拙い文章で、読みづらいかもしれませんが、誤字やより良い表現があればどんどんおっしゃってください。
なんとなく書きたくなってやった。後悔は…していない…はず…。
「宇宙の果てのどこかにいるわたしのシモベよ!
神聖で美しく、そして、強力な使い魔よ!
わたしは心より求め、訴えるわ……我が導きに、答えなさいッ!!」
桃色がかったブロンドの髪と鳶色の目をした少女が必死の様相で叫びながら呪文と共に、力一杯杖を振り下ろす。次の瞬間、少女の目の前でドカンと大きな音をたて爆発が起きる。少女は諦めに似た表情で爆発によって起きた砂煙の中を見つめる。どうせ何も出てこない、失敗だろうと肩を落とした時、少女の目は砂煙の中から光輝く鏡のような『サモン・サーヴァント』の“ゲート”が現れるのを捉えた。
次第に晴れていく砂煙と共に顕になる鏡のような“ゲート”の中から出てきたのは、青いコートを身に纏い、長い黒髪を後ろで一つに束ねた中性的な顔立ちの青年だった。
ゲートから出てきたフリンは顔を上げ辺りを見回す。黒いマントを身につけた大勢の少年や少女が、自分を物珍しそうに見ている。豊かな草原や石造りの大きな城が見えた。
「……東のミカド国の雰囲気とよく似ている。懐かしい風景だ」
フリンは今いる状況を忘れ、自らの決断によってなくしてしまった故郷を思い出し呟いた。
「あんた誰?」
下から見上げるようにして、フリンをまじまじと覗き込んでいる女の子が言った。黒いマントの下に、白いブラウスを身につけた可愛らしい女の子だった。
「誰って……。」
「俺は……フリン。サムライまたは人外ハンターのフリンだ」
「どこの平民?」
女の子は間髪を入れずに尋ねる。平民?カジュアリティーズのことか?周りを囲んだ少年少女たちも、彼女と同じような制服を着て、手に何か棒のようなものを持っている。そういえばここはどこだ。俺はいつの間にこんなところに来たのだ。俺は東京の復興進度の報告のため、お頭やフジワラ、ツギハギ達のいる“フロリダ”に向かっていたはずなのに。フリンは今置かれている状況が飲み込めず混乱し始めた。
一方、フリンを質問もとい尋問をしている桃色がかったブロンドの髪と鳶色の目をした少女ことルイズも混乱していた。『サモン・サーヴァント』は失敗してしまったのか、成功したとしてもなぜ動物、幻獣の類ではなく人間なのかと。
「ルイズ、『サモン・サーヴァント』で平民を呼び出してどうするの?」
誰かがそう言うと、フリンの顔をじっと覗き込んでいる少女以外の全員が笑った。
ルイズははっとして言い返す。
「ちょ、ちょっと間違っただけよ!」
その言葉にまた他の少年たちが面白がって野次を飛ばす。
「間違いって、ルイズはいっつもそうじゃん」
「さすがはゼロのルイズだ!」
その言葉で集団が沸き、人垣がどっと爆笑する。
フリンの顔をじっと覗き込んでいる女の子は、どうやらルイズというらしい。
混乱が収まるにつれて、ルイズは自分が何を召喚してしまったのかを理解した。
「ミスタ・コルベール!」
ルイズと呼ばれた少女が怒鳴った。人垣が割れて、頭頂部分が寂しい中年の男性が現れた。
「も、もう一度召喚させてください!」
しかし、彼女の意に反して、コルベールと呼ばれた男は首を横に振った。
「それはダメだ。ミス・ヴァリエール」
「どうしてですか!」
「決まりだよ。二年生に進級する際、君たちは『使い魔』を召喚する。今、やっているとおりだ」
使い魔?なんだそれは?仲魔とは違うのか?悪魔ではなく俺が使い魔とやらになるのか?そもそもわからないことが多すぎる。フリンは混乱する頭で考える。
「それによって現れた『使い魔』で、今後の属性を固定し、それにより専門課程へと進むんだ。一度呼び出した『使い魔』は変更することはできない。何故なら春の使い魔召喚は神聖な儀式だからだ。奸むと好まざるにかかわらず、彼を使い魔にするしかない」
「でも! 平民を使い魔にするなんて聞いたことがありません!」
「これは伝統なんだ。ミス・ヴァリエール。例外は認められない。彼は……」
コルベールは、フリンを指差した。
「ただの平民かもしれないが、呼び出された以上、君の『使い魔』にならなければならない。古今東西、人を使い魔にした例はないが、春の使い魔召喚の儀式のルールはあらゆるルールに優先する。彼には君の使い魔になってもらわなくてはな」
「そんな……」
