東方孤傀劇/~Noキミョン?Noウドンゲ?Yesうどみょん!   作:因田司

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募集終了から更新が大変遅れてしまいました。申し訳御座いません。
ようやくコラボ開始です。

今回コラボして下さる方々は、
芳花紫陽花さんの「東方幼妖談 ~ Immature Massacre」より九賀神矢君、
高速でゆっくりなぺぺさんの「東方自然神」より瀬戸尾凌君、
シャイニングさんの「恋を知らない少年と幻想世界の少女達」より龍神王牙君、
聖魂のマキシさんの「東方聖霊夜」より神崎駆真君です。

そして今回ですが……ゲストの方々は登場しません。
いわばプロローグみたいな回になっております。

本当にすみません。次回からゲストの方々が登場していきます。

それでは、ゆっくりしていってね♪


黒魔精大捕物帳(コラボ中心)
Requests;リリーブラックがアップを始めたようです


LILY BLACK

~地獄 勾留所

 

 

「……………」

 

 

俺様、リリーブラックは鉄格子の中から外の相手を睨んでいる。

 

 

「……………」

 

 

睨まれている相手もこっちを見ている。若干半目だ。

 

 

「てめえは此処が担当じゃねえだろ。船漕がねえのかよ」

 

「今は漕がない。だからと言って、お前にオールを渡すわけじゃあない」

 

「『お前が消えて喜ぶ者』だからな、俺様は」

 

 

ケラケラと嗤ってやる。

 

 

「お前さんがあまりにも過ぎた事するから、専属の看守も任されたんさ」

 

「サボタージュの泰斗にとっちゃあ良い苦薬だ。様ぁ見ろ。此の、紅髪ツインサボッテール」

 

「何だい其。あたいにツンデレを求めてるのかい?」

 

「求めねえよ。気持ち悪ぃ」

 

 

はぁ、と溜息をつかれる。

 

 

「私は小野塚小町だ。本当に名前覚えないね。ず~…っと世話になってるって言うのに」

 

「名前を覚えるだけの脳があるなら、其の分も俺様の為に使うだけだ」

 

 

今俺様は、地獄の中にある、勾留所の中にいる。

精密検査を受け、地獄で閻魔様の裁判を受けるまでの間、ブチ込まれているって訳だ。

 

 

「其に仕事が増えたんだから、寧ろ甘い薬さね」

 

「へっ、甘いものに頼ってると、ほっぺどころか首まで落ちるぞ」

 

「!忠告をするなんてらしくないじゃないか」

 

「見てぇんだよ。あの閻魔から直接リストラされる瞬間をよ。

んで、ついでに制裁されて、首チョンパのバーラバラにでもされろ」

 

 

そう言った途端、相手の目付が一気に変わった。

 

 

「……前倒しで処刑にされたいかい?」

 

 

椅子から手を伸ばし、壁にかけていた鎌を掴んだ。

 

 

「ヤれるもんならヤってみろよ。死神の鎌って、単なる飾りだって聞いたけどなぁあ?」

 

「さっき実際に斬ってやったじゃないかい」

 

 

そう言いながら女は鎌を壁に掛け戻す。

やっぱり斬る気無ぇじゃねえか、此の腰抜け。

 

 

「そんな昔の事は忘れた」

 

「……やっぱ妖精だよ、お前さんは」

 

「!んだとゴラァア!!!」

 

 

妖精……最も嫌いな奴等と一緒にされた俺はブチ切れて、格子を両手で掴み

ガンガンと揺らした。

 

他の囚人はとっくに寝静まっている時間だが、俺様だけは別の牢獄に隔離されていたから

気にする事も無かった。

 

 

「はははは!怒ってる~~。頭に血が昇ってるね~~」

 

 

そんな俺様をみて腹を抱えて笑っている、生意気なサボリ魔。

 

 

「今度も絶対に脱走して、てめえの首をぶっ飛ばしてやるからな!!!」

 

「あはは…今回は警備もだいぶ強化したからねぇ。前みたいに生物兵器を遠隔操作で送ってきても撃退出来るさ」

 

 

私は鉄格子を突き離し、荒々しく奥の方に戻った。

ベッドの上に這い上がり、壁に向かって体育座りをした。

 

其の背中に声をかけられる。

 

 

「あの爬虫類みたいな奴等、もともと妖精だったんだってね?」

 

「……死亡解剖した結果か?」

 

 

後ろを見ずに応える。馬鹿にされたが仕返しすらままならない。おまけに白黒の縞模様

という、白の混じったセンスの欠片も見当たらない囚人服まで着せられる始末だ。

 

チッ、不愉快で仕方無え。

 

 

「薬で細胞の成長を無理矢理操作して……どれだけ妖精を犠牲にしたんだい?」

 

「死神でも判る筈もねえ桁程」

 

「なら、どちらにしろ極刑も範疇って事になるねえ」

 

「犯罪は重度且つ多数な程、裁判は長引くって聞いたぜ。すぐには決まらねえ。

何せ罪は慎重に決めねえとなぁ……だろ、コマチナ?」

 

「野菜みたいに言うな。嗚呼、後さあ」

 

 

唐突に話の腰を折りやがった。

 

 

「お前さん自身も薬で身長を伸ばしていたみたいじゃないか。そんなに小さいのが嫌いか?

