遊戯王の世界に転生したがろくな事が起きない   作:アオっぽい

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完結するかは定かではありませんが書けるところまで書こうと思っています。

拙い文章ですが、皆さんに楽しんでいただければ幸いです。

3月1日
追記:とあるカードの発動に間違いがあったのでデュエルの内容が途中から少し変わっています。



第一話 忘れ物をするとろくな事がおきない

転生というものをご存知だろうか?

 死んだものは輪廻をめぐりまた生き物として生まれ変わる……と大体そんなかんじのものだ。

 生き物は生まれたとしてもその前の生の記憶はなく、ゼロから始まり、純真無垢な赤ん坊のままだろうが、なぜか私は生まれた瞬間から前世の記憶を受け継いでいた。

 といっても赤ん坊のときのことだからほんのわずかしか覚えてないんですけどねー。

 前世の記憶量が赤ん坊の頭にとって処理しきれない量だったのか、生まれて産声を上げたあとすぐに眠りこけたらしい。

 その後は前世の記憶は隅のほうに追いやられ、成長していくとともに前世のことを少しずつ思い出していった。

 おそらく脳がパンクしないように本能が制御していたのではないかと思うのだがこれは憶測でしかないのでなんともいえないのである。

 だが、そのおかげで私はほんの少し賢い子といわれる程度で頭がよすぎて気持ち悪いといわれたり神童とか言われたりすることはなかった。

 さて、私が前世で生きていたところは遊戯王というカードゲームが好きだった。

 アニメや漫画はあまり見ていなかった、ゲームはやっていたがOCGの方は手を出していなかった。

 なぜこんなことを急に言い出したのかというと、私こと黒峰刹(くろみね せつ)は遊戯王の世界に転生してしまったようです。

 

 

 

 

 

 季節はすでに夏になりつつあるこの頃は、外の気温が高くなり始めているため教室では冷房が入り快適な空間のなか授業を受けることができている。

 それもこれもこのハートランド学園を創設した人物のおかげだろう……なまえはともかくいい仕事をしている。

 え、制服?何のことだがわからないなー……。

 

「刹? 急に遠い目をしだしたけど、どうしたの?」

 

「あぁ、うん。なんでもない」

 

 私の隣に座っている森沢結が心配そうな顔で尋ねてきたが考えていたことは本当に省もないことなので笑顔でごまかした。

 結は髪の毛は茶色で肩にかかるぐらいの長さをしており、右サイドの髪だけを三つ網に縛っている。目は綺麗な青色、顔立ちは清楚系のかわいらしい女の子である。

 

「それより今日の理科の実験ってなにするんだっけ?」

 

「えっと、確かノートに書いておいたと思うから待ってて」

 

 自分が持っている電子ノートを起動しはじめた結をみて私もノートを見てみようと理科のメモリを取り出そうとして固まった。

 

「まずい、教室に忘れてきた」

 

 私のつぶやきに結は、え!? と驚きこちらを見る。

 あー、前の大型停電のときがんばってやっていた宿題と今までとったノートとかがパーになってからすべてメモリに移していたのだけど、まさか忘れてくるとは…。

 

「とってくるから先生には適当に言っといて」

 

「え、いいの……かな?」

 

「大丈夫大丈夫。じゃ、いってくる」

 

 不安そうに首をかしげるのを私は笑ってそのまま席を立ち、理科室を出た。

理科室から教室まで結構距離があるのでゆっくり歩こうと思う。

 実験のレポートの一部は結から写させてもらうとして、実験の感想とかはその場で適当に書けばいいし。

 歩きながら窓から見える今にでも雨が振り出しそうな灰色の空を眺める。

 すでに授業を開始する鐘はなっているので、廊下には生徒の姿は見かけず静かなものだった。

 

「ん?」

 

 その静かな空間にかすかに何かが壊れるような、たたきつけるような音が聞こえたような気がした。

 立ち止まって耳を済ませてみるが何も聞こえず首をかしげる。

 ……気のせいだったのかな?

