大魔王ゾーマ「バーバラを何とかしてやれ、ルビス」   作:Amur

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皆様、ありがとうございます。
感謝の第2話の投稿です。

今回、最後にアンケートがあります。
投票いただければ幸いです。

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  皆様、たくさんの投票ありがとうございました!
  結果は第3話にて公表しています。



勇者? デスタムーアにでも任せておけ。そんなことよりスライムだ

「ムドーが重傷……?」

 

 魔王ジャミラスは自身と肩を並べる魔王が負傷したとの報告を受けていた。

 

「人間ごときと侮り不覚を取ったか。愚かなやつめ」

 

「それがジャミラス様……奇妙なことですが、戦闘の負傷ではありませぬ」

 

「なに? 人間の勇者たちにやられたのではないのか?」

 

「勇者かどうかはわかりませぬ。ある日突然、崖ごと城が崩壊し、ムドー様は崖下に転落。大量の瓦礫と岩石に飲み込まれ、重傷を負ったとのことです」

 

「仮にも魔王が崖下に転落とはバカなのかあいつは。たとえ翼がなくとも魔力で飛べるであろう」

 

「玉座に身体が詰まって咄嗟に飛行が出来なかったようです」

 

「だから太り過ぎだとやつには言っていたものを」

 

「は……」

 

「しかし、崖や城を崩すほどの大仕掛けをムドーの配下は見逃したということだな」

 

「そうですな。これは怠慢と言わざるを得ません」

 

「我が軍にそのようなことはあるまいな?」

 

「はっ。我らは常在戦場にて待機しております。ネズミ一匹見逃しません」

 

「うむ……。仮にムドー城を崩壊させたのが勇者一行ならいずれ我のもとにも来るだろう。そのとき、このジャミラスはムドーとは違うことを教えてやろう」

 

 勇者どころかその対極に位置する存在にムドー城が崩壊させられたとは夢にも思わないジャミラスは、幻の敵に備えて軍備を増強するのだった。

 

 

ーーーー

 

 ルビスの城――

 

 

「……」

 

「あうあうああああううう……!」

 

 大魔王ゾーマは悠然と立ち、対面の精霊ルビスは混乱していた。

 

 ちなみに周囲にいた兵士たちは決死の覚悟でゾーマに飛びかかったが、触れることも出来ずに氷漬けにされている。

 

「落ち着けい」

 

 びくっ!

 

「そう狼狽えなくとも、この場で滅ぼしたりはせぬ」

 

「……ほ、本当ですか? 滅ぼさなくとも、石にしたりは……?」

 

「それもせん。わしは何ものにも縛られぬ。それゆえ自らの言葉をたがえることもない」

 

「……そ、そうですか」

 

 ゾーマに暴れるつもりがないと理解したルビスは、多少落ち着いて目の前の存在を観察する程度の余裕が戻ってきた。

 

 ――この桁違いの魔力に闇の衣……間違いなく大魔王ゾーマ。復活しているとは予想外にもほどがあります。光の玉もないのにどうしろというのです。しかし、なぜゾーマがカルベローナの子――バーバラを知っているのでしょう?

 

 ルビスが思考を巡らせていると、ゾーマが指を軽く鳴らした。すると兵士たちが氷漬けから解放され、地面に倒れこんだ。

 

「う、うう……」

 

「あなたたち、大丈夫ですか!?」

 

「――は、ルビス様。我ら不甲斐なく……」

 

「兵士たちを解放するとは、どういうつもりですか?」

 

「ここで立ち話もなんだ。客間に案内せよ」

 

「え、ええ……?」

 

 

ーーーー

 

 

「幻魔王デスタムーアが倒れれば、夢の世界の実体化は解除される。そのとき、カルベローナの子も現実世界での身体を失うだろう。それを何とかしろと言っているのだ」

 

「く、詳しいですね」

 

「わしの大目玉(サードアイ)のチカラは知っていよう。その程度、世界のどこにいても分かる」

 

