東方孤傀劇/~Noキミョン?Noウドンゲ?Yesうどみょん!   作:因田司

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今回から、うどみょん達でほのぼの、ギャグ、
そして恋愛色強めで御送りしていきたいと思います。

原作とは少し異なる点があるとは思いますが、
暖かい目で見てくださると、幸いです。

それでは、ゆっくりしていってね♪


「みょんさん、私………」
サンセット・スウィンガーズ


YOUMU

~無名の丘

 

 

 

 

 

 

 

「…………うどんさん……」

 

「はい…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……奇麗ですね」

 

「そうですね………」

 

 

 

 

 

 

私達は今、木から二本の紐に吊るされた、不思議な一枚の板に乗って

其処から夕陽を見ていた。

 

 

此処は、幻想郷の僻地といわれる『無名の丘』。

 

沢山の鈴蘭が咲き誇り、丘の一番高い処には一本の大きな木が植わっている。

私達は、其の木の太い枝に板を吊るして座っていたのだ。

 

近くにある妖怪の山よりは低いが、幻想郷を見渡せる絶景だった。

 

うどんさんは過去に起きた花の異変の時に一回、此処を訪れた事があるらしい。

其の際此処で毒を撒く、生きた人形と戦ったとか。

だが私達が訪れた時には、其の姿は見当たらなかった。

 

座っている私の膝元で、リリーホワイトが座っていた。眠っている。

 

春減少による暴走の最中での邂逅、長時間の移動、リリーブラック達の襲撃……

私達と出会ってから今日一日大変だったからな……

 

私はリリーホワイトさんを見下ろし、座っていた板にも目を落とした。

 

 

実は私達が座っている此の板は、最初から木に吊るされてはいなかった。

此の木の傍に来た時、根元に紐と板の一式が置かれていたのを組み立てたのだ。

 

其の傍には置手紙もあった。

 

 

 

【素敵な御二方へ

 

此、外の世界では『ブランコ』というらしいわよ?

本当はもうちょっと豪華なの用意したかったけど、流石に時間が無かったわ。ゴメンね。

吊るす作業は大変だけど、其処からの風景は格別だからね。

 

頑張ってね♪私も、幻想郷の為にやるべき事をやらないと……

 

 

                   ロマンチックなひと時を♡

                       素敵なスキマさんより】

 

 

 

 

紫様………紐を握る力が強くなった。

私達の為に、わざわざ………

 

だが、最近紫様からの連絡が無い。どうなされているのだろうか……

今も何処かで、マリス達と戦っているのか……或いは……

 

 

!いや……そんな事は考えないようにしよう……

あの御方は、此の幻想を築かれた賢者だもの…そんな事が起きる筈は……

 

 

「みょんさん……」

 

「!どうされました……?」

 

 

唐突に名を呼ばれ、隣に目を向けるとうどんさんが此方を見ている。

 

 

「仮にです……仮にですよ?私が……」

 

 

そう言うと、うどんさんは右手で自分の右目を隠し、左の人差し指で左目尻を

思い切り横に引き延ばした。

 

 

あ……此の顔は…………

自分の顔が青ざめていくのが判った。

 

そしてうどんさんは口を横に伸ばし、

 

 

「スタァァァァァズ………!!!!」

 

「ひぃい……!!」

 

 

意外に低い声が出てきてびっくりした。

おもわずブランコから転げ落ちそうになって、紐に捕まった。

 

 

「!あぁあ……!大丈夫ですか……!?」

 

 

うどんさんが顔から両手を離して、片手でリリーホワイトさんを、もう片方で

私を落とすまいと支えてくれた。

腕に力を入れ、何とかブランコの上に戻る事が出来た。

 

激しく揺れたにも関わらず、リリーホワイトさんはスゥーッと、大きな寝息を立てた。

 

 

「すみません……フフフ……にしても私の此のネタ、判りましたか?」

 

「ええ……紫様が外の世界から買って来ましてね……

私と幽々子様、双方が暇だった時に悲鳴を上げながら遊びました。

よく…彼で死んだものです」

 

 

暫くの沈黙。

 

 

「………フ…フフ……」

 

「フフフフ……」

 

 

堪え切れずに二人で笑った。私達以外誰もいない丘に私達二人の笑い声だけが

響いていった。

 

 

するとうどんさんが笑うのを止めた。私も止めてしまう。

 

そして暫く二人で夕陽を見ていた。

 

 

 

 

 

 

「もし……もしもですよ?」

 

 

徐々に赤くなる陽の光に目を細める私の耳に、うどんさんの言葉が入って来る。

 

 

「私が…再び『孤毒』によって堕ち、今度は貴方を襲うなら………どうしますか?」

 

 

其の言葉に驚いてうどんさんの方を見ると、彼女もまた私を見ていた。

私が映る赤い瞳には、冗談とは別に不安の色も見えていた。

 

其の目を真っ直ぐに見て言った。

 

 

「……何と言おうと…何をしようと……うどんさんはうどんさんです。

ですが……もう、うどんさんをマリスに喰わせはしない……」

 