 気のせいだと心の中で決め付けて止まった足を動かし、しばらく歩いたときだった。

 左角を曲がれる場所に差し掛かったとき、勢いよく何かをたたきつける音がはっきり聞こえてきた。

 しかも連続で廊下に鳴り響き、私はどこから聞こえてきたのかと辺りを見回す。

 

「なんか、こっちに近づいてる?」

 

 破壊音はどんどん大きくなっているのを感じ内心冷や汗が流れるのを感じた。

 今まで聞いたなかで一番大きな破壊音とともに左角から一人の男とでかいロボットが現れた。攻撃を避けるように男は走り、その後からでかいロボットが腕を振り上げて地面へとたたきつけていた。

 

「は、え? ……て、神代?」

 

 攻撃を避けている人物に見覚えがあり思わず声を上げる。

 彼は神代陵牙といい同じ教室で授業を受ける仲間、いわゆるクラスメイトで、時々デッキの相談をする知り合い以上友達未満の関係だ。

 いつも授業をサボっている彼がこんなところでしかもわけがわからないロボットに襲われているとは。

 

「チャーンスでアリマス!」

 

「っ!?」

 

 私の声に反応してしまった神代は一瞬ロボットから注意が逸れてしまい、その隙をロボットから突かれ攻撃される。

 しかし攻撃はぎりぎりのところで避けるも攻撃の余波で神代はこちらに吹っ飛ばされた。

 

「神代、これは……」

 

「黒峰!? チッ。説明してる暇はねぇ!! こっち来い!!」

 

 近くに倒れた神代に声をかけるが、彼は舌打ちをして態勢を立て直すと私の腕をつかんでそのまま走り始めた。

 え、ちょっ、まって。これだと私このまま巻き込まれるんじゃ……。

 走りながらちらりと後ろを見てみるとあのロボットが追いかけてくるのが見えた。

 これ、立ち止まったらまずいだろうな……。あぁ、面倒なことになった。

 私は巻き込まれること覚悟で走るスピードを上げ、神代の隣に並んだ。

 

「で、どうしてこうなったの?」

 

「詳しいことは言う暇がないが、あいつはこれを狙ってる」

 

 そういって私に見せてきたのは変わった形をしている金色のペンダントだった。

 変わった形をしているが一見ふつうのペンダントのように見える、ここまでして手に入れようとする理由とはなんだろうか?

 

「それで、どうする? このまま逃げ続ける?」

 

 私としてはさっさと安全なところに行って警察に連絡を入れたいところなんだけど。

 

「……黒峰、こいつをお前に預ける」

 

「……は?」

 

 神代の言葉に思わず声を漏らしてしまった。

 いや、だってそれを渡されるってことはあのロボットに追いかけられるってことでしょう?

 

「このまま、走っててもいつかは追いつかれるかもしれねぇ。だからこいつをお前に渡して一度別れる。あのロボットは俺を追いかけてくるだろうから安心しろ」

 

 返事も聞かずにペンダントをこちらに投げてきたので、落とさないようにあわててキャッチした。

 

「黒峰、頼んだ!」

 

「ちょっ!」

 

 キャッチしたと同時に神代は通りかかった角を曲がって、走り去ってしまった。

 急なことだったのでそれを追いかけることも出来ずに私はそのまままっすぐ走り続け、少し経ってから後ろを振り返った。

 先ほどのロボットは待つでアリマス!! と叫びながら神代が予想したとおり、神代のあとを追って角を曲がっていくのが見える。

 

「どうしてこうなった……」

 

 走るスピードをゆるめつつ、呟く。

 本来なら教室に戻ってノートのメモリをとりにいき理科室に戻るだけの事だったというのに。

 とりあえず、あのロボットが戻ってこないうちに別のところに移動しよう。

 そしたら警察に連絡して、どうにかしてもらおう。

 扉を開け、屋外に出てから一息つく。この学園って普通の学校と変わった造りだから説明しづらいけど屋根がない渡り廊下のようなものがあり現在、私はそこにいる。

 さて、あとは警察に連絡を入れれば私の仕事は終了かな。

 

「おい」

 

 不意に上から聞こえてきた声に驚いて後ろを振り返ってみると、今しがた出てきた扉の建物の上に後ろ裾だけが長い黒いコートと白いタイツを着たこれまた言葉では現すことが出来ないような髪型をした男が立っていた。

 

「お前が持っているそのペンダント、渡してもらおうか」

 

 そういって男はこちらに向かって手を差し伸べてくるが、行き成り過ぎじゃないか?