 大魔王ゾーマと精霊ルビスはテーブルをはさんで普通に会談していた。

 この状況を勇者ロト(3の主人公)が見れば、自分の目を疑ったことだろう。

 

「……しかし、何を企んでいるのですか? あの大魔王ゾーマがただの善意で動くはずがないことくらい分かります」

 

「……」

 

 ――いや、ただの善意なんだけどね。でもそう言っても信用されんよな。ゾーマらしさを保ったまま、もっともらしい理由としては……よし。

 

「なに、ただ“惜しい”と思っただけだ」

 

「惜しい……ですか?」

 

「そうだ。かの者が秘めたる魔力はこの世界で最も高い。魔王級……あるいはそれ以上、神々やわしら大魔王の領域にまで届くやもしれん」

 

「それが失われるのが惜しいということですか」

 

「うむ。実体を失えども夢の世界で存在は維持するかもしれんが、やはり夢と現実の双方が揃ってこそ高みに登れるというもの」

 

「……仮に彼女が大魔女として魔道を極めたとき、あなたはどうするつもりなのですか?」

 

「さあな。挑んでくるなら無論受けるが、わしからは特にどうこうは考えておらん」

 

「そうですか……」

 

「どうだ? そなたのチカラならこの程度のことは造作もなかろう」

 

「ま……前向きに検討します(この状況で断れるわけがありません)」

 

「うむ」

 

 

 ――よーし、よしよしよしよし! やったぜ!これで念願のハッピーエンドが見れる! ……さて、目的も達成できそうだし、後はこの世界を探検でもしようかな。そうだ、せっかくの幻の大地。ファンとしては()()()に行ってみたい。

 

 

「では用も済んだ。わしは行くとしよう」

 

「! ど、どこへ行くのですか!?」

 

「ふ……決まっている」

 

「まさか今代の勇者のもとへ!?」

 

「格闘場だ」

 

「そうはさせま――え?……すいません、よく聞こえませんでした。どこへ行くかもう一度お聞きしてもよいでしょうか?」

 

「スライム格闘場」

 

 

ーーーー

 

 

【スライム格闘場】

 

 それは夢の世界にあるスライム系モンスター専用の格闘場。

 世界中から強豪スライムが集まり、最強の座をかけて日夜、激戦を繰り広げるまさに夢のコロシアムだ。

 

「そこだ、ぶちスライム!――よしっ! よくやった!」

 

「そんなバカな! 最弱のぶちスライムが勝つなんて!」

 

「わはははは! 見よ、ルビス。大穴を当てたぞ」

 

 ゾーマを見張るためにスライム格闘場まで追いかけてきたら、普通に賭けを楽しんでいる大魔王がいた。

何を言っているのかわからないと思うが、ルビスにも何が起こっているのかわからない。

 

「くっそー! ゾーマの大将、初心者なのにすげえな。よくぶちスライムに賭けたもんだ」

 

「ふっふっふ……わしには見えるのだ」

 

 まさかこんなことにサードアイの未来視を使っているのか? とルビスが疑問に思うも、言葉に出して突っ込む勇気はなかった。

 しかも、いつの間にか格闘場の常連らしきあらくれと仲良くなっている。

 それでいいのか、すべてを滅ぼすもの。

 

「興が乗ってきたぞ。これはただ賭けをするだけで終わらせることは出来んな」

 

「な、なにをする気ですか? まさか試合場に乱入を――」

 

「わしも自らのスライムを参加させてチャンプの座を狙うのだ」

 

 ルビスは頭がどうにかなりそうだった。

 

 




大魔王ゾーマ直属の栄光を手にするスライムは?

大魔王ゾーマ直属の栄光を手にするスライムは?

  • 王道! スライム
  • 最初の仲間モンスター! ホイミスライム
  • 安定感抜群! スライムナイト
  • 王には王がふさわしい! キングスライム
  • DQ6のスライムといえばこいつ! ぶちスライム

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