東方孤傀劇/~Noキミョン?Noウドンゲ?Yesうどみょん!   作:因田司

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今回は、ゲスト同士の対決を王牙君視点で御送り致します。

原作とは少し異なる点があるとは思いますが、
暖かい目で見て下されば、幸いです。

それでは、ゆっくりしていってね♪


Requests;影光なる内輪もめ~Twin Side Battle~

OUGA

VS〈駆け抜ける神人類〉神崎駆真(クルム)

~魔法の森

 

 

「アイツが……神崎駆真……!?」

 

 

黒いコートに黒いフードのクルムと呼ばれ、突如現れたリリーブラックの腹心の様に思われた人物。まさかソイツが奴の捕獲する方だった、もう一人の異世界の奴だったとは……

 

フードを退けて見えた素顔だが、其の顔立ちから俺達とほぼ同年代と思われる。

だが其の皮膚は人間のものとは思えない程酷く紫色に変色していて、更に額には同じ大きさの一つの蒼い眼が縦に見開かれていた。

 

あれが例の病気に浸食された状態か……擬態した副産物とはまた違った

おぞましさを感じた。

 

 

「覚醒『朱雀』!!!」

 

 

いきなり駆真の背中に薄い紫色の翼が出現し、其の左手にはレイピアらしき黒い剣を持った。

 

あれが駆真の能力か…と思っていると、いつの間にか目の前にまで来ていた。

 

 

「!!??」

 

 

突き出したレイピアが顔に刺さる瞬間、辛うじてドラゴガン二丁の銃身を重ねて防いだ。其の拍子に激しい金属音が響く。

 

 

(!~~強い……!!)

 

 

そう感じながら、クロスさせた両手を前に出し、相手を突き放しながした。

駆真は何とか踏みとどまり、自分から翼を利用して更に大きく後退した。

 

俺は相手に銃口を向ける。其の時駆真が喋った。

 

 

「……初メテダガ……龍神王牙ダナ?」

 

 

俺は面喰い、思わず銃を下ろしそうになった。

 

 

「どうして俺を?……お前、俺と初対面だろ……!?」

 

 

だけどすぐに紫が言っていた言葉を思い出す。

 

 

『…病気を患う人形遣い、アリス・マーガトロイドから排出される其の精神は一つ……すべて彼女が影達を統制している』

 

 

……そうか、もしかしてさっき鈴仙に化けた副産物に教えた名前を、駆真の中の別の副産物が其を通じて教えたのか。

 

とにかく今は駆真の武装解除、其が最優先だ。リミッタ―を外して押し切るという手もあるが……別の目標がいる。

 

 

「貫符『トラジカルスピア 手中』!!」

 

 

神矢が飛びかかり、駆真に槍の先端ではなく、根元部分が当たる様に振り下ろした。駆真が

レイピアで其を受け止めた。

 

すると、神矢がある事に気が付いた。

 

 

「!!お前……其の右手は……!」

 

 

其の言葉につられて俺も相手の右手を見た。

 

黒いコートの右袖から出ている其の手も紫色だったが普通の手よりも一回り大きく、人間には

無い、先の尖った鱗の様なものに覆われていた。まるで手甲をはめているような感じだ。

 

 

「俺ハオ前ト同ジクヲ失ッタ。ダガナ……」

 

 

駆真の言葉に嫌な予感がした俺は、其の左手に向かって一発弾を撃った。

 

だが弾が到達する瞬間、素早く手を振って裏拳で弾を弾いた。

 

 

「!?」

 

 

弾かれた弾は近くの木のど真ん中を撃ち抜き、衝撃で軋みながら倒れた。

 

 

「嘘だろ……!銃弾を手で弾くか……!?」

 

「其ノ程度ノ銃弾……」

 

 

そう言いながら神矢との武器の押し合いに勝ち、突き放した。

 

 

「!お!?……」

 

 

よろめいた所を、駆真は其の腹に垂直に蹴りを入れた。

神矢は其のまま吹き飛びながら一本の木を吹き飛ばし、其の根の向こうに消えていった。

 

 

「!神矢!!」

 

 

だがすぐに悪態をつきながら素早く立ち上がった。

 

 

「~~畜生…!やりやがったな……!?」

 

 

神矢は、再び槍を手に駆真に飛びかかった。

 

其の時、駆真が右の袖をめくった。

 

 

何のつもりだ……?