 ろくにほかの会話をせずに用件だけつき尽きてくるとか……わかりやすくていいけど。

 

「悪いけど、それは出来ないよ。……ひとつ聞くけどこの学校に来てるあのロボットってあなたの仲間?」

 

「ふん、あいつはただ勝手に行動しただけだ」

 

 とりあえず知っているみたいだけど、一応あのロボットは部下みたいなものなんだろうか?

 

「無駄話はここまででいいだろう。そのペンダントを渡さないというのならば力ずくで奪わせてもらう!」

 

そういって男が取り出したのはデュエルディスクだった。

あぁ、やっぱりこうなるのね……。

 

 

 

 

 あの男は向かい側に移動し私は相対するように立っている。ここから男との距離はだいぶあいているが声はDゲイザーによって聞こえるようになっているし、モンスターの映像自体が大きいためむしろこれくらいないとだめなのだ。

 私は無言でデュエルディスクとDゲイザーを装備した。

 

「デュエルモード、フォトンチェンジ!」

 

 何か男の声が聞こえたと思ったら、男の服装が黒から白へと変わり左目の周りにはなにか模様が描かれ、目の色も薄い青色から赤へと変化していた。

……え、中二病?

 

「デュエルをはじめるぞ」

 

「えっ……あぁ」

 

 私はうなずきデュエルディスクの電源を入れると周りはARビジョンが展開され、ARビジョンリンク完了という音声とともにデッキから5枚のカードを引く。

 

「「デュエル!」」

 

 私は5枚引いたカードを見てあ……と声を漏らした。

 やばい、これエンジェルパーミッションデッキだった。昨日夜遅くまでデッキ調整してたからそのままデュエルディスクにセットしたんだと思う。

 勝率高いからいいんだけど、このデッキになると今の環境じゃあ圧倒的になるからあまり使いたくないというのが本音。

 

「先攻はもらう。俺のターン、ドロー! 俺はフォトン・サーベルタイガーを召喚! フォトン・サーベルタイガーの効果を発動、このカードが召喚・反転召喚に成功したとき、デッキからフォトン・サーベルタイガー1体を手札に加える。さらにデメリット効果でフォトン・サーベルタイガーは自分フィールド上に他のフォトン・サーベルタイガーが存在しない場合、攻撃力が800ポイント下がる」

 

レベル3 フォトン・サーベルタイガー 攻撃力:2000→1200

 

 体が青い光で出来たサーベルタイガーの攻撃力は2000と下級モンスターの中では高い攻撃力を持っているが一気に1200と普通に倒せるレベルにまで下がった……おそらくエクシーズ召喚するための要員となりそうだ。

 

「さらに手札からフォトン・リードを発動! 手札からレベル4以下の光属性モンスターを攻撃表示で特殊召喚する。現れろ、フォトン・サーベルタイガー!」

 

「レベル3のモンスターが2体……」

 

 思ったとおりもう1体のモンスターの出現に思わずつぶやくと、男はふっと小さく笑う。

 

「レベル3のフォトン・サーベルタイガー2体をオーバーレイ!」

 

 2体のモンスターは黄色の光の玉となり地面に現れたブラックホールのようなものに吸い込まれる。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築。エクシーズ召喚! 現れろNo.20蟻岩土ブリリアント!」

 

ランク3 No.20蟻岩土ブリリアント 攻撃力:1800 ORU:2

 

 光が周りを包み込み、現れたのは赤紫色のボディを持ち白い虫の羽を持った昆虫のモンスター。

ていうか……。

 

「ナンバーズ……」

 

 私は今現れたモンスターの名前の一部に驚き、うっすらと前世の記憶を思い出す。確かTF6にNo.39とかNo.17とかそんなシリーズのエクシーズモンスターがいたような気がする。

 

「ほう……その反応、お前はNo.を知っているようだな」

 

 男は目を細め、まるで肉食動物が獲物を狙い定めたときの眼をしている。

 あ、やばいフラグたった。

 

「ならば狩らせてもらおう、貴様の魂ごと!」

 

 本来ならば中二病と鼻で笑うところだが、この世界でその台詞は洒落にならない!!

 魂を狩られるのは勘弁!

