何度か途中で投稿してしまっていた。
フリンは厩舎で夜明けとともに目を覚ます。昨夜、ルイズに部屋から追い出された後、眠れそうな所を探して見つけた宿だ。フリンは起床後の寝ぼけた頭を覚ますため、水場を探して歩く。
「……ここは、朝の空気すらもミカド国と似ているのか」
朝のすがすがしい空気を吸いながら思う。
フリンは東のミカド国と比べると東京の空気は天蓋が無くなった後でさえも、淀んでいるように感じていた。もう東京に帰らずにこの地で暮らしてしまおうか…。不意にそんな考えが頭によぎる。しかし、そんなことはできない、できたとしてもそれは決して今ではない…。という考えがすぐに先ほどの安穏な願望をかき消す。自分はまだ、自分の選択の末を見届けてはいない。彼らの道を否定したのだから、それに代わり自分の道を最後まで貫かなくてはいけない。そんな考えがフリンの心を東京に向かせる。
そうこう考えているうちに、水場に着く。水場で顔を洗い、体を拭き、ルイズの部屋へ向かおうと思った矢先に、一人の白のカチューシャと黒のワンピース、エプロンをつけた
女の子に声をかけられる。
「あの、すみません。こちらでは見慣れない方ですが、あなたは貴族の方でしょうか?もし、何かお困りでしたらお申し付けくださいませ。」
女の子はわざわざ洗濯物と思われる物が入っている籠を地面に置いてから尋ねる。
「……俺は貴族ではない。昨日、ルイズというここの学生に呼び出された使い魔だ。俺はフリンという者だ」
「まぁ、そうでしたか。初めまして、私はシエスタといいます。昨日こちらに来られたということでわからないこともたくさんあるでしょうから、手伝えることがありましたら言ってくださいね」
ありがたいことに、シエスタはこちらから何をいうわけでもなく手伝いを申し出てくれた。そんな彼女の優しさに感謝しつつ答える。
「ありがとう。……そういえば、ルイズに洗濯、掃除などの雑用を頼まれているところだった。……掃除はともかく、女物の洗濯は勝手がわからない。頼めるか?」
「わかりました。でしたら、私はあちらで洗濯をしておりますので、彼女の洗濯物を持ってきてもらえますか」
「わかった。……じゃあ、ルイズの部屋に洗濯物を取りに行ってくる。……してもらいっぱなしでは、気がすまない、今度何かお礼をさせてくれ」
そう言うとフリンは洗濯物を取りにルイズの部屋へ戻る。
まだ学園に不慣れなせいか迷いながらもルイズの部屋に向かう。途中から、バロウズのマップ機能を思い出すが使わなくていいだろうと考え、歩く。……が部屋にたどり着けず、結局、バロウズに頼って部屋に着く。ここは寮だとルイズは言っていたが、日が上ってはいても時間としては早いのか、学生と思われる人物には会わなかった。
ルイズの部屋の前に立ち、ドアをノックする。返事がないので、もう1度ノックする。またまた、返事がない。仕方ないので、ひと声かけて、部屋に入る。
「入るぞ」
この部屋の主は思った通り、まだ夢の中にいた。フリンは脱ぎ散らかされた洗濯物をまとめた後、ルイズを起こす。
「……起きろ、朝だぞ」
まずは声をかける。…起きない。
「…起きろ、朝だ」
声をかけながら、揺らす。…起きない。
「朝だ、起きろ」
少し大きな声をかけて、強めに揺らす。…起きない。
「起きろ」
ルイズの包まっている毛布を剥ぐ。ここまでしてようやく、ルイズが起きる。
ルイズが寝ぼけ眼でこちらを見る。
「……おはよう。」
「おはよう。朝だよ。お嬢様」
「そ、そう……。って誰よあんた!」
「ひどい言い草だな。君の使い魔だよ。まだ寝ぼけているのか?」
「……使い魔…。…そう昨日、召喚したんだっけ」
「……ちゃんと起きたな。じゃあ、洗濯物を出してくる。今日も学校があるのだろう?戻ってくるまでに準備をしておけよ」
