IS《インフィニット・ストラトス》~やまやの弟~   作:+ゆうき+

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4話 8歳の研究員

生徒達からの視線から解放された山田姉弟はへろへろになりながら部屋に戻っていた。さすがに初日からこのコースはヘヴィだったかもしれない。

 

が!

 

真琴は真耶と都合が合わなかった場合一人で食堂に行かなければならないのである。

 

真琴がいつもぼけーっとしてるとはいえ、さすがにこれは厳しい。早急に対策を立てねば。と割と真剣に悩んでいた。

 

そしてついに! 真琴と真耶が一番楽しみにしている時間が来た。だいたい想像できるだろう。そう! 魅惑のドキ☆ドキお風呂TIME☆ミ である!

真琴にとっては、大好きな姉と遊べる時間だ。一日の疲れを吹き飛ばしてくれる時間である。

真耶にとっては、目に入れても痛くない程溺愛している弟である。弟が嫌がるまでは一緒にお風呂に入ろうと決めていた。つまり、禁断の~とかは決してない! 勘違いするなよ!

 

 

かぽーん

 

 

「まーくん。かゆいところはない?」

 

「うん、あたまのてっぺんがちょっと……」

 

「ん、この辺かな?」

 

「あ、うん。そのへん……」

 

しゃかしゃかしゃか

 

「頭はもう大丈夫かな?」

 

「うん、お姉ちゃんありがとう」

 

「それじゃあ、次は体ね?」

 

「うん、おねがい」

 

 

ごしごしごし

 

 

「どう? かゆいところはない?」

 

「うん、もうだいじょうぶ。あとはぼくがあらうよ」

 

「だーめっ。まだ前の方洗ってないでしょ?」

 

「でも……」

 

「ちゃんと洗わないと病気になっちゃうよ?」

 

どこが、とは突っ込まないほうがいいだろう。想像に任せる。

 

結局、真琴は体の隅々まで洗われた。

 

そして真耶も自分の頭を体を洗い終わった後、二人で湯船に浸かった。もちろん真耶の上に真琴が座る形でだ。真耶は真琴とのお風呂タイムをとても大事にしている。二人きりになれて、なお且つ落ちつける数少ない時間だからだ。布団に入ると真琴はすぐに寝てしまう。そのため、お風呂タイムはお互いを労う時間となっている。

 

 

「まーくん、今日は楽しかった?」

 

「うん。あっというまにいちにちがおわっちゃった」

 

「そっかー。これからはこういう日々がずっと続くんだよ?」

 

「うん。……たのしみかも」

 

「お姉ちゃんも楽しみだよ! 頑張ろうね!」

 

「うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やっぱり、お姉ちゃんとお風呂に入るのは楽しいなぁ。もっと一緒に入っていたいけど……のぼせちゃうんだよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後二人はたっぷり一時間はお風呂に入っていた。お風呂から上がった後、二人とも丁寧に髪の毛を乾かし、テレビを見ながらホットミルクを飲んでいた。ここで真琴は、前から欲しかった物を真耶にねだってみることにした。

 

「ねぇ、お姉ちゃん」

 

「ん、なに?まーくん。」

 

テレビの電源を落とし、こちらに向いた。そんな重要な話しでもないのだが。

 

「あのね、ぼくパソコンがほしいんだ」

 

「ぱそこん?」

 

「うん、これからけんきゅうでつかうとおもうんだ」

 

真琴の言う事はもっともである。しかし、研究者には一人一台パソコンが支給される。真耶はそのことから尋ねることにした。

 

「でもねまーくん。研究者って一人一台パソコンが貰えるんだよ?」

 

「それじゃだめ。じぶんですきなようにいじりたい」

 

「あー、確かに支給されるパソコンには好き勝手ソフト入れる事できないからね。わかった! ちょっと国枝主任に聞いてみるね?」

 

「ありがとうお姉ちゃん」

 

自分で買ってやると言わない辺り、結構ちゃっかりしている姉であった。

 