 

「蟻岩土ブリリアントの効果を発動、オーバーレイ・ユニットを一つ使うことで自分フィールド上のモンスターの攻撃力を300ポイントアップさせる! カードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

ランク3 No.20蟻岩土ブリリアント 攻撃力:1800→2100 ORU:2→1

 

「あーもう、何でこうなるかな……。私のターン、ドロー」

 

 最初のつぶやきはあの男に聞こえないようにひっそりと言い、デッキからカードを引く。

 

「手札からフィールド魔法、天空の聖域を発動」

 

 フィールドカードゾーンにカードを差し込むと周りの景色はARビジョンにより書き換わり、下を見れば地面が見えていたところには白い雲に覆いつくされ右側前方には大きな白い宮殿が現れた。

 

「天空の聖域は天使族モンスターが戦闘を行った場合、その天使族モンスターのコントローラーへの戦闘ダメージは0となる。豊穣のアルテミスを召喚。カードを3枚セットしターンエンド」

 

レベル4 豊穣のアルテミス 攻撃力:1600

 

「俺のターン、ドロー! 俺は手札から融合を発動!」

 

「その発動にチェーンしてカウンター罠、マジック・ドレインを発動。魔法の発動を無効にし破壊するが、相手は手札から魔法カードを1枚墓地に捨てることでこのカードの効果を無効にすることが出来る。さぁ、選んで?」

 

「では、俺はギャラクシー・ストームを墓地へ捨て、マジック・ドレインの効果を無効にする。そしてツイン・フォトン・リザードを融合召喚!」

 

 発動したマジック・ドレインは無効化されフィールド上から消える。

 そして男の頭上に現れた犬のモンスターと体が白く輝いているドラゴンが混ざり合い、現れたのは首が二対ある足がないドラゴンだった。

 

レベル6 ツイン・フォトン・リザード 攻撃力:2400

 

「カウンター罠が発動されたことにより豊穣のアルテミスの効果を発動。カウンター罠が発動するたびにデッキからカードを1枚ドローできる」

 

「……俺はフォトン・ケルベロスを召喚」

 

レベル4 フォトン・ケルベロス 攻撃力:1300

 

「そして蟻岩土ブリリアントの効果を発動」

 

「その効果発動にチェーンしてリバースカードオー……プン?」

 

 デュエルディスクのボタンを押して罠を発動しようとしても伏せられているカードは発動されなかった。

 よくよく見てみると伏せられているカードには鎖のようなものに絡め取られている。

 困惑していると男が口元に弧を描き、笑っているのが映像から見えた。

 

「ふっ、やはりな。カウンター罠によってドローできるモンスター。よってほかに伏せられているカードはカウンター罠だろうと思った」

 

「……そのモンスターの効果ね」

 

 先ほど召喚された顔や首元が赤い装飾で覆われ体が光り輝く、首が三対ある犬のロボットのようなモンスターを見る。

 

「そうだ。このモンスターは召喚に成功したターン、このモンスターがいる限りお互い罠を使うことが出来ない」

 

 面倒だなー……というか効果は先に説明してほしいのだけれど。

 この世界の人たちって発動宣言とかたまにしないときとかあるし、そういうのって迷惑なんだよね。

 

「続けるぞ。蟻岩土ブリリアントの効果により300ポイントアップさせる!」

 

ランク3 No.20蟻岩土ブリリアント 攻撃力:2100→2400 ORU:1→0

レベル4 フォトン・ケルベロス 攻撃力:1300→1600

レベル6 ツイン・フォトン・リザード 攻撃力:2400→2700

 

「バトルだ! ツイン・フォトン・リザードで豊穣のアルテミスを攻撃!」

 

 ドラゴンがこちらを飛んできているのがわかり私は眉間にしわを寄せた。

 ここで使いたくなかったけど、仕方ない……。

 

「ダメージステップ時、手札からオネストの効果を発動。自分フィールド上にいる光属性モンスターが戦闘を行うダメージステップ時にこのモンスターを墓地へ送ることでエンドフェイズ時まで戦闘を行う相手モンスターの攻撃力分、攻撃力をアップさせる」

 

「なんだと!?」

 

レベル4 豊穣のアルテミス 攻撃力:1600→4300

 

