ポケットモンスター鳴   作:史縞慧深

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今回は何故か疲れた。
いつもと変わらないはずなのに。
これがわからない。
それではどうぞ。



51話 秘密と予告

「ゼブライカ、戦闘不能。よって、勝者、チャレンジャー、メイ!」

 

審判からの勝利宣言が下る。お~しおしおしお~し。勝てた。最初から本気のジムリーダーに勝てたぞ。

 

「戻って、ゼブライカ。はあ、負けたわ。おめでとう、メイちゃん。私の完敗。素晴らしいバトルだったわ」

 

カミツレさんが近づいて握手を求めてくる。

 

「ありがとうございます」

 

私はライカをボールに戻し、握手に応えて手を握った。

 

「色々聞きたいことがあるんだけど、まずはバッジね。はい、これがライモンジムを勝ち抜いた証、ボルトバッジよ」

 

カミツレさんがボルトバッジを手渡してくれる。

 

「よっし。ボルトバッジ、ゲットだぜ!」

 

私がポーズを決めているとミスティとアリアが観客席の方から降りてきた。

 

「このセリフは毎回言っているのか?」

「そ。いつも言ってる」

 

アリアは何か微笑ましいものを見たような表情で、ミスティはいつものことだ、といった諦めの表情で会話に入ってくる。

 

「あら、私は素敵だと思うわよ。素直に喜べるのはいいことだわ」

 

流石カミツレさん、わかってるぅ~。

 

「それもそうか。まあ、とりあえずよかったな、メイ」

「おめでと」

 

アリアとミスティから祝福された。いやあ、照れるぜ。

 

「二人ともありがとう。それにしても参りましたよ。電気タイプに効くはずの地面タイプがほとんど効かないポケモンばかり出してくるんですもん。ゼブライカもでんじふゆうを使ってくるし」

 

おかげで地面タイプの技はほとんど役に立たなかった。

 

「それは当然よ。電気タイプ使いとして弱点対策はしっかりしておかないと。でも、やっぱり地面タイプの弱点を突けるのがシビルドンしかいないのが難点ね」

 

確かに今回カミツレさんが使ったポケモンたちでは地面タイプの弱点を突くのは難しいな。

 

「それならめざめるパワーを使ったらどうですか? まあ、使うポケモンによってタイプと威力が変わるので少し使いにくいかもしれないですけど」

「それはもう試したわ。ちなみにゼブライカは炎、シビルドンは草、エモンガは飛行だった。だから見事に覚えている技のタイプと被っているというわけ」

「あらら、それは残念でしたね」

「メイ、一つ訂正箇所がある。めざめるパワーの威力は大体同レベルのポケモンでは変わらない」

「え? そうなの?」

「うん。メイが言ってる威力が変わるっていうのは多分レベルの違いのせいだと思う」

 

そうだったのか。ミスティの言う通りならここも前世と違う点だ。まあ、フェアリータイプなんかもあるくらいだし違っていても何ら不思議じゃないよね。

 

「へえ。知らなかった」

「ほう、メイでも知らないことがあるのだな」

「アリア? いったい私をどういう風に思っていたの?」

「いや、今朝の話ぶりだとこれくらいは知っているものかと思っていた」

「アリアも知ってたの?」

「ああ、前にトレーナーに教えてもらった」

「ふ~ん。あ、話を戻しますけど、地面タイプの弱点を突けるポケモンですが、チョンチー、ランターンなんかがいいと思いますよ」

「? どんなポケモンなの?」

「チョンチーが進化するとランターンになるんですけど、タイプは水、電気タイプで特性はちくでん、もしくははっこう、そして隠れ特性としてちょすいがあります。技は有名な電気、水、氷タイプの技を大体覚えられます。珍しい技としてはふいうちなんかも覚えられたはずです。生息地域は主にジョウト地方ですね。あとサザナミ湾にも生息していたと思います」

「サザナミ湾にも!? 私としたことが見逃していたなんて。今度の休みにでも早速行ってみるとしましょう」

 

ああ、水着で船の上で釣りをするカミツレさんが目に浮かぶ。

 

「私もちょっと訊きたいことがあるんですけどいいですか?」

「そうね……」

 

カミツレさんは何かを考えるような素振りを見せる。

 

「こうしましょう。私も訊きたいことがあるから情報の交換ということでどうかしら」

 

なるほど。恐らく訊きたいことというのは技の同時使用のことだろう。どうしようかな。

 

