで倒れこんだ。

 

遊馬LP:3500→2400

 

「遊馬!」

 

「ライフポイント2400! 一気に1600ポイントもやられたウラ!」

 

 いや、まだ2400もあるから大丈夫。

 たしかに半分近くあるしモンスターによっては1撃でやられるような数値ではあるけど慌てるような数値じゃない。

 

「少しは根性があるやつとは思ったが、その程度のノリで一端のデュエリスト気取りとはな。笑わせるぜ!」

 

 遊馬君は立ち上がると挑発してきた男性をにらみつける。

 

「そっちこそ! その程度のダメージでそんな余裕こいてていいのかよ! まだまだ勝負はこれからだぜ!」

 

「なに?」

 

「俺はライライダーの効果を発動! このカードとバトルしたモンスターは次の相手のターン、バトルできない!」

 

 ということは次のあの女性のターンになってもアゲハは攻撃ができないということだよね。

 ……すごく安心できない。

 リリースするかエクシーズ召喚の素材にすればそんな制限無意味だし…。

 

「ふん、そんなノリがどうした? すでに貴様のフィールドはがら空き! いずれにしろ俺のターンで終わりだぜ。ま、すこし不満はあるがな」

 

 そういって男性は女性に目を向けた。

 これは……2人して私を無視して遊馬君を狙うって事か。

 たしかに私たちのどちらかを倒せれば向こうの勝ちだし仕方ないんだけど……無視されるのってむかつくよね?

 

「私はカードを2枚伏せて、ターンエンド」

 

「私のターン、ドロー。手札から瀑征竜ダイダルの効果を発動。このカードと手札の水属性モンスター1体を墓地に捨てて、さらにデッキからモンスターを1体墓地へ送る。私は水精鱗-アビスパイクとダイダルを墓地に捨てる」

 

「その効果にチェーンして発動! 威嚇する咆哮! このターン相手は攻撃宣言をすることができない」

 

 女性が伏せていたカードの1枚が立ち上がるとそのカードから獣の大きな咆哮が鳴り響いた。

 私の手札にもエクストラデッキのほうにも相手モンスターを破壊するカードはない。

 …なんで素直にエンジェルパーミッションにしなかったんだろう。

 

「カードを1枚伏せてターンエンド……」

 

「俺のターン、ドロー!俺はブレード・バウンサーを召喚!」

 

 黒いズボンを履いた黒豹が二本足で立ちその腕には赤い刃物がトンファーみたいに付いていた。

 

レベル4 ブレード・バウンサー 攻撃力:1800

 

「そしてハンマーラッシュ・バウンサーで……」

 

「やっぱり天城カイトを倒したって聞いて私を恐れてるんだ?」

 

「……なんだと?」

 

 よし、かかった。

 男性は私がとっさに言った言葉に反応して私をにらみつけた。

 

「さっきから遊馬君ばかり狙っているのがその証拠。私に勝てる見込みがないから攻撃も制限して徹底的に無視しているんでしょ?こんな年下相手に情けない」

 

 私は相手をあおるようにわざと所々強調して言い放つと男性はさらに顔を険しくさせた。

 

「てめぇ……! 好き勝手言いやがって!!」

 

「ゴーシュ! 相手が挑発しているのが分からないのか? これはMr.ハートランドのためのデュエルだ、冷静になれ」

 

 女性の言葉に男性は拳を握り締めてしばらく黙っていたが舌打ちをしてデュエルを続けた。

 これは失敗か……なんとかこっちに攻撃させようとしたんだけど。

 やっぱり冷静な人が仲間だと挑発は効かないか……。

 

「ハンマーラッシュ・バウンサーが攻撃するとき、自分のフィールドに魔法・罠がなければ相手プレイヤーは魔法・罠を発動できない。つまりお前らがどんなカードを伏せていようとそいつは使えねぇってことだ」

 

 まさかアンティークギアと同じような効果を持っているなんて……厄介な。

 

