東方孤傀劇/~Noキミョン?Noウドンゲ?Yesうどみょん!   作:因田司

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今回から二話当たり、出会うまでの双方の準備を紹介します。

まずは、リリーブラック側を御送り致します。


原作とは少し異なる点があるとは思いますが、
暖かい目で見て下されば、幸いです。

それでは、ゆっくりしていってね♪


Requests;Evils in Lab

LILY BLACK

~玄武の沢

 

 

ドドドドォォ…………!!!!!!!!

 

 

「!滝か……」

 

 

叢を搔き分けて森から出た私達の耳に、激しく落ちる水の音が突き刺さる。

 

玄武の沢だ。本当、丁度良いタイミングだな、おい。

 

近い内に聞いた情報で、其の滝壺の裏には洞窟があって、人間の旅人が妖怪から

隠れて過ごせる絶好のスポットになっているとか。

 

 

「!あった…コイツだ……!」

 

 

そんな事は気にせず、俺は其の近くにある、大きな岩に駆け寄って岩肌に手を当てる。

 

 

「此ノ岩ガ、何ナノ?」

 

「まぁ、見てろ……で、えーっと…確か……」

 

 

俺は岩の表面を撫でて、探す。

 

 

「!、此処だ此処だ…」

 

 

周りの岩肌に似た様な構造の小さな蓋を見つけると、爪を使って取り外した。

 

其処から出てきたのは機械の一部だ。其の大半をカメラのレンズみたいな部分が占めている。

 

 

「コンナ機械ヲ、岩ニ埋メ込ンデイタノネ……」

 

「こうやって隠しておかないと、馬鹿妖怪共がいじくって壊す可能性があるからな」

 

 

そして後ろにいるクルムの方を向いて、

 

 

「ちょっと待ってろ」

 

 

と声をかけた。アイツは其の言葉に、無言で頷いた。

 

 

「悪いが、お前達マリスの目は当てには出来ん、俺様の目で行く」

 

 

岩に向き直った俺は岩肌に顔を近付けて、マリスの影響が出ていない左目だけで

機械のレンズを覗き込んだ。

 

すると其の覗き込んだレンズの奥から光が放たれた。

其の光が、目の表面を通り、光彩を読み取る。

 

光が消えると、岩から顔を離し、岩からも離れる。

岩が音も無く横に滑っていき、其の下から地下に続く鉄の階段が現れた。

 

 

「……完璧なセキュリティだろ?俺様の目が無ければ、此のアジトには入れねぇ。

尤も、俺様に擬態出来るから、お前達も侵入出来るが」

 

 

そう言いながら、鉄の段差に足をかけた。

 

 

「降りるぞ、ついて来い。着替えも兼ねて、少し準備するぜ」

 

 

今度は後ろを見ず、声だけをかけて薄暗い降りていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

LILY BLACK

~玄武の沢 地下

 

階段を下り終えた俺は、暗い鉄の廊下を進んでいった。

後ろから別の足音が聞こえる。ちゃんとついて来ている様だな。

 

やがて緑色の光が、見えてきた。一応後ろに警告をする。

 

 

「ショッキングな光景が見えるぞ。嫌なら目を瞑っておけ」

 

 

細い廊下の両側に透明なガラスの装置……いわば培養槽が並んでいる。

 

其に満たされた光源ともなっている液体の中に妖精の裸体が一基に

一匹ずつ入れられ、浮かんでいる。

腹のへその辺りに金属の管が何本も伸び、液体の中で機械と繋がっている。

 

さながら母体と胎児みたいだ。だがいつもの見慣れた光景だ。

そんなモノには目もくれず、廊下をずんずんと歩いて行く。

 

 

そして廊下が終わり、小さな部屋に突き当たる。

 

此処にも機械が並んでいるが、俺は其の一角に置かれた、パソコンが乗った机に

一直線に近付いて行く。

机の上やパソコンが白くなっていた。

 

 

「チッ、埃被ってやがらぁ……」

 

 

すぐに手で画面の埃を払いながら画面を綺麗にする。

電源のボタンを押し、しばらく待ち、暗証番号を入力した。

 

 

「埃が入り込んで、不具合起こさなきゃ良いんだが……」

 

 

パソコンがちゃんと動くか、椅子には座らずキーボードを指で叩いて確認を取り始める。

 

 

「……オールグリーン、久々に触ってみたが異常も無さそうだな」

 

 

ほっと息をつき、机から距離を離す。

 

 

「さて、着替えるか……此処で待っててくれ」

 

 

そう言うと、奥に作ってあった扉の方に向かった。

 

其処で一旦振り返り、

 

 

「おっと、もしかして目の前で着替えて欲しいか?残念ながら絶壁だけどよ」

 

 