「そうですね。ある程度ならいいですよ。流石に全部というのは無理かもしれないですけど」

「それでも構わないわ。あなたの方から訊いてもいいわよ。何を聞きたいの?」

「カミツレさんはゼブライカにこうそくいどうの後にニトロチャージを指示していましたよね。すばやさを上げるだけならこうそくいどうを連続ですればいいだけですよね? どうしてですか?」

「そんなこと。こうそくいどうのような能力を上げる技はね、二回目以降は効果が薄くなるのよ」

 

なんと!? そんなことがあるのか。今までゲームと同じように上がるものだと思っていた。これは積み技について要実験だ。そうなると積み技を連続で積んでレベル差をひっくり返すことが難しくなる。つまりはどれだけポケモンを育てているかがより重要だということだ。

 

「へえ。そうだったんですか。知りませんでした」

「訊きたいことはそれだけ?」

「じゃあ、ニトロチャージはどうなんです?」

「ニトロチャージも同じよ。ただ、こうそくいどうを使った後にニトロチャージを使っても、その逆でも、始めて使う技は大きく能力が上がるわ」

 

なるほど。つまりはこうそくいどうを連続で積むよりもこうそくいどうとニトロチャージを使った方が能力が上がるというわけか。

 

「わかりました、ありがとうございます。私はこれだけです」

「じゃあ、次は私の番ね。あなたが指示していた技、瞬影、無影、それに技と技を組み合わせたような指示の仕方、あれは一体どういうことなのかしら」

 

なんだ。もう見破られているようなものじゃないか。ていうか私の名前の付け方がマズかったか。まあ、別に隠しているわけでもないし、いいか。

 

「そのままですよ。どちらも技と技を組み合わせているんです」

「技と技を組み合わせる?」

「はい。二つの技を同時に使うんです。こうすることで二つの技の性質を併せ持った技に変化します。といっても少し強くなる程度ですけどね」

「なるほど……! いえ、それは組み合わせによっては少しどころではなく強くなるわ。これは久々に研究意欲が湧いてきたわ。ありがとう、メイちゃん。こんなすごいことを教えてくれて」

 

まあ、まだ技の魔改造なんかもあるんだけど訊いてこないしいいだろう。態々教える義理もない。そういや改造した技は実戦ではまだあんまり使ったことないな。

 

「いえ、いいですよ」

「あ、そういえば忘れていたわ。はい、これ」

 

カミツレさんからわざマシンを渡される。

 

「中身は“ボルトチェンジ”よ。効果はバトルで使ったからわかると思うけど、攻撃が当たれば交代できる技。もっとも他にポケモンがいないときはそのままだけど」

「ありがとうございます」

 

よし、ユウヒに使おう。

 

「それじゃ、私はそろそろ仕事があるから。メイちゃん、Mちゃん、アリアさん、またいつでも遊びにきてちょうだいね。出口はあっちよ」

「カミツレさ~ん!」

 

カミツレさんがジムを去ろうとしたときにとある少女の声が聞こえてくる。おや? この声は……。

 

「カミツレさん。よかった。ここに居たんですね。少しお話しがあるんですけどいいですか」

 

そう言いながらこちらに向かってきたのはベルだった。

 

「あら、ベルちゃん。どうしたのそんなに急いで」

「あ、メイちゃんにMちゃん、と初めまして、あたしはベルと言います」

 

ベルは私とミスティの方を見た後アリアの方を見て挨拶をする。急いでいてもそこんとこはちゃんとするんだね。

 

「ああ、初めまして。私はアリアと言う」

「ちょうどよかった。カミツレさん、メイちゃんにMちゃん、アリアさんも私のお話を聞いてくれますか?」

「急ぎの用事なの?」

「はい。重要なことなんです」

「わかったわ。聞きましょう」

 

カミツレさんに続いて私たちも頷く。

 

「実は先週、プラズマ団から予告が届いたんです。“二週間後、我々プラズマ団の王、N様がポケモンリーグチャンピオンマスター、アデクに挑戦する。場所はポケモンリーグの開催される都市、アマダキシティ。その際、邪魔が入らぬよう我々プラズマ団は総員全力をもってその他の介入を阻止する。もしも、アデクがこの挑戦を受けぬ場合、世界は我々の理想に染まると思っていただこう”」

 

ついにきたか。プラズマ団が最後の仕上げに取り掛かる時が。原作ではこんな予告状は届かなかったはずだが、こうでもしないと実際にチャンピオンマスターが取り合ってくれないだろう。

 