それを聞いて安心したのか。真琴は目をこすりはじめた。これはそろそろ寝たいという真琴の無意識のサインである。さすがに8歳児に11時過ぎまで起きていさせるのは、成長を阻害させる恐れがある。寝る子は育つ。この一言に尽きる。

 

「そろそろ寝ようかまーくん」

 

真耶は自分のベッドに入り、真琴が入れるだけのスペースを作ってそこをぽふぽふと軽く叩いた。

 

「一緒に寝よっか。さ、こっちにおいで」

 

「……ん」

実に仲のいい姉弟だ。姉が真っすぐ育ったから弟に優しくできる。優しくされながらそだった弟も、口数は少なく何を考えているか分からないが本質は「優」の一言に尽きる。

 

「それじゃあ、お休みなさいまーくん」

 

「おやすみお姉ちゃん」

 

こうして真琴は、真耶という温もりの中静香に眠るのであった。

 

 

「まーくん。大好きだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まーくん、まーくん。朝だよ。起きて、まーくん」

 

「んっ……」

 

真耶の癒されタイムが始まる。何を隠そう、真耶は真琴の寝顔を見るのが大好きだ。深みがありつややかな烏の濡羽色の髪、天使と見間違うほどの汚れを知らない無垢な顔、少し力を入れて肩を抱いてやれば、折れてしまうのではないかという程華奢な体。どこからどうみても完璧。非の打ちどころがないのである(真耶談)。

 

いつまでも見ている訳にもいかないので、30分程堪能した後、そっと割れ物扱うかの様に優しく揺り起こす。

 

「んんっ……。おはようお姉ちゃん」

 

「おはよ、まーくん。さ、顔を洗って歯を磨かないと。遅刻しちゃうよ?」

 

「うん……。ちょっとまっててね」

 

もぞもぞと布団から起き、トテトテとおぼつかない足で洗面所へ向かっていく。その様子をみて、にへら~と割と危ない笑みを真耶は浮かべているが、寝ぼけている真琴が気づくはずもない。

 

 

 

そし15分後、準備を終えた真琴は着替えるのだが・・・。真耶が今まで見たことのない服を用意していた。

 

「……お姉ちゃん。なぁにこれ」

 

「あ、まーくんには言ってなかったね。研究員はこの服を着なきゃいけないの」

 

白を基調としたブレザー。肩から腕に掛けて2本の赤い線がはいっている。襟はブレザーとは真逆の黒。縁は赤く彩られている。まぁ、これはいい。かっこいいから。しかし、真琴はズボンについてはどうしても納得がいかなかった。

 

「なんではんズボンなの?」

 

「あ、やだった?お姉ちゃんこれが似合うと思ったから半ズボンにしたんだけど……」

 

姉の見立てとあってはしょうがない。真琴は大人しく従うことにした。こいつも大概シスコンである。

 

「ま、いっか。お姉ちゃんがにあうっていうなら、きる」

 

「よかった。その上に白衣を着るんだよ。学者さんみたいだねまーくん!」

 

「……ん」

 

照れ隠しなのだろうか、真琴は手を後ろに組み顔を逸らし俯いていた。今この場に研究所の職員がいたら、盛大に鼻から愛が噴き出していたであろう。ショタっ子一万馬力は伊達じゃない!

 

 

 

 

さて、そろそろ時間もなくなってきた。現在8時ジャスト。一限目は8時30分からなので、通勤時間に10分と考えると結構ギリギリだ。研究員も始業時には職員室に集まることになっているので丁度いい。一緒に通勤と洒落込むことになった。

 

テクテクと二人で学園へ向かう。短い時間だが幸せな時間。姉弟水入らずでゆっくりと歩く

 

 

 

 

 

のは無理らしい。

 

「おはよー山田せんせー!」

 

「はい、おはようございます!」

 

「せんせー、横にいる子は誰?」

 

「私の弟の真琴です。ほら、まーくん挨拶」

 

「ん。……おはようございます」

 

ズキュウウウウウウウウウウン!

