東方孤傀劇/~Noキミョン?Noウドンゲ?Yesうどみょん!   作:因田司

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今回、コラボの最中ではありますが、クリスマス回を投稿させて頂きます。
去年にクリスマス回を投稿できなかったのが気がかりでつい……申し訳ございません……!

因みに今回に限り、マリスは一切出てきません。リリーブラックも逮捕されていない事に
なっていますので御了承下さい。グロ一切抜きの、久々の純粋な砂糖回です。


原作とは少し異なる点があるとは思いますが、
暖かい目で見て下さると、幸いです。

それでは、ゆっくりしていってね♪



Special;雪空に咲きしアヴァンチュール ◎

YOUMU

~人間の里

 

今宵、稀有な出来事が起きた。私達が通り掛かった人間の里に、深々と降り積む白い光達……雪が

降ったのだ。

 

そして其が原因で、隣を飛んでいるリリーホワイトさんが大変な事になっていた。発作でも起こしたかの様に身体が痙攣している。

 

 

「……リリーホワイトさん、大丈夫ですか?」

 

「~~ヴゥブルル……レディさんが無理強いじてるのでしょうか……堪っだものじゃぁありまぜん

ん……!!」

 

 

まるで此の世の終わりとでも言う様な真っ青な顔でのシバリング。靴から膝まで出ている出た脚も

互いに擦り合わせている。

うどんさんも、少し寒そう……両手をこすり合わせ、小さく震えている。やはりブレザーだけでは

厳しそうだ。

 

どうしようかと前に向けた私の視界に、洋服屋の看板が飛び込んできた。

 

 

「良ければ、彼処で手袋やマフラー、ストッキング買いましょうか……?」

 

「!あぁあ有難う御座いまずぅう~~……!!」

 

 

もう、寒さと嬉しさのあまりで顔がくしゃくしゃになっている。私は自身の身体を半霊から少し

距離を置いた。

 

 

「ささ…あの洋服屋まで、私の半霊に包まって……」

 

「も……申じ訳……ないでずぅ……で、ではは…し…失礼…じで………」

 

 

リリーホワイトさんが私と半霊の間に飛び込み、半霊を両手でしがみ付いた。半霊に震えが

伝わり、同時に彼女の身体の冷たさも伝わった。其のあまりの冷たさに、思わず反応してしまうが

我慢する。

 

半霊自体も少し冷たいが、包まれば暖かくなる。此で少しは寒さをしのげられる筈だ。

 

私は、うどんさんの方にもスペースをあけた。半霊がいつもより長く伸びる。

 

 

「うどんさん、貴方も……」

 

「!え……?」

 

 

私を見つめ返すうどんさんの顔が紅くなるのを見た私は、つられて顔が紅くなってしまう。

 

 

「……あ、さ、寒そう…だと…//…思い……まして……///」

 

 

慌てて用意した弁解も尻すぼみになり、たちまち役に立たなくなっていく。

しまった……気を悪くしたかな……そう思っていると、

 

 

「…は、はい……では……御言葉に、甘えて……」

 

 

おずおずとしながらも間に入ってくれた。たちまち彼女の温もりも半霊から伝わってくる。

 

 

「暖かい……」

 

 

リリーホワイトさんの体温で充分暖かくなった半霊を持ったうどんさんが小さく呟いた。

 

私は、黙って右手で其の身体を寄せた。

 

 

「///……入りましょう」

 

 

私は左手で木のドアを開けた。

 

 

「いらっしゃいませ!!」

 

 

店員の声が店中に響く。

 

店内は程良く暖かい。此処ならリリーホワイトさんも元気に動けそうだ。

突然の寒さに、防寒用の衣服を買いに求める人が大勢いたが目的の物が

売られているスペースはすぐに見付かった。

 

其の手前で二人が私から離れる。半霊も元の大きさに戻る。

 

 

「何か、好きなのが見付かったら私の所に持って来て下さい。其を買いますので」

 

「はぁーい!!」

 

 

買い物に来ていた客の目を引かせながら、リリーホワイトが売り場の奥に飛んでいった。うどんさんも一礼をしてから探しに其の後を付いていく。

 

さて……私はマフラーを売っているショップディスプレイの前に立つ。上には綺麗に畳まれ、

並べられているマフラーがある。其の中から、うどんさんやリリーホワイトさんに似合いそうな

配色のものを慎重に選び始めた。

 

すると、

 

 