 

 

そして、其処からとんでもない事が起こった。

 

 

 

 

 

 

肩から右手の先までが、突然巨大化した。

 

 

「な……!??」

 

 

其の掌が駆真の上半身を囲い込む様に覆った。指と指の間にはまるで糸を引いた様な水かきが

張ってある。

 

舌打ちしながら、今度は何度も弾を発射した。

だがいくら撃ち込んでも、喰い込みもせずに全て鱗や水かきに弾いてしまう。神矢が飛びかかりながら放った一突きもまったく効かず、逆に弾かれた衝撃で地面に転がった。

 

人の手があり得ない形状に……此も紫の言ったとおりになってしまった。

さっきの鈴仙のガトリングと言い、変形に予想が付かない。何だよ、此の病気は……

 

 

「其ノ程度カ……?アノ妖精ハ倒セナイゼ?」

 

 

駆真が手の向こうから言った。俺は銃口を向けながら眉をひそめた。

 

さっきから駆真が喋っているが……喋っているのは間違いなく駆真じゃないか……?鈴仙の時とは

言葉使いが明らかに違う。やられたら最後、洗脳されてしまうと紫からは聞いていた。

だとすれば、喋り方も女性形になる筈……

 

其処まで考えた俺はハッとした。もしかして、まだ意識が……!?

 

すると神矢が後ろに下がり、俺の隣で着地した。

 

 

「クソ……只でさえ駆真だからって迂闊に攻撃出来ねえってのに……!」

 

 

俺は二丁ともホルスターに戻し、腕の超次元転送装置を使い其処から今度はワクチンの入った

注射器を取り出した。

 

此を使えば……!俺は神矢に指示した。

 

 

「神矢!あの盾みたいな手を押さえててくれ!」

 

 

何故そのような事を言われたのかを理解したかは判らなかったが、頷いた。

 

 

「割符『アースクラック』!!」

 

 

神矢は足を振り上げ、思いっきり地面を踏みつけた。

 

其の瞬間、神矢の足下から駆真の足下まで一気に大きな亀裂が走った。

咄嗟に避けようとした左足が其に嵌まり、駆真は身動きが取れなくなった。

 

神矢は素早く近寄り、盾の様な右腕の後ろに回り込んだ。

 

 

「貫符『トラジカルスピア 手中』!!」

 

 

其処でまた槍を左手に召喚し、其を目の前の腕に向かって突き立てた。

槍は手首の柔らかい内側の貫きながら地面に深く刺さる。

 

 

「まだだ!!貫符『トラジカルスピア』!!」

 

 

今度は胸辺りからも槍の先端を召喚し、目の前にあった右肘を鱗の無い側面から射止めた。

 

二点から突き刺されていても駆真はまったく痛みを感じていない様だったが流石に引き抜くのは

至難の業らしく、必死でもう片方の腕を伸ばしながらもがいていた。

 

 

「ほら!右手は封じたから……何かやるんだろ!?早くやれ!!」

 

 

此で脅威は封じられた。正面からでもいける……!!俺は走りだした。

 

だが、

 

 

 

「覚醒『玄武』!!!」

 

 

 

 

駆真の身体の後ろから、黒い鱗を持った大蛇が出現した。

 

 

「!マズい……神矢!!」

 

 

だが蛇は神矢ではなく、俺に向かって大口を開けて紫の牙をちらつかせながら、此方に向かって

高速で迫って来た。

 

此方が危険と判断したか……だが、簡単に喰われてたまるかよ……!俺は速度を緩めなかった。

 

蛇の頭と俺、其の距離がどんどん縮まっていく。蛇の瞳が鮮明な赤色を帯びて光るのが判る。

 

