俺の恋路に何故か実姉が立ちはだかっている   作:秋月月日

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 二か月ぶりの更新ですぅ……応募用小説の〆切まで残り三か月切ってましてね。もう時間が無くて焦ってるんですよね、トホホ……。
 GA文庫大賞に絶対に間に合わせたいなぁ。


 追伸:ポケモンB2で夢特性探しを始め、やっと夢メタモンをゲットしました。やったね!


俺とホモと黒化姫路

 一郎が希に半殺しにされてから一夜が明け、小春はいつも通りに――昨日のことなど忘れたかのように普通に学校に一人で登校していた。

 いつもだったら双子の姉である清水美春が隣にいるはずなのだが、今日は日直があるとか何とかで早々に学校へと向かってしまっている。大方、校内の隠しカメラのセッティングにでも出かけているんだろう。あの姉のやることぐらい、弟である俺には手に取るように分かる。

 そんな理由で絶賛単独登校中である小春は口に手を当てながら大きな欠伸を零し――

 

「んふぁ? メールが来てる……?」

 

 ――ブブブ、とポケットの中の携帯電話が小刻みに震えた。

 こんな朝から誰だろう? と疑問符を浮かべながらも、小春は慣れた手つきで携帯電話を操作して新規メールを開封する。

 

『From:吉井明久

 今日、小春の家に泊めてくれないかな? もう、君しか頼れる人がいないんだ』

 

 どうしよう。嫌な予感と言うか悪寒が止まらない。

 友人の一人から寒気が走るメールを送りつけられた小春は一瞬で顔を青褪めさせ、通学路の途中でピシリと凍りついてしまった。たった二文のメールがここまでの破壊力を齎すとは流石に予想外であり、そもそもの問題として、友人である吉井明久の頭の中が大変な事になってしまっている気がしてもうどうにもこうにもならなかったりする。

 マジでアキに何があったんだよ……。小春は何度も何度も深呼吸をすることで冷静さを取り戻し、混乱していた自分をギリギリの線で現実に帰還させることに成功する。

 と、その直後。

 再び彼の携帯電話が小刻みに振動し、新規メールが一件増えた。

 

「…………ゴクリ」

 

 全身の毛穴から冷や汗が噴き出すのを感じつつ、小春は新規メールを開封する。

 

『From:吉井明久

 言い忘れてたけど、僕の大好きな小春にだから頼めることなんだからね?』

 

「既に手遅れだったぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 アキはどうやら禁断のロードに足を踏み入れてしまったらしい。文月学園に通っているからもしかしたらとは思っていたが、まさかアキがその道の開拓者になってしまうとは……いや、その道の開拓者は久保利光くんでしたねごめんなさい。っつー事は、アキは二番目の犠牲者という事になるのか……ご愁傷様。

 だらだらだら、と大量の汗を流す小春。確かに夏が近づいてきてはいるのだが、この汗は絶対に暑さのせいではないと思う。逆に、寒気から来る汗だと思いますね。

 と、その時。

 小春の後ろからひょこっと顔を覗かせたポニーテール(・・・・・・)の少女(・・・)が、「なになに、どうしたの?」と言って小春の携帯電話を覗き込ん―――

 

「…………え?」

 

「疑問の声と共に俺の右腕がぁああああああああああああっ!?」

 

 ―――音速で関節を極められた。

 悲鳴を上げる小春を上から見下ろしつつ、加害者――島田美波は冷たい笑みを浮かべる。

 

「これは一体どういう事? 何で吉井が小春に好きって言っているの……?」

 

「俺が聞きたい事態だっての! っつーかマジで腕、腕がヤベェ!」

 

「ウチの方が吉井よりも想ってるんだからぁあああああああああああああっ!」

 

「いや一体何の話ですかねって俺の肘が曲がってはいけな――あ、ちょっ、ア゛ーッ!」

 

 小春の甲高い悲鳴に覆い被さるように、彼の肘から鈍い音が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

  ☆☆☆

 

 

 

 

 

「小春くんデラックスデストロイヤーッ!」

 

「何の前置きも無しに僕の卓袱台が真っ二つにっ!?」

 

 午前中の授業が終わった後の昼休み。

 美波によって朝っぱらからズタボロにされた小春は授業が終わると同時にFクラスの教室へと全力で向かい、全身全霊をかけて事の元凶である吉井明久の卓袱台に渾身の踵落としを決めた。小春の全力技が炸裂した卓袱台は見るも無残に真っ二つとなり、限界寸前だった卓袱台の脚も二本ほど天国へと召される結果となっていた。

 ふぅ、と額の汗を拭い、小春は爽やかな笑顔を浮かべる。

 

「死ね☆」

 

「それはこっちの台詞だよバカ! 何で昼休み開始直後に僕の卓袱台が地獄送りにされちゃうのさ!」

 

「お前のホモメールのせいで俺が朝から天に召されそうになっちまったからだよこのバカ!」

 

「バカって言った方がバカだ!」

 

「じゃあお前がバカなんだろうよ! バーカバーカ!」

 

「このっ……表に出やがれ脳内小春日和!」

 

「上等だ、返り討ちにしてやらぁ!」

 

 バチバチバチィッ! と火花を散らす小春と明久。高校二年生にもなってまで小学生同士のような喧嘩を繰り広げている時点で同レベルのバカだとは思うのだが、そこに気づけるような頭脳をこの二人は持ち合わせてはいない。だってバカだし、大バカだし。

