とある少年が、全女性ジムリーダーのおっぱいを揉むという夢を抱いたそうです 作:フロンサワー
やっと来ましたキクコ回!! 次はキクノさん、そんでドラセナさんだ!!
僕は今、ある街の大通りを歩いている。そして、道ゆく人全員の好奇の目が突き刺さっている。
何故なら、ガクガクと震えているサッちゃんが僕の腕に抱き着いているからだ。一般的に、サーナイトはトレーナーを護る凛々しいポケモンとして認識されている。まあ、僕はサッちゃんを一度も凛々しいと思ったことないけど。
そんなサーナイトがガクガク震えているなんて、そりゃ皆の注目を集めるだろう。
『ライムさん、やっぱりこの街怖いですよぉ〜……』
「モンスターボールに戻ってる?」
『嫌です! この街にいる限り、ずっとひっついてます!!』
今回のサッちゃんは冗談抜きで怖がっている。何故なら、僕らが今いる街はシオンタウンだからだ。
懐かしいなぁ、この街。僕も小さい頃、この街だけは怖くて長居できなかった。だから、サッちゃんの気持ちはよく分かる。
この街で有名なのはラジオ塔だ。元々はポケモンタワーっていうお墓だったけど、改装されてラジオ塔になったんだ。ポケモンタワーにあったお墓は魂の家という別の場所に移されたので、祟りは無いと思う………… 多分。
その魂の家に、キクコさんは月に一回だけ訪れるらしい。そして、今日がその月一の日だ。その筋から得た、信頼できる情報だ。
あと、もう一つだけ仕入れた情報がある。キクコさんって、どうも六十過ぎの女の子…… いや、お婆ちゃんらしい。
流石に六十過ぎはキツい。僕の守備範囲でも四十代がギリギリだ。でも、昔のキクコさんは超美人だったとか。
……逆にアリじゃね、美人だったなら。うん、アリアリ。いけるってお婆さんでも。
それに、キクコさんのおっぱいを揉んでも警察に捕まんない筈だ。いくら警察だって、まさか下心でお婆ちゃんのおっぱいを揉むとは思わないでしょ。
『うぅぅ…… 早く違う街に行きましょうよぉ……』
「大丈夫。直ぐに済ませるから」
今回の作戦はシンプルにいく。おっぱいに触ったら、風のように去るという作戦だ。押し倒すのは危険だから無理!
まさか、キクコさんだってセクハラされるとは思わないだろう。状況を理解するのに時間がかかる筈だ。その隙をついて全力で逃げる! 我ながら完璧な作戦だ。
サッちゃんを慰めながら歩いていると、魂の家らしき外見の建物が見えてきた。十字架に花畑があったらそりゃ分かる。
……こんな邪(よこしま)な気持ちで魂の家に入って大丈夫かな? 凄く不謹慎な気がするんだけど。呪われたりしないよね?
魂の家に入ると、そのには数多くのお墓が建ち並んでいた。
『きゅう〜……』
サッちゃんが気絶した。でも、僕の腕を掴む力は微塵も緩んでいない。
仕方ない、サッちゃんをモンスターボールに戻すとしよう。お姫様抱っこしたいとこだけど、今からおっぱいタイムですし。
サッちゃんをボールに戻し、辺りを見渡す。情報通りなら、この時間帯にいる筈だ。
「!!」
部屋の真ん中あたりで、墓に花を備えているお婆ちゃんの姿を見つけた。間違いない、あれがキクコさんだ。普通の人にはない貫禄がある。
「……」
気配を殺し、墓の陰からキクコさんの様子を探る。キクコさんが立ち上がったとき、それがゴングだ。
―――動いたッ……! 杖を支えに立ち上がり、出口を目指して歩き始めている!!
それを皮切りに、僕も墓から歩き始める。気配は殺したままで、だ。幽霊と勘違いしてくれれば幸いだけど……。
一歩一歩、キクコさんに近づいていく。キクコさんの視線が下を向いているせいで、僕に気づいているかイマイチ分からない。願わくば、そのまま僕に目を向けないでくれ。
一歩、また一歩、確実に距離が詰められていく。射程範囲まであと数歩……!!
いけるッ……!! キクコさんとすれ違う瞬間、おっぱいに右手を伸ばした。
「ッ―――!!!」ムニェムニェ
手の平に柔らかい感触…… いや、違う。この感触はそんな安っぽいもんじゃない。
張りはない。弾力もない。だけど、いつまでも触っていたくなる不思議な魅力がある。欲情するよりも、寧ろ安心感すら覚えてしまう。これが人生経験の差。究極の母性が成せる技か。
ああ、何人の男がこの胸を揉んだのだろうか? 例えるならば、使い古されたアンティーク物のギターだ。古いからこそ味がある。
さて、もういいだろう。キクコさんが呆然としている間に、魂の家から脱出―――
「恐ろしく速いセクハラ。私でなきゃ見逃しちゃうねぇ」
極限まで圧縮された意識の中、僕は確かに聞いた。
景色が二重、三重にボヤける。この感覚、まるでポケモンの催眠術にかかったみたいだ。
咄嗟に振り返ると、そこにはドヤ顔を決めているゲンガーがいた。
その光景を最後に、僕は意識を手放してしまった。
★☆★☆★☆
目を覚ましたら、さっきまでいた魂の家とはまるで違う光景が広がっていた。見た限りでは超一般的なリビングだ。
―――っ!? 身体の自由が効かない……。
どうやら、椅子に座ったまま縛り付けられているようだ。拷問するときにやるような縛り方だけど、きっと偶然だよね!!
