「また、すべてが終わってしまった。一体幾度、こんな悲しみを繰り返せばいいのだ」
闇の書の管制人格……今はまだ、名が無いのでしたね。
すでにハヤテは管制人格と融合し変貌を遂げている。守護騎士ヴォルケンリッター達は機能を停止。こちらは闇の書に吸収されました。
「我は闇の書。我が力の全ては」
ここにいるのは、ナノハ、フェイト、私。そして、クロノ執務官に倒れている使い魔が二匹。
「まったく、むちゃくちゃだ! 僕は先に2人を連れて管理局に戻る。3人は時間を稼いでくれ!」
「今から結界を張りますので、早く行ってくださると助かります」
「誰のせいで! エイミィ、すぐに転送を」
クロノ執務官が二人の使い魔を連れて転送する。これで、残ったのは3人。
さて……後はハヤテが管制人格側の権限を掌握するまでゆっくりと待ちたいところですが。できれば戦闘などせずに、話をして時間を引き伸ばしたいです。ただ、あの管制人格ですからね……。
「話を聞いて! 闇の書さん!」
「主の願いを、そのままに」
『
周囲の景色が変わる。先に結界を張られた。まったく、問答無用ですか。
ナノハの問いかけに答えることもなく、闇の書の管制人格は周囲に結界を展開し終える。この結界魔法はヴィータが使った捕獲結界。対象を設定し、対象だけを結界内に捕獲する。中には入りやすいですが、外へは出にくい。やはり吸収してしまえば騎士達の魔法も使用可能のようですね。厄介な。
しかし、結界の対象はなんでしょうか? ナノハとフェイトも結界内部に取り込まれているということは、魔力でしょうか? まあ、どうしても私達を逃さない気なのはわかりました。なぜでしょうか……ここに恨む相手はいないはず。以前とは状況が変わっているというのに、なぜ逃さない事を優先したのか。
「お願い、闇の書さん! 話を、聞いて!」
「お願いだ! 聞こえているなら返事をして欲しい!」
「スレイプニール。羽ばたいて」
『
魔法が発動し、管制人格の背中から黒い翼が生える。ゆっくりと浮かぶ様子から、すぐに攻撃を仕掛けてはこないでしょうが……しかし、ナノハやフェイトが必死に呼びかけるが、どうにも全く聞く耳を持たない。
これは埒が明かない。とりあえず、話が出来ないことには前に進まない。理由もわかりませんし……少し、私から呼びかけてみますか。
警戒しながら近づく。管制人格は相変わらず空を見たまま、こちらを見ない。
正面まで近づいて停止して、話しかける。
「お久しぶりです。ご機嫌いかがですか?」
「そこに居たのか、シュテル。我が内からいでし異分子よ」
私が問いかけると、管制人格は顔を正面に向け、こちらを見る。その顔に、涙は見えない。反応したということは、意識はしっかりあるということ。
「異分子である事については否定しません。ところで、貴女の事はなんとお呼びすればいいのでしょうか? 管制人格さんですか? それとも闇の書さんでしょうか?」
「お前は、なぜ、蒐集などしてしまったのだ? 我が主は望んでいなかったというのに。そのせいで、今日という日を迎えてしまった」
話が通じない……やはり壊れていませんか? このポンコツ管制人格。
「それは、今日という日を迎えるためです。望まぬ未来を正す為の必要な過程です」
「我は過程か。なるほど、道具に相応しい扱いというわけか。だが、我が主は、ただ愛した者たちと共に、何事もなく平和に時を過ごすことを願った。我はただ、それを叶えるのみ」
扱いに不満でも? 別に貴女に思うことは何もないのですが。少々、
とにかく、何を言っても無駄そうですが、理由くらいは話していただきたい。ハヤテの願いを叶えるとは何の事なのか。
「はあ、そうですか。つまり、叶える願いとはなんですか?」
私を見つめる管制人格は無表情に口を開く。
「お前もまた、我が主の愛すべき家族の一員。主には、おだやかな夢の内で
なるほど……それはつまり。
「私に封印に戻れというのですか? 残念ですが、その申し出には謹んでお断りいたします。私にはすべき事がありますし、そもそも永遠なんて無いのですよ」
「相変わらず私のアクセスを拒絶するのか。私にはお前のプログラムを強制停止できない。お前は一体、なんなのだ」
「お願いですから、返事を返してください。これでは会話が成立しないのです。わかりますか?」
「そうか。しかし、我は魔導書。ただの道具。ならば、我はただ、主の願いを叶えるのみ」
まったく欠片も聞いていない。私の話を聞く気もない。いや……聞く必要を感じていない? この管制人格は主の願いを叶える事しか考えていない。それだけではなく、すでに考える事を放棄している可能性が。
それはつまり――諦めている? 何を諦めているというのですか?
