東方孤傀劇/~Noキミョン?Noウドンゲ?Yesうどみょん!   作:因田司

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今回は、此の小説初の二編構成の回です。

そして、マリス達より
うどみょんがメインになりそうです。
正直嬉しいです!

また、初出演の方もございます。

原作とは少し異なる点があるとは思いますが、
暖かい目で見て下さると、幸いです。

それでは、ゆっくりしていってね♪


マリスが恐れた唯一の人物~前編

LILY BLACK

~魔法の森

 

私達は、大分離れた草むらの中から

やっと追い付けた目標を見ていた。

 

視線の先には、私が目標にしているリリーホワイト、

そしてマリスが目標にしている一人の剣士と一匹の兎が

大木の根元に腰かけていた。

 

 

「ドウヤラ、休憩シテイル様ネ……」

 

 

隣には、敵の一匹である兎、鈴s……(名前が長くて呼びにくい)

~~もういい…!!兎に擬態したマリスがいた。

 

まあ、いつもの事だったから気にしない。

 

 

「……ネエ?」

 

「?何だ?」

 

「アノ手段ッテ、イツニ使ウノカシラ?」

 

「!まだ待て……あれはいざという時、ここぞという時に使うんだ。

むやみに使って失敗すれば、全てがおじゃんになりかねん……!!

其にしばらく奴等の勉強をさせろ…!さっきの二の舞はまっぴらd」

 

「!誰カ来タワ……!」

 

「!?」

 

 

視線を前に戻した。

 

アイツ等の前にある草むらから一人の女性が出てきていた。

 

 

私が見たことがない奴だった。

 

またしても私はイライラした。

~~どうして此処は、私の知らない事ばかりなんだ……!?

 

しかし、赤いな……

背中には紫の禍々しい翼まである…

身長からして妖精じゃねえな、アイツァ……

 

 

「お前、アイツを知ってるか?」

 

 

……返事が来ない。

 

 

「?おい?聞いてなかったのか?」

 

 

首を曲げて再びマリスを見た。

 

 

兎マリスの様子が変だった。

 

青い瞳が今まで見たことがないくらいに縮んでいて、

さっき怒っていた時よりもさらに擬態が解けかかっていた。

身体のあちこちが黒色に戻っている。

 

 

(!コイツ、怯えてやがる……!!)

 

 

私はひと目で判った。

 

だが、幻想郷の各地を襲い、破壊と侵略の限りを尽くすマリスが

此ほど怯えるなんて余程のことだぞ!?

アイツ、いったいどんな人物なんだ?

 

 

「……ワヨ」

 

「え?」

 

「逃ゲルワヨ……!早ク……!!」

 

「!?おぉおい…おい……!!」

 

 

私は兎マリスに羽を引っ張られ、その場を退場した。

羽!引っ張るな!デリーケートゾーンだぞ、其処!?

 

……出番も無いまま退却かよ……?

訳わかんねぇな、ったく…………

 

 

 

 

 

 

 

 

YOUMU

~魔法の森

 

私は、魔法の森にある一本の大木の根元にもたれかかっていた。

 

傍ではうどんさん、そして彼女に抱かれた

春告精、リリーホワイトが眠っていた。

 

 

私達が此処で休憩している理由は、

このリリーホワイトさんが先刻の出来事で止まらなくなった

体の痙攣を療養する為だった。

 

うどんさんいわく、見た事もないものに対する

恐怖が痙攣の原因らしかった。

リリーホワイトさんだと、さっき私達に

飛んできたミサイル型のマリスがそうらしい。

 

人を喰い、其の姿や能力をコピーするマリスが

ひとつ目をギラつかせ、目の前まで高速で

近付いてくる様子を想像した。思わず身震いをする。

決して武者震いではない。

 

 

(マリスが、トラウマにならなかったら良いんですけど……)

 

 

眠るリリーホワイトさんを見ながら、そう思う。

 

私が起きていた理由は、言うまでもなく二人の護衛だった。

二人に何かあってはいけない……

其の事が頭にあったのか、起きずにはいられなかったのだ。

 

リリーホワイトさんを見ていると

彼女を抱いているうどんさんにも当然視線が移る。

 

 

(……可愛いですね……寝顔……)

 

 

思わず顔が綻ぶ。

敵が来ないかという緊張も緩んだ。

 

 

!?いけない……

こんな時に敵が来たらどうする……!

 

油断してる時を突かれたら、

うどんさんを…二度と見られなくなる……!

其だけはいけない……あってはならない……!