フリンは、まとめた洗濯物を持って洗い場に向かう。
「……お待たせ、シエスタ。これをお願いできるか?」
洗濯中のシエスタの脇にまとめた洗濯物を置く。
「あぁ、ありがとうございます。洗濯が終わったら、ミス・ヴァリエールの部屋に届けますね。」
「そうしてもらえると、助かる。」
「あ、あの…もしよかったら、厨房で朝食をとりませんか?賄いですけど…。もう朝食の時間が終わりますし…。それに間に合ったとしても、食堂で食事をとれるのは…貴族の方だけですから」
「ありがとう。けど、今日は遠慮しておくよ。部屋にルイズを待たせているし…。食事のことについてはまだ話し合っていないからね。また、明日、洗濯物を持ってくるときに返事をするよ」
「そうでしたか、わかりました。では、また明日」
「あぁ、また明日。今日は助かったよ。ありがとう」
フリンは来た道を急いでもどる。朝食についてはすっかり失念していた。ルイズに対して悪いことをしたなと思いつつ、寮の廊下を歩く。
部屋に入って、一言謝る。
「すまない、遅くなった。」
「遅い」
不貞腐れた表情で待っていたルイズが返す。
「ずっと待っていたのか?」
「そうよ、準備しておけって言ったのは、あなたじゃない。それに、使い魔を待つのはご主人様の役目だもの」
「朝食も取らずに?」
「…あなたが出て行ってからすぐにメイドが来たから、軽食を作ってきてもらったわ。…はい、これはあなたの分」
ルイズがサンドイッチの入った包みを持たせてくれる。
「さ、もう行かないと、授業にも間に合わなくなるわ」
そう言うとルイズは授業が行われる教室へと向かう。
フリンは内心で昨夜、ルイズを子供だと判断したことを反省し、評価を改めた。
「どうしたの?早く行くわよ」
「……すぐ行く」
フリンは慌ててルイズの後を追う。
◇
ルイズと共に教室に入ると、そこには他の生徒とその多種多様な使い魔がいた。それらからルイズとフリンは早速注目を集めた。
フリンはそれらの使い魔やその主人たちを見て思う。
――なるほど、普通は人間が呼び出されないという話は嘘ではなかったのか…。
しばらくして、赤土のシュヴルーズという、教師がやって来て授業が始まる。フリンは教室の後ろで壁にもたれかかっている。授業前にルイズに床に座るか、後ろで立っておくか選べと言われていたからである。
「おやおや。変わった便い魔を召喚したものですね。ミス・ヴァリエール」
シュヴルーズが、多少警戒した目でフリンを見て言うと、教室中がどっと笑いに包まれた。流石に教師であるから、ルイズが俺を召喚したことを知っているのだろう。
「ゼロのルイズ!召喚できないからって、その辺歩いてた平民を運れてくるなよ!」
ルイズはフリンをちらっと、横目で見て、少し考えた後、反論する。
「違うわ!フリンは平民じゃないわ。彼は彼の国では騎士だったらしいわ。」
「嘘つくな!もしそうだというのなら、証拠を見せてみろ!」
いつの間にかルイズの脇に移動していたフリンが尋ねる。
「証拠とは?」
「騎士だというのなら、メイジであるはずだ。メイジであるなら魔法が使えるはずだ。さぁ、見せてみろ!」
クラスの大多数がその言葉に同調して言う。
「証拠を見せろ!」「魔法を使ってみろ!」「できないのか?」「どうした、早く見せてみろ」「ゼロのルイズの使い魔だ。魔法なんて使えるはずがない!」
そんな生徒たちを見かねたのか、シュヴルーズが特に騒ぎ立てている生徒の口に粘土を放り込む。
「静かにしなさい!今は私の授業中です。彼を侮辱する時間ではありません。……私も軽率でした。私の言葉が発端になったのですから、私にも非があります。申し訳ございませんでした。ミスタ・ええっと…「フリン」そ、そうミスタ・フリン。生徒に代わって謝罪いたしますわ。」