ぎりぎりまで引き付ける。少しでも遅れたら失敗だ……蛇が更に開けた口を大きくした……

 

そして蛇が俺に向かって牙を突き立てようとした瞬間、其をかわして上に跳んだ。

其のまま太い綱の様な身体に飛び乗って走り、其処から駆真に向かって更にジャンプした。

 

 

「!?」

 

 

駆真が俺を見上げた。

ジャンプから着地までそう時間も無い。蛇が戻ってくる時間も僅かだ。

 

此処しかない。俺は空中で持っていた注射器を振りかざした。

 

 

「此で……どうだ!!」

 

 

俺は両足が地面に付くのと同時に手を動かし、駆真の首に注射器の鋭い針を深々と突き立てた。

 

 

「!!………」

 

 

直ぐに中の乳白色の液体が、駆真の身体に注入された。すると刺された個所から、たちまち皮膚の紫色がブチ模様の様になって消え、健全な肌色に戻っていった。

同時に右手も黒い塵となって消えていった。

 

駆真は其の場で片膝をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「駆真さん!!」

 

 

入れ替わった神矢が駆真の左から肩を貸した。

 

 

「凄い効果だな……」

 

 

俺は空になった注射器を見て呟いた。周りを見て大蛇もいつの間にかいなくなっている事に

気付く。

 

 

「…大丈夫ですか!?」

 

 

神矢が声をかける中、俺は駆真の目の前に立った。

 

 

「……神矢………」

 

 

神矢の声に応え、ようやく顔を上げた。額の眼は無くなっていた。

 

 

「駆真……お前が、神崎駆真だな?」

 

 

俺の質問に彼は頷いた。

 

 

「……はい」

 

「駆真さん、右腕を……」

 

 

偽の、そしておぞましい右腕を失ったコートの右袖は、ヒラヒラと揺れていた。

 

 

「……お前も…左腕を失ってるぞ……」

 

 

駆真も言葉を返す。

 

自分が捕える方に味方をしてた……何か事情があるのかもしれない。

その見返りに失った右手を補って貰ったのか?

 

俺はもう一度訊いた。

 

 

「いったい何があった……教えてくれないか?」

 

「……判りました………」

 

 

そして大丈夫だ、と神矢に言って自力で立ち上がった。

 

 

 

 

其の時だった。

 

 

「!何だ……?」

 

 

俺達の周りの木の葉、草も一斉にざわめき始めた。

さっきまで風が吹いていなかったのに……おかしい。其の音は徐々に大きくなっていった。

 

そして月が雲に隠れたのか、俺達に影が差した。

 

 

「!来ます!気を付けて下さい!!」

 

 

そう駆真が言った途端、突然強風に煽られた。

俺達は耐え切れずにそれぞれ別の方向に大きく吹き飛ばされ、地面を転がった。

 

 

「!?~~な、何だ……!?」

 

 

訳も判らずに急いで立ち上がり、視線を上に上げた。

 

森の木々の間から何者かがゆっくり降下してきた。月が隠れているせいで大まかな姿しか

確認出来ない。

短くもしっかりとした両脚。羽ばたく度に地面に強い風圧を発生させている、巨大な両翼。

そして棘の付いた太くたくましい尻尾。

 

其の影を見た俺は思った。

 

 

(まさか…龍か……!?)

 

 

そしてソイツは先程まで俺達がいた処にゆっくりと着地した。俺達の処に二人が戻って来た。

ちょうど其の時、雲の合間から紅い月が顔を出し、其の姿を照らした。

 

相手の全貌が見えた時、俺達は………

 

 

 

 

 

「「「………何だコイツは??」」」

 

 

ほぼ同時に呟いた。

 

其処にいたのは紫色の巨大なエリマキトカゲだった。

首には其に相応しい渦の様な幾何学模様が刻まれたエリマキが畳まれている。背中には襟巻と同じ独特な形をした、だが蝶の様なヒラヒラとした羽根がある。

顔にある左右の眼は、カメレオンみたいに違う方向を見ている。

 

