大魔王ゾーマ「バーバラを何とかしてやれ、ルビス」 作:Amur
バーバラちゃんを何とかしてやれ、ルビス
青い肌、四本の指、頭には二本の角と大目玉、支配と滅びを表す黄金の髑髏ネックレス……。
間違いない、大魔王ゾーマだ。
なんでオレがゾーマ様になってんの?
これは夢か? ……そうだよな。
たしか昨日はドラクエ6をクリアして……怒りが収まらぬまま、ふて寝したんだったか。
ああ、思い出したらまた腹が立ってきた。
確かにドラクエ6は名作さ。それは認める。
けどエンディングでのバーバラのあの扱いはないだろう!
ピー坊(デスピサロ)にすら救済が与えられたのに、彼女はリメイク版ですらそのままとか、ふざけるな!
世界を救ったんだぞ。何とかしてやれよ、ルビス!
アレフガルドを造った精霊なら余裕だろ。
そういや、意識が落ちる直前に神々が頼りにならんなら魔王に頼るしかない……とか考えたけどそれがゾーマになった原因か?
……まあいいや。せっかくの面白い夢だ。ゾーマロールを楽しむか。
「……しかし、ここはどこだ?」
うわ、声が渋い! これは大魔王ですわ。
「我が支配地たるアレフガルド……ではないようだ」
口調が勝手にゾーマ様っぽく変換されるのいいね。
「うん? あの見覚えのある崖と建物はムドーの城ではないか?」
間違いない、ドラクエ6の魔王ムドーの居城だ。特徴的な外観だからすぐ分かるな。
しかし、
このガバガバ感だと、ゾーマの仕様はどうなってんだろ? ドラクエ3だと冷却系の攻撃で統一されてたけど、派生作品だと色々やるからな。試してみるか……。
「サイコキャノン」
ドオン!
掌から闇色の魔力弾が猛烈な速度で飛んでいく。
魔力弾は崖を一直線に抉りながら上昇し、ムドーの城を半分ほど吹き飛ばして空に消えていった。
「むう……」
すげえな、適当に撃っただけだぞ。
サイコキャノンが使えるってことは外伝作品のゾーマでオレが知ってる特技は全部使えるのかな? 軽めの一撃であの威力なら、サイコストームだと島ごと消えそうだな。その上の滅びの呪文あたりになると想像もつかない。
「む……!」
そうだ! ここがドラクエ6の世界ならバーバラを救ってやろう!
むしろそのためにゾーマになったと言っても過言じゃない。
「しかし、わしに出来るのは滅ぼすことだけだ」
いくら強くてもそこは適材適所。
ゾーマが生み出したらよくてアンデッドの肉体。そんなバーバラちゃんは嫌だ。ここはその道のプロに任せるのがベストだな。たしか場所は……ああ、ムドーの島からだとすぐそこだな。
「では、行くか」
ーーーー
ルビスの城――
海底にある精霊ルビスの居城。彼女はここから世界を見守っている。
だが、その城でかつてないほどの騒ぎが起こっていた。
「ル、ルビス様! お逃げください! 恐るべき侵入者がやってきますが、我らでは足止めすら不可能です!」
ルビスの兵が必死の形相で玉座の間に駆け込んできた。
「まさか魔王グラコスが直接攻めてきたのですか?」
海の魔王の襲撃かと身構える精霊ルビス。
「いえ、グラコスなどではありません! いまだに信じられませんが、あれは伝説に聞く――」
ガアアアアン!
玉座の間の壁を吹き飛ばし、悠然と
全身から立ち昇る闇の衣。無尽蔵の魔力が生み出す冷気は歩くだけで周囲を凍結させていく。
かつて地下世界アレフガルドを完全に征服した大魔王の中の大魔王。
「
「ホギャーーーーーーーー!?????」
すべてを滅ぼす者がここに復活した。
ゾ「早くしろ。また石にするぞ」
ル「これは夢か……?」