其処まで自分自身の種族を嫌う必要があるのかい?」

 

「……てめぇ、尋問係でもねえのに其処まで首を突っ込む必要があるか?」

 

「いやあねえ」

 

 

其処で少し間を置いたが、再び声をかけた。

 

 

「お前さんがライバルに負ける理由が其処にあるかもしれない、と思ってね」

 

 

其の言葉を聞いた私の頭に、見覚えのある奴等の顔が浮かんだ。

 

 

幸せそうに歩いている二人の外道、そして憎たらしげな笑顔をしたリリーホワイトだ。

其のシーンがぐるぐると頭の中を回り出した。

 

最悪だ。構わず舌打ちをする。

 

 

アイツ等は俺様の目の前で堂々と同性愛という、タブーを見せびらかした。

そして春告精である筈のリリーホワイトは其にあやかり、活気を取り戻すという

醜態までさらした。

 

其どころかアイツ等のせいで戻りたくも無い処に再び放り込まれ、辛酸を舐めさせられた…!!

 

怒りでワナワナと震え始めた。

 

 

「あんの、ド腐れ共ぉお……!」

 

 

そう押し殺した声で言った俺は、怒りに任せて拳で壁を殴った。

 

指が数本折れたがすぐに再生した。

妖精の力が働いた。其の事が更に私をイライラさせてくれた。

 

 

だが、同時に自分の顔がニヤけていくのにも気が付かなかった。

 

 

何も怒る事は無いか……もうすぐ、此処から出られるんだからな。

 

 

後ろの死神にとってはがっかりしているようにしか見えない。

だが、俺様が画策をしている事までは知らない様だった。

 

俺様だって何年も、何十回も捕まっていれば巧妙な対策は練る様にはなる。で、相手も

脱走を防止しようと策を練る。

だが、今回ソイツが奴等の今までに施した対策が全て無駄になる、驚きの作戦となるだろう。

 

死神の名折れめ……てめえの首が飛ぶのが楽しみだ……そして、次は

あの三馬鹿の首を飛ばす事になる。

 

 

 

「待ってろよ、ガキ共……今度こそ、お前達の春を終わらせに行ってやる……!」

 

 

 

 

すると、

 

 

「!へ……?」

 

 

急に身体が落ちていった……というより、落とされた。

 

 

 

誰がやったのかは判った。が、どうして今なのかは判らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

LILY BLACK

~亜空間

 

 

 

「……………」

 

 

 

落ちていく。何処まで落ちるんだよ、此?

 

因みに翅は使わなかった。使った時は負けだと思っている。

自分を妖精だと認めちまう。

 

 

そう思っていた途端、思いっきりケツを打った。

 

 

「!!!ア"ァ"ア"~~…………!!!」

 

 

激痛に呻いてる私の傍らで足音が聞こえた。目だけを向けると足が見える。

 

痛みに堪えながら其の方向を見上げる。

 

 

「~~と…唐突だな……もう、そんな時間か?」

 

 

立っていたのは俺が標的にしていた、一匹の月兎だった。

が、其の目は蒼く、身体の一部は擬態が解けて黒いヘドロみたいになっていた。

 

 

「……当然、俺様の擬態は、置いてきたんだろうな?」

 

「デナケレバ、トックニバレテ騒ギニナッテルワ」

 

 

其の黒い部分に新たに開かれた蒼い目が、瞳を動かして此方を見た。

 

 

「今、其の擬態で来られると殺意が増すんだけどな……」

 

「ジャア仕方無イ……別ノ姿ニナルワヨ」

 

 

そう言うと、其の姿は溶けて本格的に黒いヘドロみたいになった。

そして暫く蠢くと、別の人の形をとり始めた。

 

 

「!?」

 

 

其の姿に見覚えがあった。

 

黒と白、そして赤い前髪、そして矢印をあしらった衣装。

そしてその顔は不機嫌そうに歪めた、見慣れたものだった。

 

 

「せ、正邪様…じゃねえか……!!」

 

 

幻想郷で謀反を起こし、追われた天邪鬼。青娥様に次ぐ、俺様の憧れる人物だった。

 

だが、すぐに気付いた。

 

 

「お前…まさか正邪様まで……!?」

 

「龍宮ノ使イノ人形ハ、晴レテ『私』ノ人形ニナッタノヨ」

 

 

普通なら尊敬する人物に手を出して怒る場面だろうが、

 

 

「そうか…流石は俺様の後輩だ……」

 

 

俺様を弟子にしなかった、其の罰があたったと思えば良かった。

 