 アルテミスにある翼が羽ばたくと光に包まれ次第に大きくなっていく。

 ツイン・フォトン・リザードはそのままアルテミスへと突進してきたが、アルテミスが大きな光の玉を作りそれをツイン・フォトン・リザードに向かって放つと大きな爆発が起こりツイン・フォトン・リザードは破壊された。

 

「ぐああぁ!」

 

LP:4000→2400

 

「ぐっ……俺はこれでターンエンドだ」

 

レベル4 豊穣のアルテミス 攻撃力:4000→1600

 

「……私のターン、ドロー。天空聖者メルティウスを召喚。カードを1枚セットしターンエンド」

 

レベル4 天空聖者メルティウス 攻撃力:1600

 

「俺のターン、ドロー!」

 

「リバースカードオープン。カウンター罠、強烈なはたき落としを発動。相手は手札に加えたカードを墓地に捨てる」

 

「くっ!」

 

 男は悔しそうにうめき声を上げ、ドローしたカードを墓地に捨てた。

 

「さらにメルティウスとアルテミスの効果を発動。デッキからカードを1枚ドローする。そしてメルティウスはカウンター罠が発動されるたびにLPを1000回復し天空の聖域がフィールドに存在している場合、相手フィールド上にあるカードを1枚破壊する。私が選択するのは蟻岩土ブリリアント」

 

LP:4000→5000

 

「No.はNo.でしか戦闘では破壊されないがモンスターの効果での破壊は免れない……」

 

 え、なにその効果。初めて聞いたんですけど……。

 メルティウスが光を出してブリリアントを破壊したが私は男から言われた衝撃の事実に驚いていてそれどころではなかった。

 確かTF6にあったNo.にはそんな効果はなかった筈。

 そうなると、もしかして……アニメ効果?

 遊戯王のカードは基本漫画かアニメに出てきたカードがOCG化され、ゲームでは基本OCGのカードを使用される。アニメでは強力なカードだったものがOCG化でカードの効果が変わり、神といわれたカードが神(笑)に変化してしまったカードもある。

 No.はNo.でしか戦闘破壊できないなんてOCGでは普通に採用することはない。

あー……どうしよう。ここはオリジナルの遊戯王の世界だと思っていたけど、これはアニメの……私が見てなかった遊戯王ZEXALの世界かもしれない。

 

「おい……おい!!」

 

 ぐるぐると頭の中で考えていたが男の呼びかけに我に返り顔を上げた。

 

「何をぼーとしている。デュエルに集中しろ」

 

「あ、あぁ……ごめん。続けて」

 

 素直に謝って続きを促すと男はふんと鼻で笑い、デュエルを続けた。

 

「俺はこれでターンエンドだ」

 

「私のターン、ドロー。アルテミスでフォトン・ケルベロスに攻撃」

 

 フォトン・ケルベロスの攻撃力は蟻岩土ブリリアントの効果により300ポイントアップしたままだった。

 あれ、永続効果なの?やばい失敗した……。

 

「同士討ちか……迎撃しろ、フォトン・ケルベロス!」

 

 アルテミスは光をためて、それをフォトン・ケルベロスへと打ち出して攻撃をするがフォトン・ケルベロスはそれを避けながらアルテミスへと走っていき噛み付こうとする。

 お互いの距離が縮まりフォトン・ケルベロスがアルテミスののど元を噛み砕くのとアルテミスの光の玉がフォトン・ケルベロスに当たるのが同時に起こり、爆発が起こると2体のモンスターは消えてなくなった。

 

「メルティウスでダイレクトアタック」

 

「リバースカードオープン! リビングデットの呼び声を発動!」

 

「カウンター罠、神罰を発動。効果モンスターの効果・魔法・罠を無効にし破壊。メルティウスの効果が発動しLPが1000回復する」

 

LP:5000→6000

 

 メルティウスの頭上に光が集まり、それがはじけると男に向かって雨のように光が降り注いだ。

 

「ぐあぁ!」

 

LP:2400→800

 

 メルティウスの攻撃により男は吹き飛ばされ、地面へと転がっていく。

 なんというか、いつも思うんだけど此処のデュエリストってオーバーリアクション過ぎないかな?

