東方孤傀劇/~Noキミョン?Noウドンゲ?Yesうどみょん!   作:因田司

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今回はリリーブラックの最新作との戦いをもう一人の
神矢君の視点で御送り致します。

原作とは少し異なる点があるとは思いますが、
暖かい目で見て下されば、幸いです。

それでは、ゆっくりしていってね♪


Requests;ラプトル・フェアリー

SHINYA(ANOTHER)

VS LB-WFF-00/Ma

~魔法の森

 

 

「~~~………!!」

 

(?どうした?黙っているけど何があった?)

 

 

まさかの乱入に少しは驚いたけど、実は内心吹き出しそうになっていた。

リリーブラックの妖精から作っていたのがまさか、こんなヘンテコな襟付きのトカゲだったとは。

 

擦れた声で必死に威嚇していたエリマキトカゲみたいなのが、羽根や襟巻を畳んで威嚇を止めた。

 

そして見え見えの突かれたフリを止めるといきなり其のまま四つん這いになって走り出した。

此方に迫ってくる其の走り方が左右に若干フラフラしていて危なっかしい雰囲気がある。

妖精を変貌させた身体にまだ慣れてないのか、其とも元からの走り方なのか?……

 

 

「フージョン『炎龍王』!!」

 

 

すると王牙の髪と瞳の色が燃える様な赤色に変化し、身体から炎がオーラの様に溢れだした。

あれが二番目の龍の力か…

 

 

「灼熱『サンシャインブラスト』!!」

 

「烈火『フレイミングフォース』!!」

 

 

俺と王牙は頭上に火球を出現させ、其を投げつけた。

だがトカゲは、流石に其等は左右に素早く動いて回避した。二つとも着弾した途端

大爆発を起こし、勢い良く火柱が上がった。

 

するとトカゲは走りながら襟巻を開き、四つの蒼眼から紫色の音波の様な怪光線を放ってきた。

 

 

「俺が迎え撃つ!!」

 

 

其処で、駆真が前に進み出た。

 

 

「覚醒『麒麟』!!!」

 

 

すると駆真の両足が光り出し、其の額に俺達が地下で出会った、豪放な鬼、星熊勇儀の様な

立派な一本角が出現した。

 

 

「行くぞ!!」

 

 

其のまま凄いスピードで怪光線をかわしながらトカゲの方に向かって行った。病み上がりだと

言う事を全く感じさせない程の俊敏さだ。

俺達も駆真によけられ、此方まで来た光線を回避した。

 

互いの距離が縮まっていく。さっきの王牙と駆真の蛇と同じ感じだな…ギリギリまで

詰めるか……?

 

だがトカゲは駆真との距離が大分縮まった処で、突然急ブレーキをかけた。

 

 

「!?」

 

 

其の場で身を翻し、棘の付いた尻尾の先端を勢い良く駆真に突き出してきた。

駆真は、速度を落とさずに其処から前に宙返りをして紙一重で攻撃をかわす。

 

 

「!速い……!」

 

 

王牙が驚きの声を上げた。

 

其のまま敵の左側に着地した駆真は、尻尾の付け根を下から膝で蹴りあげた。

 

 

「!ギェビ!?………」

 

 

其の衝撃でトカゲの身体も地面から浮き上がる。

 

あの巨体を浮かせるか……凄い脚力だな……そう思い、今がチャンスと見た俺も、トカゲの方に走りだした。

 

 

「王牙、援護射撃を頼む!!」

 

「!よし……!」

 

 

浮き上がった身体が着地する前に、俺は駆真とトカゲを挟む様に反対側から接近し、

 

 

「トカゲと病気のコラボなら再生するか!?貫通『スロータラススピア』!!!」

 

 

俺の胸からさっきよりも更に太い槍をより素早く突きだす。

槍は目の前に伸びる尻尾を捉え、付け根から切断した。

 

 

「!?ギュビャァアァアァァ!!!!!」

 

 

