遊戯王の世界に転生したがろくな事が起きない   作:アオっぽい

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第十話 ハートピースを集めるとろくな事がおきない

人気のない路地裏で私はデュエルディスクを構え、対戦相手である男性とフィールドを眺める。

私の場には大天使クリスティアと豊穣のアルテミスが存在し、伏せカードは1枚。

相手の場にはカードがなく、さらには手札も0だ。

私は右手で相手を指差してクリスティアに指示を出した。

 

「クリスティアでダイレクトアタック」

 

「ぐわああぁ!!」

 

クリスティアは頭上に光を集め、それが人一人包み込むぐらいの大きさになると腕を振り下ろし光は相手へと流れ落ちる。

相手は吹き飛ばされてそのまま地面へと倒れた。

ライフは0となりデュエルの終了を知らせる合図が鳴り響き、私は現在デュエルをした相手に近づき手を差し出した。

 

「ハートピースとNo.はもらってくよ」

 

私がハートピースを取ると同時にブラック・ミストが黒い靄を出して相手の体に入り込みNo.を回収するとその手に収まった。

今、回収したNo.はNo.91サンダー・スパーク・ドラゴンである。

といってもクリスティアの効果でロックしていたので出番はなかったが。

 

「んー……そろそろ運営委員にハートピースを渡しに行こうかな」

 

 腕を頭上に伸ばしながらこの場から歩き出す。

 あれから遊馬君と一緒に病院にいき結たちの様子を見に行ったが、怪我のほうはなかった。しかし結はⅣの行動に心がひどく傷ついていた。

 今思い出すだけでもイラついてくる。

 そして現在は遊馬君とは別れてNo.狩りにいそしんでいたりする。

 若干の八つ当たりが含まれている気もするが気にすることはない。

 

「(ブラック・ミスト、近くにNo.の気配はある?)」

 

『此処から少し離れてるが、No.を使用してるやつがいるぜ』

 

 使用している……ということはそのNo.所持者は現在デュエルをしているということか。

 これは早めに向かったほうがよさそうかも。

 

「(走るから案内お願い)」

 

『わかったよ』

 

 私は走り出してブラック・ミストの指示に従い路地裏を駆け抜けた。

 No.所持者は路地裏にいるのか、表通りのほうに向かうことはなくそのまま走っていると誰かがデュエルをしている声が聞こえてきた。

 

『そこを左に行けばNo.を持ってるやつがいる』

 

「了解」

 

 Dゲイザーをつけて曲がり角を左に行く前に様子を見るために顔だけだそうとした時だった。

 

「きゃああぁ!!」

 

 女性の悲鳴が聞こえたとともにデュエルが終わる合図が鳴り響く。

 相手のNo.を見ることは出来なかったか……。

 少し残念に思いながら壁に背中をつけて相手にばれないように様子を伺った。

 

「よーし、これでお前は俺のものだな」

 

「い、いや……やめて、来ないでよ!」

 

 茶髪のチャラそうな男がポケットに手を突っ込んで緑色の髪を三つ網に縛っている女性に近づいていた。

 男は見ているだけで嫌悪感を抱きそうな笑みを浮かべており、女性は背を向けていて見えないがおそらく男に対して恐れを抱き座ったままの状態で男から距離を置こうとしている。

 これは放っておけないか。

 私は角から出て2人に近づいていった。

 足音を立てて近づいていったのですぐに男は私に気づく。

 

「ん?…お、女の子じゃないか」

 

 うざったそうにこちらを見たあと男はニヤリと笑い、座り込んでいる女性が男に釣られてこちらを見る。

 

「こっち来ちゃだめ!」

 

 女性は私を心配してか焦った様子でそういうが、こっちも事情があるので逃げるわけにも行かない。

 

「嫌がっている女性に迫るなんて紳士的じゃないんじゃない?」

 

「お嬢さん、男はな少しぐらい強引に迫ったほうが女性の心を掴めるもんなんだよ」

 

 なわけないじゃん。

 腕を組んで男の言い分に冷めた目で見やり心の中で突っ込みを入れる。

 

