それではどうぞ。
試合開始の合図と同時にクウトが突っ込んでくる。
『先手必勝!』
「リオ! 落ち着いて躱しなさい! 躱せないものは受け流して!」
クウトは波導の力を両手足に込めてリオに連撃をはなってくる。それをリオ指示通りに躱し、また受け流していく。
「リオ! 受け流しで隙を作って足払い!」
クウトの攻撃を受け流してできた隙に足払いを叩き込もうとするが、ジャンプで躱される。
「今だ! 思いっきりはっけい!」
空中で身動きがとれないクウトにリオの渾身のはっけいが炸裂する。
『がうお!?』
しかしクウトは空中で身を翻して受け身をとる。
『やるじゃねえか! ならこいつはどうだ!』
そう言ってクウトは、はどうだんという波導でできた弾を連続で撃ってくる。
「リオ! はっけいで受け流しながら相手に向かって前進!」
リオは、はっけいではどうだんを受け流しながらクウトに近づいていくが、クウトもはどうだんと一緒にリオに近づいてくる。
『隙だらけだぜ!』
「! まずい、リオ! ガードして!」
『くっ!』
受け流しの隙をつかれリオは波導の力のこもったパンチを喰らってしまう。しかしとっさに腕をクロスさせガードしたおかげで致命傷はさけられた。それから二人は攻撃と防御を繰り返し、互いに体力を減らしていく。そろそろ決着がつきそうだ。
『『これで終わりだ!』』
リオとクウトの声が重なり、互いに攻撃を当ててそのまま駆け抜けると両者共に膝をついた。
『そこまで!』
「リオ! 大丈夫!?」
あわてて駆け寄るとほかのルカリオがいやしのはどうをつかって体力を回復させてくれた。
クウトのほうも同じだった。体力を回復させたクウトが近寄ってくる。
『すごいな、波導もまともに使わずにここまで強いなんて』
クウトは感心しながら言った。
『ありがとう、でもやっぱり波導をうまく使えないのはいただけないな。うまくつかえるようになりたいな』
リオが悔しそうな表情で言う。
「ごめんね、リオ。ぜんぜんうまく指示できなかった」
『そんなことないよ。最後までメイの指示は的確だったと思うよ』
「それに、リオが何ができて何ができないのかわかってなかった。この試合でよくわかった」
『メイ……』
すると人と話せるルカリオが近づいてくる。
『では、それを知るためにリオの修行に付き合うというのはどうですかな』
「はい、もちろんそうするつもりでしたが、私にも目標ができました」
そうリオが何ができるのかをきちんと把握するのだ。こんな大事なことを何で今まで放っておいたのか今となってはさっぱりわからない。そうして意気込みを新たにする。
『ところで、今日はこれからどうなさるおつもりですかな。よろしければうちの集落で泊っていかれてはどうですか?』
「いいんですか? ではお言葉に甘えて」
ふと周りを見渡すともう夕暮れになっていて差し込んでくる西日がまぶしい。今夜はルカリオたちといっしょに夜をすごそう。
『ではこちらです』
そう言われて集落に案内される。案内された集落では昔話に花を咲かせて大いににぎわった。特にみんな強くなりたいのか、ポケモン合気道の話は興味津津で聴いていた。そこで明日からの修業中に実際に教えることになった。もちろんリオの修業の邪魔にならない範囲での話だが。さあ明日はいよいよリオと私の修業が始まる。
ルカリオの里で一夜を明かし、朝になり、いつもの体操を行なった後さっそく修業が始まった。リオはまず波導を感じるところから始めるようだ。
『まずは私が波導をリオに流します。それを意識したら次は自分の中にある同じものを探してください』
『はい!』
リオは元気よく返事をすると集中し始める。
『どうですか。メイさんもやってみますか?』
「あ、はい」
私もリオと一緒に自分の中にある波導を探す。
『見つけました!』
リオが何かを見つけたようだ。ついでに私も見つけた。
『じゃあリオ、メイ、次はその波導を全身に巡らせてみてください』
『はい!』
するとリオの全身から青く光る波導のようなものがあふれ始めた。私も自分の体を見てみるとリオと同じようになっていた。
『体が軽くなった感じがしませんか?』
『本当だ。すごい……』
「へえ……」
『波導には体を活性化させる効果があります。それがよくわかるでしょう。それでは、昼までその状態を維持してもらいます』
『わかりました』
そうしてリオと私は昼までその状態を維持した。
『はい、お疲れ様です。昼休憩に入りましょう』
『ふぅ~、疲れた』
息を吐いて疲れを示すリオ。
「お疲れリオ」
そんなリオに労いの言葉をかける。
『午後からは、さっきの状態を維持しながらの組み手を行いますのでしっかり休憩しておいてくださいね。あとメイはさすがにルカリオたちとの組み手はできないと思うので別メニューでお願いします』
指導担当のルカリオから午後からの予定を聞く。