「あいつ、それでカードを伏せていなかったのか!」

 

「いけ、ハンマーラッシュ・バウンサー! 小僧にダイレクトアタック! デストロイナックル!」

 

 ハンマーラッシュ・バウンサーが咆哮を上げると遊馬君に向かって走り出しジャンプをして両腕のハンマーを振り下ろした。

 遊馬君がいたところから爆発が起こり、煙で遊馬君の姿が見えなくなる。

 

「ふん……あとはブレード・バウンサーで止めを刺してやる!」

 

 煙がはれて遊馬君の姿が見え始めると遊馬君のライフが表示される。

 

遊馬LP:2400→1600

 

「なに、ライフが1600だと!?」

 

 よくよく遊馬君の場を見てみると黒いコートを羽織り口元が隠れるマフラーを付け帽子とゴーグルを頭にかぶったモンスターが存在し、その手には大きな赤い縁に黒と黄色でデザインされた盾を持って立っていた。

 

レベル4 ガガガガードナー 攻撃力:1500

 

「ガガガガードナーはダイレクトアタックをされたとき、手札から攻撃表示で特殊召喚できる。そして手札を1枚捨てることでバトルの破壊を無効にするのさ!」

 

 私は女性と男性が現在起こった出来事を解説している間にそっと息を吐いた。

 これでこのターンはなんとかやり過ごすことができる。

 

「俺はブレード・バウンサーでガガガガードナーを攻撃! いけ、ストレートスラッシュ!」

 

 ブレード・バウンサーは両腕を広げ、低い姿勢のまま走り出す。

 

「くっ、俺は手札を1枚捨ててガガガガードナーのモンスター効果を発動!」

 

 ガガガガードナーに虹色のバリアが張られるとブレード・バウンサーが跳躍し腕を振り下ろして赤い刃物で攻撃をする。

 ガガガガードナーは盾をもってその攻撃を受けきった。

 

遊馬LP:1600→1300

 

「これでバトルは終わり。なんとかガガガガードナーを守ったぜ」

 

「それはどうかな? 俺はブレード・バウンサーの効果を発動! このモンスターは手札を1枚捨てることでもう一度、相手モンスターに攻撃ができる」

 

「もう一回!?」

 

 まずい、遊馬君の手札は残り1枚に対してあの男性の手札は残り4枚。

 このままだと…。

 

「いけ、ブレード・バウンサー! ガガガガードナーを攻撃! ストレートスラッシュ!」

 

「俺は手札を1枚捨てガガガガードナーの効果を発動!」

 

 もう一度ブレード・バウンサーは攻撃をしてガガガガードナーはそれを受けきる。

 

「ぐああぁ!」

 

「遊馬!」

 

遊馬LP:1300→1000

 

 遊馬君は攻撃の余波にしりもちをつき、小鳥ちゃんが心配そうな声を上げた。

 私のフィールドには攻撃力2000以上のメガロアビスとリクルートのアビスリンデ、伏せカードはサポートできるようなカードじゃない。

 このデュエルでは味方を守れないんじゃ意味がない。

 なにもできないこの状況に苛立った。

 

「これで貴様の手札は0、このノリじゃガガガガードナーの効果は使えねぇ……あきらめるんだな! ブレード・バウンサーの効果を発動!」

 

 男性が手札を1枚捨てるとブレード・バウンサーに黄色のオーラがまといまたガガガガードナーに向かって走り出し、ジャンプするとブレード・バウンサーは腕を振り上げた。

 

「遊馬君! 墓地に何かない!?」

 

「墓地?」

 

 私の言葉に何かに気づいたようにデュエルディスクを見て、遊馬君は動き出した。

 

「墓地にあるタスケナイトの効果を発動! このカードが墓地にあり手札が0で相手のモンスターの攻撃を受けたとき、このカードを特殊召喚しさらにこのターンのバトルを終了させる!」

 

 地面に紫色の魔方陣が周りに描かれた穴が現われてその中からタスケナイトが飛び出した。

 