 

 

其に私は誰かの護衛をする事にある一種の誇りを感じていた。

誰かを守る事が私、魂魄妖夢にとって誇りだったのだ。

 

私は、以前まで幽々子様の護衛をしていた時を思い出す……

が、頭を振ってすぐに其等を閉めだした。

最近此の事を思い出すと、うどんさんに申し訳ないと思い始めていた。

 

 

(だから今は…心を鬼にする時だ……!)

 

 

私は周りを見渡し、敵の襲来を警戒した。

 

すると、

 

 

 

ガサガサ……

 

「此処……『森』っていうのかしら……?

随分複雑な構造をしているのね…?」

 

「……此の場所……さっき通った場所と同じよう気がしますが?」

 

「そう?私からしたら全然違う場所に見えるけど?」

 

 

私達がもたれている大木からそう遠くない目の前の草むらが揺れ、

話し声が聞こえた。

声からして女の子が二人のようだ。

 

 

「誰だ!?」

 

 

私は腰を半分あげ、背中の二本の剣の柄に手をかけた。

 

こんなところに普通人間は来ない……

まさか、此処までマリス達が捜しに来ているのか?

有力な住民の能力を可能な限り喰い尽くすために……

 

 

「!ねえ聞いた?人がいたわよ!」

 

「ですが危険ですよ…もし襲って来ましたら……

私が先に突入します。貴方様は後から……」

 

「大丈夫よ、此処は私に任せて……」

 

 

そして草むらの中から一人の人が出てきた。

 

 

今まで見たことがない人だった。

 

身長は私やうどんさんよりも高く、大人の女性の雰囲気が漂っていた。

…まるで仏様の様な微笑が顔にあったからかもしれない。

 

赤いゆったりとしたローブのようなものを着用している。

髪の毛は銀色で、木漏れ日を反射して光っており、

一か所だけ髪の毛が結われていた。

 

背中には紫色に光る、六枚の翼が広げられ、

六枚全てに紅色の禍々しい模様が浮き出ていた。

 

 

その翼からして、種族は人間ではない事は明らかだ。

 

じゃあ妖精か…?もしくは、紅魔館の吸血鬼

レミリア・スカーレットさん達のお仲間……?

 

いや…妖精にしては大きすぎるし、

第一、吸血鬼という事はあり得なかった。

……まだ昼下がりに入ったばかりなのだ。

 

 

「……もう一人いるんでしょう?

どうして私達から隠しているんです?」

 

 

二本の剣…楼観剣と白楼剣を抜きながら、私は尋ねた。

会話からもう一人いることは既に把握できていた。

ならばソイツと戦う為に、霊力を温存しておかなくてはいけない。

 

其の人は剣を見て少し驚いたようだった。

しかしすぐに表情を戻し、恥ずかしそうに言った。

 

 

 

「あのね……私達ね……迷っちゃったのよ」

 

 

 

 

カランッ、カロォン……!

 

 

 

楼観剣と白楼剣を取り落してしまった。

 

すぐに拾おうとするが、手が動かせず拾えない。

 

 

(!え……??)

 

 

視線は相手に向けたまま、

体が硬直してしまっていた。

 

 

其の人物は微笑んでいた。

 

が、其の薄く開けている目からは

私では形容する事が出来ない、「何か」を感じた。

 

私はすぐに何が起こったのかを理解した。

 

 

(射すくめられた……!?)

 

 

何故だ……?ただ一言かけられただけなのに……!

 

その時私は、蛇に睨まれた蛙さながらの様だった。

 

 

(何をしている……!

誰かの護衛をずっとこなし、沢山の強敵と

戦って来たのに、たった一人の敵に気圧されるなんて……!!)

 

 

そう言い聞かせても、やはり無駄だった。

 

私はすっかり怯えてしまった。

 

 

其の人が足を一歩、私達の方に踏み出した。

私は無意識のうちに其に合わせて一歩下ろうとした。

動かせる事から、身体の硬直はどうやら解けたようだ。

 

だが解けたばかりだからか、うまく動かせず、

バランスを崩して、お尻から地面に落ちた。

其のまま手と足で無様に後ずさる。

 

その瞬間の私には誇りもへったくれもなかった。情けない…

 

 

その人は歩を止め、途中私が落とした二本の剣を拾い上げる。

 

信じられない……長すぎて並の人間では扱えない楼観剣を、

片手で軽々と持ち上げるなんて……

 

 

「ふむふむ……此処には

こんな素晴らしい剣があるなんてね……」

 

 

二本の私の剣を、まるで値踏みでもするかの様に眺めている。

 

 

「まあ良いわ」

 

 

そして、ニ本とも両手に持って再び此方に歩いてきた。

 

私は嫌な予感がした。

まさか……其の剣で……!?

 

だが、白楼剣は私達、魂魄家しか使えない筈……

其を知ってるかどうかは判らなかったが、

あの様子からだと………

 

 

(本当に……何者だ……?)

