コードギアス 反逆のルルーシュ Request C.C.   作:グリムゼン

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お付き合いいただければ幸いです。


第五十七話 歩みを止めるな あなたは?

僕たちは早朝ブリタニアレールに乗った。

ホテルを出る前、出かけてくると言ったときに、昨今の治安について触れられた。

くれぐれもご用心くださいませと念を押されて。

ほんの少しだけ申し訳なさが出てくる。

でもそれを表に出さない。僕たちはただ単に自分たちのエゴで世界を壊すのだから。

 

アッシュフォード学園、久しぶりだ。感覚的にはそれほど経っていないんだが。

あの時はそもそも正門から入っていなかったからな。

昔も、学生としてふるまっていたわけでもない、ましてやルルーシュと同じ部屋だ。

 

「随分と早いな」

「そういう君こそ、この前みたいに正門で待ってたの?」

「役職上しかたなくだ、副会長だからな」

「忙しいのに、わざわざありがとう」

「気にするな。それに・・・」

「紹介が必要、だね」

 

今日はC.C.はしっかり?と変装してた。

ただ、この学園だとルルーシュとカレンには一発でわかる姿だ。

なにせナイトメア同士の戦いの時に見せた髪形と同じだったんだもん。

C.C.~しっかり準備したって言ってたよね?

ポニーテールに赤いカラーコンタクト。

服は、僕らにとってはいつもどおりだけど、見ての通り貴族という振舞いの服装だ。

ルルーシュの主観でC.C.と言えば拘束服みたいなそういう感じなのかな?

バレないっていう根拠をちょっと聞いてみたくなる・

 

マオは、いつも通りの格好だ。

僕があげた銀糸の腕輪を着けて、かつてのゴーグルはやめてバイザーにしてる。

腕輪を着けてくれるのはうれしいんだけど、ちょっとやっぱりこそばゆいな。

 

「私がヴィエルだ。こちらでは初めましてだなルルーシュ」

「ヴィエル・・・お前が」

「なんだ?仮面の下の顔はお前のお好みか?」

「はぁっ!?」

「ルルーシュ・・・」

「違うぞ・・・こいつがこんなにC.C.に似ているとは思っていなくてな」

「あぁ、C.C.にも驚かれたよ。まぁ世の中同じ顔を人間は3人はいるという話だ。私たちの世界は案外狭いんだな」

 

実際は未来の同一人物なんだけどね。

まぁ、今のルルーシュはC.C.にでも聞かない限りわかりようがないね。

そのC.C.本人も話さないと思うし。話しても理解されないと思うし。

 

「それで、初めましてになるのかな?ルルーシュ」

「C.C.が言っていたマオというのはお前か」

「傲岸不遜は結構だけど、この二人に対してはやめてよね」

「わかっている。ところで」

「ああ、僕もギアスユーザーだ」

「C.C.が関わっている以上その可能性があると踏んでいたがやはりか」

「教える気はないよ。ちなみに君のギアスの正体はわかっているから、しないでくれると助かるな」

「気が向けばな」

 

気が向けばって言ってるけど、隙あらばかけるき満々だ。

僕はリートとC.C.と違ってこいつのギアスは普通に効く。

バイザーはギアスのオンオフが出来なかった時のせいで物足りなくてかけてるけど、

ちょうどよかったかもしれないね。

 

「そういえばシャーリーから聞いたんだけど、賭けチェスなんてものもやっているんだって?

今度一手お相手願えないかな?」

「お互いに時間があったら考えよう。学園祭の開始はもう少し先だ。エイス、ナナリーに紹介できる時間が取れそうだから、紹介しよう」

「うん」

「私たちも同席してかまわないか?」

「来るなと言っても来るんだろう?」

「お前ほど強引ではないさ。だが付いていく」

「好きにしろ。クラブハウスにはC.C.もいる」

 

寝ている私の顔を見に行くわけないだろうが。

加えて、今会って話すことでもない。

あの娘が行政特区を作ることは「確定」しているんだからな

勝手知ったる我が家とでもいえばいいのか?

