と言うだけの前書き。
……それではどうぞ。
「戻れ、バオッキー。お疲れさん。……まいったぜ……まさか、オレのバオッキーがやられるなんて」
ポッドさんは少しショックを受けているようだ。私もユウヒをモンスターボールに戻す。
「あー! くそっ! 悔しいぜ! こっちは本気だったんだがなあ。うん、オマエすげえな!」
ポッドさんは私に近づいてきて言う。デントさんとコーンさんも近づいてくる。
「ありがとうございます」
「おっと、そうだった。ポケモンリーグの決まりだ。このジムを勝ち抜いた証、トライバッジだ!」
そう言ってポッドさんはトライバッジを渡してくれる。
「っしゃあ! トライバッジ、ゲットだぜ!」
「やっぱり毎回言うんだね……」
Mが観客席から降りてきてやれやれといった風に言う。ポッドさんたちも何か微笑ましいものを見たような顔をしている。そんなに変?
「ジムバッジはトレーナーの強さの証です。それを手に入れたということを誇ってくださいね。あとこれももらってください」
デントさんはそう言ってわざマシンを渡してくれる。
「そのわざマシンの中身は“ふるいたてる”といいます。ふるいたてるを使えばこうげきととくこうが上がります!」
デントさんからわざマシンの説明を受ける。
「ありがとうございます。ではそろそろ失礼させていたただきます」
「そうか、じゃあな!」
「さようなら」
「またいつでも遊びにきてください。あと、当レストランも末長くよろしくお願いします」
デントさん、商魂たくましいな。宣伝を忘れない姿勢は商売人だ。そうしてジムから出てポケモンセンターに向かう。
「はあ、またレベルの高いポケモンを使われた……」
私はため息をついて言う。
「そうね。災難だったね」
くそっ、Mめ、他人事だと思って。って他人事か。
「これから先のジムもこうなっちゃうのかなあ……」
もしそうなるなら私の楽々リーグ計画が破綻してしまう……説明しよう! 楽々リーグ計画とは簡単にジムバッジを手に入れ、リーグに出場しポケモントレーナーとしての地位を確立する計画だ。
「それもみんなメイが強すぎるのが問題だね」
はあ、楽にジム戦を突破できると思っていたのに強さが逆にアダとなるとは。
「ええー、そんなあ。はあ、どうにかならないのかなあ……」
「ならもっと強くなればいいんじゃない?ジムリーダーが本気をだしても楽勝になるくらいに」
そう簡単に言うけどな。
「そんな領域にたどり着くまでどれくらいかかるか」
ジムリーダーが余裕になるくらいってどこまで行けばいいのやら。
「メイならすぐだと思うよ。毎日修業かかしてないし」
「すぐってどれくらいだよー。ぶー」
私は唇を尖らせる。
「すぐはすぐだよ。ほら、お得意の発想力で一気に強くなる方法を編み出せばいいじゃない」
Mって私のことを発想力があるといったけど私はむしろ発想力がない方だと思うんだけどなあ。戦法もワンパターンだし。
「そんな方法があるなら苦労はしないよ。ふう、結局は地道に鍛錬するしかないか」
あ~あ、ジムリーダーが皆アーティさんのような人だったらいいのに。
「そうね。まあ、人生なんてうまくいかないことのほうが多いし。頑張るしかないね」
はあ、Mの言う通りだな。ゆっくりと進んでいくか。
「ま、いいか! 時間はあるんだしじっくりいこう!」
焦っても仕方ないしね!