 

「ターンエンド」

 

「くっ、俺のターン、ドロー! 手札から死者蘇生を発動!! 俺は墓地にいる銀河眼の光子竜を特殊召喚する!」

 

 いつのまにそんなカードが……もしかして強烈な叩き落としのときかな?

 男がカードをデュエルディスクに設置すると男の横に身長と同じくらいの大きさがある赤い十字架のようなものが現われ、それを手に取ると頭上へと投げた。

 回転しながら投げられたそれに光の粒子が渦巻くように集まり淡い青色の光がそこから漏れる。

 

「光の化身、ここに光臨!」

 

 光は段々と形を作り始め、体の表面は黒く背中から生えている翼は青色に光り輝くものとなりそれはドラゴンへと変えていった。

 

「現われろ、銀河眼の光子竜!!」

 

レベル8 銀河眼の光子竜 攻撃力3000

 

「リバースカード、オープン。奈落の落とし穴を発動」

 

「なん、だと……」

 

 格好よく現れた銀河眼の光子竜はあっというまに消えてなくなり、男は呆然とフィールドを見ている。現在手札は0、フィールドにもカードが1枚もない状態。

 これはかなり絶望的である。

 

「……ターン、エンドだ」

 

 男は悔しげに体を震わせ、かすれた声でエンド宣言をした。

 

「私のターン、ドロー。メルティウスで」

 

「カイトさまー!!」

 

 攻撃の指示を出そうとしたとき、聞いたことのある声に一瞬動きを止めてしまった。

 すると後ろから勢いよく何かが通り抜け、そのとき首にかけていた重みがなくなり慌ててペンダントを見てみるが神代から託されたペンダントは見当たらなかった。

 

「え、ちょっと!」

 

 すでに通り過ぎていったあのロボットに手を伸ばすが、距離はもう手の届かないところまで飛んでいたのでむなしく空を切るだけだった。

あのロボットはペンダントを持って男の隣に着地した。

 

「カイ」

 

「何をしている、オービタル!!」

 

 ロボットが口を開くと同時に男の怒声が辺りに響き渡る。

 

「そのペンダントはあの女とデュエルで賭けていたものだ! デュエルの邪魔をするな!!」

 

「も、申し訳ありません! カイト様!!」

 

 土下座する勢いでカイト様と呼んでいる男に謝り倒しているが、男は不機嫌そうな表情を変えることはせずこちらに顔を向けた。

 

「邪魔が入ったが続きを」

 

「黒峰!!」

 

 男が口を開いたが今度は先ほど別れたはずの神代の声で遮られ、男の眉間に皺がよった。

 私は声がしたほうに顔を向けると神代とその後ろに何人かの男女を引き連れて走ってきていた。

 

「カイト様! フォトンモードの負荷が85%をきっております。これ以上のデュエルは……」

 

 神代が引き連れてきた子達に男は目を向けると舌打ちをしてデュエルディスクをたたみ、デュエルを強制終了させるとフィールド魔法で変わっていた景色も出していたモンスターもゆっくりと消えた。

 すると私の隣に私より背の低い前髪が特徴的な男の子が走ってきた。

 

「お前は、カイト! 何でこんなところに!?」

 

 その子が男に向かってそう叫ぶが、男は反応することなくロボットにわかっていると告げるとロボットが奪い去ったあのペンダントを手に取った。

 

「それは、皇の鍵!?」

 

「なっ、まさか黒峰がデュエルで負けたのか!?」

 

 男が持っているペンダントに気づいた男の子は驚きの声を上げるがその横で神代が信じられないものを見るように男をみた。

 いや、『取られた=デュエルで負けた』じゃなくて普通に奪われたとかそっちの発想はなかったのか。

 まぁ、デュエルをしているところを一瞬見てたからそう思うのは仕方のないことかもしれないけど。

 

「おい、お前。名はなんという?」

 

「……黒峰刹。そういうあなたは?」

 

「天城カイト。いつか必ず貴様を倒す。そのときまで待っていろ!」

 

 男、天城カイトは私を睨み付けてそういうと隣のロボットがハングライダーへと変形して天城の背中に張り付きそのまま空へと飛んでいった。

 

「……えっと」

 