後退し、ドアノブに触れながらそう言った。

するとフードの奥で少しだけ目が泳いだのが見えた。

 

ヘヘヘ……やっぱ男だな、コイツ。

 

 

「じょーだんだよ、バーカ」

 

 

そう言って意地悪く笑いながら、ドアを開け、身体を中に滑り込ませた。

 

此の部屋にはトイレも洗面台も浴槽ある、言ってみればホテルにある一室みたいな感じだが、更には衣装の入ったクローゼットもある。

 

完璧過ぎる程に詰め込んでいるが、何で実験室の隣って設定したんだろうな、俺……

 

 

「さて、どれにしようか……」

 

 

ドアを閉め、クローゼットの扉を開けた。

まずは衣装選ぶ。着替えは其が決まってからだ。

 

 

「……!あぁ……コイツを着てみるかな……?」

 

 

私は、ハンガーで吊るされた衣装の内の一着を取り出した。

全体的には黒く、背中には二本の裾が伸びていた。

 

まるで………

 

 

「!燕尾服?タキシード……?アンタニ男装ノ趣味ガアルナンテネ」

 

「はぁ!?違ぇし!ドレスは重ぇし、フリルが鬱陶しいし、

女物の服は正直面倒臭ぇんだよ!

リリーホワイトの同じ服装も、嫌で嫌で仕方無かったんだからな!」

 

「ナラ、普通ニカジュアルナノデモ良カッタノニ」

 

「細けぇこたぁいいんだよ!じゃあ、コイツで決まりだな」

 

 

そう言いながらビリビリに破れた、囚人服を纏った身体を見下ろす。

 

 

「……もういいや、金輪際着ねえし、こんなダサいの」

 

 

そして、ボロボロの襟首を両手で掴み、思いっきり引き裂いて

ダイナミック脱衣を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後。俺様、リリーブラックは新たな衣装を纏い、ドアを勢い良く

蹴り開けた。

 

 

「じゃっじゃぁーん!!見てみろよぅ!!!」

 

 

だがクルムは、さっき私が使っていたパソコンの奥にある、一つの培養槽を見上げていた。

廊下に並んでいたのと同型で、中にも同じ様に一匹の妖精が緑の液体の中で

膝を抱えている。

 

 

「見てねーし………しょぼん……」

 

「……ソンナ顔文字ミタイナ顔、流行ラナイシ、流行ラセナイワ」

 

 

だが、すぐに気を取り直してクルムの方に歩いて行った。

 

 

「……気になるか?」

 

 

横に来た俺に顔を向けたが、やはり何も言ってくれなかった。

 

 

「後輩よ。コイツが何か判るか?」

 

 

何も言わないクルムに代わり、身体を見下ろしながら質問をかけた。

 

 

「……全裸ノ妖精ガ、機械ノ中デ薬漬ケニナッテイル?」

 

「そーだ。しかもだ……」

 

 

私は後ろを向き、机に腰を添えた。其処から手を伸ばし、白手袋を

した手でガラスの表面をノックする様に叩く。

 

 

「妖精の中でも取り分け強い種類を選んで来た。向日葵の花を持ってる大きめの

妖精がいるだろ?アイツ等のうちの一匹だ」

 

 

クルムの方を見ると、相変わらず無言のままだった。

 

 

「……妖精を実験体にするのが気に喰わないか?」

 

 

何も答えなかったが俺には判る。明らかに、俺に嫌悪感を抱いている。

 

 

「悪いが、コイツ等嫌いだし、其に……」

 

 

 

 

 

「妖精って人外だろ?人外を人外にして何が悪い?」

 

「……………」

 

「其にコイツ等、自然の権化だろ?要は自然を破壊しなければいくらでも

湧くんだから、利用しない手は無ぇし」

 

 

無言だった。今のクルムからしたら今俺様の顔は、最高のゲス顔に

見えてるかもしれない。だが、構う必要も無ぇ。

 

今度は其の反応を無視して、俺様は説明を再開した。

 

 

「いつもなら、此の段階はへそに繋いだ管を通して薬を投与して、生物兵器に仕立てるんだが……其処でだ」

 

 

人差し指でエンターキーを押す。するとパソコンの近くに設置していた

じょうご型の機械の蓋が開いた。

 

俺様の中で声が聞こえた。

 

 

「……入レッテ?」

 

「物分かりが良いじゃねえか」

 

 

そう言いながらじょうごの中心に空いた穴を指差した。

 

 

「一部の薬の代わりに、お前等を投与する。するとだ、いつもの奴より強い俺様の傑作をコントロール出来るって事になる」

 

 

白手袋は付けたまま、左腕の袖をまくる。其処には後輩が俺の身体に侵入する際に付けた、切り傷が残っていた。

 

 

「戦いでピンチになったら体内から逃げだせば良いし。此の妖精には心音爆弾も

埋めているからな」

 