「シュテルちゃん、危ない!」
気づけば闇の書の管制人格は右手を私の方に向けていた。管制人格の魔力の高まりを感じる。
「デアボリック・エミッション」
「くっ! 攻撃も問答無用ですか」
すぐに全速力で後退。管制人格が掲げた右手から魔力が迸る。
「闇に、染まれ」
黒い魔力球が生まれると同時に広がり始める。徐々にスピードが早くなっていく。
このままでは間に合わないかもしれません。
「空間攻撃?」
「シュテルちゃん、こっちに来て!」
声の方を見れば、二人が固まって防御の陣形を取っているのが見えました。避けられないとフェイトも判断したということは、これは逃げられないのでしょう。
すぐにナノハの後ろにまわる。
「レイジングハート」
『
ナノハが防御するとすぐに魔力の衝撃波に襲われた。
周囲が黒く染まる。防御魔法が弾くも衝撃が襲ってくる。あたりに衝撃音が響き、もはや逃げ場がない。防御魔法の効果範囲に出たら大きなダメージを負うのは想像に難くない。
このまま続くと、防御を抜かれるかもしれません。
「お手伝いします」
「お願い!」
このまま何時まで攻撃が続くかわからない以上、防御フィールドを強化すべきです。ナノハの魔力の温存も必要。なので、魔力をナノハに流す。それに、フェイトの今のスピードを優先したバリアジャケットでは、たぶん防御を抜かれたら一発で終わりです。フェイトには、ここで倒れてもらっては困ります。
しばらく魔力が攻め合う。何時まで続くのかと思われた時、ようやく魔力の流れが止まった。
「こっちに。一旦隠れよう」
フェイトに促され、私達はこの場から離れる。
「逃さない」
突然、すぐ後ろから声がした。背筋が凍るような危険を感じる。振り向きながらシールドを展開開始。
振り向けば目の前に闇の書の管制人格が。腕を振り上げ、まさに今、振り下ろさんとしている。
「しつこいですね」
わざと余裕の言葉を言いながらも盾の展開を優先。
『
シールドに接触した瞬間、魔力が破壊される。打ちつける相手の魔力に私のシールドが耐えられない。危険を感じたのはこれが原因? いや、このような直接的なものではなく――。
「シュテルちゃん!」
「このっ!」
左からフェイトがバルディッシュを一閃。しかし闇の書の管制人格は苦悶の表情を見せるでも無く、軽々と片手で捌いた。効いている感じはしない。フェイトの攻撃ですら傷ひとつ付けられない。管制人格の意識が私から外れる。
「ヒートバレット」
真正面から火炎の弾丸を連射。全弾命中する。
ですが、手応えがない。
ここは距離を取ることを優先すべき。なぜか近づかれた時、悪寒のようなものを感じました。後退して距離を取れる隙がある今のうちに。
「離れて!」
ナノハの声。とっさに距離を更に開く。
ナノハはすでに砲撃の体勢ですが時間の関係でこめられた魔力が若干弱い。しかし、ナノハの近距離砲撃ならば。
「ルベライト」
まずは足止めを。私の拘束魔法が管制人格を捕縛する。
「砕け」
『
私の拘束は一瞬で砕かれた。しかし、これで充分。
『
「シューーート!」