前足をだらんと下げ、二本脚だけで直立した其の姿は何ともひょうきんだったが、其が俺達より

少し大きいとなると、不思議とそうも言えなくなる。

 

 

「!……コイツも。病気の産物か……!?」

 

 

神矢の声に反応したのか、顔の二つの眼が此方を向いた。

 

其の時駆真が言った。

 

 

「コイツが……多分、妖精にマリスを投与して作り上げた、リリーブラックの生物兵器です!」

 

 

聞き慣れない言葉を聞いた俺は、訊いた。

 

 

「!マリス……其が病気の産物の名前か!?」

 

「そうです!本体のアリスと悪意(Malice)でマリスだそうです!」

 

「何だって妖精と病気でエリマキトカゲになるんだ……!?」

 

 

俺は神矢と駆真を交互に見た。

紫が言っていた事…更に紫でさえ言ってなかった事を口にしているところから、何度も此の幻想郷に来ている様だ。

 

妖精……確かに言われて見ると、伸長の割にはほっそりとした体型や蝶の様な羽根と、妖精の面影が残っているように見える。おまけによく見ると、頭の皮膚の

たるみが、まるで女の子が髪を結んでいるかの様にまとまっていた。

 

紫が言っていた通り、何処までもろくでもないな、あの妖晴……実際、会って見てかなりのものだなとは思ってたが……

 

 

「ギュビェエエェエ………!!!!」

 

 

するとソイツが姿勢を低くしながら割れ鐘みたいな声で威嚇を始めた。羽根を拡げ、エリマキも

一斉に逆立てる。其処には縦横に計四つの蒼い瞳の目玉が開いていた。

 

 

「話は、コイツを片付けた後になりそうだな……!」

 

 

俺の言葉を合図に、立ち直った駆真も含めた俺達は臨戦態勢に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???(ALICE ORIGINAL)

~地霊殿 アリスの部屋

 

 

「!!………」

 

 

私ハ不意ニベッドノ上デ目ヲ醒マシタ。

 

 

「……ドウヤラ、失敗シタ様ネ」

 

 

布団ヲ退ケ、上半身ヲ起コス。

 

 

「デモ、良イワ。此ノ幻想郷ガ終ワレバ……」

 

 

 

 

 

コキッ………!!!!!

 

 

「!?」

 

 

再ビ腹痛ニ襲ワレ、痛ミニ耐エル為ニ身体ヲ丸メル。

 

 

「!?~~~ア"ァ………!!!」

 

 

下腹部アタリヲ押サエ、外ニ漏レナイ様ニ声ヲ押シ殺シテ呻イタ。

 

ア…~~余リニ…成長ガ……速イィ……!!

 

 

「~~マダヨ……イ、良イ子ダカラ…大人シク!ヴゥ……!!」

 

 

小声デソウ囁クト、ヤガテ収マッタ。上半身ヲ再ビベッドニ倒シ、荒クナッタ息ヲ整エ始メル。

ヤガテ呼吸ガ落チ着イテ来タ。

 

 

「……フゥ…イズレ、全テノ次元ノ幻想郷ニ『私』ヲ送ルシ……問題無イカ」

 

 

モウ一度上半身ヲ起コシ、身体ヲベッドカラズラシテ床ニ足ヲ降ロス。

其ノ足先ガ、履キ慣レタブーツニ触レル。

 

 

「其ニ今、興味有ルノハ……」

 

 

私ハブーツノ紐ヲ確認シナガラ、ドアノ方ニ目ヲ向ケタ。

 

 

「……リリーブラック、貴方ノ方ダケドネ……クク……」

 

 

私ハドアヲ開ケ、其ノ身体ヲ彷徨ウ屍ノ様ニ歩『カセテ』行ッタ。

 

 




如何でしたか?

駆真君を無事に連れ戻せました。一時はどうなるかと思いましたが……
此でようやくゲストの方々全員揃ったと言えましょう。

次回は真剣な空気をブチ壊しにした生物兵器との連戦になります。

それでは、次回もゆっくりしていってね♪

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