そうだ、皆は無事――― に決まっている。あの面子がピンチに陥っている状況なんて、それこそ地球最後の日くらいだ。
だけど、モンスターボールは取られているみたいだ。皆の助けは期待できそうにないな。
「おやおや、予想よりも随分と早いお目覚めだねぇ」
「!!!」
肩越しに振り返ると、そこにはキクコさんがいた。
「あの、僕のモンスターボールは?」
「ひぇっひぇっひぇ! 真っ先に手持ちの心配をする辺り、根っからの悪人ではなさそうだ! 心配せずとも、ポケモンセンターでゆっくり休んでいるよ」
ああ〜…… そうだった。自業自得系のピンチには、僕のポケモンは誰も助けてくれないんだよなぁ……。
「何が目的かは知らんが、あの一連の行動の理由をじっくり聞かせてもらうよ。ねえ、ゲンガー」
「けけけっ!」
まるで尋問じゃないですかやだーっ!!
取り敢えず、心を無にして乗り切るしかねえ!! またブタ箱にぶち込まれるのはゴメンだ!!
だけど、本当に乗り切れるのか!? 相手は四天王、これまでとは格が違うんだぞ!?
―――prrrrrrr!!!
突然、電話が鳴り響いた。僕のではない。ということは、キクコさんの電話か?
僕の予想通り、キクコさんはポケットから携帯電話を取り出した。舌打ちなんて僕にはキコエナカッタヨ。
「何だいキクノ! …………ええ、ええ。そうかいそうかい! そこで少し待ってな」
キクコさんは携帯を切り、いかにも愉しそうな目で僕を睨んだ。
「あたしゃ少し出掛けるよ。少しの間、その椅子でガタガタ震えてるといい。ひぇっひぇっひぇ!」
そう言うと、キクコさんは部屋から出て行った。
……やべぇぇぇぇぇ!!!! 早く脱出しないとぉぉぉぉぉ!!!
ガッチリと縄で縛られていて、縄抜けはできそうにない。素人の結び方じゃないぞ、これ!?
縄抜けに四苦八苦していると、ドアの方向から視線を感じた。振り返ると、ドアを少し開けてこちらの様子を伺っている女の子がいた。
ボサボサの髪で少しヤツれた印象を受けるけど、それでも十分に可愛い。何よりおっぱいがある。
「…………あなた、幽霊?」
「いや、違うけど……」
「…………あっそう」
お嬢ちゃんは露骨にガッカリした様子でドアを閉めようとした。
ヤバい、返しちやダメだ! どうにか説得して、是が非でも縄を解いてもらわないと!
何か、話題を! この子を引き止める話題を振らないと!!
「待って待って待って待って!! 僕を置いてかないで!!」
興味なさそうに僕を見つめるお嬢ちゃん。やばいって!! 何か言え、何か!!
「幽霊って、君、幽霊を信じているの!?」
そんな言葉が咄嗟に出てきた。
お嬢ちゃんは足を止め、親の仇を見るような目で睨んできた。怖いっ!?
「…………ええそうよ、悪い?」
「いえいえ全然全然!!」
「そうやって口先だけで、内心では馬鹿にしてるんでしょ……? あなたもさっさと笑なさいよ……!」
地雷だったぁぁぁぁぁぁ!!!
多分、友人か何かが陰で笑っていたのを聞いちゃったんだろう。トラウマになるのは十分だろうな……。
もう後戻りはできない。こうなったら、地雷原を突っ切る!
「いいや、笑わないよ。僕だって幽霊を信じているんだ!」
「!」
手応えあり!
これを突破口に畳み掛ける!
「それに僕、幽霊に会ったしね」
「……本当に!?」
お嬢ちゃんは僕の肩を勢い良く掴んだ。
食いついた! あと、できればあと少し身を乗り出してください。もうちょっとでおっぱいが―――
「…………私はキクハ」
「あっ、ライムです」
当たらなかった。自分の行動に気づいたのか、キクハちゃんは顔を真っ赤にしながら肩から手を離したからだ。
キクハちゃんは何事も無かったかのような素振りで僕の前にある椅子に座った。素振りは100点満点だけど、顔が真っ赤なのがいただけないなぁ。
「詳しく、聞かせて」
キクハちゃんは爛々と目を輝かしていた。僕としては今すぐ縄を解いて欲しいけど、キクハちゃんが機嫌を損ねたら困る。一先ず、初めて幽霊に出会った話――― 森の洋館の話をしよう。
「森の洋館って知ってる? ハクタイの森にあるんだけど」
「………知っている。私たちの間では有名」
やっぱりな、と納得する。あれだけ不気味な雰囲気を放つ洋館だ。話題になって当然だ。
「そこの洋館にさ、諸々の事情で忍び込んだんだよ」
「諸々の事情?」
ナタネちゃんのおっぱいを揉むためです。勿論、そんなことは言えないけど。
「まあ、それはいいのさ。話の続きだけど、洋館に入ったら閉じ込められちゃってね。中を調べているうちに女の子の幽霊とばったりさ」
「……退治、したの?」
「……いいや、普通にポケモンバトルして終わったよ。本当にただの女の子だったから、退治なんて考えられなかったなぁ。でも、ポケモンバトルしたら成仏してくれてね。少し寂しかったけど、やっぱり嬉しかったよ」
ふぅ…… これでお終いっと。
話しといて何だけど、こんなオチの無い内容で良かったんかね? ホラー要素が1ミリもないぞ。経験した身としてはめっちゃ怖かったけど。
まあ、心の距離は幾分か縮まった筈だ!