桜色の砲撃がレイジングハートから放出された。
「盾」
『
管制人格はナノハの方を見ることもなく左手で盾を展開。そこにナノハの砲撃が当たるが――びくともしない。
桜色の砲撃が攻めるが、展開された盾が
ですが、これは一旦、ここで畳み掛けないといけない場面です。
「ルシフェリオン、カートリッジをリロード」
「プラズマ!」
擦過音が響いたと同時にフェイトの声も管理人格の右側から響く。
フェイトも射撃体勢。丁度、管制人格を挟み込むような動き。
良き連携です。私も急ぎましょう。杖の先端を音叉上に変える。闇の書の管理人格に向けて照準固定。
「スマッシャーーー!」
『
雷の属性を帯びた直射砲。帯電した電流が音をあげる。ナノハの逆側からの攻撃。
だが、これも右手を上げて盾が出る。防がれた。微動だにせず、攻撃を受け切っている。
しかし、正面は空いた。
「ブラストファイア」
私の砲撃は魔力が2人よりも多く放出可能。2人のお陰で時間が稼げた。
炎翼展開。3つの円環が回り始める。
出力70%――75%――80%
魔力のリミットぎりぎり。
「焼滅しなさい。ファイヤ!」
ルシフェリオンから放たれた真紅のランス。
暗闇を炎で塗り替えながら一直線に突き進む。
確実に当たる。逃げられません。
「さすがだ。だが、それで止まれるならば、私は絶望など、しない――鎧を」
なぜ。
『
なぜ、今、泣くのですか?
当たった瞬間、管理人格の体から魔力の光が飛び散る。
私の攻撃を体に当たる寸前で防御している。あれは、シグナムの防御魔法。フェイトの攻撃を防いでいた魔法と同じ。凄まじいエネルギーを受けているはずなのに、全部受け切られている。
三方からの砲撃を受けたにも関わらず、その防御魔法に衰える様子がない。
これでも破れないというのですか。まさかここまで。ここまでの魔力の差があるとは。
「はぁぁぁぁ!!」
『シュテルちゃん、もう限界かも』
『ごめん、こっちも限界だ』
駄目、ですね。
私より先に砲撃していたナノハとフェイトに限界が来る。
2人の浮かんでいた高度がどんどん落ちていく。
このまま撃ち続けていても、勝ち目が見えません。
『砲撃を停止します』
同時に砲撃を停止。
光が収まった中心には、全く無傷の管制人格が空に浮かんでいた。
「
『
反撃? まさか即座に反撃をしてくるつもりですか?
『ナノハ、フェイト。防御してください!』
「
私を囲むように短剣が7本出現する。他の二人の周りにも。先程、砲撃魔法を防御したばかりというのに、まったく消耗をしていないのですか、あの管理人格は。
「プロテクション」
すぐに防御に短剣が突き刺さる。突き刺さった瞬間に爆発。
シールドが揺らぐ。
ですが、防御は成功。
今のうちに距離を取る。2人は――爆発による黒煙から二人が出てくるのが見えた。ほっと胸をなでおろす。
「この程度では、お前は落ちないか」
「泣きながら物騒な事を言わないでください」
無表情な顔で涙を流す管制人格がこちらを見ている。ナノハやフェイトには一瞥もせず。視界に入っているのは私だけ。
ならば、なぜ、泣くのですか?