ルイズはがっくりと肩を落とした。フリンが思考に沈んでいる間も二人のやりとりは続く。しばらくすると思考に沈むフリンをよそにルイズは意を決っして言った。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・プラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
フリンの意識がルイズの唇と、フリンの唇に重ねられた感触で現実に戻される。直ぐに左腕に何かが刻まれるような痛みが走る。しばらくして痛みが治まり、改めて左腕を確認するとそこには魔法の言語のようなものが刻まれていた。するとコルベールと呼ばれた男が緊張した面持ちで近づいて言ってきた。
「初めまして、わたしはこの学園で教師を務めております、コルベールと申します。申し訳ないが、あなたのお名前をお聞きしたい。それと、もしよければ、あなたの左手のルーンも少々見せていただきたい。よろしいでしょうか?」
フリンはしばらく考えた後、
「……私の名はフリンです。どうぞ、私の左手をお見せしましょう。その代わりといってはなんですが、ここは私の知る土地ではないようです。ここの土地、もしくは国についての情勢、慣習、風俗、地理など私の知りたいことについて答えていただけますか。」
コルベールは少し驚いて、
「わかりました。わたくし共もあなたについて聞きたいことがあります。お見せいただいたあと、話をする場を設けることを約束しましょう。」
左手の魔法の言語を見てコルベールが呟く。
「ふむ…、珍しいルーンだな」
コルベールは左手の魔法の言語をスケッチしたあと、フリンに礼を言い、学園長に相談すると言ってその場を去っていった。
ルイズがものすごい形相で近づいてきて、尋常でない剣幕で怒鳴る。
「ちょっと、使い魔の分際でご主人様を無視して話をしているんじゃないわよ!あなたが何者か知らないけど、『コントラクト・サーヴァント』を終え、契約を交わしたなら、あなたは私の使い魔、下僕なの!わたしは二年生のルイズ・ド・ラ・ヴァリエール!これから、ご主人様であるこの私を立て、ご主人様であるこの私に死ぬ気で仕えなさい!いいわね!」
剣幕に押されたフリンはたまらず…もらす。
「俺は… サムライ フリン コンゴトモヨロシク」
◇
しばらくして怒鳴るだけ怒鳴って、言いたいことを言いたいだけ言ったルイズが落ち着きを取り戻したあと、フリンは彼女にこれからの自分の住まいになるであろう彼女の部屋まで案内してもらった。
フリンはコルベールに自分が寝られるようなところを教えてもらおうと彼女に提案した…。が、彼女はフリンの提案を自分の使い魔だからと認めず、最終的にはフリンの方が折れた。
ルイズの部屋に着くまでにフリンは彼女に自分は貴族であり、この学院で学んでいる学生である…。など簡単に彼女とこの建物について紹介してもらった。フリンはやはりここは自分の知る土地ではないと半ば確信しながらルイズについていく…。
一方で、ルイズは話しているうちに、フリンに対してまだある程度警戒心をもっているものの、悪い奴ではなさそうと思い、少し心を開いた。
フリンは部屋に着くまでルイズに住んでいるのは寮だと聞いていたので、サムライ寮を思い出し、わりかし質素な部屋を想像していたが、そこは彼が思っていたよりずっと立派だった。部屋に着くとルイズは言った。
「じゃあ、改めて聞くけど、……あんた誰?」
「さっきも言った通り、サムライ、または人外ハンターのフリンだ」
「サムライって何?」
「……ミカド国に伝わる『ガントレットの儀式』を受け、ガントレットに認められサムライ衆の一員となった者を指す。サムライは出自がカジュアリティーズであってもガントレットに認められサムライ衆の一員になったのならラグジュアリーズとして扱われる。……主な仕事はナラクという場所で悪魔と呼ばれる怪物の討伐や遺物を回収すること、市中の巡回、遠方での有事の際にはそこへ遠征したりする。基本的に王国の治安維持に従事していると考えてもらえればいい。人外ハンターは、……そうだなサムライ業と兼任しているなんでも屋みたいなものだ。」
「ふーん、大変なのね。ガントレットってその腕につけている籠手のこと?そのカジュアリティーズやラグジュアリーズっていうのは?」
「そうだ、ガントレットには妖精がいt「ハロー、マスターと可愛いお嬢さん。わたしはこのガントレットのAIのバロウズよ。これからよろしくね。」……これがガントレットの妖精バロウズだ。彼女に認めてもらえなければサムライにはなれない。……あぁ、質問の答えだが、カジュアリティーズは庶民階級だ。おそらく君の考える平民と同じと考えてもらっていいだろう。そしてラグジュアリーズは支配階級。君の言う貴族や修道士はそれに分類されると思う。」
