東方孤傀劇/~Noキミョン?Noウドンゲ?Yesうどみょん! 作:因田司
ゲストの方々とリリーブラック達が出会ってしまいます。
もう一人の神矢君視点で御送り致します。
原作とは少し異なる点があるとは思いますが、
暖かい目で見て下されば、幸いです。
それでは、ゆっくりしていってね♪
SHINYA(ANOTHER)
~魔法の森
俺は神矢の中から二人の会話を暢気に聞いていた。
(……そうか、お前の中にもう一つ人格がいるのか)
(人格…と…言いますか…まぁ、色々複雑なんですよ……対応が変わると思いますので、其の時は…)
(判ってるさ。間違いない様にする)
……しれっと俺の事も言ってるし……まぁ、混乱しねえ為にも言ってくれると嬉しいけどよ。
其の時、突然王牙が何者かにぶつかった。
(!?)
王牙は何とか持ちこたえたが、相手は其のまま月の光の当たらない地面に倒れた。
(!?大丈夫か……)
王牙がソイツに近寄って手を差し出した。倒れた人物の顔あたりが此方を見るかの様に動いた。
(ホアァアアァアァァ………!!!!!)
突然訳の判らない声を上げると、慌てて木の陰に隠れた。
其の声は少女……でも、俺達の前で月の光に当たる木に隠れているのは俺達より確実に身長が高いから女性……か?まぁ、そんな風貌だ。
第一印象は、男装した女不良だ。タキシードを見事に着崩している。
タキシードなのは燕尾が見えていた事で一発で判った。
金髪もぼさぼさで艶が無い。目は真っ赤に充血し、目の下のクマも酷く、
げっそりと頬肉も落ちている。相当過酷な牢獄生活を送っていたに違いない。
(イケメンと衝突したぁ……マジ運命だろ此……!?)
口も驚くほどに悪い。
顔の残り半分だけは木に隠してて見えなかったが……何か秘密があるのか…?
「!」
其の出ている半分の顔は写真で見憶えがあった。
顔を半分木で隠しているが、コイツは……!!
(……お前……リリーブラックか?)
もう一人の俺が訊いた。流石に考えてる事は同じか。
(!何……!?)
今度は王牙が気付かなかった様だ。
やったじゃねえか神矢。此で王牙と並んだぜ?
其の質問をされた瞬間、相手は明らかに態度が変わった。
(!?何だ……てめえ等、俺様の名前を気安く呼ぶたぁ……)
……ビンゴ。今回の戦闘相手と見事にぶち当たった。
しかも自分からバラした。コイツは想像以上の馬鹿と見た。
間抜けな極悪脱獄囚は木の蔭から全身を姿を現した。
右半分の肌の色は暗い紫色に汚らしく変色していた。何より其の眼窩に、此でもかと言わんばかりに押し込められた三つの眼球。
其のお陰で顔の右半分をほとんど目が占領しているという、実におぞましさが醸し出されている。おまけに全部が違う方向をギョロギョロ見ているからより一層グロさが増している。
他人から隠したがるのも判る気がした。
(其方から出てくるなんて、有り難い限りだな)
王牙がドラゴガンを両方取り出して、其の内の一丁をリリーブラックに向けた。
(!はぁ!?此方ぁ全然有り難くねぇし!ラブコメでも無ぇぞ、
こんなキュンとする様な出会い方で、キュンともしねえクソガキ共と鉢合わせするなんて……)
両手もあげずに言い放った其の言葉に、少しカチンと来た。
「神矢……代われ」
俺は今出ているもう一人の神矢に言った。
(!……え?)
「良いから代われ」
(判ったけど、何する気だ?)