「いえ、大丈夫です。……証拠が見たいのなら、代表者を3人決めて、夜に昨日俺が召喚されたところに来てくれ。すみませんが、ミセス・シュヴルーズ、その時には、コルベール氏かあなたが立ち会ってください。」
「よろしいのですか?ミスタ・フリン」
「……こんなことが続くと、ルイズに迷惑がかかるので……。こんなことは早めに済ませておいた方がいいので、これで済むのであればそれでいいです。」
「わかりました。……では授業を始めます。」
「私の二つ名は赤土。赤土のシュヴルーズです。『土』系統の魔法を、これから一年、皆さんに講義します。魔法の四大系統はご存知ですね? ミスタ・マリコルヌ」
「は、はい。ミセス・シュヴルーズ。『火』『水』『土』『風』の四つです!」
シュヴルーズは頷いた。
「今は失われた系統魔法である『虚無』を合わせて、全部で五つの系統があることは、皆さんも知ってのとおりです。その五つの系統の中で『土』はもっとも重要なポジションを占めていると私は考えます。それは、私が『土』系統だから、というわけではありませんよ。私の単なる身びいきではありません……」
シュヴルーズの授業が続く……
シュヴルーズの授業は興味深かった。魔法というのは戦闘で使われるだけでなく、日常生活の場でも使われ、その種類や用途も多岐にわたるそうだ。むしろ戦闘で使う魔法のほうが少ないのかもしれない。主に戦闘用の魔法しか使えないフリンは内心驚く。授業が進むにつれて、フリンは熱心に話に聞き入っていた。トライアングルやスクウェア等の分からない単語は後で、ルイズに聞きこうと、メモまで取っていた。
授業が進み、錬金の魔法を生徒が前で実践するということになった。そして、その生徒にルイズが選ばれた。すると一瞬で周りの顔色が変わる。先ほど怒られたばかりだというのに生徒たちは焦った顔で口々に、ルイズに魔法を使わせないようにとシュヴルーズに必死に訴える。決して馬鹿にしている訳ではなく、本当に身の危険を感じて訴えているようだった。
「ミス・ヴァリエール! どうしたのですか?」
シユヴルーズ先生がそんな彼らの懇願も虚しく、ルイズを再び呼びかける。
するとルイズと違って発育のいい赤髪の少女が困った声で言った。
「先生」
「なんです?」
「やめといた方がいいと思いますけど……」
「どうしてですか?」
「危険です」
赤髪の少女は、きっぱりと言った。生徒のほとんどが同意したように頷く。
「危険? どうしてですか?」
「ルイズを教えるのは初めてですよね?」
「ええ、でも、彼女が努力家ということは聞いています。さぁ、ミス・ヴァリエール。気にしないでやってごらんなさい。失敗を恐れていては、何もできませんよ?」
「ルイズ、やめて」
ルイズは渋っていたが、逆にその一言で決心をしたようで、立ち上がって教壇へと向かう。そして、教壇の前で、目を閉じ、真剣に呪文を呟きはじめた。
フリンは教室の後ろでその様子を見学していた。それを魔力が石ころに集中していくのがわかる。しかし、それと同時に嫌な予感がする。そして、魔力が集中すればするほど、嫌な予感が大きくなり、頭の中で警報がなる。
フリンの予感は正しかった。
石ころがカッと光り、光が轟音と衝撃と共に教室を覆う。咄嗟に伏せるが、何かの残骸や破片が飛んでくる。
光が晴れた後、教壇の方を見やると、元あった教壇は跡形もなく、様々な机や椅子、黒板等の備品だったものの残骸が散乱していた。最前列にいたのであろう生徒は机の下に隠れたにも関わらず飛び散った破片で怪我をしている。それ以外の生徒は比較的軽症と呼べるものばかりのようだ。ルイズの側にいたシュヴルーズは、爆心地に一番近い二人、シュヴルーズは衝撃をモロに受けたようで意識を失って倒れていた。
