東方孤傀劇/~Noキミョン?Noウドンゲ?Yesうどみょん!   作:因田司

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今回はゲストの方々の準備回……と言ってしまってましたが、
大半は戦闘です。

現在活動しているもう一人のゲスト、九賀神矢君の視点で御送り致します。


原作とは少し異なる点があるとは思いますが、
暖かい目で見て下されば、幸いです。

それでは、ゆっくりしていってね♪


Requests;斥候での証明

SHINYA

~魔法の森

 

 

「そうか……九賀神矢というのか」

 

 

俺は隣に歩く、俺と同じような年齢の青年とお互いの自己紹介をしていた。

 

彼の名は龍神王牙で、人間と龍帝王のハーフだ。

龍帝王は絶対的な力と地位を持ち、其の地位は他の神々や龍神よりも高い。つまり、神奈子様や

諏訪子様よりも偉いという事だ。

 

そんな人が俺の隣に……思わず恐縮してしまう。

 

其の腰にはドラゴガンという二丁の銃はホルスターに収められている。更にホルスターは腰に

巻いている九つの宝玉が輝くベルトに収納されていた。

其の宝玉には一個ずつに龍王が封印されていて計九柱の龍王が封印されている事になる。

封印が解けると龍王達の力を借りる事が出来、今は三柱の龍神から力を借りられるとの事。

ドラゴガンで其の力を打ち出す事も出来るらしい。

 

龍の力か……羨ましいなと感じる。俺は鬼なんだが……

 

 

すると、王牙さんの足が止まった。俺も足を止める。

 

 

「……神矢」

 

 

王牙さんが俺を呼ぶ。

 

 

「?何ですか?」

 

 

俺が訊き返すと、突然王牙さんは後ろを振り向き、素早く抜いた一丁のドラゴガンを

遠く離れた一本の木の上に向け、一発銃弾を撃ち込んだ。

 

 

「!?………」

 

 

呆気にとられて見ていると、数秒後には撃ち込まれた葉がガサガサと鳴り、間髪入れずに何かが

落ちる音がした。

 

 

「…付けられてたか……」

 

「あんなに遠くにいたのをどうやって見抜いたんです!?」

 

「尾行が下手だからすぐに判ったさ!とにかく、行こうぜ!リリーブラックかもしれない!!」

 

 

俺達は、何かが落ちた方向に向かって走って行った。

 

 

だが、其処にたどり着いて驚いた。其の木の下で横たわっていたのは……

 

 

 

 

「!?れ……鈴仙さん……!?」

 

 

永遠亭にいた、月の兎の一匹だ。

元の世界で怪我をし、永遠亭に運ばれる際に永琳さんと一緒に治療、看病と御世話になっていた。

 

 

「どうしてお前が此処に……!?」

 

 

王牙さんもどうやら彼方の世界で、鈴仙さんに出会った事がある様だ。

 

木の上から落ちて頭を打ったのか、頭を抑えながら悶えている。

さっき打ち抜かれたと思われる、右の二の腕の部分がブレザーの袖ごと溶け、黒い液体に変わって流れ出している。

 

 

「!傷の色が!」

 

 

そう言っていると鈴仙さんは素早く身体を起こし、痛みを払うかの様に頭を振った。

其に合わせて頭のウサ耳も揺れる。

開かれた其の両眼は赤色ではなく、冷たい水の様な蒼色だった。

 

 

「目が蒼い。お前、鈴仙ではないな……!?」

 

 

王牙さんがそう言うと、

 

 

「正確ニ狙イ落シテ来ルトハ、驚イタワネ……貴方……」

 

 

王牙さんに向けられた其の声は複数の少女の声が混ざった、奇怪過ぎる声だった。

聞き憶えがある……確か、雪の道や黄金の空間や、スキマの中……

そして俺のいた世界の竹林で聞いた咲夜さんの声と似ていた。

 

 

「名前ハ?」

 

「龍神 王牙」

 

 

そうか。前に戦ったあの化け物達、そして此の鈴仙さんも紫の言っていた、アリスさんの病気の

副産物か。

 

 

「憶エテオクワ……ソシテ……」

 

 

其の蒼い眼が俺に向いた。

 

 

「久シ振リネ……九賀神矢君」

 

 

確定だった。相手も俺の事を憶えていたらしい。

 

足元には右腕から滴り、足元に溜まっていた黒い液体が溜まっている。

すると突然、其等が真上に伸びて再び腕部分に集合し固まり始めた。

 

 

「!まさか、コイツは……!!」

 

 

王牙さんも其の正体に気が付いたみたいだった。

其等はある武器を宿した腕を生成し、明らかに元とは異なる形に変化した。

 