レベル4 タスケナイト 攻撃力:1700

 

 タスケナイトの右手が光りそのまま突き出すと波紋が広がってブレード・バウンサーの攻撃を止めた。

 

「なんだと!?」

 

「ふぅ、なんとか持ちこたえたぜ」

 

 私はホッと安堵していると遊馬君がこちらをみて親指を立てているのが見え、思わず笑みを浮かべた。

 

「チッ、しぶとい野郎だ! ターンエンド」

 

 次は遊馬君のターンだ。

 フィールドにはレベル4のモンスターが2体、これでエクシーズ召喚が出来るけど……。

 

「アストラル!?」

 

 突然叫びだした遊馬君はあたりを見回していたので、私は回線をつなげて問いかけた。

 

「遊馬君、どうしたの?」

 

「……アストラルがいねぇとNo.が使えねぇんだ」

 

 え、どういうこと?

 えっと、もともとはアストラルがNo.の所有者だから遊馬君の近くにいるときは使えるんだけど、いないときはアストラルがNo.を持っているわけだから使えないって事?

 

「……他のエクシーズモンスターは?」

 

 私の問いかけに遊馬君は首を振った。

 確かにこの世界だとエクシーズモンスターやカードは高額だから持ってない人もいるっていうのは分かっていた……けど。

 此処で影響が出てくるとは!

 私はお父さんとおじいちゃんがよくカードを拾ったり買ったりしていたからカードに困らなかったんだけどさ。

 

「俺のターン、ドロー! くっ……俺はタスケナイトで幻蝶の刺客モルフォを攻撃! ヘルプッシュ!」

 

 タスケナイトがつっぱりをして攻撃をするとモルフォが破壊されて女性のライフが削られる。

 

「うっ…」

 

女性LP:4000→3500

 

「けっ、たったの500ポイント? そんなノリじゃ、俺たちを倒せないぜ!」

 

 男性の言葉に遊馬君が首にぶら下げている金色のペンダントを握り締めたとき、ハッとしてエクストラデッキに目を向け1枚のカードを取り出していた。

 遊馬君はアストラルの名を叫びながらあたりを見回した後、カードを見て右腕を上げた。

 

「かっとビングだ! 俺!! 俺はレベル4のガガガガードナーとタスケナイトでオーバーレイ!」

 

 ガガガガードナーはオレンジ色の球体となりタスケナイトは黄色の球体となり地面に現われた穴の中に入っていく。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築、エクシーズ召喚! 現われろNo.39希望皇ホープ!」

 

 光が爆発して現われたのは白と黄色のプロテクターに身を包み硬い印象を受ける白い翼のようなパーツがあり、右肩に39と書かれたモンスターが現われる。

 あれが、遊馬君が持つNo.……。

 なんかいままで見てきたNo.とだいぶ違うような気がする。

 

ランク4 No.39希望皇ホープ 守備力:2000

 

「ば、馬鹿な! No.だと!? あの小僧がNo.を!?」

 

「No.39……!?」

 

 ホープが現われた瞬間、2人はNo.が現われたことにより目を見開いて驚きの声をあげていたが女性はすぐに冷静さを取り戻し、ホープをにらみ付ける。

 

「俺はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

「私のターン、ドロー! 私は月光蝶(ムーンリット・パピオン)を召喚!」

 

 青色に輝く蝶の羽に紫色の一つ目が中心にあるモンスターが現われる。

 

レベル4 月光蝶(ムーンリット・パピオン) 攻撃力:1200

 

「私はレベル4、幻蝶の刺客アゲハと月光蝶をオーバーレイ!」

 

 アゲハは紫色の球体となり月光蝶は黄色の球体となって地面にできた赤く輝いている穴の中に入っていく。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築、エクシーズ召喚! 現われろ、フォトン・バタフライ・アサシン!」

 

 頭から黒いアゲハ蝶の羽をはやし上半身はオレンジ色で後ろの裾だけが黒色で長い女性型のモンスターが現われる。

 

