とある少年が、全女性ジムリーダーのおっぱいを揉むという夢を抱いたそうです 作:フロンサワー
ホウエン地方のとある研究所に、カガリという名の女科学者がいた。彼女の才能は他の追随を許さぬ程であったが、コミュニケーション能力に難があった。才能への妬みからか、それとも女なのにという偏見からか。彼女は瞬く間に孤立していった。
何故、認められない。何故、誰も褒めてくれない。カガリはこの世の全てに嫌気が指していた。
そんな鬱屈とした日々を送る彼女に、ある男が訪ねてきた。その名はマツブサ。出会った当初は、メガネを掛けた冴えない中年という印象だった。
単刀直入に用件を問い質すと、君をスカウトしに来た、とマツブサは答えた。君の素晴らしい才能を燻らせてはいけない、私と一緒に新たなる世界を創り上げよう。そう言ってマツブサは手を差し伸ばした。
カミナリが落ちたかのような、そんな衝撃が走った。真っ直ぐな目に引き込まれた。この人は本気でボクを必要としてくれると、そう確信できた。
気づけば、その手を取っていた。この人の為に生き、この人の為に全てを捧げる。彼女は初めて生きる意味を見出した。鬱屈とした日々が終わりを告げた瞬間だった。
マツブサはマグマ団という組織のリーダーを務めていた。海を減らし、大地を増やすという目的で創設したらしい。ただ、彼女にとってはどうでも良かった。マツブサの役に立てればそれでいい。どんな目標だろうと、彼女にとっては関係ないのだ。
与えられた任務を全力でこなしてきた。何故なら、それが彼女の全てなのだから。失敗などない。いや、する訳がない――― その筈だった。
「理解、不能……!」
脳内がその単語で埋め尽くされる。
ラティオスというポケモンからメガストーンを奪う、ただそれだけの任務だった。
それがどうだ。手持ちのポケモンも、引き連れた部下全員も倒されてしまった。立っているのはカガリだけだ。
伝説のポケモンといえど、ここまで壊滅させられるのはあり得ない。各地から集めたデータを元に編成したメンバーなのだ。それなりの強者ばかりだ。
この事態を引き起こした要因はただ一つ。今目の前にいる、偶然居合わせた男だ。恐るべき強さだった。たった1人だというのに、こちらは完膚なきまでの敗北を喫したのだ。分析なんてする気も起きない。
男は手持ちのポケモンをボールに戻し、大きく手を広げながら近づいてきた。とても優し気な表情を浮かべている――― それなのに、背筋の寒気が止まらなかった。
「たった1人を相手に大勢で襲いかかる。うん、どう考えても警察沙汰だよね」
一歩一歩迫ってくる。逃げようにも、周りは崖で囲まれている。それもそうだ。ラティオスを追い詰める為にこの場所を選んだのだから。まさか、自分が追い詰められるとは夢にも思わなかった。
退路はその男の背後にある。万事休すかと思った矢先、まるでこちらの心情を見透かしたように男は首を振った。
「だけど――― 赦そう。弱そうだって言ったのも、僕に襲いかかったのも、全部全部赦してあげるよ」
今度こそ訳が分からない。この男は何を考えているのだろうか。どういう意味かを問おうとしたが―――。
「だから、おっぱい揉ませろや」
知らない方が幸せだったかもしれない。
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ラティオスを見つけた記念撮影していた真っ最中、よく分からんコスプレ連中に襲われた。ラティオスの持ち物を奪い取るのに邪魔だから、とかいう理由で。無論、返り討ちにしてやりましたよ。
この理由から分かる通り、僕に一切の非は無い。悪者は完全にあっちだ。つまり、おっぱいタイム到来である。
この一連の流れは録音している。この子が警察に通報したとしても、これを聞かせば誰も彼女の言葉を信じないだろう。
久しぶりの獲物に心を弾ませながら、手をワキワキして女の子に近づく。
「…………変態!! …………来るな、ボクの方に!!」
地面にへたり込む女の子。やっべー、ボクっ娘とか超そそるわ。あざとい、流石ゲーフリあざとい。
少し可哀想な気もするけど、犯した罪はきちんと償わなきゃ駄目だよね!
よくよく考えたら、警察に突き出さないだけマシじゃね? 胸を揉むだけで許しちゃう僕って変態紳士だなぁ。
「変態で結構。それに、そっちから仕掛けたんだから仕方ないんじゃないかな?」
涙目になりながらも、女の子は僕を睨みつける。そそるわー。
女の子…… 確かカガリちゃんって呼ばれていたな。カガリちゃんの目の前でしゃがみ込む。
平手打ちが飛んできた。ぶっちゃけ余裕で躱せるけど、僕の業界ではご褒美なのでそのままホッペをぶってもらった。ヒリヒリするけど気持ちいい……。
カガリちゃんを優しく押し倒し、続けておっぱいに手を伸ばす。平手打ちやらグーパンやら、かなり抵抗されてるけどご褒美なので無駄です。
ああ、なんて凶悪なサイズなのだろう。鷲掴みしてもまだ手に余る。小柄なのに巨乳とか、人体の神秘を感じる。謝れ、全国のカミツレちゃんに謝れ!