「その証拠に、ほら!」

 

「きゃ! ちょっと!?」

 

 男は女性の腕を掴み無理やり立たせると左手を女性の腰に回し、至近距離で見詰め合う形となった。

 

「ちょっと何やって……」

 

 止めようと一歩足を踏み出したときだった。

 男から黒いオーラがまとい始め、男の顔を見ていた女性の目の光がなくなっていく。

 すると先ほどまで嫌がっていた筈の女性は男の首に腕を回した。

 

「あなた、良く見ると素敵ね。どうして私はそれに気づかなかったのかしら?」

 

「ふっ、そういうことは良くあるものさ。君が俺の魅力に気づけてよかったよ」

 

 2人の言葉に鳥肌が立つのを感じ、嫌悪感を抱いた。

 

「(ブラック・ミスト、これは……)」

 

『No.は相手に取り付くだけじゃなく、その所持者に力を与えることもある。今回はあいつに力を与えているようだな』

 

 とすると、あの男はNo.の力を使って女の人を洗脳したってこと?

 ……最低な力だ。

 

「ねぇ、まーくん。その女ばかりじゃなくて私にもかまってよー」

 

「あたしにもー」

 

 男の後ろから2人の女性の声が聞こえたと思ったら茶髪でショートカットにしている女性と腰まである金髪でウェーブが入った女性が男に抱きついていた。

 

「ふはは! 分かってる。3人まとめてかわいがってやるって!」

 

 男の発言に女性たちはきゃーとうれしそうな悲鳴を上げていちゃいちゃとしていた。

 なに、これ?

 自分が目の前の4人組を汚物を見る目つきで見ているのを自覚しているが、やめることは出来なかった。

 

「最低……」

 

「ハーレムはね、男の夢なのさ……お嬢さん」

 

 私の呟きが聞こえたのか男は前髪を手でかき上げどや顔でそうのたまった。

 

『お、おい……大丈夫か?』

 

 ブラック・ミストの声が聞こえて私はなんとか平静を保てることが出来た。

 まさか、少しだけでもブラック・ミストに癒される日がこようとは……今度、プリンでも作ってやろう。

 

「それじゃあ、お嬢さんにも俺のハーレムに加わってもらおうかな。一人ぐらいロリ枠がほしかったし」

 

「冗談じゃない」

 

 吐き捨てるようにそういうと男はどS系ロリ良いね! とか理解したくない言葉を呟いているのが聞こえた。

 私はDゲイザーとデュエルディスクをセットしている間に女性たちは離れたところで観戦し男もDゲイザーとデュエルディスクをセットする。

 

「お、そのデュエルディスク特注品?格好いいねー」

 

 男の言葉を無視してARビジョンを展開させるとつれないねぇと肩をすくめている。

 こんな男と話すだけ無駄だし。はやく終わらせたい。

 ARビジョンリンク完了と知らせる音を聞き、デッキからカードを5枚引く。

 

「「デュエル!」」

 

「先攻はもらうよ。私のターン、ドロー。永続魔法、神の居城-ヴァルハラを発動し効果を使用する。自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、手札から天使族モンスター1体を特殊召喚することが出来る。私は手札から豊穣のアルテミスを特殊召喚。さらにもう1体のアルテミスを召喚する」

 

 頭に大きな天使の羽を生やし紫色のマントをつけたモンスターが現われる。

 

レベル4 豊穣のアルテミス 守備力:1700

レベル4 豊穣のアルテミス 攻撃力:1600

 

「レベル4のモンスターが2体か……」

 

「カードを2枚伏せてターンエンド」

 

「ありゃ?」

 

 相手は私がエクシーズ召喚をしてくると思っていたみたいで、私がカードを伏せてエンド宣言をすると首をかしげていた。

 

「ランク4のモンスターエクシーズがいないのかな? 俺のターン、ドロー! 手札からトレード・インを発動! 手札のレベル8モンスターを墓地に捨て、デッキからカードを2枚ドローする。俺は堕天使ゼラートを捨て2枚ドロー! さらに手札からレベル5以上の闇属性モンスター、堕天使スペルビアを捨ててダーク・グレファーを特殊召喚!」