ルイズはバロウズに興味を持ったようだ。
「その籠手ってインテリジェンス・ソードのようなものなの?そういう系統で防具は初めて聞くわ……。随分ユニークなn……あ、あなた、そういえば自分の事そのサムライって言ってたわよね?」
「?」「……あぁ、そうだが。それがどうした?」
「で、サムライって貴族なのよね?」
ルイズの頬に一筋の冷汗が流れる。
フリンは少し考えて言う。
「少々違うが、さっきの説明からするとそうなるな。」
ルイズの表情が固くなっていく。
ルイズは恐る恐る聞く。
「……話は変わるけど、あなたがいなくなって、問題になるようなことってある?例えば、そのサムライ衆があなたを取り戻すために、ここに攻めて来るとか……」
窓の外にある二つの月を見ながらフリンは答える。
「……おそらくサムライ衆やハンターの仲間は探してくれるだろう。しかし、この国、確か……トリステインといったか、この国について俺もバロウズも名前さえ聞いたことがない。俺が知らないのはともかくバロウズがわからないというのは、滅多にない。……そもそも俺たちの知る月は二つもない。俺からしてみれば月というものは空に一つしか浮かんでいないものだ。だから、もしかすると、ここは俺たちの知る世界ではないかもしれない。……話が逸れた。問題になるようなこと……か。俺がこの国にいることすら彼らにはわからないと思う。だから、俺がこの国にいることで何らかの不利益が出る可能性はおそらくないだろう。……バロウズ、何かわかったか?」
「いいえ、マスター。こちらから情報を発信しても反応はないし、なんの情報も得られない。他のバロウズにも通じないわ。ここにいることなんて、誰にもわからないと思うわ。ごめんなさいね、本当に何もわからないの。」
「だそうだ。こちらからも聞きたいことがある。トーキョーもしくは、東のミカド国を知っているか?」
ルイズはフリンの答えに安堵し、彼の質問に調子を取り戻して答える。
「聞いたことないわ。この大陸にある国はトリステイン王国、ガリア王国、帝政ゲルマニア、ロマリア皇国といくつかの小国ぐらいでその小国にもそんな名前はないわ。あとはあるとすれば、はるか東にあるといわれるエルフの国の向こうぐらいじゃないかしら。」
「……そうか、わかった。では使い魔とは何だ?」
「使い魔とは主人の友であり、下僕よ。使い魔は主人の実力、属性、潜在能力に応じて主人にふさわしい使い魔が召喚されるの。それこそ、ドラゴンやグリフォンから猫やフクロウまで種類は様々よ。けれど、人が呼び出されるなんて聞いたことがないわ!」
「使い魔とはどんなことをするんだ?」
「そうね、まずは使い魔は主人の目となり、耳となる能力を与えられるんだけど、……無理みたいね。そんな気配まったく無いし」
フリンは言われて、集中してみるが何も見えないし聞こえない。
「次にあげられるのは、主人の望むもの見つけてくる事。 例えば秘薬ね」
「例えばこんなものか?」
フリンは背負っていたカバンの中からソーマの雫を取り出す。
ルイズがフリンの手から雫の入った瓶を取った。
「なにこれ?」
「ソーマという薬だ。それには少量しか入ってないが、大抵の傷や病気ならそれだけでも飲めば治る。……それは、君にあげよう。」
ルイズは驚いて言う。
「秘薬ってそんな万能薬じゃないわよ。せいぜい傷の治りを早める程度だし、傷が深ければ治るまでに何日もかかるわ。しかも優秀な水の魔法使いが用いて初めて効果を発揮するの。飲むだけで治るなんて信じられない。しかも、……そんな物をなんで私に?」
「……友好の証と考えてほしい。さっきも言った通り俺はここのことをよく知らない。知り合いと呼べるのも、今日初めて出会った君とコルベール氏しかいないからね。元の国に帰るあてもないし、しばらくはここで暮らしていくしかない。野宿や旅には慣れているつもりだが、ここが俺の知っている世界ではないのなら、本格的にここで暮らすとなると俺が来た場所と勝手が違うところもあるのだろう。つまり俺にはまだここで暮らしていくには知識や情報が足りない。その上に、それを教えてくれるような人もいない。……だから俺は君を頼るしかない、迷惑もたくさんかけるだろう。……その代わりと言ってはなんだが、ここにいる間は使い魔としてきみの助けになろう。それはその証だ。」
ルイズは照れたようで、顔を逸らして呟く。