1000年経とうが覚えているものだ、感覚が。

私自身に内包するものが、そうさせるのかもしれん。

 

「ルルーシュ」

「なんだ」

「後でこの学校を案内してくれないか?」

「学園祭前だぞ。それに今日はオープンだ、好きに歩けばいい」

「そうか、そうだったな」

「まさか、今日はそれで来たわけではないのか?」

「いいや、期待も込めているさ。期待するものもあるしな」

「ピザか。準備に時間はかかったが、楽しみにしていろ・・・せっつかれそうだな」

「C.C.ならそうだろうな。あとで念でも押しておけ」

 

クラブハウス、以前はスザクのおめでとうパーティーの時のカレンを止めに来たとき以来だ。

よく見てなかったけど、結構大きいんだな。

 

「でも、よかったの?」

「なにがだ?」

「僕なんかを紹介しちゃってさ。言っちゃあなんだけど、僕黒の騎士団の片棒を担いでるんだよ?」

「以前、生徒会にお前が来た時にお前の話題になって、そしてスザクのパーティーの時には、挨拶する間もなく帰っただろう?その事で、機会があったら会いたいです、って言われてるんだ」

「悪いことした?」

「いいや、ナナリーはあれでいて意外と頑固なんだ」

「おまえ達兄弟は本当にそっくりだな」

「周りにはそう言われていないんだがな」

 

「お兄様?」

 

「ナナリー」

「あっ」

「マオ?」

「いや、何でもないよエイス」

「エイスを連れてきた。会いたいって言っていただろう?」

「お兄様、ありがとうございます!あっ、ごめんなさい、初めましてエイスさん」

「初めましてナナリーさん」

「さん、だなんて。ナナリーでいいです」

「わかった、じゃあナナリー」

「はい、えっと、C.C.さん、ですか?」

「!?」

「そうだ、初めましてだな、ナナリー」

「えっ!?」

「おいっ!ナナリーを困らせるな。ナナリー、こいつはヴィエルって言ってエイスについてきたんだ」

「えっ、そうなのですか?雰囲気がとてもC.C.さんに似ていらっしゃるので」

「ルルーシュにもそう言われたな。ナナリー、気にすることないぞ」

「は、はぁ・・・あっ、もうお一方・・・」

「・・・初めまして・・・だよね僕はマオって言うんだ。よろしく」

「はい、よろしくお願いいたします」

 

記憶の残滓、いや、僕のC.C.の過去の僕の過去の記憶。

この子には酷いことをしてしまった。かつての狂った僕だけど。もしC.C.とリートがいなかったら・・・

目が見えない、歩くこともできない。

復讐の道具としてしか見てなかった。僕ではないけど罪悪感がないわけじゃない。

でも、それは過去の過去だから、気にしないようにする。

それでいいんだよねC.C.

 

「ナナリー、会長が迎えにくるまでの間、エイスと少し話したらどうだ」

「えっと・・・」

「僕はそれでかまわないよ、何を話したらいいかな?」

「二人っきりを邪魔をすると無粋だな。私たちは開場前の学園を歩くことにしよう」

「そうだな、始まる前にはエイスも会長と一緒に行ってくれ」

「わかった」

 

若干、後ろ髪を引かれながら、その場を後にする。

クラブハウスの玄関ですこしたむろする。

ナナリーはリートに絆されさえしなければ問題はない。

問題は、この坊やだな。

何回かアイコンタクトをしてきている。

それもマオも外せと言ってきた。

いいだろう、乗ってやるか。

 

「マオ、すまないが、シャーリーを探してきてくれないか?エイスが学園に来たことを伝えてきてほしいんだ」

「・・・どれくらいまでに見つけたらいい?」

「学園は広いからな。まぁ30分ってところか」

「分かった、それじゃあ行ってくるよ」

「すまないなマオ」

「大丈夫だよ、聞いてるから」

 

俺の意図を理解して、ヴィエルはマオを遠ざけた。

やはりというべきか。それとも警戒していないのか?