トカゲは溜まらず腹這いのまま前方に跳び、地面に倒れてのた打ち回った。槍は駆真の目の前で

勢いを止めた。

 

其の切り口を見たが、妖精ならでは再生力は発揮されていない。再生しねえのかよ、俺は

そう思いながら槍を消滅させた。

 

 

「弱えな……!リリーブラックの十八番はこんなものか!?」

 

 

そう言いながら、今度はトカゲの真上に向かって飛び、

 

 

「逆巻『ダウンウォードエアカレント』!!」

 

 

地面に向かって、竜巻を発射した。

 

竜巻がうねりを上げながらトカゲの背中に直撃し、其のまま地面に強く押し付けた。

其の瞬間、紙が破ける様な嫌な音を立てて蝶の様な大きな羽根がバラバラに千切れ飛んだ。

 

 

「よし、此で飛べなくなったぞ!!」

 

 

トカゲは地面に亀裂とへこみを残しながら反動でバウンドし、錐揉み状態のまま宙高く

回転しながら近くの木に腹から激突した。

 

ヤモリみたいに幹にへばりつきはぜず、其のまま根元までズリ落ちた。

 

 

「……妖精を素体したのが間違いじゃねえか?……此じゃあ、氷の妖精でも勝てるぞ……」

 

 

そう呟いた俺は、其の時良い事を思い付いた。

 

 

「おい!王牙!!」

 

「!何だ!?」

 

 

矢継ぎ早に伸びたトカゲの背中に追い撃ちを浴びせていた王牙が俺の呼びかけに応える。

 

 

「もう一回凍らせる!今度は俺も手伝うぜ!!」

 

「!そうか……!爬虫類は寒さに弱いからな!」

 

 

王牙が発射を止めると、トカゲが手を地面に付けながらゆっくりと立ち上がった。

全開になった襟巻は怒りで小刻みに震え、木にぶつかった際に潰れずに残った襟の二つの

目玉が鋭く睨んでいる。

 

 

「今度は逃げられない様に全身を凍らせるぞ!!」

 

「俺が凍らせやすい様に濡らします!!覚醒『玄武』!!」

 

 

すると今度は駆真の目と髪の色が緑色になり、純白の蛇が其の身体に巻き付いた。

左手を下から上にあげると、トカゲの足下から地割れと共に勢い良く水が噴き出た。

 

 

「!?ギャゴポポ……!!??」

 

 

不意を突かれた敵は、ずぶ濡れになりながら足下からの洪水を振り払い、後退した。

噴水はすぐに止まり、水は勢いを弱めながら亀裂の中へ再び入って行った。

 

 

「フュージョン『氷龍王』!!」

 

 

王牙も兎もどきと戦った時と同じ様に髪と瞳が水色に変化し、周囲の空気が白くなり始めた。

 

 

「氷河期『グレイシャルピラー』!!」

 

 

返信の間に俺は、俺達と敵の間に巨大な氷の柱を出現した。其が発する冷気に伴い、周囲が一気に冷え始める。其処でトカゲの体を濡らしていた水分が音を立てて凍り始めた。

危機を察したらしく、トカゲは木の幹に昇って距離を取ろうとしたが徐々に氷は大きくなり、身体を支え切れずに体温低下も相まって動きが一気に鈍くなっていった。

 

 

「逃がすか!!」

 

 

王牙がそう叫ぶと木にすがり付いているようになっているトカゲの周りに霧が出現した。

其は周りを月の光に反射して紅くキラキラと輝いていた。

 

 

「氷霧『アブソリュートフリーズ』!!」

 

 

そう宣言し、指を鳴らした。

 

其の瞬間には霧に包まれていたトカゲは木ごと完全に凍結した。氷の中でトカゲは

まるで助けを求めるかの様に、一緒に凍った木の梢に向かって手を伸ばしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……完全に終わったな」

 

 

王牙が氷を見ながら俺の方に近付いて言った。二人の髪の色や瞳はすっかり戻っていた。

 

 