 なんかいろいろと突っ込みどころがありすぎてどこから言えばいいかわからなくなってきた。

 隣に立っている男の子は天城が飛んでいった方向を見てアストラルー!! って叫んでるし。

 

「あ、えっと……ごめん。あのペンダント取られて」

 

「いや、大丈夫。取られたら取り返すんだ、カットビングだー! 俺ー!!」

 

 男の子は落ち込んでいたと思ったらいきなり叫びだし、気合を入れているようだった。

 元気な子だな……。

 

「黒峰、お前あの男に負けたのか?」

 

 神代はなぜか真剣な顔つきで私に問いかけている。

 そういえば、私とのデュエルで神代は私に勝ったことなかったな……。

 というより私がこの世界に着てから負けたことってほとんどないんだよね。

 

「負けてないよ。途中で神代とその子達が来たからデュエルが中断されただけ。あとは攻撃するだけだったんだけどな……」

 

「え、ええええぇぇ!!」

 

 残念とつぶやくと神代は安堵の息を吐き、隣にいる男の子は大げさなぐらいに声を荒げて驚いた。

 

「お前、あのカイトに勝ったのか!?」

 

「いや、勝った訳じゃないんだけど……まぁ、あのままデュエルを続けてたら勝ってたと思うよ?」

 

 すっげぇ! と男の子は目を輝かせて私を見る。

 この子、天城とデュエルしてそれで一度コテンパンにされたとか?

 そうでもない限りこんな反応しないよね。

 

「て、そんなことより……警察に連絡しないとね」

 

「警察?」

 

 男の子が聞いてきたのに対しすこし不思議に思いながらも私はうなずいた。

 

「うん、これは立派な窃盗だし。君もあとは警察に任せて・・・」

 

「だめだ!」

 

 急に大きな声を出されて驚き、男の子を見ると彼は真剣な顔つきで私を見ている。

 

「俺は、早くアストラルを助けなくちゃならないんだ! 警察に任せてたんじゃいつになるかわからねぇ!」

 

「え、アストラル? どういうことなの、遊馬?」

 

 男の子の言葉に近くにいた緑色の髪をした女の子が男の子に問いかける。

 そこからは男の子の説明が入り、簡潔に述べるとあのペンダント『皇の鍵』の中には別空間がありそこには現在アストラルという人物が入ったままだと言う。

 アストラルというのが誰だかわからないけど、ペンダントの中に別空間があるとか信じられない話なんだけど……。

 

「そのカイトという人物は皇の鍵を調べるために盗んでいった。とどのつまり、皇の鍵を調べるためにコンピューターを使う筈です!」

 

 今度は水色のおかっぱ頭の男の子が自信満々に言い放つ。

 

「なのでウィルスを使って皇の鍵を調べているコンピューターを探し出せば・・・」

 

「カイトがいる場所がわかるってことか!! さすがだぜ委員長!」

 

「ですが、どうしましょうか。僕はそこまでハッキングスキルがあるわけではありませんし……」

 

 かっとビングとかいっていた男の子と神代、他4名の男女で話し合いをしている間、私は話について行けなくて暇をしている。

 なんというか、もう帰ってもいいかな?

 

「黒峰、お前確かハッキングが得意だったな?」

 

「へ?」

 

 神代たちの話をまったく聞いてなかったので急に神代に話しかけられて変な声が出てしまった。

 ていうか、ハッキング?

 

「あー……うん、まぁね」

 

 問いかけに私は曖昧に答える。

 実は転生してからハッキングって格好いいよねとか中二心が疼いてコンピューターについて勉強していた。

 腕のほうはそれなりだと自負しているが、今となっては昔の中二病と勢いでハッキングの腕を磨き、やってしまったと若干後悔している。

 

「じゃあ、ウィルスをばらまいて皇の鍵を調べているコンピューターを探し出せるか?」

 

「んー……一応でき」

 

 そこまで答えてはっと我に返り彼らに目を向けると、5人のきらきらと輝く目が私をじっと見ている。

 あー……面倒なことになった。

 口元を引きつらせつつ、私は出来るとうなずいてしまった。

 




個人的な感想
どうしてこうなった。善戦させるつもりがどうしてこんなことに…。
面倒なので書き直しはいたしませんが、次にカイトとデュエルするときはもっといいものにしたいです。

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