 

 

もし…白楼剣が使えるのなら……

私の知らない…魂魄家の者か?

 

其とも、マリスが襲い、手に入れて擬態した新しい姿なのか?

 

其とも……?

 

 

剣をニ本とも取られてしまったら、もはや私になす術がない……

 

せめて……うどんさん達は守らないと……!!

 

 

私は震える体に鞭を撃ち、

リリーホワイトさんを抱いて眠る、うどんさんの前に移動した。

半腰になり、少しでも彼女達を敵から隠せる様に尽力する。

 

汗をすごくかいているのが判る。

だが、其を拭う時間など私にはない事は判っていた。

 

 

其の人が、遂に目の前に立った。

顔は相変わらず笑っていたが、私を見下ろす目は何処までも冷たかった。

両手は、私の剣の柄を握っていた。

 

右手に楼観剣を持っていた。

 

覚悟を決めて、目をつぶった。

まぶたの裏で私の剣が、私に対し振り上げられる様子を想像していた。

 

 

どちらで斬るのか……白楼剣か?楼観剣か?はたまたは両方か?

だが、どれにしても幽霊の性質を半分持っている私には

致命的である事に違いはない。

 

だが、そんな事はどうでも良かった。

うどんさん達が切りつけられるよりはずっとマシだと思っていた。

 

 

 

 

其の時私の脳裏にもう一人、浮かんだ人物がいた……

 

 

(…幽々子様……)

 

 

……貴方様を思い出す事を拒んできた……

こんな…不甲斐無い私を……御許し下さい……

 

 

 

 

カチャッ……

 

 

金属音がした。

 

私はますます目を堅くつぶった。

 

 

 

 

そして、風を切る音が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

「チェェイ!!!」

 

 

「!?ィダ……!!」

 

 

私は両方の剣の柄で頭をしばかれていた。

 

 

「アハハハ……大丈夫よ、そんなに怯えなくても……!」

 

 

目の前で笑い転げている。

まったく訳が分からなかった。

頭も痛かった。

 

 

「……?い…いったい……??」

 

「!痛かったの……?ごめんなさい……!

それほど強く振ったつもりは無かったんだけど……

あ、此返すわね?」

 

 

気付けば、両手に白楼剣と楼観剣の柄を握らされていた。

本当に訳が分からない……

 

 

「出てきて良いわよ!ちょっと休憩してただけみたい!」

 

 

其の人は、先ほど自分が出てきた草むらに声をかけた。

 

其処から出てきたのは……

 

 

「!?咲夜さん…!?」

 

 

いや、咲夜さんとは少し違うところがある……違う人物か…?

 

咲夜さんが銀髪なのに対し、偽メイドは金髪で

青ではなく赤を基調としたメイド服を着ていた。

 

 

「私は神綺。此方は自信作の夢子ちゃん!」

 

 

!?え…?「自信作」……!?

 

 

「夢子でございます……

神綺様、お言葉ですが『自信作』は……」

 

「!ゴメン、流石にダメよね……取り消しっ!」

 

「…恐縮です」

 

 

……追いつけない……展開も…コントも……

 

 

「みょ…みょんさん……!」

 

 

 

はっと後ろを振り返る。

 

うどんさんが起きていて神綺さん達におびえた目を向けていた。

忘れていた…うどんさん、人見知りなんだっけ…!

 

リリーホワイトさんも同じだった。

むしろ、うどんさんに締めあげられて苦しそうだ。

 

 

「そ、そそ…其の…人達は……!?」

 

「だ…だ……だーれでーすかぁ……??」

 

 

ガタガタ震えている。

拍子でトラウマが再発したら大変だ……!

 

 

「え…と……神…綺さん?」

 

「?んん~~?」

 

「もう一度…自己紹介……」

 

「!よし来た、良いわよ!私は神綺。此方は夢子ちゃん!」

 

「夢子でございます」

 

「簡単に言うとぉ………私、魔界を創った人ね!

因みに夢子ちゃんは魔界のメイドさん!!」

 

「!?魔界ぃい…!????」

 

 

私達は見事に度肝を抜かれてしまった。

 

 

「!其より、貴方達……アリスちゃんが何処にいるか知らない?

あれから随分見てないけど…元気してるのかしら……?」

 

!?アリスさん……!?

私は耳を疑った。

 

 

此の人達、もしかして……アリスさんの過去を知っている……!?

 

 




如何でしたか?

旧作から魅魔様に引き続き、神綺様と夢子が初出演です。

ですが、おそらくリリーブラックと同じく
うどみょん小説限定の出演になると思います。

次回は、後編です。
神綺様の話を聞いていきます。

それでは、次回もゆっくりしていってね♪

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