「みょんさん、此はどうですか?似合うと思いますよ?」

 

 

うどんさんが戻ってきた。まだ私は選び始めたばかりだというのに凄いスピードだ。

持って来たのはロゼ色のミトンと黒色のストッキングだ。でも、何故か其二組ずつ持って

いて、私に其の内の一組を見せた。

 

 

「私のと、御揃いですし」

 

「!え?…私のは大丈夫ですよ?」

 

 

そうは言ったものの、

 

 

「……貴方も…寒そうにしていましたので……」

 

 

其の一言に呆気なく轟沈させられた。

 

見破られていた。実は私も此の気象に耐えられず、密かでありながらうどんさん達と同様寒さに震えて

いたのだ。其をあっさり看破されていたとは……私は両手で火照った顔を覆いたい気分になった。

 

 

「//~~あ、ありがとうございます……」

 

「私、此が良いです!」

 

 

其処へリリーホワイトさんも戻ってきた。其の手には春らしい、子供用のピンク色のミトンと紺色のストッキングが握られている。

 

 

「妖夢さんは、何選んでいるんですか?」

 

「え?…わ、私は……御二人に似合うマフラーで、何か無いかと……」

 

 

そう、返事すると、

 

 

「せっかくですので皆で長い一枚、てのはどうですか?」

 

「「え……//!?」」

 

 

リリーホワイトさんの私達は同時に聞き返していた。

 

 

「くっ付いた方が暖かくないですか?」

 

 

そう言いながら私の前に並ぶマフラーから、私達のミトンと同じロゼ色のものを取って広げて見せたが、

当然広げきれずに床に垂れ落ちた。

 

本当に長い。私達位の少女だったら、三人は余裕で首に巻けるだろう。私達は互いに顔を見合わせる。

うどんさんの顔がマフラーと同じ様に赤くなっている。絶対に私の顔も同じ色になっている。

 

 

「うどんさん///……い//……良いですか?」

 

「え、え、ええ///……大丈夫です…が……」

 

 

私達は、再びリリーホワイトさんの方に顔を戻す。

 

 

「~~わ、判りました///では、会計の方に……」

 

 

リリーホワイトさんはニッコリと笑った。どうやら私達は、春告精を見くびってたらしい。

 

 

 

 

 

レジにて店員から値段を告げられ、財布から其相応の紙幣を引っ張り出して手渡す。お釣りを貰う。

リリーホワイトさんが早速自分の防寒具を身に付けて、喜んでいる。

 

うどんさん、大丈夫でしょうか…?誤って首が締まったりしたらどうしましょう……?

彼女を見ながらぼんやりと考えていた。

 

 

 

 

 

 

其の時、地響き、怒号と共に悲鳴が聞こえた。

 

 

「!!!」

 

 

私達はすぐに入口の方を向いた。

 

 

「!あの声は……!」

 

 

そう言った途端、入口のドアが吹き飛んだ。そして外の寒い空気と共に叫び声も

飛んできた。

 

 

「此処にいたかぁあ!!」

 

 

 

 

REISEN

VS〈春を告げる妖精〉リリーブラック

~人間の里

 

 

「てめえ等…!!……こんな雪降る夜をバカにしてんのか……!?」

 

 

小豆餡の菓子パンヒーローに毎度滅菌される病原菌が操縦してそうな真っ黒なロボットが店の入口を強引に破壊し、姿勢を低くして此方を覗き見ていた。

 

 

「異性とくっ付かず…女子同士でイチャコラとぉお……!!!」

 

 

其の顔に当たる部分のガラス製のハッチを開け、中の操縦席からリリーホワイトさんを黒くした様な妖精がいたが、リリーホワイトさんとは似ても似付かない憤怒の表情で私達を睨んでいる。

 

 

「此の俺様!リリーブラックがぁ!!そんな事を認める筈がアゲッホォオォォオ!!!」

 

 

だけど喚いている途中に、リリーホワイトに綺麗に顔面パンチを決められ、其の際に操縦桿を

手放す。操縦者を失ったロボットは後ろに傾き、店の前で仰向けになって倒れた。

 

 

「……すみません!!せっかく買って頂いたミトンを……!!」

 

 

リリーホワイトさんがみょんさんに謝った。リリーブラックに対してだけは本当に容赦はない。

同族とも見ていないから尚更だ。

 

私達は機械の脚を潜って急いで外に出る。

 

 

「~~て、てめっ……いきなり…顔パンして……汚物扱いだぁゲッホゲッホォオ!!!」

 

