それではどうぞ。
朝、ポケモンセンターで待っているとケイネさんが来た。
「メイ、M、またせたな。調子はどうだ?」
「すこぶる元気です」
「です」
Mが私を真似て言う。
「そうか、それはよかった。ところで打ち合わせの内容を覚えているか?」
「ええ、授業の内容はタイプ相性の復習、ケイネさんとの簡単なバトル、そして私たちの旅の話、ですよね?」
これくらい、ばっちりよ。子供の記憶力をなめるなよ。
「よし。ちゃんと覚えているようだな」
ケイネさんはうんうんと首を振る。
「では、トレーナーズスクールに案内する。ついてこい」
そういって私たちはケイネさんに連れられトレーナーズスクールに行く。そして数分後、トレーナーズスクールに着いた。ふむ、まあ、普通の学校だわな。校舎の中に入って職員室に通され、そこでお茶とお茶菓子を出される。
「ここで少し待っていてくれ。授業にはまだ時間があるからな。私は授業の準備があるからここを離れる。時間になったら呼びに来るから、ゆっくりしていてくれ」
そう言ってケイネさんは職員室から出ていく。Mの方を見てみるとさっそくおいしそうにお茶菓子を食べている。さすがというかなんというかブレないね。しばらく待っていると再びケイネさんが職員室に入ってくる。
「メイ、M、時間だ。来てくれ」
ようやくか。……ふう、誰かの前で話すなんて緊張するな。しかも授業ときたもんだ。旅の話なんてそれほど大層なものじゃないんだけどなぁ。ま、いいか。ケイネさんはそれでいいと言ってくれたし。すると、バトルフィールドのある体育館のような場所に連れてこられた。そこにはすでに生徒と思われる数十人の子供たちがざわついていた。
「お前たち。静かにしろ。これより特別授業を始める。六年生の代表、挨拶を」
ケイネさんは先生らしく言う。そういやこの人教師だった。美人過ぎて忘れてた。
「はい。起立! 礼!」
「「「「「お願いします」」」」」
沢山いる生徒たちは礼をする。
「よし。今日はまずタイプ相性の確認からいくぞ。今から私がタイプ相性表を書く」
そうしてケイネさんはホワイトボードにタイプ相性を書き込んでいく。
「さて、今書き込んだ中には間違いがある。それがわかるやつはいるか?」
すると一人の女子がおずおずと手を挙げた。その女子は緑色の髪で、左側頭部をサイドテールにまとめ、黄色いリボンをつけている。この子もゲームのキャラクターにそっくりだ。
「よし。ダイア、答えてみろ」
どうやらこの子はダイアという名前らしい。この子は原作では名前が不明だったのだがこの世界では名前があるようだ。当然か。
「はい。鋼タイプに格闘タイプの攻撃はいまひとつではなく効果はバツグン、です」
「うむ。正解だ。他にはないか」
そうしてダイアを皮切りに次々と答えていく。
「これで全部だな。よく答えた。きちんと覚えているようだな。えらいぞ。では相性表を配る。一人一枚ずつ受け取ってくれ」
ケイネさんはタイプ相性が書かれた紙を配る。
「ここで、今回の授業のゲストを紹介する。こちらはポケモントレーナーのメイ、そして同じくポケモントレーナーのMだ」
ケイネさんは私たちを紹介する。
「よろしくお願いします」
「よろしく」
私とMはその紹介にこたえる。するとパチパチと拍手が起こる。しかしどこかぎこちない。
「ポケモントレーナーのメイで~す。ヨロシクゥ! キャピ☆」
私はどこぞのギャルがするようなポーズをする。ああ、やっちまった。空気に耐えられなかったんだ。私は悪くねぇ! 怖くてMの方を見れないがきっと呆れた表情をしていると思う。シ~ンとして空気が凍りつく。が、そこでこの空気を打ち破る声がする。
「ぷ、アハハハ! なにそれ~アタイの方がもっとかわいくできるぞ!」
ビシイ! とポーズを決める女子。その子のおかげで笑いが起き、空気が和んだ。
「むう、なんだよ~! よくできてただろー!」
ふう、助かった、恥ずか死するところだった。今、みんなの中心にいる女子、薄い水色の髪のウェーブのかかったセミショートヘアで緑のリボンをつけた子もゲームのキャラクターにそっくりだ。
「チルノちゃん……」
ダイアが苦笑いしながら言う。どうやらあの子もゲームと一緒の名前のようだ。ほかにもゲームのキャラクターに見える子が三人ほどいる。金髪のボブカットの子、緑色の髪のショートヘアの子、ピンクに近い小豆色の髪のこれまたショートヘアの子の三人だ。ダイア、チルノとこの三人の子の出典は例のシリーズだ。
「コホン。静かにしろ。メイとMはすでにジムバッジを三つ以上持ってる実力者だ」
オオーと歓声が上がる。バッジ三つでもこんなに驚いてくれるんだね。
「そこで、私とメイでバトルをする。あとでどこが良かったか、もしくは悪かったか聞くからちゃんと見ているんだぞ」
「「「「「は~い」」」」」