「良いから、黙って見てろ……」
「……………」
神矢と入れ替わった俺はリリーブラックに近付いてきた。
「!ふふーん、何だ坊や、早速やり合うか?」
相手は完全に馬鹿にしている表情で言った。
俺は目の前に立った……其の途端に、
「貫符『トラジカルスピア 手中』!!!」
右手に槍を召喚し、其の尖った先端を思いっきり顔面に突き刺してやった。
「!!?ギヤァアァアァオゥアェエェエェェエ!!!???」
あまりの痛さと刺した時の勢いからか大きく吹き飛び、近くの木に激突し、其のまま土の上に転がった。
「ヌガァアァ!???何モ……何モ、見エネェエェエエェ!!!!!?????」
ジタバタもがきながら出す声のトーンが無茶苦茶になっている。さっき聞いた鈴仙って奴に擬態した化け物と同じだ。
「坊やだからって舐めて貰ったら困るぜ?」
「~~痛ッテェエエェエナ!!!顔面ニ刺シヤガッテ顔面ニィイ!!!!」
そう喚くと顔面に盛大に突き刺さったトラジカルスピアを乱暴に引き抜いて放り投げた。
直ぐに顔の真ん中に空いた大穴から黒い液体が大量に吹き出し、服を黒く染めていった。
だが、たちまち黒く染まっていた顔が元通りになっていた。
元通りに鼻や目が発現していく。右目の三つ目までそっくり其のままだった。
「!?畜生……セっカく御洒落シた途端に此かよ……!!」
顔の傷が癒えていくと同時に声も元に戻っていく。
紫が言ってた通りだな。やっぱり、気色悪いのを体内に入れてしまってたか……
「……弱いな…」
王牙が呟く。
「さしずめ妖精と病気の治癒力、奇跡のコラボレーションだけが取り柄か……」
俺も便乗する。すると、
「!?妖精だと……服汚したうえに俺様を妖精呼ばわりしやがって……!!」
俺の妖精と言う言葉に敏感に反応し、また喚き始めた。
俺以上に喧嘩っ早いな……写真のしかめた顔を思い出す。成長していてもしかめた顔は
変わらないだろうな。
不良だな。本当に、ドキュンだな。
「貴様等は、俺様を怒らせた……」
ゆらりと立ち上がり、俺達二人を睨んだ。三つの蒼い瞳も全て此方に向いた。
本気出してきやがったな……と思いきや、
「おい、クルム!!!」
すると、其の声に反応して木の蔭から突然黒い影が飛び出して来た。
「!新手か……!?」
俺達が其の新手に気を取られた隙に、
「悪ガキ共如きに、わざわざ手を汚すまでもねぇ!!」
リリーブラックの足下の土から、大量の黒い液体が湧き出した。
「!?」
其はある形をとり、やがてリリーブラックの傍で完全な形で土を蹂躙した。
「あれは……バイク!?」
かなり大型のバイクだ。だが其のボディは黒と紫色に統一されて禍々しく、所々蠢いていた。
前後の車輪には其々蒼い瞳の巨大な眼球があって此方を見ている。
「!しまった!」
リリーブラックは素早く其の座席にまたがり、爪がある節くれ立った人の指の様な紫色のハンドルを掴み、捻った。
途端にマフラーの震動と共に、生々しい排気口から紫色の煙が勢い良く吹きだした。
「待て!!」
リリーブラックを乗せた生体バイクは急速に旋回すると森の木々の間を走り抜けていった。
「あ~~ばよっっ、精々頑張んなぁ!!!」
バイクのエンジンに揺られながら、正常な右目であかんべぇしながら共にそう言いやがった。
王牙がドラゴガンで足止めしようとしてタイヤの目玉を狙い撃ったが、届かなかった。
舌打ちをして発砲を止めた王牙は俺が見ている目の前の人物に視線を向けた。
「取り敢えずは、先に倒さないといけない様だな……」
其を聞いた俺は改めて新たな敵を観察した。
身長は俺達とほぼ同じで、全身を黒色のコート、そして黒いフードが別々になっている。
其の顔はコートと夜の暗闇のせいで全然見えなかった。
堂々としていた。其の場で根を伸ばして立っているかの様にも見えた。
其処から俺は判った。強いな、コイツは……
其の時、コートの奥から眼光が見えた。僅かに瞳も見えた。
鋭い……が、其の時俺は妙な感覚を覚えた。
「……神矢……」
俺は俺の中で待機している、もう一人の俺に小声で聞いた。
(?何……?)
もう一人の俺が返事をする。
「俺……コイツを知ってる気がする」
(!どういう事……?)
「フードの奥の視線に覚えがある…誰だ?」
其の時、敵が其のフードをさっと外した。
「!!」
(!!お……お前は……!!)
其の顔を見たもう一人の俺も気付いた様だ。
「まさか…お前だったとはな……」
「?誰だ、神矢……いや、もう一人の神矢、知っているのか…?」
俺と神矢の区別をしっかりつけ、王牙が訊いてきた。
答える代わりに、俺はソイツの名前を囁いた。
「神崎……駆真……!」
「!何……!?」
過去にこっちで共に戦った、異世界の奴だった。
如何でしたか?
クルムの正体がまさかのもう一人のゲストでした。
どういう経緯でマリスの下に就いてしまったのでしょうか……
次回はゲスト同士の対決となります。
それでは、次回もゆっくりしていってね♪