ランク4 フォトン・バタフライ・アサシン 攻撃力:2100

 

「フォトン!?」

 

 フォトンは確か天城が扱っていたカードと同じ、No.を知っていることといいこれでこの2人とハートランドそして天城は繋がっているということを確信した。

 

「このモンスターはカイトが使っていたモンスターと同じ!」

 

「お前、どうしてカイトを知っている?」

 

 女性は顔を険しくし遊馬くんをにらみつける。

 

「どうしてってデュエルをしたからに決まってるだろ! 勝負はつかなかったけどな!」

 

 勝負は付かなかったということは引き分けになったということだよね。

 引き分けはデュエルではなかなかないのに…。

 

「なに!? じゃあ、カイトのやつと引き分けたっていうのか!?」

 

 男性は驚きの声をあげた後、一瞬こちらを見て2人で話をし始めていた。

 こっちは話についていけなくて暇をしている。

 話が終わったらしく2人はこちらに視線を向けた。

 

「小僧に黒峰刹! お前らのNo.は回収させてもらう!」

 

「はじめるぞ、No.狩りを! フォトン・バタフライ・アサシンのモンスター効果を発動! オーバーレイ・ユニットを一つ使うことで守備表示モンスターを攻撃表示に変更し攻撃力を600ダウンさせる!」

 

 フォトン・バタフライ・アサシンの羽が羽ばたくと鱗粉が飛び交い、腕を交差して守備体勢に入っていたホープの腕が解かれて攻撃表示へと変わった。

 

ランク4 No.39希望皇ホープ 守備力:2000 → 攻撃力:2500→1900

 

「ホープが攻撃表示に!?」

 

「守りを固めたノリだろうが、俺たちには通用しねぇ!」

 

「さらに速攻魔法、蛮勇鱗粉(バーサーク・スケールス)を発動! モンスター1体の攻撃力をこのターンの終わりまで1000ポイントアップさせる!」

 

フォトン・バタフライ・アサシンの体が赤く輝くと表示されている攻撃力が変化する。

 

ランク4 フォトン・バタフライ・アサシン 攻撃力:2100→3100

 

「攻撃力3100!?」

 

 ホープは攻撃力が下がってるから、この攻撃が通ってしまうと私たちの負け。

 大丈夫かな……。

 

「これで攻撃力の差は1200。No.は破壊されないが、ダメージは受けて貰う。いけ、フォトン・バタフライ・アサシン! 希望皇ホープを攻撃だ! バタフライ・デスダンス!」

 

 フォトン・バタフライ・アサシンの体から9色のバタフライ・アサシンの体を象った光が現われそれがはじけると大量の蝶がホープに襲い掛かった。

 

「希望皇ホープのモンスター効果発動! オーバーレイ・ユニットを一つ使うことでモンスター1体の攻撃を無効にする! ムーンバリア!」

 

 ホープの背部についている翼が変形するとそれは盾となって攻撃を防いでいた。

 

「た、たすかったぜ……」

 

「私はこれでターンエンド。蛮勇鱗粉の効果を受けたモンスターはターン終了時に攻撃力が戻り、さらに1000ポイントダウンする」

 

ランク4 フォトン・バタフライ・アサシン 攻撃力:3100→1100

 

 赤く光っていた光が収まるとフォトン・バタフライ・アサシンの姿は元に戻り攻撃力が下がる。

 一気に1100まで落ちたか……。

 

「だが、これで希望皇ホープの効果は分かった。ゴーシュ、後は任せたぞ」

 

「俺の本気のノリを見せてやるぜ!」

 

 女性の言葉に男性は口元を吊り上げて笑っていた。

 こっちは途中で空気と化しているとはいえ、忘れると困るのはそっちなんだけどなぁ。

 

「ずいぶんと余裕だね。勝つ気満々って感じ……。だけど、そろそろ1人ぐらい退場してもらおうよ」

 