 

 地面から光があふれて出てきたのは白髪で黒色の肌を持った黒い戦士が現われる。

 

レベル4 ダーク・グレファー 攻撃力:1700

 

「そして終末の騎士を召喚! 効果を発動。このカードが召喚に成功した時デッキから闇属性モンスターを墓地に送る」

 

 仮面をつけてぼろぼろの赤いマフラーを首に巻いている騎士が現れた。

 

レベル4 終末の騎士 攻撃力:1400

 

「いくぜ! レベル4のダーク・グレファーと終末の騎士をオーバーレイ!」

 

 2体のモンスターは紫色の球体となり空中へと舞い上がると地面に現われた穴の中に入っていく。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築! エクシーズ召喚!!現われろ、交響魔人マエストローク!!」

 

 マーチバンドで仮装するような黒をメインとした服に右手にレイピアを持った男性の人型モンスターが現れる。

 

ランク4 交響魔人マエストローク 攻撃力:1800 ORU:2

 

「いけ! マエストロークで攻撃表示の豊穣のアルテミスを攻撃だ!」

 

「リバースカード、オープン。攻撃の無力化を発動。攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了させる」

 

 マエストロークがレイピアでアルテミスを攻撃しようと剣を突き刺す前に青と赤色の穴が現われてマエストロークの攻撃を吸収し無効化にした。

 

「そしてカウンター罠が発動されたことにより豊穣のアルテミスの効果を発動。カウンター罠が発動されるたびにデッキからカードを1枚ドローする。アルテミスは私のフィールドに2体、よってカードを2枚ドローする」

 

 私はカードを2枚ドローし手札を見る。

 相手がマエストロークの効果を使用しなくて良かった。

 ただでさえパーミッションは手札消費が多いのにドローソースを潰されたら困る。

 

「そんな効果があったのか……失敗したぜ。俺はカードを1枚伏せてターンエンド!」

 

「私のターン、ドロー。手札から天空の使者ゼラディアスの効果を発動。このカードを墓地に捨ててデッキから天空の聖域を手札に加える。そして天空の聖域を発動」

 

「おっと、そのフィールド魔法は厄介だからな。破壊させてもらう! 速攻魔法、サイクロンを発動!天空の聖域を破壊させてもらう」

 

 天空の聖域が景色に反映される前に竜巻が周りに起こるとパリンという音と共にガラスが砕ける演出がでた。

 

「……アルテミスを守備表示に変更しモンスターをセット、カードを1枚セットし、ターンエンド」

 

「消極的だねー。そんなんじゃ、俺に勝てないよ?ドロー!」

 

 相手がドローしたその瞬間、ニヤリと口元を吊り上げて笑った。

 

「墓地に闇属性モンスターが3体のみの場合、手札からダーク・アームド・ドラゴンをとくしゅ」

 

「その特殊召喚は全力で拒否する! リバースカードオープン、神の宣告を発動。ライフを半分払い、魔法・罠カードの発動、モンスターの召喚・反転召喚・特殊召喚のどれか一つを無効にし破壊する」

 

LP:4000→2000

 

 ダーク・アームド・ドラゴンがフィールドに出てきたが神の宣告の効果で一瞬にして消え去ってしまった。

 相手は闇属性デッキだと確定していいかな……問題はNo.のほうか。

 

「カウンター罠が発動されたことにより、アルテミスの効果が発動。カードを2枚ドローする」

 

「くっ、ダーク・アームド・ドラゴンがやられるとは! だけど、お嬢さんのライフはあと2000!押し切ってやる! 手札から闇の誘惑を発動しカードを2枚ドローして手札から闇属性モンスター1体を除外する。そして手札から死者蘇生を発動。墓地にいる堕天使スペルビアを特殊召喚!」

 

 黒い壷みたいなものに顔と腕がつき下半身が傘のようなもので出来ており、赤い羽根を生やしたモンスターが現われる。

 

レベル8 堕天使スペルビア 攻撃力:2900

 