「チャンピオンマスターのアデクさんはこの挑戦を受けるつもりでいます。しかし、Nは伝説のポケモン、ゼクロムを目覚めさせ、従えています。もし、アデクさんが負けた場合、私やトウコ、トウヤ、チェレン、その他のトレーナーの皆でプラズマ団を止めようと思っています。それにカミツレさんにも協力してほしいんです。すでに他のジムリーダーたち、シャガさん、アイリスちゃん、ハチクさん、フウロさん、ヤーコンさんには協力を取り付けました。お願いします。私たちに協力してください!」

 

そう言ってベルはカミツレさんに頭を下げる。

 

「頭を上げてベルちゃん。もちろん協力させてもらうわ」

「あ、ありがとうございます!」

「それで、私はどうすればいいの?」

「アマダキシティに向かってください。他のジムリーダーたちもそこに向かう予定です」

 

アマダキシティというのはイッシュ地方のポケモンリーグが毎年開かれている都市で、ゲームでポケモンリーグがある場所に存在するこの世界オリジナルの街だ。

 

「わかったわ」

 

ここまで聞いておいて私が協力しないっていうのは空気読めてないよなあ。本気のジムリーダーに勝ってしまっているんだから実力的には十分だろうし。

 

「メイちゃん、あなたはどうするの?」

 

ほらきた。カミツレさん、余計なひと言を……。

 

「え? メイちゃんも協力してくれるの? でも、プラズマ団は何してくるかわからないし、危険だよ」

 

いいぞベル。その調子で私を協力メンバーから外して――。

 

「大丈夫よ。メイちゃんは本気の私よりも強いから」

 

カミツレさ~ん! 何言っちゃってくれてんの! これじゃあ断れないじゃない!

 

「え? ホントに? じゃあメイちゃんも協力してくれる?」

 

ベルはウルウルした目の上目遣いという必殺コンビネーションで見つめてくる。

 

「ち、近いよベル。わかった、わかったよ。協力するから」

 

はあ、覚悟を決めてやるしかないか。ちくしょう、またプラズマ団とやり合うことになるとは。最近平和だと思ったらこれだよ! と心の中で地団駄を踏む。

 

「ホント! ありがとう!」

 

ベルは私の手を握ってぶんぶんと振り回す。そんなに嬉しいか。

 

「ミスティとアリアはどうする?」

「私は行く。メイだけじゃ心配だし」

「お前たちが行くなら私も行こう」

 

オッケー。ミスティとアリアも一緒か。なら心強いな。

 

「ミスティ? Mちゃんのこと?」

「そう。私の本名はミストラル。Mはリングネーム。呼ぶ時はどっちでもいい」

 

ベルの質問にミスティが答える。トレーナーには時々リングネームを使っている人がいて普段からそっちを名乗っている人もいる。その理由は様々だが、大体は自分の名前が気に入らないと言う人たちだ。親からもらった名前は大切にしろよな。そういえばミスティはなんでMって名乗ってたんだろう。まあ、どうでもいいことだけど。

 

「じゃあこのままMちゃんで。Mちゃんとアリアさんもいいの? 危険かもしれないんだよ?」

「ミスティは大丈夫。私とバトルで引き分けるくらいだし」

 

へえ……! とカミツレさんとベルは感心する。

 

「アリアは……大丈夫?」

 

そういや私はアリアがどれくらい強いのか知らないな。

 

「私は大丈夫だ。トレーナーでなくともできることはある」

 

まあ、そりゃゾロアークだもんなぁ。

 

「後方支援に徹するということかしら」

「まあ、そんなところだな」

 

カミツレさんの言葉にアリアは含みを持たせる言い方をする。この様子だと結構自信があるみたいだ。私のポケモンたちの修業風景を見てもあまり動じないし多分リオたちと同じ程度には強いと思われる。

 

「日時は先週にきた予告の通りだとすると丁度一週間後ね。これは仕事をキャンセルして明日にでもアマダキシティに向かった方がいいわね。メイちゃんたちも一緒に行く?」

「私はまだアーティさん、アロエさん、デントさん、ポッドさん、コーンさんにこのことを伝えないといけないので一緒には行けません」

 

ベルはどうやらジムリーダーたちとの連絡役を担っているみたいだ。

 

「私たちは後から向かいますからカミツレさんは先に行っていてください」

「そう、わかったわ。さあ、そうと決まったら準備しないとね。アマダキシティで会いましょう」

 

カミツレさんはそう言って去っていった。

 

「じゃあ、私も行くね。次の街に行かなきゃいけないから。またね」

 

ベルもそう言うと走っていった。

 

「さあ、私たちも準備だね」

「うん」

「そうだな」

 

こうして私たちはプラズマ団との決戦に参加することになった。

 




ありがとうございました。

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