 

其の切り傷を下にして腕をじょうごの上に出した。

 

 

「さぁ……行って来い」

 

 

すると腕の傷口から、黒い液体状の後輩が出てきた。

そして其のまま数滴が滴り落ち、じょうごを伝って管の中に入っていった。

 

ガラスに目を移すと、へそに通じる一本の管に黒い後輩達が流れていくのが判った。

 

そして其が間もなく妖精に到達しようとした……

 

 

 

が、突然其処から、黒い液体が漏れ出した。

 

 

「!?」

 

 

そして瞬く間にガラスの中が真っ黒になり、妖精の姿が見えなくなった。

 

 

「何だ……まさか、接合部分の隙間から漏れたのか!?」

 

 

私は急いで、パソコンを操作して中の液体を抜こうとした。

 

 

「問題無イワ」

 

 

突然聞こえた後輩の声で、手が止まった。

 

 

「本当か!?失敗しないだろうな!?

ちゃんと変異を起こしてるだろうな!??」

 

「只、少シ時間ガカカリソウ……」

 

 

すると、黒くなった液体の中を、何かが蠢いているのが判った。

 

 

「!?」

 

 

其の動きによって起こる液体の流動から判る。

中にいるのは少なくともさっきの妖精よりも遥かに大きい。そして

今までに作った生物兵器よりも大きい。

 

恐らく、培養槽のガラス部分の半分の大きさは占めている。今までのでも

三分の一も無かったのに……

 

コイツは、期待出来るぞ……!!

 

 

 

すると、突然後輩の声の調子が変わった。

 

 

「妖夢達ガ、近付イテイルワ……!」

 

「!?何だと……!?」

 

 

俺はすぐに視線を目の前のガラス容器から、天井に移した。

 

どうやら監視を続けていた後輩達が、アジトに近付いた事に気付いた様だ。

 

 

「直ぐ近くまで来ていたとはな……アイツ等……」

 

 

直ぐに出発の準備をしようとしたが、不意に今目の前で変異を遂げている

容器の中身をどうしようと考えた。

 

急いで行かなきゃいけねぇのに、時間がかかるとは、なんて間が悪ぃんだよ畜生……!

 

だが、其を見透かすように、後輩が体内から声をかけて来た。

 

 

「後カラ行クワ……」

 

 

思わず変色した顔の右半分に手を伸ばすが、触りはしなかった。

 

 

「ダカラ此ノ培養槽ノ液体ト、ガラスヲ取リ除ク操作方法ヲ教エテ」

 

「……また、そこらへんの物を弄るんじゃねえよな?」

 

「本体モパソコンハ持ッテルカラ、ソンナヘマハシナイワヨ」

 

 

本当かよ?そう思いながらも、俺はパソコンでの操作方法を教えた。

 

 

「判ってるだろうが、順番をしくじるなよ?薬の大洪水で機械がショートするからな。

爆発して新作もアジトも、新作の中のお前等も駄目になっちまう」

 

「薬トハ違ッテ機械ニハ慣レテルカラ、大丈夫ッテ言ッテルデショ」

 

「本当かよ?」

 

 

同じ様な感じの弁解に、今度は口に出した。

 

 

「地下にある裏口は開けてある。机の下だ。さっき抜けた森の

倒木の洞に繋がってるから其処から出ろ」

 

「何デ裏口ナノ?」

 

「表は閉めるからに決まってんだろ」

 

 

其処で、

 

 

「クルム……早速仕事だぜ?行くぞ!」

 

 

と、クルム向かって言うと、部屋をもと来た廊下を走りだした。

 

 

だが……走りながら、考える。

 

後から増援とは……今考えると良い作戦だな……

 

戦っている途中に、巨大な新作が現れたらどうなるだろうな。

奴等、きっと喜んで泣いてくれるぜ。

 

其にクルムも居る。奴等相手にどれだけの実力を発揮してくれるか、楽しみだ。

 

そしていざとなれば……

 

 

今度の戦力は充分だ。負ける気はしねえ…!

 

 

そうこう考えてる間に廊下を走り終えていた。

 

見上げると、階段の一番上にあるアジトの入口からは赤い雲と月が

浮かぶ夜空が見える。

 

 

 

「お前等は今夜、ベッドじゃなく、墓場に土に潜り込ませてやるよ……俺様にくれた屈辱……今からたっぷりと返してやるからな!」

 

 

 

階段の一番下から其の空を睨み、階段の一段を踏みながら俺様は呟いた。

 

 

 




如何でしたか?

今回のリリーブラックはかなりギリギリな行動や発言が目立っていました。
そして彼女がしていた、恐ろしい実験も明らかにされました。

次回はゲストの方々の方を紹介していきます。

それでは、次回もゆっくりしていってね♪

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