そして、もう一人この惨状を引き起こした張本人ルイズは煤で真っ黒になりながら、むくりと立ち上がる。服の所々は破れ、破片で切ったのか血が体のあちこちから滲んでいる。
「今日は、ちょっと失敗しちゃったみたいね」
煤を払いながら、ルイズはバツの悪そうな顔でボソッという。
ちゃっかり、避難していたのであろう青い髪の少女は教室に入ってきて、先ほどの赤い髪の少女の席を見やる。すると、残骸の中から赤い髪の少女が起き上がる。そして、青い髪の少女に言う。
「……あなた、上手く逃げたわね、タバサ。他の先生、呼んできて」
タバサと呼ばれた青い髪の少女はコクンと頷くと教室から出ていく。赤い髪の少女はルイズのほうを向いて怒鳴る。
「だから、やめてって言ったのよ!なんで、あんなにお願いしたのにやるのよ!しかも今日は、ちょっとって何よ!失敗するのはいつものことだし、この教室を見てみなさい、どこがちょっとなの?だからゼロのルイズなのよ」
「昨日は成功したからいいじゃない。昨日成功したからもうゼロじゃないわ。いちいちキュルケはうるさいわね。」
二人は口論をし始める。
フリンは体についた破片をはたきながら、無事だった椅子に腰掛ける。二人の口論を眺めつつ。なるほど成功率ゼロでゼロのルイズか。なかなかセンスがあるなと思っているうちに、タバサが呼んできたのであろう教師が到着し、その日の授業は中止という形で終わった。
◇
その夜、フリンはルイズとともに『サモン・サーヴァント』が昨日行われていた場所に向かう。すると、ルイズは恥ずかしそうに声をかけてきた。
「……ねえ、何か、言いたい事があるんじゃないの?」
「……魔法を失敗したことを言っているのか?」
「そうよ、失望したんじゃないの?」
「なぜ?何を失望するようなことがある。俺はここの住人ではないからな。魔法が使えないからといって何も思わないが…。」
「でも、私が馬鹿にされるだけでなく、私の使い魔ってだけであなたまで笑われるわよ」
「俺は気にしないさ。そういったことには慣れてる。」
「でも……」
「……俺にとって君は、協力者であり、主人だ。自分に快く協力してくれる人や自分の主人を笑う人などいない。俺は君を笑わない。だから、そう落ち込むな」
「そうよ、そこまで落ち込まなくていいわよ。ほら、もっと笑いましょう。」
聞いていたのか、バロウズも一緒になってルイズを励ます。
「ありがとう、フリン、バロウズ」
そうこうしているうちに、目的地に着く。そこにはキュルケ、タバサ、それに、確かマリコルヌという少年の三人とコルベールが立っていた。
「悪いね、こちらに来て早々こんなことになるとは……」
コルベールが申し訳なさそうに言う。
「いえ、この三人が納得してくれればそれで収まるでしょうから…。認めてもらうには見せることが一番早い。」
そう言うとフリンは三人の方へ向き直って言う。
「……初めまして、俺はフリンという。職業はサムライまたは人外ハンターだ。一応俺は魔法を使うことができる。しかし、ほとんど戦闘用のものしか使えない上にこちらの魔法と少々違う。杖も、詠唱もいらない。」
「杖も、詠唱もいらない?それは…まるで、先住魔法じゃないのか」
コルベールがこぼす。その顔には恐怖と、好奇心が入り混じった表情が表れている。
「…先住魔法というものはよくわからないが、俺が扱えるのはそういう魔法です」
「それなら、君に先住魔法について簡単に説明しておこう」
そう言うと先住魔法についてフリンに簡潔にしかし要件を抑えて説明する。
「…多少の差異はありますが、俺の扱う魔法はこちらの魔法より先住魔法のほうが近いですね。今の話を踏まえて、何かやって欲しい魔法があれば言ってほしい」
キュルケが真っ先にリクエストを出す。
「へぇ、面白そうね。じゃあ、まずは火の魔法を見せて欲しいわ」
「わかった。――アギ――」