 

例えるなら、こんな音だろうか。女神の様な汚れを知らない綺麗な顔+微笑みのコンボは相手の精神力を容赦なく削り取る。これならブリュンヒルデと謳われる織斑千冬ですらたじろぐんじゃないだろうか。

 

「せ、せんせーにこんなかわいい弟が……」

 

「はい! 自慢の弟です!」

 

何故かとても嬉しそうな真耶。弟が日の目を見てご満悦の様子。

 

「でもでも、どうして真琴君は制服を着てるんですか?」

 

「ああ、まだ全員には紹介していませんでしたね。まーくんは昨日から研究員としてIS

学園に就職したんですよ」

 

「あの噂本当だったんだ・・・。IQ測定MAXの天才少年かぁ」

 

歩きながらも真耶の弟自慢が炸裂する。遠目に見ていた生徒が、ああ、弟自慢が始まったなぁ~と呟いていた。悦に入っているが、決して悪い虫が着くことの内容に気を配っている。その証拠に

 

 

 

「ねぇねぇ真琴クン。よかった今度おねーさんの所に遊びに来ない?」

 

「う?」

 

「はいそこ、まーくんを誘惑しないでくださーい! まーくんはまだ8歳なんです。年頃の女の子の部屋は少し刺激的すぎます!」

 

これである。さしずめ、花にたかる蟲をキャッチする用心棒といった所か。そして悪い蟲をことごとくブロックしながら、学園へ歩を進める一向であった。

 

 

 

時刻は8時15分。ちょっとゆっくり歩きすぎたかなと後悔しつつも、真耶は真琴を連れて職員室へと急ぐ。生徒とすれ違う度にヒソヒソと話声がするが、真耶にとってはうれしい限りだった。何も気にする様子がない姉を見て、弟はそっと溜息をつくのだった。

 

職員室に着くと、山田兄弟は指定のデスクへと座った。学園側が気を使って真琴の席は真耶の隣に割り当てられている。真琴はその椅子に掛けてあった白衣に身を包み辺りを伺った。ちなみに反対側は織斑千冬の席である。千冬はすでに席に着き、コーヒーを飲みながら授業の準備をしていた。まだ落ち着きがない真耶に比べ、千冬のそれは堂に入っており、威風堂々としている。

 

 そんな千冬を、内心うわおっかねーとか思いながら真琴は眺めていた。が、真琴の視線を感じたのか、千冬は座席を立ち真琴へと歩を進める。

 

「お早う。君がISの基礎理論をぶち壊したという真琴君か」

 

「あ、おはようございます。やまだまことです。えっと……」

 

礼儀正しくぺこりとお辞儀をする真琴を見て、千冬は微笑みながら目を細めていた。

 

「私は織斑千冬。君の姉の同僚さ。君の噂は聞いている、昨日いきなりやらかしてくれたそうじゃないか?」

 

「あ、えっとその……ごめんなさい?」

 

首を傾げつつもとりあえずぺこぺこと謝る。どうやら真琴は謝り癖がついているようだ。こんな所まで姉弟そっくりとはな……。と千冬は苦笑していた。

 

「ああ、いや、怒っているんじゃない。最近マンネリ気味だった研究員立ちにはいい薬になったと思ってな。もっとやってくれてもいいぞ」

 

「?」

 

何が起こっているのかわからず再び首をかしげるその仕草に、千冬は思わずたじろいだ。やはり、子供の無垢な態度はまぶしすぎるみたいだ。どうやら千冬は対応に困っている様子。そこで見かねた真耶が笑いながら助け舟を出した。

 

「織斑先生、まーく……真琴は良い意味でも悪い意味でも純粋なんです。皮肉を言っても分からないですよ?」

 

「みたいだな。まったく……」

 

「あと、真琴の素行に良くない点があったとしても、出席簿で叩くのは優しめにしてあげてもらえないですか?さすがにちょっと洒落にならないというか……」

 

「そうだな。私もこんな幼い子を叩くのは気が引ける。諭すとするよ。まぁ、必要はないだろうが」

 

千冬と真耶は幼い研究員に目を向ける。そこには今だに何が起こっているのか理解していないらしく、今度は反対側に首を傾げてこちらを見ている少年が立っていた。

 

 

 