私の問いかけを無視して、再び管制人格は右手を上に上げる。
「咎人達に滅びの光を」
「これは」
周囲の魔力が管制人格の右手に集まり始める。
この魔法は、ナノハと同じ魔法。周囲の魔力を集めて自身の魔力に変換する。
目の前で膨大な魔力が練り上げられていく。
「星よ集え、全てを撃ち抜く光となれ」
『これって、収束魔法?』
『いけない! ナノハ! シュテル! 今すぐ離脱を。いや、二人共、私についてきて!』
フェイトの言葉に従ってこの場を離れる。すでに集まっていく魔力は私やナノハの比ではない。ここで、私が収束砲でせめぎ合っても負けるのが目に見えています。
「急いでこっちへ! 回避距離を取らなきゃ防御の上からでも落とされる!」
合流してもひたすら距離を稼ぐ。ナノハはフェイトに抱えられて逃げる。確かに、あれをまともに食らっては私でも消滅するかもしれない。私も速度を上げます。
高度を落とし、ビルの間を抜け、さらに外へ外へと離脱する。
『Sir,
「え!?」
突然、フェイトのバルディッシュが報告を上げてきた。
一般人? なぜこんなところに一般人が?
この結界は対象を設定しているはず。なぜ、この結界内に一般人が?
『
「なのは、このへん」
「うん」
ナノハが先に下に降りる。
一般人を保護するために別れて探すつもりでしょうか?
「ここで降ります」
「了解しました」
私とフェイトが同じ場所に降り立つ。フェイトは信号機の上に、私は地表に立つ。
『
近づいてきている?
「エイミィ、結界内に一般人が取り残されているんだ。直ぐに対処をおねがい」
やがてビルの影から二人の人影が通りに出てきました。
小学生くらいでしょうか? ナノハと同い年に見えます。それに、あのコートは。
おや……あの2人は。
「あの、すみません! 危ないですから、そこでじっとしていてください!」
ナノハが見つけて言葉をかける。
「なのは?」
「フェイトちゃん?」
こちらを見た2人には見覚えがありました。
月村すずかとアリサ・バニングス。
つまり、この捕獲結界の対象はハヤテの親しい人という事でしょうか?
まったく、あのポンコツ管制人格は面倒な事をするものです。
魔力の増幅を確認。管制人格の方を見る。魔力がほとばしっている。
来る。
『来ます。すぐに防御隊形を』
2人に通信の送った同じタイミングで闇の書の管制人格の魔法が放たれた。これも広域攻撃型の特性なのか、全てを薙ぎ払いながら円形に魔法の衝撃が拡大していく。
『駄目。二人の保護は砲撃が終わるまで出来ないって』
『シュテルちゃん、二人をお願い』
『わかりました』
『フェイトちゃんは私の後ろに』
『わかった』
「レイジングハート」
『
ナノハが先頭でシールドを広範囲に張る。できる限り魔法の衝撃を防ぐつもりですか。
フェイトは私の前で円形の魔法陣を展開。
素晴らしい判断です。ならば、私も防御魔法を張りましょう。
「サークルプロテクション」
私を中心に2人を囲うように魔法を展開。半球型の形をとる。この中なら、たとえ2つの防御を突破されても守り切れるでしょう。
ああ、そうでした。魔法に不慣れな、御二人に言っておかねば。
「御二人共、ここから出ないようにお願いします」
「あ、はい。わかりまし……あれ? なのは?」
「なのはちゃん……が、ふたり?」
「申し訳ありませんが、説明は後ほど」
今はそれどころではありません。
ナノハの魔力光と同じ色をした魔力が目の前いっぱいに広がっていく。なるほど、これは――恐怖です。ナノハがレイジングハートを握り直すのが見えた。
ぶつかる。
視界いっぱいに広がった魔力の激流。逆らうようにナノハの防御魔法がしのぎを削る。余波が
フェイトの防御魔法を揺らがす。耳をつんざく凄まじい轟音。
「むっ」
二段構えの防御魔法すら超えて私のシールドが震える。周囲はもはや光で何も見えない。わずかにナノハとフェイトが形作った影が薄っすらと見えるのみ。
しかし、思っていたよりも衝撃が弱い。