いくつか選択肢はある。だがそのどれとも当てはまらない。

むしろこの状態の中で護衛に近い存在を両方とも外すか?

俺が何もしないと思っているのか?だとしたら利用できるが・・・

こいつの狡猾さは今までの通信で感じてきた。

ギアスの事も、ある程度の情報を持っているだろう。

加えて俺のギアスは知られている、そうまでしてここまで無警戒か?

くそっ、こいつの情報が少なすぎる。

 

「できた従者だな」

「ああ、過去にはできずじまいだった自慢のな、それで、話したそうにしていたが何かあるのか?」

「気づいているよな」

「あれほど熱烈な視線を受けてわからんのはよほどの鈍感だ。アイコンタクトをするならもう少しうまくやれ」

「お前は黒の騎士団ではないからな、だが蛇の道は蛇か。肝に銘じておこう」

「その割には目線を後ろに向けているな。妹の事が心配か?このシスコンめ」

「エイスがいるから心配はない」

「私たちを信頼してくれているのはうれしいがな」

「なら、お前たちの全てを俺に教えろ」

「ああ、何を話せばいい」

「あのナイトメアの事、経済力、背後には誰がいるのか。その目的。何もかもだ」

「断る」

「な、なにっ」

 

ギアスが効かないっ?!

ということはこいつやはり対策していたか。

 

「ああ、言い忘れていた。私にもギアスは効かんぞ?」

「何故だ!」

「いや、むしろこちらから聞きたいんだがな。今更になってギアスをかける必要があったのか?

私たちは味方だぞ?」

「そういえばエイスにもそのコンタクトを着けさせていたか。誤算だった・・・」

「こっちの質問に答えろ」

「・・・始終俺という存在に付き合っている正体不明の人間、知りたいと思うのは当然だろう」

「疑っていたとでもいうのか?」

「そもそも、そこからが知りたかった。シンジュクの時、俺はそもそも黒の騎士団を立ち上げてすらいない。C.C.にギアスという力をもらい、そこから初めて世界を打倒しようと試行錯誤しはじめた。それなのに、お前たちはそれを見計らったかのように、俺に手を貸した。クロヴィスの時もサイタマの時も、中華連邦にC.C.を送り届けたのも、チョウフも式根島に神根島も。なぜ、俺を」

「理由付けが欲しいならそれは意味のないことだぞ?少なくとも今はな」

「理由がない?」

「私たちがお前を手助けしているのは、私たちのエゴだ。自己満足だ」

「自己満足だと?」

「結局のところ、そこに行きつく。私のわがままであり、エイスのわがままだ」

「俺は、そのわがままに振り回されているとでもいうのか?」

「違うな、間違っているぞ。そのわがままはお前に一方的に押し付ける善意でもなければ悪意でもない。言っただろう?私たちの自己満足だと。まぁ、ほかの要素があるとするなら確かに善意と言えなくもないが、お前はそれを利用すればいい。ただそれだけの事じゃないのか?」

「・・・」

「傍観はしていないからな、分かっているとは思うが」

「そうだな、隣に、いや、後ろに立っている時点で俺の事を高みから見下ろすような、傍観者ではないな。

手を汚すことを厭わないのは本当に助かっている。だが、お前たち自身はどうなんだ」

「私たちの?」

「そうだ。テロリズムを肯定し黒の騎士団に助言者としていてくれていて、その上こちらの事情に介入できる即応性もある。お前たちに利はあるのか」

「利、利か。お前らしい言葉だ。だが、そこは心配する必要はない。利など初めからない」

「利がないだと?それではいったいなぜ」

「知っての通り、私たちは現状私、エイス、マオ、シャーリーで事足りている。それ以外の外的要因の介入は今は許していないが、今後増える可能性も大いにある。だがそれはすべてお前と妹のためでありその二人の幸せを願うことがいうなれば私たちの利になる」

「欲がない・・・のか」

「ありったけ貸しを作っているだろう?欲はかなりあるぞ?C.C.ではないが、今日のピザが成功すれば、それをほお張れる機会がある程度にはな」

「お前もあのピザ女と一緒か」

「失礼だな。むしろ失敗する可能性の方が高いから期待という言葉をつかったんだ」

「スザクでも失敗するというのか?」

「不測の事態は想定しておけ。何事もな」

 