「あの、折角なんでこの縄を解いてくれ―――」
「いいわよ」
どこに隠し持っていたのか、キクハちゃんはカッターで縄を切ってくれた。
これで自由になった…… けど、脳内の危険信号は鳴り止まない。何か別の脅威が迫っていると、本能がそう告げていた。
キクハちゃんは顔を上げ、恍惚とした表情で僕を見据えた。
「ええ分かったわ私やっと分かったのよライムと私は運命の赤い糸で結ばれているんだわだって私をここまで受け入れてくれてしかもここまで幽霊について真剣に考えてくれるような男性なんてこの世に2人だっていないものそうよ私を理解できる男性はきっとライムだけなんだわ死が2人を別つまで運命を共にするべきなのよああでもポケモンたちは大丈夫かしら? いきなり家族が増えてビックリしちゃうでしょうしあっ誤解しないで私のポケモンたちはとてもいい子なのよライムのポケモンは…… 聞くまでもないわね貴方みたいな素敵な人のポケモンだからきっと負けず劣らず素敵なポケモンたちなんだわああ楽しみこれから大家族になるでしょうねあっお金の心配は要らないわ私の親戚のキクコさんは元四天王でねお金が腐る程あるってボヤいてたからいざとなったらキクコさんに頼れるわああ何て幸せなのかしらそうそう式はどこで挙げようかしら? 叶うなら廃れたお寺なんかがいいわ神秘的な雰囲気でとっても素敵よね私とライムにピッタリだと思うのそうだわ子供の名前はどうしましょう? 私の家系だと菊の花に因んで名付けることが多いんだけど…… あっ大丈夫よ貴方の意見だってキチンと尊重するわ男の子でも女の子でも嬉しいけど私に似ちゃったらちょっと可哀想ねライム似の子供ならきっと可愛い顔立ちに育ってくれるでしょうね楽しみだわ新婚旅行はどうしましょう? やっぱり全国のホラースポット巡りなんていいじゃないかしら貴方みたいな人が夫なら幽霊にだって自慢できるわ」
「それじゃあ、僕はこれで!」
違 う 意 味 で ヤ バ イ !
全力ダッシュで玄関に向かい、外へと飛び出した。周りを見る限り、どうやらここはシオンタウンみたいだ。先ずはポケモンセンターに行ってポケモンたちを―――
「照れなくてもいいのよライム寧ろ恥じるべきなのは幽霊を信じないその他大勢の人間であってこの世界の真実を知る私と貴方は胸を張って生きるべきなのよでも照れてる貴方もとても可愛いわさあ一緒に式の段取りを決めましょう」
全力で逃げるのが最優先だね!
屋根の上を走ったり、ビルをよじ登ったり、結構ヤバイ道を選んで全力で逃げる。だけど、キクハちゃんを撒ける様子は一向にない。
埒が明かない。こうなったら、奥の手を使わせてもらおう。
「キクハちゃん」
「!!!!!!!?????」
キクハちゃんと向かい合い、思いっきり抱きついた。胸板におっぱいが押し付けられるぅ!!!
ダボダボの服だから一般人には分かりづらいけど、やはり中々のサイズだ! 僕の目は誤魔化せないぞ!
さて、表情筋を引き締めてっと。
「ごめん、僕はまだ結婚とか考えられないんだ。だから、今はこれで我慢してくれないかい?」ギュゥゥ
「ぁぅぅ……///」
真っ赤になりながら首を縦に振るキクハちゃん。やっぱりな、彼女は純情系ヤンデレだ。押しには弱いと思ったよ。
この隙に、全速力でキクハちゃんから逃げた。とりあえず、当分はシオンタウンに近寄らないようにしよう。一つのおっぱいに縛られるにはまだ早過ぎる。
でも、半ば婚約みたいな感じになっちゃったんだよなぁ。
こうなったら、ジョウト地方のマツバヅエ? さんだかに身代わりになってもらおう。幽霊を信じてそうだし、サッちゃんのエスパーパワーで操れば何とかなるだろ。
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「あの子が外に出たのに免じて、今回だけは許してやろうかねぇ。だが、どんな手を使ってもキクハの婿になってもらうよ、ライム」
キクハちゃんは勿論オカルトマニアみたいな容姿の子です。
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