「余裕そうなのはお前も同じだろうが。しかも俺たちのどちらかを倒すだと? やれるもんならやってみろよ!」

 

「じゃあ、やってあげる」

 

 男性の挑発に笑みを浮かべて私はデッキに指を置いた。

 

「私のターン、ドロー。まずは伏せていたアビスコールを発動。このカードは墓地に水精鱗と名の付くモンスター3体を選択し守備表示で特殊召喚する。私が選択するのはアビスパイク、アビスタージ、アビスグンデ」

 

 私のフィールドに鎧を着た男性の人魚2人とオレンジ色の尾を持ち首に黒いマフラーをつけた女性の人魚が現われ、フィールドに5体のモンスターが並んだ。

 

レベル4 水精鱗-アビスパイク 守備力:800

レベル4 水精鱗-アビスタージ 守備力:1100

レベル3 水精鱗-アビスグンデ 守備力:800

 

「レベル4のアビスパイクとアビスタージでオーバーレイ、バハムート・シャークをエクシーズ召喚。そしてレベル3のアビスグンデとアビスリンデをオーバーレイ、エクシーズ召喚。現われろ、発条機雷(ぜんまいきらい)ゼンマイン」

 

 いろいろと台詞を省略し現われるのは四つの翼を持ったドラゴンのような海竜、バハムート・シャークと所々にゼンマイのデザインがされているボディに紫色のアームを持っている機械、発条機雷ゼンマインが現われる。

 

ランク4 バハムート・シャーク 攻撃力:2600

ランク3 発条機雷ゼンマイン 攻撃力:1500

 

「一気にモンスターエクシーズが2体だと!?」

 

「さらにバハムート・シャークの効果を発動。オーバーレイ・ユニットを1つ使い、エクストラデッキからランク3・水属性モンスターを特殊召喚する。ただし、この効果を使ったターン、バハムート・シャークは攻撃することができない。さて、現われろ水精鱗-アビストリーテ」

 

 バハムート・シャークに青いオーラが包み込み大きな咆哮をあげるとフィールドに穴が開きそこから光が漏れ出す、光が収まると紫色の髪をした女性の人魚があらわれた。

 すぐにアビストリーテは青色の光の玉となって再び現われた穴の中に吸い込まれる。

 

「オーバーレイ・ネットワークを再構築。エクシーズ召喚。現れろFA-ブラック・レイ・ランサー。ブラック・レイ・ランサーはオーバーレイ・ユニットの数×200ポイント攻撃力をあげる。ブラック・レイ・ランサーのオーバーレイ・ユニットは1つ。よって200ポイント攻撃力が上がる」

 

ランク4 FA-ブラック・レイ・ランサー 攻撃力:2100→2300

 

「まさか、1ターンで3体ものモンスターエクシーズを召喚するとは!」

 

「すごい刹さん!」

 

「これなら倒せるウラ!」

 

 女性が驚きの声をあげている間に私は右手を女性に向かって突き出しモンスターに指示を出す。

 

「まずはFA-ブラック・レイ・ランサーでフォトン・バタフライ・アサシンを攻撃!」

 

 ブラック・レイ・ランサーから黒く光る槍が腕から現れてそれを投擲しフォトン・バタフライ・アサシンを攻撃するとフォトン・バタフライ・アサシンを破壊した。

 

「あああぁ!!」

 

「ドロワ!」

 

女性LP:3500→2300

 

 女性は攻撃によって吹き飛ばされ、私は起きるのを待ってからブラック・レイ・ランサーの効果を発動させる。

 

「FA-ブラック・レイ・ランサーが相手モンスターを破壊した場合、相手フィールド上の魔法・罠カードを1枚選択して破壊できる。私はその伏せカードを破壊」

 

 男性のほうは伏せカードが1枚もないので女性の場に1枚だけ伏せられているカードがブラック・レイ・ランサーの効果により破壊される。

 

「さて、これで終わりだよ。メガロアビスでダイレクトアタック!」

 