二人の心がきゅんきゅんしたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 そして、SHRの時間がやってきた。真琴は何故か千冬に連れられ、真耶と3人で歩いていた。

 

「あの、織斑せんせい。」

 

「どうした、真琴君?」

 

山田君、ではどちらか分からないので真琴は下の名前で呼ぶことにしたみたいだ。

 

「なんでぼくは織斑せんせいとおなじところへむかっているんですか?」

 

「ああ、そういうことか。なに、昨日国枝主任から君の事は聞いていたからな。これからはISの主任技師となる人物だと。実際に動かして壊すのは生徒達だからな、顔合わせをしておこうと思ったんだよ。君みたいな幼い子が必死になってISの調整をしていると分かったらぞんざいに扱う生徒も減るだろう。」

 

「はー……。織斑先生そこまで考えていたんですか」

 

「それに、実際にどうやってISが使われているのか見学するのも良いだろう。研究者共は頭でっかちになる奴が多いからな。現場を見る事も仕事の一環だ。」

 

なるほど、と真琴は感心していた。確かに今までは机上でしか考えていなかった。実際にどうやって使われてどこにストレスがかかるのかをリアルタイムで見るのは大事なことだ。

 

「後、君から授業に参加したいと要望があったみたいだな。学園から許可も出たことだし、好きなタイミングで授業に出ていいぞ」

 

「織斑せんせい。よろしくおねがいします」

 

ぺこり。と一礼した。

 

「君みたいな素直な子ばかりだったら私も楽なんだがな・・・。さ、お喋りはここまでだ。真琴君は外で待っていてくれ。呼ばれたら入ってきて軽く自己紹介してくれればいい」

 

「わかりました」

 

年長者二人は教室の中に入っていく。数秒して、パァン!と乾いた音が聞こえてきたが気にしない。気にしないったらっ

 

「それでは真琴君、入ってきてくれ」

 

 

技術者と現場の顔合わせが始まる。

 

 

 

私が教室に入ってすぐ、セシリア=オルコットと織斑一夏が言い争う声が聞こえてきた。どうやら、昨日のクラス代表の件についてまだ決着がついてなかったらしい。一週間後の試合で、という話しで落ちついたはずだが。

 

 

「わかってますの? あなた、いまだにISに乗って15分程度しか経っていなくてよ? そんな調子でわたくしに勝とうだなんて笑止千万ですわ!」

 

「うるさいな、いちいち突っかかってくんなよ。一週間後には俺の専用機が来るっていうんだからお前には関係ないだろ?」

 

全く、少しは真琴君を見習ってほしい物だ。そら、とりあえず黙れ。

 

スパァン! スパァン!

 

「席に付け織斑、オルコット」

 

「くっ、この話はまた後にしますわ!」

 

「なんでだよ……」

 

ようやく皆席に着いたか。さて、SHRを始めるか。

 

「お早う諸君、今日は皆に連絡事項がある」

 

辺りを見回す。が、反応が薄いな。さあて、内容を言うとするか。

 

「昨日付で新しい技術者がIS学園に入ってきた。本日のSHRは顔合わせをしてもらう。それでは真琴君、入ってきてくれ」

 

さて、餓鬼共はどんな反応をするか

 

 

 

 

千冬が真琴を呼ぶ声をしてから、数秒後、ドアがソロソロと開いた。そしてそこから教室を覗く影が一つ。まぁ、真琴しかいない。ドアの隙間から顔だけ出し、キョロキョロと辺りを伺ってからソロソロと教室に入り、千冬横まで歩いてきた。

 

 

「昨日付けで赴任した山田真琴君だ、真琴君軽く自己紹介を頼む」

 

「は、はい。・・・えと、きのうからISけんきゅうじょでおせわになっています、やまだまことです。えらそうなことをいえるたちばではありませんが、よろしくおねがいします」

 

ぺこり。おきまりの低姿勢だ。しかし生徒達からの反応はない。失敗したのかとオロオロする真琴だが、次の瞬間

 

 

「きゃ……」

 

「き?」

 

「きゃああああああああ―――っ!」

 

クラスに黄色い歓声が響き渡った。

 