 

操縦席から這い出てきたリリーブラックは大きく咳をし始めた。

 

 

「……風邪ですか?」

 

「!だ、黙れ……!不純同姓交遊が蔓延る聖夜みてぇな夜を……俺様は…ぶっ壊しに来たァアクショォオン!!!!」

 

 

宣言の最中に大きなくしゃみをした。其の顔は僅かに…いえ、かなり青ざめている。どうやら

リリーホワイトさんと同じ様に、春に相応しくない気候だと著しく調子を崩してしまう様だ。

もはや自覚すらしていないらしいけど、同じ春告精だからこその宿命なのかもしれない。

其に比べて、リリーホワイトさんはミトンとストッキングを身に付け、暖かそうにしている。

 

 

「………科学発明『妖精』の間違いじゃないんですか?」

 

「!お、おま……妖精呼ばわりするなと……何度もオ"エェェエ~~……!!!」

 

 

リリーホワイトさんに反論も出来ずに、咄嗟に後ろに顔を向けて嘔吐こうとしている。

相当重症らしい。敵ながら哀れな光景だ。

 

 

「……カップルの方々の前で、薄汚いモノ出さないで下さいよ?」

 

「エ"ッホ……!ちぐぢょう……!!」

 

 

リリーブラックが涙目で振り向きながら、

 

 

「やっぱ此以上は耐えられねぇ……!!クソッ…クソッ……!!…撤退して立て直さ

ねえと……!!!」

 

 

そう言うと、苦しそうにしながらも操縦席に戻り、ガラスのハッチを閉めて操作を始めると

ロボットの顔の部分だけが外れ、首から炎が噴射し、機体を起こして急上昇を始めた。

 

 

「!!?」

 

 

只風邪のせいで操作が覚束無い影響もあってか、上昇のスピードは速いものの機体は若干

ふらついている。

 

人里を荒らしてまで私達を探しておいて……何もせずに逃げていくの波動かと思うが、やはり他人の迷惑を

考えていないとなると赦せない。

 

 

「うどんさん!力を貸して下さい!!」

 

「!みょんさん…!?」

 

 

するとみょんさんが、上昇していくマシンのちょうど真下辺りに来ると、背中から楼観剣と白楼剣

を抜き、

 

 

「『反射下界斬』!!」

 

 

目の前に蒼色のバリアが発生させた。

 

 

「うどんさん!!貴方が使用していた、貴方の最強のスペルを私に……!!」

 

 

最強の切り札にしているスペル……赤眼「望見円月(ルナティックブラスト)」に違いない。

でも、あれは弾幕ではない。バリアでも弾く事が出来ない。

 

 

「どうしてですか!?そんな事をしたら…みょんさんにまで……!!」

 

「大丈夫です!思いっきり、撃って下さい!受け止めて見せます!!」

 

 

みょんさんが叫ぶ。

 

 

「うどんさん、私を……私を信じて下さい!!」

 

 

叫びながら私を見る其の両眸に一切の狂いは無かった。心からの言葉だった。

 

私は決意を固めた。貴方がそう言ってくれるのなら…私は……!

身構え、目を閉じ、全神経を集中させ、霊力を貯める。

 

 

 

そして私は、真っ赤に染まっているであろう瞳を見開いた。

 

 

 

「赤眼『望見円月(ルナティックブラスト)』!!!」

 

 

 

眩い光が迸ると共に、巨大な鮮紅色のレーザーがみょんさんに向かって一直線に放たれた。

 

そして、紅いレーザーが蒼いバリアにぶつかる。でもレーザーはバリアを貫通せず、紅い

エネルギーの塊となってバリアの表面に溜まり始めた。

 

 

「!………」

 

 

みょんさんが顔を苦悶で歪めて歯を食いしばり、其のエネルギーを留めようとしているのが

光の中から見えた。

 

 

「手伝いますよ~~!!!」

 

 

すると其処へリリーホワイトさんが飛んでいき、後ろからみょんさんの両肩を持った。みょんさんの

表情が幾分か和らいだ。エネルギー維持の為の霊力を分け与えるのだろうか?