 メガロアビスが走っている最中に持っている剣を振り上げて女性へとたどり着くとその剣を振り下ろした。

 

「きゃあああぁ!!」

 

「くっ、ドロワぁ!!」

 

女性LP:2300→0

 

 女性の中心から爆発が起こり女性はメガロアビスの攻撃によって後方へと吹き飛ばされた。

 これで1人は退場っと……あとは男の人を倒すだけ。

 

「遊馬君、あとは任せたよ。ターンエンド」

 

 ポカーンといま起きていた出来事を見つめていた遊馬君に声をかけると我に返って親指を立てておう! と元気良く返事をする。

 

「チッ、良くもやりやがったな!俺のターン、ドロー! 俺はレベル4のブレード・バウンサーをリリースしレベル6のファントム・バウンサーをアドバンス召喚!」

 

 ブレード・バウンサーが粒子となって消えるとそこから全身鎧で包まれた豹の獣人型モンスターが現れる。

 

レベル6 ファントム・バウンサー 攻撃力:2400

 

「レベル6のモンスターが2体!?」

 

「俺はレベル6のハンマーラッシュ・バウンサーとファントム・バウンサーでオーバーレイ!」

 

 ハンマーラッシュ・バウンサーがオレンジ色の球体となり、ファントム・バウンサーが紫色の球体となると地面に出来た穴の中に入り込む。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築、エクシーズ召喚!現われろフォトン・ストリーク・バウンサー!」

 

 赤い鎧を身に包み、鎧が付いていない体の部分が青白く発光している獣人型のモンスターが現われる。

 

ランク6 フォトン・ストリーク・バウンサー 攻撃力:2700

 

「攻撃力2700!?」

 

 ホープの攻撃力は効果によって1900のまま。

 攻撃されてもライフは200ポイント残るけど……。

 

「さぁ、これで終わりだ!フォトン・ストリーク・バウンサーで希望王ホープに攻撃! 食らえ、ストリークストライク!」

 

「希望皇ホープのモンスター効果を発動! ムーンバリア!!」

 

 フォトン・ストリーク・バウンサーが走り出すとホープは遊馬君の指示に従いオーバーレイ・ユニットを一つ消費させ翼を盾にして自身を守った。

 

「かかったな!」

 

「なに!?」

 

「フォトン・ストリーク・バウンサーの効果を発動! オーバーレイ・ユニットを一つ使うことで、相手のモンスターエクシーズの効果を無効にし1000ポイントのダメージを与える!」

 

 まさかの無効にする効果とバーンダメージ……これはまずい。

 フォトン・ストリーク・バウンサーは周りに漂っていたオーバーレイ・ユニットを口の中に含むと跳躍をした。

 

「それじゃあ、ホープの効果を使わせるために!」

 

「800ポイントのダメージをかわしたつもりが、逆に1000ポイントのダメージだ! これで終わりだぜ!!」

 

 遊馬君のライフはちょうど1000ポイント…これは潰す相手を間違えてしまった私が悪い。

 たとえライフを削りきれなかったとしてもモンスターを減らすだけでも良かったのに……。

 

「いけ、フォトン・ストリーク・バウンサー! ストリークブレス!」

 

 フォトン・ストリーク・バウンサーの口からブレスが吐き出されホープが耐え切れずに吹き飛ばされる。

 

「罠発動、ダメージ・ダイエット! このターン自分が受けるダメージを半分にする!」

 

 発動されたカードから黄色の光線が飛び出すと遊馬君に向かっていたブレスに当たり、ブレスは半分の大きさに変化した。

 

「ぐあああぁ!!」

 

遊馬LP:1000→500

 

 遊馬君は吹き飛ばされて地面を転がりながら倒れこむ。

 

「遊馬君!」

 

「まだだ! ホープの効果が無効になったことで、バトルは続く! やれ、フォトン・ストリーク・バウンサー!!」

 

 フォトン・ストリーク・バウンサーは再び腕を振り上げてホープへと襲い掛かる。

 