地面に向けて、火球を放つ。火球が地面に着弾すると、ごうごうと音を立て、大きな火柱が空に伸びる。
「……これは威力だけならトライアングル、下手するとスクエアクラスの魔法だな」
コルベールが多少驚きながらも、冷静に分析する。その影で、キュルケが獲物を品定めするようにフリンを見つめていた。
「……あなたは炎の形状を変えることはできるのですか?」
コルベールが興味深そうに火柱を分析しながらフリンに尋ねる。
「あまりできません。今のようにするか、放射状に放つかぐらいしかできない。」
次にマリコルヌが動揺しながらも勇ましく言う。
「他に使える魔法はないのか…例えば風の属性とか」
「――ガル――」
一同の目の前に疾風が吹き、小規模な竜巻が起こる。
「……攻撃を目的とした魔法は他に雷、氷結の魔法等が使える。……威力も大体あれと同じだ」
そう言って、未だ燃え続ける火柱を指す
これを聞いてマリコルヌは信じられないといったような顔で座り込み呟く。
「火と風だけならまだしもあと2属性も使える?おまけにそれらもこの威力がだって?わけがわからないよ…」
「……回復魔法は使えるの?特に精神系統の……」
最後にタバサがポツリと小さな声でしかしはっきりと言う。
「……精神系統の回復魔法は混乱、錯乱している者を正気に戻す程度のことならできる。毒、風邪の治療、金縛りからの開放、意識のないものの回復等もできるが……」
小声でフリンにのみ聞こえるように言う。
「……薬によって、心を壊された人を治すことは?」
「……すまないが、俺にはできない。」
「……そう」
心なしかタバサの顔が陰る。
「……しかし、心当たりがないわけではない。まずは1度直接診る機会が欲しい。」
「……わかった」
そう言うと、タバサはキュルケの近くに行く。
フリンを見に来た三人はそれぞれ自分の中でフリンの実力に納得し、消化したようで彼らは新しく恐怖や好奇心を込めた目で見るようになっていたがフリンの実力に疑惑を持つことはなくなっていた。
「今日はこんなものでいいだろうか?納得してもらえたと思うが」
そう言うと、四人は口々にもう十分だと言い、その場で解散することになった。
◇
「……あなた、あんなに魔法が使えたの?」
部屋についてから、あの場ではずっと黙っていたルイズが言う。
「……あぁ」
「私の魔法……あなたの目から見てどう映った?魔法の才能なんてないように見えた?」
ルイズは真剣な眼差しでフリンを見据える。
「……あれは失敗だが失敗ではないと思う。錬金といったか…あれとは別物の魔法だ。万能魔法によく似ている。属性を持たず、どんな耐性さえも無視する特殊で稀少な魔法だ。他の属性の魔法より威力だけなら頭一つ抜けている。練習をすれば、徐々に扱えるようになるかも知れない。それを扱えるようになれば普通の魔法も使えるだろう」
「練習すれば、私もちゃんと魔法を使えるようになれるのね」
「……あぁ、ちゃんと練習には付き合おう。出来るだけ、一人で練習しないようにして欲しい。あれでは危険すぎる。銃の暴発と一緒だ。あれを繰り返すと、いつか本当に取り返しがつかなくなるだろう」
「……わかったわ。そうする」
ルイズは多少不服そうだが素直に頷く。
「話は変わるが、朝食を厨房で賄いを分けてもらえそうだから、明日からは、洗濯物を出しに行くついでに分けてもらってくる。授業が始まる時間までならそこで手伝おうかなとも考えているが、いいか?」
「別に、私が言えば食堂で一緒に食べられるようにできるのに……。まぁ、あなたがそうしたいなら何も言わないけど」
「そうか、ありがとう。じゃあ、おやすみ」
「……おやすみ。今日はありがとね」
そう言うと、ルイズは部屋の明かりを消した。
しばらくして二つの規則正しい寝息が聞こえ始めた。