弟子に相応しいかを試す際にする、度が過ぎた凶行にひかれ、いつも断られていた。

青娥様の時もそうだった。

 

 

 

「!ソウソウ、脱出ヲ早メル理由ダケド……御客様ガ御見エニナッテルワヨ」

 

「?御客様だぁ?」

 

「ソウ、アンタニ助太刀シテクレルソウヨ?」

 

 

其の言葉を合図に、後輩の奥から誰かが出てきた。

 

 

「!?お、お前……」

 

 

俺様が全く予想もしていなかった奴だった。

知ってるやつとは明らかに様子が違い、無言だった。

 

だが、其の状態を見た私はピンときた。

 

 

「……そう言う事か。なら、話は速ぇ」

 

 

其でもソイツは黙っていた。

フードの奥の眼光が鋭い。流石の俺も思わず震え上がっちまった。

 

 

「ヘヘ、何か……暗躍者みたいで、感じ出てるじゃねえかよぉ」

 

 

どうやら、名乗る必要も無さそうだった。後輩達が私の事を、充分に伝えてくれているに

決まっている。そうに違いない。

 

 

「まさか、君が私の味方をしてくれるとはねぇ……ふぅ~ん……」

 

 

少し、調子に乗り始めた俺様。其の人物の周りを歩き、品定めをするかの様に観察し始めた。

 

そして指を鳴らし、

 

 

「よぅし!…本名は隠して…今からお前を……」

 

「名前ハ決マッテイルワ。『クルム』ヨ」

 

 

思わず水を差してきた後輩の方に、顔を向けた。

 

 

「もう、決まってるのかよ……じゃ、じゃあ、そう呼ぶか」

 

 

喰えねぇな……もう少しムードに付き合えっての。台無しじゃんかよ。

そう思って顔をしかめたが、

 

 

「妖夢達ノ場所ハ、捕捉シテイル」

 

 

其の情報を聞いた俺は、すぐに接近する方法を考え出した。

 

 

「なら、近い場所にワープして徒歩で近付いて叩くぞ。

いきなり懐に出てきた処で、警戒されていたら流石に勝ち目が無えからな」

 

 

薬の調合や機械に慣れている俺様からすれば、どれが一番好都合で効率的なのかはお見通しだった。

 

 

「元霊嬢ノ警護役、ソシテ元エリート揃イノ月ノ兎……確カニ、其ガ一番良サソウネ」

 

 

後輩からも太鼓判を貰えたところで……さて……そろそろ始めるかな?

 

 

 

 

 

「じゃ、頼むぜ?」

 

 

そう言うと俺は服の袖をめくり、自分の腕を後輩に向けて出した。

 

マリスは再び其の形を崩し、広がりながら腕に殺到した。

そして表面を小さく切り、其の傷から私の身体の中に侵入した。

 

其の様子を、クルムが無言で見ていた。

 

 

「!……」

 

 

腕から体じゅうに皮下に冷たいものが伝い、根を張って行くのを感じた。

 

 

「クヒ…!!」

 

 

善良な、平和ボケしている連中には絶対に判らない『浸食』の感覚だ。

何せ後輩達と敵対する奴等は、意識も奪われて行くんだからな。こんなの、感じる余裕も

無えだろうに。

 

と、同時に顔の右半分が一段と冷たくなり、そして右目だけ視界が広がっていくのが判った。

 

コイツァ……其の目を指で触っていく。

其の手も指の先から手首までが冷たく、濃い紫色に変色していた。

 

 

「……また三つかよ」

 

 

前もそうだったから別に気にする事は無かったが、見つかって騒動になるのが

面倒だし、一応包帯を巻いておかないとな……

 

そして身長が伸びていることにも気付いた。

此は薬要らずだな…だが、ビリビリに破れちゃったし、新しい服が必要か……

 

そう思っていると、

 

 

「!」

 

 

不意に目の前の空間が裂けた。其の先には、夜の森が口を開けていた。

 

 

「相変わらず、良い仕事してくれるじゃねぇか……スキマさんよぉ?」

 

 

近くにいる筈のソイツに声をかける。今の俺同様、後輩に漬けられてる大妖怪だ。

 

傍では新参者がまだ黙っていた。

 

 

「其じゃあ、行くか……クルムさんよ」

 

 

無言で頷いてくれた。凄ぇ、こんな奴が俺の味方かよ…!?

思わずヒャア、と心の中で歓んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギひ…さぁア、覚悟しヤがレよぉ……?」

 

 

そして俺様、リリーブラックは新参者と共にシャバへ歩いて行った。

 




如何でしたか?

……リリーブラックが、どれ程の凶悪で小物かが御判り頂けたでしょうか?
此の妖精が今回の相手です。
そして彼女についた謎の人物も鍵を握っていそうです。

次回からいよいよゲスト達が登場します。


それでは、次回もゆっくりしていってね♪

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