「スペルビアの効果を発動! このカードが墓地から特殊召喚に成功した時、自分の墓地にいる天使族モンスターを1体特殊召喚する! 俺は堕天使ゼラートを特殊召喚!!」

 

 二本の角が付いた赤い兜をかぶり赤いマントのような、しかし悪魔を彷彿させる羽があり上半身は裸で下半身にはぼろぼろの布が腰についている。

 左手には歪な形をした剣を携えてゼラートがフィールドに舞い降りた。

 

レベル8 堕天使ゼラート 攻撃力:2800

 

「ゼラートの効果を発動! 手札から闇属性モンスター1体を墓地に送り、相手フィールド上に存在するモンスターをすべて破壊する!!」

 

 ゼラートが剣を構えると剣に黒いオーラがまとい始め、ゼラートがそれを振るうとオーラは刃となって私のフィールドにいるモンスターに襲い掛かる。

 破壊される前に伏せられていたモンスターがリバースされて現われたのは茶色い毛玉にくりくりとした目、小さな手足に背中から羽根が生えたモンスターが出てくる。

 

「くっ……破壊されたハネクリボーの効果を発動。フィールド上に存在するこのカードが破壊されたとき、このターン受ける戦闘ダメージは0となる」

 

「このターンで終わらせようと思ったんだけどな……。レベル8の闇属性モンスター、堕天使スペルビアと堕天使ゼラートをオーバーレイ!!」

 

 2体のモンスターは紫色の球体となり地面に現われた穴の中に入る。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築、エクシーズ召喚! 死してなお昂る魂よ、その最大の力を持って敵を叩き潰せ!」

 

 光が爆発を起こし、地面から出てきたのはカーキ色の布に一つにまとまり釘がいくつも突き刺さっているものだった。

 しかし布は広がり回転し始めると布の中から筋肉質な腕と足が生え、布はいつの間にか現われた頭に巻きついた。

 頭は布で覆われ顔は見ることが出来ず、その布に22という数値が描かれていた。

 上半身は裸で腹から下半身にかけて体にぴったりな服を着ており腰に白いマントをつけた男性型のモンスターが現われた。

 

「現われろ、No.22不乱健!!」

 

ランク8 No.22不乱健 攻撃力:4500 ORU:2

 

『攻撃力が4500だと!?』

 

 いままで見たNo.中で最高の攻撃力をもつモンスターにブラック・ミストは驚きの声を上げた。

 

「(落ち着いてブラック・ミスト。4500ぐらいたいしたことないでしょ)」

 

『なんでお前はそんなに冷静なんだ……。まぁ、お前のデッキとかを見れば分かるがな』

 

 前世では1万越えとか普通にできたからなぁ。

 それにデッキによってはLP8000を1ターンで消し炭にできるモンスター達とかいたし。

 

「俺はカードを1枚伏せてターンエンド」

 

「私のターン、ドロー。モンスターをセット、カードを1枚伏せてターンエンド」

 

「もう抗う術がないのかな? 俺のターン、ドロー! 不乱健で伏せモンスターに攻撃! 不乱拳!!」

 

 不乱健はその自慢の腕を振り上げると私のフィールドあるカードがひっくり返ってモンスターが姿を現わす。

 しましまの緑とオレンジの輪に羽が生えたモンスターが不乱健の拳によって叩き潰されて爆発が起こる。

 

「コーリング・ノヴァの効果を発動。攻撃力1500以下の天使族・光属性モンスター1体をデッキから特殊召喚する。私はオネストを特殊召喚」

 

 セミロングのウェーブが入った茶髪で背中に大きな白い翼を生やした男性型のモンスターがしゃがんだ状態で現われる

 

レベル4 オネスト 守備力:1900

 

「ゲッ、オネスト! ぐぅ……ターンエンド」

 

 オネストを見た瞬間男はいやそうな顔をしてエンド宣言をする。

 

「私のターン、ドロー。地割れを発動。相手フィールド上にいる攻撃力が一番低いモンスターを破壊する」

 

「マエストロークの効果を発動。オーバーレイ・ユニットを一つ使い、破壊を免れる!」

 