 

「あの腕は……ガトリング!?」

 

「再生って言っても、すっかり元通りではなさそうだな…寧ろ攻撃的に変化してる…!」

 

 

左腕よりも大きい右腕が俺達に向けられ、先端の発射口が回転し始めた。

 

 

「!近くの木陰に隠れろ!!」

 

 

其の王牙さんの声を合図に、踵を返して走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

SHINYA

VS〈悪意の蒼眼〉鈴仙・優曇華院・イナバ

~魔法の森

 

 

森林にしては草むらが多い道を走る俺達の後ろから、紫色の銃弾型の弾幕が通り過ぎていく。

王牙さんはあの瞬間に攻撃する隙が無いと判断したみたいだ。俺も其が賢明だと思った。

 

そしてお互いに見つけた、別々の木の後ろに飛び込んだ。其の木に容赦なく弾幕が当たる音が

響く。

貫通した弾が当たらない様に、出来るだけ身体を小さくして身を守った。

 

 

(……おい)

 

 

声が聞こえた。

 

 

「~~どうした?こんな時に……」

 

 

俺は、もう一人の俺……鬼の九賀神矢に小声で返事をした。

 

 

(リリーブラックをとっ捕まえる前のトレーニングに、アイツを倒してやれ。王牙と言う奴も

きっと驚くぜ?)

 

 

其を聞いて並んで立つ隣の木を辛うじて見る。

 

木陰で王牙さんがドラゴガン一丁を手に、敵の様子を見ようとして銃弾に阻まれているのが

見えた。

 

 

(先を越されたんだ。止めは貰うのは当然だろうが)

 

「先に越されたって……木の上にいたのを狙撃した事?」

 

(鈍いよな……あれ、俺だって気が付いたぞ?)

 

 

じゃあ何で教えてくれなかったんだよ……そう思っていると、銃声が止んだ。

夜の森が再び静かになる。

 

 

「でも、どうだろうな……俺は逆に王牙さんの実力も見たいと思うんだけど……」

 

 

木の陰からこっそり様子を見る。

 

 

「隠レテナイデ、出テ来ナサイ。其処ニイルハ判ッテルノヨ?」

 

 

発射を止めた銃口から出る紫色の煙を銃身で振り払いながら、俺達の隠れている木に向かって

歩いて来ている。

 

撃ち落とし、欠損して弱体化したどころか、まったく別の形に再生して逆に強化される。

気を付けて見ると恐ろしい副産物だな、と今更思う。

 

紫さんの言っていた通り、此は本当に弾幕勝負どころではないな……

 

だけど……

 

 

「俺にもあんな再生能力があればな……」

 

 

左腕が入る筈の袖がヒラヒラはためくのを見下ろしながら呟いた。

 

 

(…ふーん……)

 

 

もう一人の声を聴きながら、俺はあるスペルを唱えた。

 

 

其の時だった。

 

 

「フュージョン、『氷龍王』!!」

 

 

王牙さんの声が聞こえ、其の方向を見た。

 

其処には瞳も、髪も透き通るような水色となった王牙さんがいた。

周りには白い霧のようなものが立ち込めている。

 

思わず身震いをしたことで判った。そうか、此は冷気だ。冷気が目に見える程になって王牙さんを取り巻いているのか。

 

!氷龍!?……じゃあ、あれが……!?

 

 

王牙さんが木陰から飛び出しながら、もう一丁のドラゴガンも抜き、偽鈴仙さんに構えた。

 

 

「龍砲『ドラゴニックグレイシャー』!!」

 

 

双方の銃口から龍の形をしたオーラが打ち出され、敵に向かって飛んで行った。

 

だが相手もすかさず発射した黒と紫の弾幕が擦れて軌道をずらし、身体には当たらずに其の足元で炸裂した。

 

 

「!?……」

 

 

炸裂したオーラにより相手の腰から下が地面ごと凍り付き、身動きが取れなくなっていた。

 

 

「デジャヴだな。だが鈴仙を装う以上、今度は容赦はしない!」

 

「~ヴヴ……ギァアァ……!!!」

 

 

本物の鈴仙さんではあり得ない様な唸り声を上げながら変形していない片手だけで氷から

下半身を引き抜こうと気張っている。

 

 

「どうだ。氷漬けにされてしまったら最後、俺の力なしでは拘束からは解けないぞ」

 

「~~其ハ……ドウカシラ………?」

 

「!?」

 

 

すると再び氷に手をつけ、薄紫色の長髪を揺らしながら更に力を込め始めた。

 

 

「何だ……力ずくで脱出する気か……!?」

 

 

だが、其の予想は大違いだった。

 

 

 

 

ブチィィイ………!!!!!!