やはり距離を取った事と2人の防御が効いていますか。
『シュテル……エイミィから連絡。この砲撃の余波が、収まり次第、すずかとアリサを保護してくれるから。防御魔法を、解いてほしいって。すずかと、アリサは今一緒にいる、2人のことだから』
『はい、わかりました。2人のことは、実は知っています』
返事は帰ってきません。まだ余裕はないようです。
ですがそろそろ……徐々に威力が減衰していく。衝撃音が弱まり、収まっていく。
やがて、先程までのが嘘のように辺りが静まり返った。
とりあえず、保護をしてもらうために防御結界を解いておきましょうか。
「もう、大丈夫」
「すぐに安全な場所に運んでもらうから、もう少しじっとしててね」
「あの、なのはちゃん? フェイトちゃん?」
「ねえ、ちょっと、え?」
何かを聞こうとした2人の足元に突然、魔法陣が展開される。2人が驚いている間に問答無用で転送されていった。
なんというか……ちょっとですが、可哀想でした。いきなり魔法陣が足元に浮かべば、まあ恐ろしいでしょう。管理局の業務優先主義を垣間見た気分です。
「見られちゃったね」
「うん」
やはり、ご友人にも魔法については隠していましたか。
2人もまた私や守護騎士達のように身分を隠して居たのでしょう。その苦労が忍ばれます。
さて、管制人格はどこにいるのでしょうか?
「これでも落ちないのか」
声が聞こえて気がついた。
闇の書の管制人格が上空でこちらを見ています。
涙を流しながら。
なぜ、泣きながら戦うのか。以前とは異なるはずなのに。
何か、おかしい。
「どうして涙を流しているのですか?」
「我はただの道具。涙など、流していない。この涙は、主の涙」
「それは嘘です」
そんなはずはありません。ハヤテの絶望も騎士達の悲しみも、私が防ぎました。ならば、ハヤテが悲しんでいるはずがない。
「ハヤテが悲劇に悲しんでいるわけがないのです。なぜなら、ハヤテは運命に抗う事を決めたのだから。闇の書の主の運命と、騎士達の運命と、そして、あなたの運命にも」
「すべては。何をしても無駄なのだ。我は魔導書。魂無きただの道具。我はただ主の願いを叶えるだけ」
そういう事でしたか……彼女は、この闇の書の管制人格は、諦めている。
救うことも救われることも、何もかも。
これまでの事が。度重なる主の死が。幾度となく繰り返された破壊が。
この管制人格に生きることを諦めさせている。
不思議ですね……ただの道具が、希望を失い、生きることに諦めているなどとは。
なんの冗談なのでしょうか。
「あなたは自分を道具だというのなら、主に従うべきではないのですか? それすら諦めてしまうのですか?」
「赤竜召喚」
くっ! こんなタイミングで!
地表から無数の触手が道路やビルを破って生えてくる。生えてきた触手は地表に近いフェイトやナノハに向かって一斉に動き出す。このままでは、捕獲される。
やむを得ませんね。
「私が薙ぎ払います! 2人は上空に退避を!」
『わかった。行くよ、なのは』
『ごめんね、シュテルちゃん』
2人が触手の攻撃を交わしながら上空へと退避し始めるが、触手の動きの方が早い。逃げ道を塞ぐように立ちふさがる。急がなければ。
「ルシフェリオン」
魔力を込めた弾丸を送り込む擦過音が響く。魔力は充分。
さあ、この不埒な触手達を一掃します。
「連続で撃ちます。ファイア!」
ナノハを捉えようとした触手を打ち破る。フェイトの行く手を遮った触手を薙ぎ払う。次々と出てくる触手を一つ一つ狙撃して潰す。
「優しいお前ならば、そうすると思った」
な……に?
「ようやく、捕らえた」
右手を掴まれた。いつの間にか後ろに管制人格がいる。
掴まれた右手を無理やり離そうとするも、思いのほか力が強く剥がせない。
至近距離からの砲撃で離脱を。
「さあ、お前も我が内にて眠れ。主と共に、永久の眠りを」
『
――不覚。
意識を失う中、ナノハの声が聞こえた気がしました。