 マエストロークがたっている場所から地面が割れるが、マエストロークはオーバーレイ・ユニットを使うことでそれを回避した。

 

ランク4 交響魔人マエストローク 攻撃力:1800 ORU:2→1

 

「オネストの効果を発動。表側表示でいるこのカードを手札に戻す」

 

「不乱健の効果を発動!! オーバーレイ・ユニットを一つ使うことで1ターンに一度、手札を1枚捨てることで相手フィールド上にあるカードの効果を無効にする!!」

 

 カードを無効化にする効果だったとは……攻撃力が4500なのに優秀な効果をもってる。

 

「だけど残念。リバースカードオープン、天罰を発動。手札を1枚墓地に捨て、そのモンスターの効果を無効にし破壊する」

 

「残念だったのはそっちだ! チェーンで魔宮の賄賂を発動! 相手の魔法・罠の発動を無効にし破壊する!」

 

「チェーンで盗賊の七つ道具を発動。ライフを1000払い、その罠カードの発動を無効にする」

 

「な、なにぃ!!」

 

LP:2000→1000

 

 チェーン処理が開始され、最終的には天罰のカードから空に向かって光が放たれ雲が割れると、そこから光線が不乱健に降り注ぎ、大きな音と共に不乱健は破壊された。

 

「そして、相手のカードをカウンター罠で無効にした場合、手札から冥王竜ヴァンダルギオンを特殊召喚する」

 

 私の後ろ黒い大きな穴が現われるそのモンスターの腕が出てくるとそこから電流が走り、二本足の黒い体色に青色の装飾がついたドラゴンが飛び出してきた。

 

レベル8 冥王竜ヴァンダルギオン 攻撃力:2800

 

「ヴァンダルギオンがこの方法で特殊召喚に成功した時、無効にしたカードの種類によって効果を発動する。無効にしたのはモンスター効果、よって自分の墓地からモンスターを特殊召喚する。私は墓地から大天使クリスティアを特殊召喚」

 

 地面から紫色の魔方陣が周りに描かれた穴が現われそこから赤い翼で自分を覆うように折りたたみくるくると回転しながら空中へ踊り出ると、翼を勢い良く広げてポーズを決め白を基調とした鎧に赤色の翼を持った男性型のモンスターが現われた。

 

レベル8 大天使クリスティア 攻撃力:2800

 

「大天使クリスティアでマエストロークを攻撃」

 

「ぐぐぐ、マエストロークの効果を発動して破壊を免れる!」

 

 クリスティアは頭上に光を集め、それが人一人包み込むぐらいの大きさになると腕を振り下ろし光はマエストロークへと流れ落ちる。

 

「ぐうぅ……」

 

LP:4000→3000

 

「ヴァンダルギオンでマエストロークを攻撃」

 

ヴァンダルギオンは右手に黒いオーラをまとわせてマエストロークを殴り、破壊した。

 

「う……」

 

LP:3000→2000

 

「ターンエンド」

 

「俺のターン、ドロー!! よし!! 墓地に闇属性モンスターが5体以上いて自分フィールド上にモンスターがいないとき手札からダーク・クリエイターを特殊召喚!!」

 

 パチンとモンスターをデュエルディスクにセットする独特の音が鳴り響くが男のフィールドにはモンスターがいくら待っても特殊召喚されなかった。

 

「え、あれ?」

 

 困惑している男に私は目を細め、口元に手をやり笑みをこぼした。

 

「言い忘れてごめんね? 大天使クリスティアがフィールドに存在している限り、お互いはモンスターを特殊召喚できないんだ」

 

「は、はああぁ!?」

 

 クリスティアの効果を知り、男は叫び声を上げると膝と手を地面につけて落ち込んでいた。

 男の手札は現在ダーク・クリエイターのみ、明らかに詰んでいる。

 

「ターン、エンド……」

 

「大天使クリスティアでダイレクトアタック」

 

 クリスティアは両手を上げて光の玉を生み出し、力をためるようにどんどん大きくしていく。

 光の玉の大きさが今度はその辺を焼け野原にできそうなくらいに大きくなると腕を振り下ろして光の玉を相手に向かって投げつける。

 