自体が把握できず、真琴は頭を傾け真耶の服の裾を引っ張っていたのだが、その仕草を見て黄色い悲鳴は更にヒートアップしていく。

 

 

「男の子! しかもこんな可愛い子が技術者ですって!」

 

「ほら! 昨日山田先生が言ってた弟君よ! 名字も山田先生と同じだし!」

 

「首を傾げる仕草が可愛いすぎる!! こんな弟を私も欲しい!!」

 

「男の娘! これで一冊書けるわ! キタキタキターーーー!!」

 

いつまでも鳴りやまない黄色い悲鳴を聞き続け、次第に真琴の顔色が悪くなってきた。その様子を見て、千冬は沈静化を図る。

 

「あー、騒ぐな、静かにしろ」

 

黄色いソニックウェーブが響く中でも、千冬の声はしっかりとクラス中に届いていた。

その後の出席簿アタックが怖いので、皆ピタリと声を止めた。

 

「全くお前らは・・・。いいか、真琴君はまだ8歳だが、ISの基礎理論を根底からぶち壊す程の知識の持ち主だ。実際、昨日一日だけで打鉄の反応速度を30%UPさせることに成功している。これがどれほど凄い事かお前らなら分かるだろう。役職上は教員と同じ立場にある。いくら子供だからとはいえ、馬鹿にすると後で痛い目に会うからな、そこの所、よく覚えておけよ」

 

はーい。と生徒一同返事をするが、一部だけよしとしない生徒がいた。先日の一件からも想像できるだろうセシリア=オルコットだ。

 

「異議あり、ですわ」

 

「言ってみろ。オルコット」

 

スチャ!っと立ちあがると腰に手を当て、威風堂々とポーズを決めた。

 

「わたくし達はISに命を預けていると言っても過言ではありません。そのISに、あろうことか子供が手を入れるなんて言語道断ですわ! 実際にこの目で見ないと信用できません!」

 

「なら、実際に見てみるんだな。真琴君、この後1限からISの授業があるから、そこでメンテナンスをお願いしてもいいか?」

 

「専用のきざいを研究所からもってきてもらえるなら」

 

「わかった、手配しよう。何が必要だ?」

 

「えと、それではノートパソコンをひとつ、デジタル・フォスファ・オシロスコープをひとつ、ISとパソコンをつなげるケーブルをぜんぶ、テスターをひとつ、はんだごてをひとつ、なまりがはいってない半田を5めーとる、あと、」

 

「ま、まだありますの!?」

 

必要な機材はパソコンとケーブルくらいだろうとセシリアは踏んでいた。しかし蓋を上げてみると出るわ出るわ、真琴の要求は留まることを知らない。

 

「オルコット。お前は普通の研究員のメンテナンスしか見たことがないだろう」

 

「ええ、それが何か?」

 

「あいつらはな、メンテナンスはできてもそれ以上はできないんだ。というか常人に一日でそれ以上の事ができるわけないだろう。それだけISは複雑なんだよ。しかし真琴君は打鉄だろうがラファールだろうが最深部まで確実にメンテナンスするどころか、恐らくチューンアップまでしてくれるぞ。ああ、お前の専用機も診てもらったらどうだ?」

 

「っ! 汎用機のでき具合を見てから判断します!」

 

などと千冬とセシリア言いあっている間、真琴はサラサラと紙に必要な部材を書き起こしていた。

 

「? 何を書いていますの?」

 

紙を覗いたら、あらびっくり。そこには必要な部材やら機材がびっちりと書かれていた。既に書く場所がなくなり、紙は真っ黒になっていた。

 

「こ、こんなに必要なんですの!?」

 

「あ、はい。もうちょっとあるんですけど……う~ん、かききれないや」

 

「だからいったろう。最深部までメンテナンスすると。IS一基修理するのにどれだけ予算がかかると思っているんだ」

 

 

それを聞いて、セシリアの顔が引き攣った。

 




―――あと半田の温度をにがすピンもほしいなぁ。あ、そういえばあれも……

―――ちょ、ちょっと真琴さん?

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