「ありがとう……。わかったわ、にわかには信じ難いけど、あなたの話を信じましょう。これから、トリステインのことをいろいろ教えてあげる。それがご主人様の役目だものね。……あと、使い魔の仕事としてはこれが1番なんだけど……使い魔は主人を守る存在なのよ。協力する分、きちんと私のために働きなさいよ!」
「……それには問題ない。腕には自信がある。」
「さっき話してたのを考えると、サムライ衆ってこっちで言う騎士団みたいなものなのかもね。期待しているわ。これからよろしくね。そして、さっきはごめんなさいね。フリン」
「……あぁ、気にしてないから大丈夫だ。コンゴトモヨロシク。ルイズ」
しばらくお互いに聞きたいことを質問をしているうちに、ルイズが眠たげな表情を見せるようになる。今日は俺にもルイズにもいろいろありすぎた。ルイズはまだ小さい女の子だ。やはり、疲れているのだろう。
「……ふぁ、あふ……しゃべってたら、眠くなってたわ」
「そうだな、早く寝るといい、ルイズ。……まだ小さいのだから疲れただろう。俺は少し外をまわtt「……あなた私が何歳ぐらいに見える?」
ルイズは冷たく、低い声で質問する。
「……12歳ぐらいだろう?」
見た目の割に博識だし、頭の回転も早い。しかし、性格や落ち着きといったところはまだまだ子供だ。とフリンはルイズの様子の変化に気づかずに思ったことを正直に答える。
ルイズは子供扱いされたことに肩を震わせ、怒りながら怒鳴る。
「私はもう16歳よ!もう立派なレディーなの!アンタしばらく食事抜き!今日は外で寝なさい!明日は朝、私を起こしたあと洗濯、掃除、その他雑用!いいわね!」
フリンはその剣幕に押されて、追い出されるようにして部屋から出ていく。
◇
「……同じレディーでも、イザボーとは大違いだな。」
部屋を追い出されたあと、学園の周りを歩くフリンは苦笑しながらぼやく。
「確かに、あのお嬢さんなかなかおてんばね。でも元気があって可愛いらしい子だったわ。マスターはああいう子は苦手?」
「あんまり、ああいう子が身近にいなかったからね……。どう付き合えばいいのか分からずに少々戸惑っている。実は結構疲れた。」
「そうだったの。戸惑うだなんてマスターにしては珍しいのね。マスターはなんでも淡々とこなせると思ってたから……。ねぇ、マスター。なぜ、あの子に話したことの大半は東のミカド国についてことだったの?東京に戻りたいのであれば、そちらの情報をもっと与えるべきだったのでは?」
珍しくバロウズが意見してきた。
「……そうだな、まず一つはここの雰囲気が東のミカド国によく似ていたからだと思う。俺も頭では東のミカド国がもうないことは分かってる。しかし、この地の景色や雰囲気を感じていると俺はまだ、この地のどこかになくなったはずの故郷があるとも思ってしまう。もう一つはあの子に東京のことを話したとしても東京のことを想像すらできないと思ったからだ。俺が初めて東京に降り立つまでその遺物や伝承から東京のことを微塵も想像できなかったようにな。」
「なるほどね、さすがあたしのマスター。ごめんなさいね、こんなこと聞いちゃって。じゃあ、散策も程々ににして休んでくださいね。おやすみなさい、マスター。」
バロウズはそう言ってガントレットの画面から消えた。
バロウズも消えて、一人になったフリンは広大な学院の中でポツリと呟く。
「……しかし本当によく似ている。」
フリンは夜天に浮かぶ2つ月をみて思う。
かつて同期の5人とミカド城の屋上で語り合ったことを…。
両親が殺された怒りに身を任せ、悪魔に変貌したかつての兄貴分傷つけ、トドメを刺したことを…。
“悪魔王”、“神の戦車”と変わり果てた姿となった2人の親友を自らの手で切り捨てたことを…。
東京の人々のためとは言え、自分の故郷を自分の決断で滅ぼしてしまったことを…。
未だにフリンの胸にある罪悪感や喪失感は拭えないが、彼は自らの決断に後悔をしているわけではない。
彼は天蓋の崩壊後、一心不乱に東京の復興に従事してきた。自分は彼らを下したのだから彼らに自分の選んだ道を胸を張れるように結果を出さなくては…。と、自分は自分の選んだ道のために彼らを手にかけ、ここに立っているのだから…。と、後ろを振り向かず、過去にとらわれず、未来のみを見据えて、前へ前へと進んできた。まるで後ろから追ってくる何かから逃れようと、振り切ろうと必死に前に走り続けるように…。
しかし、今だけは、フリンは遠い異郷の地で懐かしき思い出を振り返ると共に、今は無き故郷と今は亡き親友たちに思いを馳せる…。