「うわあああぁ!!」

 

LP:2000→0

 

 男は吹き飛ばされて地面にたたきつけられるが、勢いが強すぎたのか何回かバウンドをして倒れる。

 デュエルが終わる合図が響き渡り、フィールドにいたモンスターは消え去り周りが0から9の数値で覆いつくすと元の景色へと戻った。

 Dゲイザーをはずして男の下に歩もうとした時、デュエルを観戦していた女性たちが地面へと倒れた。

 

「え、大丈夫ですか!?」

 

 慌てて駆け寄ってみると、女性たちは気を失っただけのようで特に異常は見られずすぐに目を覚ました。

 

「あれ? 此処は……」

 

「なんであたしこんなところに?」

 

 女性たちは先ほどまでの記憶がないのかきょろきょろとあたりを見渡している。

 

「確か男とデュエルしてそれから……」

 

 緑髪の女性がそう呟くと他の女性も思い出したようにそうそうと頷いていると男のうめき声が聞こえた。

 女性たちが音に釣られて目を向けると一気に雰囲気が変わる。

 

「なぜかしら、アイツを見ていると無性に腹立たしくなってくるわ」

 

「奇遇ね、私も」

 

「なにか無理やりアイツのいいようにされていた気がして仕方ないわ」

 

 3人の女性は私に目を向けることもなくデュエルディスクを構えると男の下に歩み寄っていく。

 

「うぅ、俺はいったい……」

 

「ねぇ……」

 

 茶髪でショートカットの女性の呼びかけに男は顔を上げ、美人の女性に話しかけられたことに表情を明るくするが女性たちの雰囲気に顔を青くする。

 

「え、ちょっと……」

 

「バトルロイヤルルールで私たちとデュエルをしましょうよ」

 

 私は男を哀れみの目で見つめているとブラック・ミストに話しかけられた。

 

『ハートピースとNo.を回収しておいたぜ』

 

「(わかった。それじゃ、此処を離れようか……)」

 

 これから起こる出来事を見ないように私は立ち上がりこの場から歩き出して表通りに向かった。

 途中で男の悲鳴が響き渡ったような気がするが気にしない。

 

「(女性を怒らせると怖いね……)」

 

『……そうだな』

 

 私の呟きにブラック・ミストはたっぷり間を空けて答える。

 さて、それはどういう意味なのかじっくり問いかけたいところだけど先ほどのNo.がどういった効果を持っているのか気になったのでエクストラデッキから取り出す。

 No.共通の戦闘破壊耐性にカードを無効化にするのと。

 

「女性モンスターに攻撃できない?」

 

 どういう意味なんだろうか……なんで女性モンスター?

 こんな効果をもつモンスターなんて初めてだったので非常に驚いている。

 とりあえず、女性モンスターを扱う人とはこのカードは使わないほうが良いってことだよね……気をつけよう。

 さて、そろそろハートピースを持っていこうか。

 あまったハートピースはどうすればいいんだろう……。

 このときはただなんとなく、ポケットに入れておいたハートピースを手にとって見てみようと思っただけだった。

 

「ん?」

 

 余っている5つのハートピースの一つに違和感を覚えてそれを取り出してみた。

 なんか、べとべとしているような気がする……。

 眉間に皺を寄せて眺めてみるとなぜかこのハートピースから良くあるアメから漂ってくる匂いがしているのに気づいた。

 

「まさか……」

 

 意を決して舐めてみると案の定、イチゴの味がした。

 空いている手でハートピースが入っているポケットに手を突っ込んでみると中が若干べたついている。

 

「はぁー……」

 

 深いため息を吐いてブラック・ミストにあげてみたが、直にポケットに入っていたアメはだめだったのかそこらへんに捨てられた。

 本来なら食べ物を粗末にするなといいたいところだが、こんなくだらないことを思いついた人間に呆れ果てて言う気も起きなかった。

 まずは公園によって手を洗ってからハートピースを渡しにいこう。

 


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