「これでNo.のオリジナルと黒峰刹のNo.はもらったぜ!!」

 

「罠発動! ハーフ・アンブレイク! この効果を受けたモンスターはこのターンバトルでは破壊されず、プレイヤーへのダメージを半分にする! ぐあああぁ!!」

 

 シャボン玉がホープを包み込むとそのシャボン玉がフォトン・ストリーク・バウンサーの攻撃を受け止めてホープを守っていた。

 ダメージによる衝撃に遊馬君は吹き飛ばされて地面へと叩きつけられる。

 

「遊馬君! 大丈夫!?」

 

 私が声を出して問いかけると遊馬君はふらつきながらも立ち上がろうとしていた。

 

「チッ、防ぎやがったか。だが、これでお前の伏せカードもホープのオーバーレイ・ユニットもなくなった」

 

「……遊馬君ターンが終われば私のターンになるんだけど?」

 

 女性が倒されたことによりターンの順番が遊馬君、私、男性となっているためあの人は2連続で攻撃を防がなければならないということ。

 

「お前のモンスターの攻撃力じゃ俺のフォトン・ストリーク・バウンサーを倒すのは無理な話だ。俺はこれでターンエンド」

 

 まぁ、確かにいまフィールドにいるモンスターだと無理なんだけど、ね?

 

『たいした自信だな、あの男』

 

 突然ブラック・ミストの声が聞こえ驚きで体が震える。

 

「(ブラック・ミスト……どこ行っていたの?)」

 

『……アストラルと話をしていた』

 

「(……それだけ?)」

 

 目を細めて問いかけるとブラック・ミストはそれだけだとあっさりと答えた。

 怪しいけど、ここで追求をすると面倒なことになりそうだしデュエルを続けよう。

 そう思ってフィールドに目を向けると遊馬君が突然叫びだした。

 

「はぁ!? 別にお前のことなんか待っちゃいねぇんだよ!」

 

 遊馬君はまるでツンデレキャラのように顔をそらしてそう言い放ちさらには目の前に向かって文句を呟いていた。

 

「俺のターン、ドロー! 俺はカードカーDを召喚!」

 

 青くてスポーツカーのような形をしているが厚さは薄いモンスターが現われる。

 

レベル2 カードカーD 攻撃力:800

 

「このカードを召喚したターン、このカードをリリースすることでデッキからカードを2枚ドローすることができる!」

 

 カードカーDはまっすぐ走っていたが方向転換して遊馬君へと向かっていくと光となり遊馬君のデッキに当たった。

 

「来てくれ、逆転のカード!」

 

 遊馬君がカードを引いて見てみるとはじめは表情を歪ませたが隣に視線をやると表情が明るくなる。

 

「俺は墓地にあるオーバーレイ・イーターの効果を発動! 墓地にあるこのカードをゲームから除外することで相手のモンスターエクシーズのオーバーレイ・ユニットを一つ吸収し自分のモンスターエクシーズのオーバーレイ・ユニットとする!」

 

 地面から紫色の魔方陣が周りに描かれた穴が開くとそこから赤と黒の斑点模様のトカゲが現われ、舌をフォトン・ストリーク・バウンサーに伸ばすとオーバーレイ・ユニットを奪い取りホープへと移した。

 

「希望皇ホープでフォトン・ストリーク・バウンサーを攻撃!」

 

「攻撃力1900で攻撃だと!?」

 

「希望皇ホープのモンスター効果を発動! モンスター1体の攻撃を無効にする!」

 

 ホープが投げた剣はオーバーレイ・ユニットを使ったことにより途中で消え去った。

 あの効果は自分にも使えるんだ……。

 

「自分で攻撃を無効だと!?」

 

「手札から速攻魔法、ダブル・アップ・チャンスを発動! モンスターの攻撃が無効になったとき、そのモンスターはもう一度攻撃ができそのときの攻撃力は倍となる!」

 

 消え去った剣がホープの下に戻ってくるとホープは腰にかけてあるもう一つの剣を手に取った。

 