『あの状態を維持しながら戦えばすごくいい動きができると思う。よし、やる気が出てきた。午後も頑張ろう』
リオはさっきの疲れを全く感じさせない元気な様子で午後の組み手にやる気を見せている。強くなっているという実感があるからだろう。そうして私とリオのルカリオの里での修業の日々が過ぎて行った。
ルカリオの里での修業が始まってから約数週間がすぎた。リオはこの修業で様々な技を覚えた。まずはみきり、この技は相手の技を見切って相手の技を回避するという技だ。しかしこの技は連続で使うと失敗する可能性が出てくる。この技は現在行われている無限組み手でも生かされている。無限組み手というのは一人が一本取られるまで多数の人と同時に組み手を行うというものだ。リオは背後からの急襲もみきりで対処して次々と襲いかかってくるリオルやルカリオたちに対応している。
他には波導でできた球体のエネルギー弾を発射して相手にぶつけるはどうだん、相手の体力を回復させるいやしのはどう、相手をひるませる波導を放つあくのはどうなどが使えるようになった。ちなみにこの世界ではポケモンが使える技は4つまでということはない。
それと私もはどうだんを撃てるようになった。やってみるものだ、こうも簡単にできるようになるとは。簡単にできるようになった理由としては波導の一種である相手の意思を読み取るということがすでに出来ていたということがある。しかしこのことが役に立つことがあるのだろうか。ポケモンと直接戦うことなんてないだろうし。う~ん、まあいいか、使えるに越したことはない。
『そこまで!』
組み手を見ていた審判役のルカリオが組み手を止める。
『ふう~、ありがとうございました。』
リオがしめのあいさつをする。
『まさかここまで強くなるとは思いませんでした。』
人と話せるルカリオが言う。
『波導をうまく使えるようになるだけでここまで強くなるとか反則だろ……』
クウトが漏らす。
『ははっ、僕自身もびっくりだよ。今じゃ誰にも負ける気がしないよ』
リオが自信たっぷりに言う。
「こら、あまり調子に乗ってると足元をすくわれるよ」
『は~い』
強くなれたのがよほどうれしいのかあまり話を聞いていないようだ。
「まったく……」
『これ以上の強さを求めるならここにいては達成できないでしょう。そろそろここでの修業はおしまいですな』
人と話せるルカリオが言う。
「そうですか……。今までありがとうございました。おかげでさらに強くなることができました」
私はそう言って頭を下げる。
「ほらリオも」
リオにも頭を下げさせる。
『いいのですよ。我々にとっても良い経験になりましたし。同胞の力になれたのですからこちらとしてもよかったですよ。ところでこれからはどうするつもりですか?』
「これからって言われても、また旅の続きですけど」
『もし時間があるなら別れる前に宴を開きたいと思っているのでぜひ参加してほしいのです』
「わかりました。いいですよ」
特に急ぐ用事もないので快く承諾する。
『それは僥倖。よし、では……皆のものよく聞け。今宵はうたげじゃ。リオとメイの送別会じゃ。心して準備にかかれ』
『『『おおー!』』』
ルカリオたちは盛大に返事をし、準備を始める。
「ありがとうございます。こんな宴まで開いてくださって」
『我々も宴を楽しみにしているのでいいのですよ。今夜は楽しんでいってください』
『どんな宴になるのかな~、今から楽しみだね、メイ』
準備が始まってから数時間後、周囲はすっかり夜になり、始めてこの里に来た時の大樹ある広場にルカリオたちがキャンプファイヤーを中心に集まっている。そこでリオが音頭をとる。
『今日は僕たちのためにこのような宴を催していただきありがとうございます。では長々と話しをするのもあれなのでさっそく……。皆のさらなる健闘を祈って、乾杯!』
リオの乾杯の合図とともにみんないっせいに飲み始める。飲むといってもお酒ではなく森でとれた果実のジュースだが。宴では二匹のルカリオによる演舞が行われた。その演舞により宴はさらに盛り上がった。そうして楽しい宴の時は過ぎていく。
そして翌日になる。
「今まで修業させてもらってありがとうございました」
リオと一緒に改めてお礼を言う。
『こちらこそ、良い経験になりました。どうか旅の道中、気をつけてください』
人と話せるルカリオが代表で言う。
『今度来た時はさらに強くなってお前を倒してやるからな! 覚悟しておけよ!』
今度はクウトが言う。
『今度やる時は負けないから、そっちこそ覚悟しておきなよ!』
それに対してリオは再戦の誓いをして別れを告げる。
「さようなら!」
『じゃあね!』
『またあそびにこいよー!』
こうして私とリオの修業の日々は終わりを告げた。明日からはまたきままな旅の続きだ。
ありがとうございました。