 とりあえずこのままでは話が進まない。そう判断したFクラス代表・坂本雄二は自分の席で弁当を広げていた美波に目配せをし、それを受けた美波は面倒臭そうに溜め息を吐きながらもバカコンビの脹脛に見事なローキックを叩き込んだ。

 

「「はうぁっ!」」

 

「ったく……相っ変わらず顔を見る度に喧嘩ばかりするんだから、このバカ共は……」

 

「照れ隠しで清水くんに殴る蹴るな美波ちゃんには言われたくないで――ハッ!」

 

「みーずーきー?」

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい! 思わず口が滑っちゃいました!」

 

「口を開きなさい。アンタが吉井の為にと作ってきたゼリーを流し込んであげる」

 

「ひぃぃぃっ! ゆ、許してください美波ちゃん! 今回も失敗作なんです!」

 

「失敗作を学校に持ってくるとかアンタは料理舐めてんのか!」

 

「ど、どうどう。落ち着くのじゃ島田!」

 

 第一次の次は何とやら。最近やけに黒化が進みつつあるFクラスの華こと姫路瑞希が美波に粛清されかけるという大惨事が勃発しかけるも、フォロースキルがやけに高い木下秀吉によって開戦寸前にその戦いは終息した。

 相も変わらず騒がしいFクラスに雄二は呆れたように溜め息を吐く。

 

「それで? お前は何で明久に奇襲を仕掛けたんだ? ……まぁ、普通に予想はつくんだが」

 

「アキが朝っぱらから俺に告白してきて美波がキレて俺が死にかけた」

 

「清水くんに告白って、どういう事か説明してくれますよね明久くん……?」

 

「ひ、姫路さん? 君が掲げてるそのゼリーはもしかしなくてもお手製だよね……?」

 

「はいっ、きっと天国に行けるぐらいの味がすると思います☆」

 

「やっぱり自覚した分悪意があ――んぐぐぅっ!?」

 

 ごくんどたんばたん! ともはや鉄板となりつつあるパターンを経て床へと崩れ落ちる明久。

 生きる屍と化した明久の腕を持ち上げて彼に肩を貸し、姫路はとてつもなく黒い笑みを浮かべて言う。

 

「あらあら、こんな所でお昼寝なんて明久くんはおちゃめさんですね。それでは私は明久くんを保健室に連れて行きますから、あとは皆さんでお楽しみください」

 

「いや、今のはお前の暗殺術が原因で」

 

「――清水くん?」

 

「いっやぁこんな所で昼寝しちまうなんてアキは本当バカだなぁ! よ、よし、それじゃあアキを頼んだぜ姫路!」

 

「はいっ! それじゃあ行ってきますね☆」

 

 彼女が教室から出て行くまで誰も動けなかった、というのはあえて言うまでもあるまい。

 やっぱり最近ヤンデレになってきてるなぁ、と客観的な感想を浮かべる雄二。その近くではムッツリーニこと土屋康太がカメラの手入れを行っているのだが、今さらそれを指摘するような生徒はこの学園には存在しない。ぶっちゃけ不用品だから先生に見つかり次第没収されてしまうのだが、このカメラにお世話になっている事が多い彼らとしてはこんな所で墓穴を掘る訳にはいかなかったりする。今日もお勤めご苦労様ですムッツリーニ、とFクラスの面々は心の中で敬礼する。

 黒化ヒロインの道を順調に進んでいる御様子の姫路をとりあえず脳の隅の方に押しやり、小春は雄二に話を振る。

 

「っつーかさ、何でアキは俺の家に泊まりてえなんて言ってきたわけ? アイツ、一人暮らしだからわざわざ人ン家に泊まる必要なんてねえだろうに」

 

「あ? 小春、お前知らないのか?」

 

「へ? 何が?」

 

 不思議そうに首を傾げる小春を康太が音速でカメラに収め、目にも止まらぬ速さで千円札を彼に差し出した美波の姿なんて誰も見ていない。

 一瞬の間に行われた闇取引に顔を引き攣らせつつも、雄二は肩を竦めながら小春の疑問を解消し始める。

 

「明久の姉貴が帰国してきてんだよ。それで、姉の監視の目から逃れるためにお前の家に泊まりたい~とか何とか言ったんじゃないか?」

 

「…………後でパンでも奢ってやるかな」

 

「そういえばお前も実姉に苦労している希少種だったな……」

 

 やだなぁ、別に泣いてなんかねえよ?

 

「そんで? アキの実姉ってどんな人なんだ? やっぱりアイツの姉だからかなりのバカだとか?」

 

「巨乳美女でハーバード卒の秀才だ」

 

「巨乳美女でハーバード卒!? 巨乳美女で!?」

 

「ねぇ小春。何で巨乳を連呼したのか質問してもいいかしら?」

 

「あっはっは。別に深い意味なんてねえよ。っつーかさ、美波。その前に何でお前が俺の首を両手で固定してるのかについての質問をしてもいいか?」

 

「それが辞世の句という事でいいわね?」

 

「ジャスタモーメンッ美波! この流れで殺されちまったら流石の俺でも死にきれねえと思うんだがッ!?」

 

「大丈夫。死んだという事に気づく暇も与えないから」

 

「お前もうマジで殺し屋の道に進んだ方が良いんじゃねえの!? 普通に就職するよりも絶対に天職だと思うぜッ!?」

 

「ありがとう。最高の褒め言葉――だわっ!」

 

「ほぎゃぁあああああああああああああああっ!?」

 

 昼休みに二人も保健室に運ばれてくるのは流石に予想外だった、と養護教諭は後に語る。

 

 




 感想・批評・評価など、お待ちしております。

 次回もお楽しみに!

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