 

私は……うどんさんに擬態したマリスを叩き斬った、あの迷いの竹林で誓ったんだ。

 

もう…幻覚には騙されない……狂ってでも良い……

 

 

……守り通すんだ、と……

 

 

「私が……御守り致します……どんな苦難が襲おうとも……」

 

 

 

……共にいるんだ、と……

 

 

 

「例え…此の幻想が滅しようとも、貴方だけは滅ぼさせはしません!魂をかけて……絶対に!」

 

「うどんさん………」

 

 

うどんさんが私の胸に寄り添ってきた。

私は其を優しく受け止め、優しく抱きしめた。

 

其の時、寝ていたリリーホワイトさんから、微かに春の匂いが漂った気がした。

 

 

遥か遠く、静かに沈みゆく夕陽だけが私達を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが……

 

 

 

 

!?…………

 

 

「!……どうしました、みょんさん?」

 

 

うどんさんは私の変化に気付き、声をかけた。

 

私は口をうどんさんの耳に近づけ、小声で言った。

 

 

「………気を付けて下さい……気配がします」

 

 

私がそう言うと、うどんさんも目だけで周りを見渡し始めた。

するとすぐに其の顔つきが変わっていった。どうやら気付いた様だ。

 

こんな僻地までも……追手か……?

 

 

 

 

何処に居る……!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!みょんさん!上!!」

 

 

弾かれる様に上を見上げた。

 

私達の居る木を囲んで紫色と黄色の渦巻き状に彩られた、五つの球体があった。

其の球体の中心にそれぞれ大きな目玉があり、全て此方を見ている。

 

 

「!うどんさん、リリーホワイトさんを……!!」

 

 

即座に私の膝からリリーホワイトさんが抱えあげらげた。

 

 

「くっ……!?」

 

 

囲まれている……其も、今まで見た事もない敵だ。

 

私達は急いでブランコから飛び降りた。

木の根元に近寄り、置いていた剣を取ろうとした。

 

其の時、声が聞こえた。

 

 

「見つけた……頼める相手……信用できる相手……」

 

「!?」

 

 

その言葉に剣を取ろうとした手を止めた。

すると私達を包囲していた五つの球体の後ろから、それぞれ黄色の糸が伸びて

私達の目の前で交差し、混ざり合って一つの形が造られた。

 

 

「!………少女!?」

 

 

数秒の後には、目の前に黄色い輪郭でしかないが女の子がしっかりと立っていた。

私は其の姿をはたと睨んだまま言った。

 

 

「貴方……マリスですね?」

 

 

其の輪郭の口の部分が動き、声が発せられた。

 

 

「違う……マリス……違う……私……ユウゲンマガン……」

 

「!ユウゲン……?」

 

「マガン……?」

 

 

私達は思わず復唱した。……彼女の名前か……?

 

声は続けて聞こえてくる。

 

 

「……魔界の……者……」

 

「!魔界?……!神綺さんの!?」

 

 

神綺さんが創ったとされる魔界の住人が……どうして私達のもとへ……?

 

 

「……神綺様……御存知……感心……」

 

 

輪郭しかない少女が嬉しそうに両手を合わす様に動いた。

だが、油断は出来ない。

 

 

「私達を此処まで追ってきたという事は……」

 

 

私は止めていた手を動かし、傍に置いていた白楼剣を持った。

そして鞘から抜き、黄色い線の少女に突きつける。

 

 

「私達を始末するつもりですか!?」

 

 

相手は驚いた様に慌てて両手を振るように動いた。

其の動きに合わせて浮遊する目玉も、微かに揺れ動く。

 

 

「違う……謀殺……違う……」

 

「でしたら、どうして私達の処へ……!?」

 

 

うどんさんの言葉に、振っていた手を下ろして無表情の様になった。

……様な気がした。

 

 

「……頼みあって……来た……」

 

「!頼み…!?」

 

「尾行……過激……謝る……御免……」

 

 

後ろをちらっと後ろを見て二人の確認をした。

手をピストル状にして相手に向ける、うどんさんの片手に抱かれて

リリーホワイトさんが寝ているのが判った。

 

前に視線を戻して魔界の住民を見ながら、剣を戻して木の根元に戻した。

 

 

「……何です、頼みとは……?」

 

 

一応信用してみる。だがもし、少しでも変な動きをすれば………

 

 

「言う……其の前に…………」

 

 

ユウゲンマガンと言った彼女の右手の輪郭が、私達の傍にあるブランコを

指差すみたいに動き、

 

 

「……一緒に乗って……良い?」

 




如何でしたか?

再び魔界から旧作キャラが新登場です。
其も正真正銘、東方第一弾「東方靈異伝」からです。
セリフは完全に予想です。

そして僕は二人に、どれだけしがらみを用意すれば気が済むんでしょうか……?

次回は、うどみょんがユウゲンマガンの相談に乗ります。
……ギャグ回になりそうな気が……

それでは、次回もゆっくりしていってね♪

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