 

 

「~~うどんさん!……私は…構いません…!…~~続けて下さい……!!」

 

 

みょんさんの声が聞こえた。私は照射を続行した。

 

紅い光がどんどんと増していく。辺りが紅い反射光で満たされていく。

 

そしてある程度溜まったのを確認したみょんさんは、力を込めて其のバリアを斜め上に傾け、

溜めていたエネルギーを解放した。

するとまるで鏡に当てた光の様に、レーザーが真上に発射されて上空に逃げるマシンの底の部分を捉えた。

 

 

「!?ウワワ……!!!」

 

 

機体は大きく揺れ、リリーブラックの悲鳴が微かながら聞き取れた。レーザーはマシンを突き上げ

ながら、其のまま夜空の遙か上へ垂直に伸び始めた。

 

私は思わず視線を上にずらし、スペルを中断した。其でも反射されたレーザーは、勢いを落とさずに

夜空に紅い光の筋を描きながら昇っていく。

 

リリーホワイトさんに支えられているみょんさんのもとに行き、其の空を見上げた。里の住民も、皆、夜空を見上げている。

 

 

 

「己えぇえ……こ、こんな時まで魅せ付けて来やがってぇえぇ……!!!…ゲホッゲホッ!!……リア充なんて……リア充なんて、爆発しろぉおぉおぉおお~~~~~~……………!!!!!」

 

 

 

上昇の勢いでマシンから脱出できないリリーブラックの断末魔と共に、やがて雲に紛れて

見えなくなった。

 

沈黙が流れる。

 

 

 

すると次の瞬間、爆音と共に夜空に大きな花火が開いた。

 

 

紅い大きな桜の華、そして紅い大きなハートマーク……どういう原理で形を為しているのかは判らなかった

が、様々な形に開いていく。

里はやがて其を見上げていた住民達の歓声に包まれる。私達も其の光を見上げていた。

 

でも私は身体から力が抜けるのを感じ、其のまま地面に倒れた。

 

 

「!うどんさん!?……」

 

 

 

私は気絶する直前まで、遠くでみょんさんの声が聞いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

YOUMU

~人間の里 入口

 

期せずにあげた花火も終わり、里は再び元の賑わいを取り戻していた。其の里の入口に

ある石段の一番上に腰掛け、私は空を見上げていた。

 

かつて私と幽々子様が期せずして起こした、雪春異変を思い出す。私がまだ幽々子様を『御嬢様』

と呼んでいた、あの時を……

 

うどんさんは隣で寄り添って眠っている。疲れ果ててしまったのだろう。あの場で崩れ落ちた時は本気で泣きそうになったが、其の直後に聞こえた寝息に、心から安堵した。

 

咄嗟とは言え、無謀としか思えない作戦に乗ってくれ、ありったけの力、そして思いを私に

ぶつけてくれた。私はとても嬉しかった。

 

リリーホワイトさんも私に霊力を分け与え続けて疲れたのか子供の様に無造作に脚を投げ出し、

うどんさんとは反対方向から身体を私に預けて眠っている。傍には脱いだ帽子が置かれている。

今更になって気付いた。ストッキングのサイズを誤ったのか、爪先からブカブカの先端が石段の上に

伸びている。でも其が、寝ている姿に更にあどけなさを与えている。

 

彼女も私の手助けをしてくれた。彼女無しではあの場面は苦しかったに違いない。私は、其の頭を

そっと頭を撫でた。

 

私達は、一枚のミトンと同じ色のマフラーをそれぞれ首に巻いている。一枚のマフラーで三人は繋がっている。ならばもう一つ……私は半霊で自身ごと二人を包んだ。二人の温もりが伝わり、再び半霊が微熱を帯び始める。

 

 

「……此からも、ずっと一緒ですよね……?」

 

 

私はマフラーと同じミトンをはめたうどんさんの手を握った。すると寝ていながら、

僅かな力で其の手を握り返した。

 

最初は驚いたが、思わず微笑んだ。そしてもう一度空を見上げる。

 

 

 

空からの幽かな光達が、私達を照らしていた。

 

 

 

 




如何でしたか?

此の異変、春に起きている設定でして季節限定のイベントを当てはめらにくいです……ですので雪は、きっと何処かでレティが頑張ってるのでしょうという事で……
マリスの擬態か、本物かは想像にお任せ致します。リリーブラックは犠牲となったのだ。

イラストです。今回活躍したうどみょん、リリーホワイトです。



【挿絵表示】



そして今忙しい本編のクリスマス用のイラストも……アリスとこころです。



【挿絵表示】



次回から再びコラボを実施していきます。
リリーブラックとの決戦を御送りしていきます。

それでは、次回もゆっくりしていってね♪

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