私とケイネさんはフィールドの位置につく。
「よし、いけ! ボスゴドラ!」
『グオオオ!』
ケイネさんが繰り出してきたのは鎧で覆われた怪獣のような容姿をしたてつヨロイポケモン、ボスゴドラだ。
「リオ! Start the Struggle!」
『ふう、やりますか』
私は打ち合わせ通りリオを出す。実はどのようにバトルをするかある程度打ち合わせ済みなのだ。
「いくぞ! ボスゴドラ! もろはのずつき!」
『おおおおおらああああ!』
ボスゴドラは巨体に似合わないスピードで動き、必殺の頭突きをくらわせようとリオに迫る。
「リオ! 受け止めてカウンター!」
『ふっ』
リオは受け止める態勢をとりそしてボスゴドラの頭突きが来る。ものすごい衝撃を生み出した頭突きをリオは簡単に受け止める。そしてカウンターをボスゴドラに撃ち込む。しかしダメージはあまりなくボスゴドラは少し後退するだけにとどまる。
「リオ! はっけい!」
『はっ!』
リオはボスゴドラにはっけいを当てる。
『ぐうう!』
ボスゴドラははっけいをくらってのけぞる。そして追加効果のまひが発生したのかボスゴドラの体に一瞬電撃が走る。
「む、まあいい。ボスゴドラ! メタルバースト!」
『グオオオラアアアア!』
ボスゴドラから迸るメタルカラーの波動がリオに襲いかかる。
「リオ! みきり!」
『よっと』
しかしリオはみきりでその波動を避ける。
「ボスゴドラ! ばかぢから!」
『うらあああ!』
ボスゴドラはさっきより遅いスピードでリオに接近してくる。
「リオ! もういちどみきり!」
『…………』
ごめん、リオ。これも打ち合わせの通りなんだ。リオはもう一度みきりを発動させ、なんとかボスゴドラの攻撃を避ける。ふう、よかった。なんとか避けきれたみたいだ。これで打ち合わせ通り戦闘終了……。
「ボスゴドラ! ロックカットで距離をとれ! そしてまひなおしだ、受け取れ!」
なに!? ボスゴドラはリオから距離をとりながらロックカットですばやさを上げ、ケイネさんのまひなおしによってまひが治る。ケイネさんの方を見ると、クイクイっと指を挑発するように曲げ伸ばしする。へえ……! いいぜ。そうこなくっちゃな!
「いくよ! リオ!」
『! 合点!』
リオも私の意図に気付き俄然やる気を出す。
「ボスゴドラ! じしん!」
『グアアアアラアアアア!』
ボスゴドラは地面を鳴らし地を這うエネルギー波がリオに向かってくる。
「リオ! 高くジャンプして避けて!」
『はっ!』
リオは襲いかかるエネルギー波を高くジャンプして避ける。
「今だ! ボスゴドラ! ばかぢから!」
『うらあああ!』
ボスゴドラは先ほどとは比べ物にならないほど素早く接近してきてばかぢからをくらわせようと拳を突き出してくる。だがそう来ることは予想済みだ!
「リオ! 落下の勢いを利用してきあいパンチ!」
『はあああ!』
リオのきあいパンチとボスゴドラのばかぢからがぶつかり合い、周囲に衝撃波をまき散らす。リオは反動で吹き飛ぶが空中できれいに身を翻し着地する。
「ボスゴドラ! もう一度じしん!」
『グラアアアア!』
ボスゴドラは再び地面を鳴らしエネルギー波を発生させる。
「リオ! みきりでかわしてきあいだま!」
『ふっ!』
リオは迫りくるエネルギー波をみきりで避け、等身大の波導の球体を発射する。さすがに違う種類の技の同時使用はやらない。説明が面倒だしこれは私だけの必殺技だ。Mには知られているけど。……そういや今まで何度か人前で技の同時使用を使ったけど、詳細を聞かれたことはなかったな。なんでだろ? まあいいか、あとで考えよ。今はケイネさんとのバトルだ。
「ボスゴドラ! ヘビーボンバーで弾き飛ばせ!」
『はああらあああ!』
ボスゴドラは体を光らせて突進してリオのきあいだまを弾き飛ばす。マジか。う~ん、技で技を弾く技術も磨いたほうがいいのかな?
「リオ! 連続ではどうだん!」
『ふっ! はっ!』
今度は連射の効くはどうだんでボスゴドラを攻撃する。多数の波導でできた球体がボスゴドラに襲いかかる。
「くっ! 一か八か! ボスゴドラ! ヘビーボンバーで突っ切れ!」
『グアアアアアラアアアアア!』
ボスゴドラははどうだんの雨の中をはどうだんを弾きながら突っ切ってくる。うお!?マジかよ。だけど……!
「よし! ボスゴドラ! ばかぢから!」
『っしゃああああ!』
ボスゴドラはばかぢからを当てようと拳を突き出してくる。
「リオ! みきりで避けてきあいだま!」
しかしリオはボスゴドラの攻撃をみきりで避け、そしてきあいだまをボスゴドラに当てる。
『ぐあああああ!』
「ボスゴドラ!?」
リオの攻撃の後には目を回して倒れているボスゴドラと立って手を挙げて勝利をアピールするリオがいた。
ありがとうございました。