常日頃からこうしてああしてと考え込んでいるこいつにどこまで届く。

私たちがいくらこいつを手助けしても、ある一定の上限は超えることができない。

それは、私たちの枷でありリミッターだ。

そこは譲れない線引きの一つ。外してしまったら・・・いや考えるのはよそう。

 

「ルルーシュ」

「まだあるのか?」

 

「お前が進み行く先は、辛く険しいものだ。だが諦めてくれるな。

諦めることは死ぬことと同じだ。諦めない限り、お前は生き続けいずれ勝利をつかむ。

だから、あまり私を失望させるなよ」

 

「まるでC.C.のようなことを言うな。失望させるにいたる要素は片端から排除するさ。

どこまでもあがいていく。ゼロという奇跡をイコンにしてでもな」

 

お前はもうすでにそこにいたっているのか。いたっていないのか。

私たちの介入の結果か。それとも・・・

 

 

 

 

 

 

「ルルーシュから聞いたけど、僕に会いたいって」

「お兄様、本国にお友達がいらっしゃるって私にはちっとも教えてくださらなかったんですよ。

生徒会の皆さんからシャーリーさんのお父さんの占いの話で持ち切りになった時があって」

「あの時か、そういえばナナリーはその場にいなかったね。何かの歓迎会だったって後から聞いたけど」

「アーサーの歓迎会ですね」

「アーサー?」

「あっ、アーサーっていう猫の名前なんです」

「それを聞くと安心するよ」

「ふふふ、エイスさんってお兄様とどうして知り合ったんですか?」

「ネットでね。一番初めはチェスとかのサイトで」

「お兄様、チェスうまいんですよ。聞いた話だと賭けチェスもされているらしいです」

「妹としては心配」

「帰りが遅いと一緒にお食事できないですし」

「ルルーシュの事、大好きだね」

「もちろんです。あ、不躾でなければ占いをお願いしたいんですけど・・・」

「あ、そうだね。何を占おうか?」

 

僕の占いというか、あくまでC.C.の記憶の範囲での延長線上にある事実に近い事を言うだけだ。

実生活にどこまで反映されるかわかったもんじゃないけど。

 

「あの、私の目って見えるようになりますか?」

「ちょっと待ってね。僕の占いは少し予言に近いものを知ることが必要なんだ」

 

さて、どうしようか。

見えるっていう事は、C.C.から教えてもらってる。

タイミングもゼロレクイエムから少し前だってことも。

ただ、僕はそれを聞いて疑問を持った。

 

「ちょっといいかな?」

「はい?」

「ナナリーは目が見えるようになりたい?」

「えっ?」

「・・・どうも病気っていう感じじゃないんだよね。

ナナリー自身が拒んでいるのか、それともそれ以外か」

「私が・・・拒んでる」

「今に至るまで、本気で何かを見たいって思ったことは?」

「・・・もしかしたら、ないかもしれません」

「近く見えるようになると思う。ただそれはナナリー次第だね」

「私が本気でそれに向き合う必要があるということですか?」

「きっとね」

「・・・エイスさんは、厳しいことをおっしゃるんですね」

「所詮は占いって切って捨ててくれてもかまわないよ。所詮占いだ」

「いいえ、お兄様やシャーリーさんから、当たるって言われてるので信じます」

「一期一会って言葉しってる?」

「日本のことわざですよね」

「次に会えるか分からないなら、たとえ厳しくてもそれを言うべきだって思うんだ。

厳しいって感じたのならごめんね」

「いいえ、私のためを思っていってくださるのならそれは嬉しいです。・・・」

「ん?どうしたの?」

「いえ・・・ちょっと手を握っていただけませんか?」

「う、うん。いいよ」

 

僕は向かい合わせのテーブルからナナリーの隣に行って彼女の左手を握る

 

 

 

 

――――――――――エルさん、ですか?

 




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