 

 

 

 

なんと自らの上半身を、氷漬けの下半身から完全に引き千切った。

 

 

「!?な……!??」

 

 

上半身は其のまま氷の上から落ちたが、直ぐに新たな下半身を再生させ、立ち上がった。

其は黒い毛が密生していて本来の兎に近い様な形だけど、足の長さはさっきと変わらない。

 

そして氷の中に残った古い下半身は黒く変色して形を崩し、自力で穴から外に抜け出した。

 

 

「まさか、そんな無茶な方法で氷から抜け出すなんて……!」

 

 

王牙さんも唖然としている。

脱出した元下半身の液体が両脚に纏わり付いて一体化すると、細い脚は一気に太くなり、黒い毛が逆立って棘が発生した。

 

 

「簡単ニ拘束サレル程、『私』ハ甘クハ無イワヨ…」

 

 

出来たての脚を確かめているのか、鋭い爪の生えた脚先で地面を突きながら相手は言った。

 

 

「今度は脚が……」

 

「蹴られたら、骨が折れる程度では済みそうにないな、あれは……」

 

 

でも、俺は王牙さんの方を見て言った。

 

 

「ですが……蹴られる心配は多分無いです」

 

 

其の言葉を聞いた王牙さん、そして鈴仙さん似の相手が怪訝な顔をした。

俺は敵の方に顔を向け、少し笑って見せた。

 

 

「!!」

 

 

其の俺の表情で全てを理解したらしく、慌てて俺達に右腕の生体ガトリングを向けた。

銃口が再び回転を始めるが、

 

 

「遅いぞ!衛星『ストレンジサテライト』!!!」

 

 

間もなく空に放っていたレーザーが地上に降り注ぎ、偽鈴仙さんに向かって殺到した。

発生する衝撃と砂塵から俺達は両腕で身を守った。

 

そして砂埃で、何も見えなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

衝撃が収まり、顔の前から両腕を離した。

 

周りの叢は吹き飛び、木々には穴が開き、目の前の窪みからは土煙が立っている。

 

 

「……………」

 

 

すると其の煙の中から立ち上がった姿があった。

 

 

(……やったじゃねえか。見ろよ、穴ぼこまみれだぜ)

 

 

身体中が黒く変色し、身体中に開いた穴から黒い液体を吹き出している。

其の黒くなった部分から無数の眼球が見開き、其の青い瞳があちこちを見渡している。

だが半分吹き飛んだ顔の瞳は、俺達を睨んでいる。

 

其処から力なく膝を付き、バッタリとうつ伏せに倒れた。

 

 

「……………」

 

 

俺達が見下ろしている前で、其の異形が泡となり、黒い霧となって消えていった。

 

 

「……やるじゃないか」

 

 

其を見届けた後、王牙さんがドラゴガンをホルスターに戻しながら俺に言った。

髪も瞳の色も元に戻っている。

 

 

「だが…何時撃ってた?」

 

「さっき木に隠れていた時です」

 

 

質問に対する俺の答えを聞くと、眉をひそめながら目を泳がせ、

 

 

「!あの時か……」

 

 

さっきの流れを思い出して納得したらしく、表情を緩めて前方を見た。

今度は俺が訊く。

 

 

「王牙さん、さっきのが……!」

 

「!龍王の力を借りたのさ」

 

 

ホルスターに収めたばかりのドラゴガンとベルトを見下ろして応えた。

黒いボディーに赤いラインの入った其の銃身、黒革のベルトに収まる九色の宝玉が、月の光を反射して光っている。

 

 

「氷の力……『氷龍王』だ。他にも、『炎龍王』、『水龍王』の力も借りられる」

 

「凄いですね……あれ程の力を他にも……」

 

 

でも、其の表情はすぐに厳しくなり、

 

 

「…だからと言って油断はダメだな。まさか変身まで出来るとは……其にあんな奴等が護衛に

就いてるなら、此からが大変そうだ」

 

「リリーブラックより厄介ですね……気を付けましょう……」

 

「嗚呼、チームワークを大切にしねえと……だが、やりがいのある戦いも出来そうだな」

 

 

俺達は再び黒い奴を捜しに、黒い森を歩き始めた。

 




如何でしたか?

ゲストの御二方に、妙にクールな雰囲気が漂っていて、何だか原作でのイメージが壊れそうですが……大丈夫でしょうか……?

次回は遂に双方が出会い、本格的に戦いが始まります。

それでは、次回もゆっくりしていってね♪

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