「…………離せ、離して……!」モニョモニョ
消え入りそうな声を漏らすカガリちゃん。その声に反して攻撃の手数が増えているとはこれ如何に。視界が赤く染まってきたし。
無論、それくらいで離すつもりなどありません。折角の機会なんだ。もう少し楽しまないと。
両手をカガリちゃんのおっぱいに当て、適度に体重をかける。ぷにっと押し潰れるカガリちゃんのおっぱい。元の形に戻ろうと、反発するこの若々しさが堪らない。
ついでにグリグリしてやろう。そ〜れ、グリグリ!
「うぐっ…… ひぐっ…………」ムニョムニョムニョーン
カガリちゃんがとうとう泣き出した。罪悪感が半端ないけど、そっちから襲ってきたんだから仕方ないじゃん。
さて、そろそろ生乳といこうか。早速服を脱がせて…… あれ、これどうやって脱がせるんだ? 上半身なんて露出ゼロじゃん。肌が見えるのなんて脚くらい…… ああそっか、捲ればいいのか。
スカート? の裾を掴み、上半身まで一気に捲り上げる! 巨大なマシュマロがボロンと擬音を立てて現れた! 下半身は知らん! 興味ない訳ではないけど、おっぱいと比べたら些細なことなり!
「ふあああああん!!!!!」モニョモニョムニョムニョムニョーン
泣き叫んでももう遅いZE☆
おっぱいを人差し指でなぞる! スベスベ! スベスベ! ぷるぷる震えて可愛らしい!
間髪入れず、両手で思いっきり揉みしだく! なんて反発力、まるで指に吸い付いているようだ!
リビドーに流されるまま揉みしだくと、変幻自在におっぱいの形が変わる。崩れたマシュマロを見るのもまた一興!
ヒャッハー! もう我慢できねえ、ブラジャーなんて取っ払ってやるぜぇ!
『ライム君、やりすぎ』
そんな声が聞こえると同時に、僕の体に電撃が走った。
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それを皮切りに、僕とマグマ団との奇妙な縁が生まれた。カガリちゃんのおっぱいを揉んだり、マツブサさんと闘ったり、カガリちゃんのおっぱいを揉んだり、ホムラさんと闘ったり、カガリちゃんの太股をさすったり、グラードンと闘ったり、カガリちゃんのおっぱいを揉んだり、カガリちゃんのおっぱいをつついたり、ヒガナちゃんのおっぱいを揉んだり、色々な事が起きた。
最後のイベントが特にやばかった。地球に隕石が迫るとか何処のSF映画だ。
ファミリー総掛かりでどうにか隕石を破壊したけど、一世一代の大勝負だった。山一つ消し飛ばせる僕らが、少し大きな岩くらい壊せない道理はない。とはいえ、大気圏ギリギリで隕石を迎え撃つのは心臓に悪かった。
とまあ。全体的にはめでたしめでたしで終わったんだけど、まだ一つ問題が残っているんだよなあ。
それはカガリちゃんだ。マツブサさんの変化を受け入れられなかったのか、世界滅んじゃえ〜と言わんばかりの暴走っぷりだった。きっと、今のカガリちゃんの精神状態はギリギリの筈だ。誰かが側にいてあげないと、あの子の心は壊れてしまう。
だけど、それは僕の役目じゃない。僕より相応しい人は他にいる。それは―――
「マツブサさんなんですよ」
「……」
カガリちゃんの心はいつだってマツブサさんで一杯だった。僕がおっぱい揉んでるときも「助けてマツブサ様」とか言ってたし。
そういえば、カガリちゃんのパソコンもマツブサさんの写真で一杯だったなぁ。あんなに愛されて、本当に羨ましい限りだ。
「私にその資格はないよ。君の方が余程適任だ」
いやいや、僕が行ったらカガリちゃんの心が壊れちゃうから。僕の方が資格なんてないから。
「僕じゃダメなんです。マツブサさんが行かないと……」
「何を言っている。君はいつだってカガリのことを気にかけていただろ」
ああ〜…… ぶっちゃけ、気にかけてたのはカガリちゃんのおっぱいなんだよなぁ。
「マツブサさんにカガリちゃんと会う資格があるかどうか、僕には分かりません。だけど、これだけは言えます。あんたにカガリちゃんと会わない資格はありません」
「……」
これでまだ動かなかったどうしてくれようか。とりあえず、アベサンにお願いさせるのは確定だな。
まあ、その心配は無用っぽいけど。
「カガリは何処にいる?」
「あっちです、走れば間に合いますよ」
「……やれやれ、走るのなんて何年ぶりだ」
そう言うと、マツブサさんはカガリちゃんのいる方へと走っていった。どうでもいいけど、あんな乱れたフォームじゃ1分と経たないうちに警察に捕まっちゃうだろうな。
さて、僕もそろそろ行くとしようか。マツブサさん1人じゃ心配だしね。
★☆★☆★☆
カガリは自分に問いかけた。何故あのような暴走を起こしてしまったのか、と。
答えは簡単に出せた。
マツブサは変わってしまった。きっと自分を受け入れてはくれない。夢も希望もないあの日々に逆戻り。それなら、この世界を滅ぼしてしまった方が幾分かマシだ、と思ってしまったのだ。
だが、その結果どうだ? あの変態が尽く予想を覆したせいで、結局のところ世界は何一つ変わっていない。
本当はあの変態に感謝するべきなのだろう。もしも自分の計画がそのまま成功したら、マツブサまで消し飛ばしていた。だが、人間の心はそこまで単純じゃない。感謝しなければと分かっていても、どうしても憎んでしまう。この世界が救われたというのは、自分にあの日々が再び始まってしまうのと同義なのだから。
いっそのこと、自分だけが滅びてしまえばいいのではないか。そうだ、最初からそうすれば良かったのだ。そうと決まれば、後は―――
「カガリ!」
「!」
名前を呼ばれ、思わず立ち止まる。
振り返った先にははマツブサがいた。膝に手をつけ、息を切らしている。まさか走ってきたのだろうか?