「何だ、駆真より弱いじゃねえか。拍子抜けだぜ」

 

 

肩足の爪先で地面を突きながら言う。

 

其の時、駆真が何かを思い出したかの様に俺に向かって言った。

 

 

「駄目だ!まだ、最後の……!」

 

「!何?…最後?」

 

 

すると今度は王牙の方に顔を向けて叫んだ。

 

 

「急いで氷から離れて下さい!!」

 

「!?何だか判らんが、まだ何かあるんだな……!?」

 

 

訳が判らず、俺達は氷から離れようと走り始めた。

 

 

すると、後ろから紫色の光が迸った。

 

 

「!?」

 

 

俺は振り返って見ようとしたが、

 

 

 

「来るぞ!!跳べぇえぇ!!!!」

 

 

 

駆真を訊き、三人でほぼ同時に地面にダイブする様に跳んだ。

 

次の瞬間、背後から轟音と共に衝撃波が発生した。其を諸に背中に浴び、俺達は更に前に

吹き飛んでうつ伏せのまま再び地面に倒れて転がった。

 

だが、其はすぐに収まり、森は静かになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「~~何だ……何が起こった……!?」

 

 

王牙が立ち上がって言った。俺は仰向けになり視線を後ろに向ける。

 

さっきと同じ様に巨大な氷の塊があるが其の中にトカゲの姿が無い。良く目を凝らしても

確認が出来ない。代わりに氷の中には紫っぽい色の液体が満たされていた。

 

 

「……何処に消えた?」

 

「リリーブラックは……素体となった妖精の体内に心音爆弾を仕掛けたんです」

 

 

そう言った駆真は俺の前まで吹き飛んでいて、今度は王牙に助けられながら立ち上がっていた。

 

 

「!心音爆弾……心臓止まったら爆発するアレか……!?」

 

「死んだ途端に道連れにする為か…普通の氷だと俺達も危なかったな」

 

 

俺を助けながら立たせ、中身が消滅して普通の色に戻る氷に顔をしかめながら王牙は言った。

一緒に凍らされていた木も氷の中で跡形もなく吹き飛んでいた。

 

 

「逃げ切る為なら、手段を選ばないってか…笑えねえ」

 

 

俺は鼻で笑いながら言った。

 

其処で、俺はもう一つの事に気が付いた。

 

 

(……………)

 

「……どうした?」

 

 

俺は小声でもう一人の俺に訊く。

 

 

(………いや、何でもない。外道だなって、思ってただけだよ)

 

 

嘘だな、俺はすぐに見抜いた。そして今考えていた事も見抜いたが、

 

 

「……ふーん」

 

 

だが興味も無さそうに、さっきと同じ反応で返事をする。で、其のまま話題を逸らす。

 

 

「……じゃ、駆真。さっきの続きだ。聞かせてくれよ」

 

「ああ、話すよ……」

 

 

其処まで言った駆真が突然顔を上げた。

 

 

「だが、移動しながらで良いか?此のままだとリリーブラックが……」

 

「そうだな……なら事情は、其の間に聞こうか」

 

 

俺の横から王牙が言った。

 

 

「遠くに逃げられる前に少しでも追い付かないと」

 

「少なくとも、妖精の仇もとってやらねえとな」

 

 

俺は親指で氷の塊を指差した。

 

 

「…其もあるだろ?」

 

 

……さて、俺は正直リリーブラックと戦うのを楽しみにしてたが、駆真がどうして俺達と

敵対したかも興味があった。禁忌に手を染める背徳感ってのがどんなものなのか、

参考にしてみたかったのもあったが。

 

 

俺達は奴が逃げて行った方向にまっすぐに飛翔を開始した。

 

 




如何でしたか?

ゲストの方々を前に歯も立たてられず、あまりにも散々な最期でした。
リリーブラックが此を聞いたら、大泣きしてしまいそうです。

次回は、駆真君がマリス側に就いたいきさつを紹介します。

それでは、次回もゆっくりしていってね♪

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