ランク4 No.39希望皇ホープ 攻撃力:1900→3800

 

「さらに手札から速攻魔法、バイテンションを発動! モンスターが二度目の攻撃を行ったとき、さらに攻撃力は倍になる!」

 

 ホープの体が赤く輝き、持っている剣と背中の翼がオレンジ色に染まると刀身が伸びてその攻撃力の高さを物語っていた。

 

ランク4 No.39希望皇ホープ 攻撃力:3800→7600

 

「なに!?」

 

 攻撃力が7600……これはこの世界だとなかなか見られない攻撃力だ。

 

「ホープ剣・マーズ・スラッシュ!!」

 

 ホープはフォトン・ストリーク・バウンサーに向かって飛んでいくと2本の剣で切り伏せ、フォトン・ストリーク・バウンサーを破壊した。

 

「ぐ、ぐおおおおぉ!!」

 

男性LP:4000→0

 

 男性は吹き飛ばされると地面へと叩きつけられ、それと同時にデュエルが終わる合図が鳴り響く。

 

「やったぁウラぁ!!」

 

「遊馬が勝ったぁ!!」

 

 デュエルが終わったと同時に小鳥ちゃんと少年が遊馬君に駆け寄り喜んでいた。

 はぁ……終始ひやひやしっぱなしだった。

 

 こんなデュエルもうしたくないかも……心臓に悪いし。

 Dゲイザーをはずしてため息を吐き、私は遊馬君へと近づいた。

 

「遊馬君、お疲れ様。ごめんね、サポートとか出来なくて」

 

「刹……」

 

 ボロボロになっている遊馬君の姿を見て私が謝ると遊馬君はきょとんとした後、ニッと笑みを浮かべた。

 

「気にすんなよ! それに刹は1ターンで女の人を倒したじゃねぇか!」

 

「遊馬君ほどじゃないよ。攻撃力7600とかほとんど見ないし」

 

 私の言葉に遊馬君はいやぁと照れた顔で後頭部を掻くが、小鳥ちゃんからアストラルのおかげでしょと呆れながら口を挟んでいた。

 もう少しバトルロイヤルルールでのデュエルを研究しようかな……いっそのことそれ専用にデッキを作ろうか。

 

「おい、小僧!」

 

 考え込んでいるといつの間にか起きた男性と女性がこちらに来ていた。

 

「約束どおりイカサマのことは忘れてやる。だが、覚えていろ。つぎは必ずお前らを倒す!! No.のオリジナルと一緒にな!」

 

 男性は握りこぶしを作り、そう言い放った。

 オリジナル? No.にはオリジナルという存在がいるんだ……。

 

「おもしれぇ! いつでも相手になってやらぁ!」

 

「気に入ったぜ、お前のそのノリ」

 

 男性は笑みを浮かべるとジャンプをして2人は目の前から消えた。

 

「……ねぇ、遊馬君。アストラルはそこにいる?」

 

 2人がいなくなってから少したって問いかけてみると遊馬君は不思議そうに首をかしげた後にここら辺にいると指差した。

 私はアストラルがいるであろう方向に目を向ける。

 

「アストラル。ブラック・ミストと何を話したの?」

 

『おい……』

 

 ブラック・ミストの不機嫌そうな声を無視して遊馬君にアストラルがなんていっているのか伝えてもらった。

 

「ただ、No.のこととかで話してたとか……でも、なんでNo.96が?」

 

「さぁ……ブラック・ミストがなんでそんな行動を取ったのかは知らない」

 

 アストラルに何もないようでよかった。

 ……すこし変わったブラック・ミストの態度を見ていて気が緩んでいたみたい、気をつけないと。

 




文字数が17000越え・・・だと?
アニメの2話分を詰め込んだ結果がこれだよ!

あとアニメのデュエルをそのままやりたい+主人公を混ぜたいがためにこんな形になってしまいました。
ひねりがなくてすみません…許してください!

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