「……」
「……」
ひたすら無言が続く。
本来ならかける言葉はおろか、逢わせる顔すらないのだ。マツブサが話を切り出すまで待つしかない。
お互いが不動直立のまま、無為に時間だけが過ぎていく。マツブサが何も言わなければ、少なくとも半日はこの状態でいる自信がある。だからといって、逃げ出すのは以ての外だ。一体どうすれば―――
「ゲースゲスゲスゲスゲス!!!」
「ウヒョヒョヒョヒョヒョ!」
特徴的な笑いが辺りに響いた。
笑い声のした方へ目を向けると、2人組みの男がそこにいた。1人はグラサンを掛け、もう1人はマスクをしている。……妙に既視感があるのは気のせいだろうか? 特に小太りした方に。
「可愛い子でゲスね! ちょっと僕らと乳繰り合いませんかでゲス?」
「ウヒョヒョヒョ、怖い思いはさせませんよ!」
にじり寄ってくる2人組み。忌まわしき記憶がフラッシュバックし、体が小刻みに震えてしまう。
手持ちポケモンは置いてきてしまった。ポケモンバトルならまだしも、生身のケンカなんてからっきしである。大の男2人なんて万が一つも勝機はない。
このままではマズイ。このままでは―――
「お引き取り願おうか、君たち」
カガリを庇うかのように、マツブサが2人組みの前に立ちはだかった。
「ウヒョ! 邪魔する気ですか、ナイスミドル!」
「ゲースゲスゲス! おっさん1人に何ができるでゲスか!?」
マツブサは呆れたように小さく息を吐き、モンスターボールを放った。
ボールから現れたのはバクーダだった。指示なしで2人組みの片方に向かって突進していく。
「ちょっ、待っゲボロシャアッ!!!??」
「ウヒョーーーー!!!???」
バクーダのタックルをモロにくらい、若い男の方が吹き飛ばされた。地面を何度かバウンドし、壁に激突してようやく止まった。
「な、何故です!? 何故、その女の為にここまでやるのですか!?」
小太りの男が慌てながらそう言った。
それはカガリ自身も抱いていた疑問だった。マツブサは何故、自分の目の前に姿を現したのか。彼にとって、最早自分は君の悪い存在の筈なのに。どれだけ考えても、仮説の一つも浮かびはしない。
マツブサが口を開こうとする。怖い。聞きたくない。拒絶の言葉を吐かれるに決まっている。耳を塞ごうとした両手を――― 止めた。ここで聞かなきゃ一生後悔すると、そう思った。
「彼女は…… 彼女は、私の大切な人だ。貴様らが手を出すようならば、私は1ミリも容赦はしない」
ギロリ、とメガネ越しで小太りの男を睨みつけた。曲がりなりにも一大組織のトップに君臨していた男だ。一般人が彼の気迫に耐えられる訳もない。小太りの男は一目散に走り去って行った。
だけど、些細なこと――― そう、些細なことだ。マツブサの言葉に比べたら。
夢でも見ているかのような心地だった。裏切って、その上世界を滅ぼそうとした自分を大切な人と言ってくれるなんて。
マツブサは必死に照れを隠しながら、メガネを掛け直した。先ほどの威圧感は微塵もない。
「これが私の答えだ。もう一度、私と一緒に来てくれるか?」
マツブサは手を差し伸べた。ああ、まるであの日のようだ。忘れもしない、孤独な日々から救い上げられたあの瞬間は。
「…………うん、貴方の傍に……… もう一度……!」
マツブサの手を強く握った。今度こそ絶対に放すものかと、そう誓って―――。
★☆★☆★☆
「ライムボーイ、生きてますか?」
「……ええ、なんとか」
この話の1番の被害者はヒガナだと思っています。レックウザなんて要らなかったんや!
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