「ふふふ、それでこそメイだよ」
そうして会話しているとポケモンセンターについた。
「そろそろお昼だし、昼食を食べながら今後の方針について会議しまーす」
「は~い」
食堂に入り、料理を注文。そして料理を受け取り、昼食をとる。
「う~ん、この町でバッジがついに3つになったわけだけど、次のバッジを目指すとなるとライモンシティなんだよね」
「そうね。次のバッジはライモンジムになるね」
ちなみにライモンシティのジムリーダーはファッションモデルのカミツレさんだ。
「でも私には捕まえたいポケモンがいるんだよね」
それは美しさに定評のあるポケモンだ。
「そうなの? どんなポケモン?」
Mが訊いてくる。
「私が捕まえたいのはミロカロス」
「ああ、あの美しさで有名な。でもどこにいるかわかってるの?」
Mの疑問ももっともだが私には原作知識というものがある。そのおかげでミロカロスの生息地域も知っているのだ。
「うん、カラクサタウンとカノコタウンの間の1番道路の水場にいる可能性があるんだ」
ミロカロスは好きなポケモンだからどこにいるかも覚えている。まあ他のポケモンの場所は記憶が曖昧で覚えているものから忘れてしまったものまで様々だが。
「……なんでそんなこと知ってるの?」
Mは不思議そうにしている。
「ふっふっふ、それはひ・み・つ」
私は人差し指を立ててウインクしながら言う。
「ふ~ん。ま、いいけど」
Mはじと目で私を見つめる。
「そういうわけでライモンシティは一旦置いといて、カラクサタウンの方向に進んでカノコタウンまで行こうと思います! カノコタウンまで行くのはアララギ博士にあいさつしておくためです」
まあ、ついでだけど。
「アララギ博士? この地方で有名な? メイ、知り合いなの?」
Mもアララギ博士のことは知っているようだ。
「私が旅するきっかけをくれたのはアララギ博士なんだ。アララギ博士に声をかけられなかったら旅に出るのがもっと遅れていたからね」
具体的には二、三年くらいね。
「へえ、ならアララギ博士には感謝しないとね」
「ん? Mもなんかお世話になったことあるの?」
「そうね。アララギ博士がいたからこうしてメイと出会えた。だから感謝するというわけ」
あらら、うれしいこと言ってくれるね。
「そっか。私もMに出会えたこと感謝しないとね」
「ふふふ、お互い様というわけね」
Mはうれしそうに微笑む。
「あと、修業のために旅はゆっくり行くことにします」
「そう。わかった」
「じゃあ、こんなところかな。は~い、会議終~了~。さて、次は修業計画だね。みんな、出ておいで!」
私はリオたちを出す。ちなみにモンスターボールの中からでも外の様子がわかるらしい。どうやって見てるんだろ?
「はいは~い、みんな注目!これから話すのは今後の修業計画についてだよ。聞いておいてね」
『『『『は~い』』』』
うむ、皆いい返事だ。
「よし。まずはリオだけど今までと変わらずにレベル上げ、感覚を鈍らせないためにもカティたちとの組み手も忘れずにするよ。これはリオ以外の全員に言えることだからみんなもいいね?」
皆コクリと頷く。よし次はっと。
「あとそれだけじゃつまらないから、みんなには新技を覚えてもらおうと思う。リオはブレイズキック。カティはインファイト。ユウヒはきあいパンチ。イヴは……何がいい?」
イヴは正直いうと覚えられる技の種類が少ないからなぁ、有効な新たな技となるとどうしても難しくなってしまうんだよね。
『え? わたしに訊くの? わたしに訊かれてもわからないんだけど』
「ん~、じゃあ、ゴーストタイプの技と虫タイプの技どっちがいい? といってもいずれは両方覚えてもらうつもりなんだけどね」
ゴーストタイプの方はシャドーボール、これがあればイヴと同タイプの戦いを有利に進められる。虫タイプの方はシグナルビーム、イヴが苦手な悪タイプと戦うときに有効な技となる。
『それなら別にどっちが先でもいいんじゃない?』
イヴはどうでもよさそうに返事をする。それもそうか。
「あと、だいぶ先だけどそれが終わったらイヴにも種類の違う技の同時使用に挑戦してもらうから」
『え? それならできるよ?』
What? 今何て言った?
「え~と。よく聞こえなかったな~。い、今何て言った?」
あれ~おかしいなあ。
『だから、二つの技の同時使用はもうできるっていってるの』
「マジで?」
『マジで』
「じゃ、じゃあ、サイコキネシスで自分を操って相手の攻撃を避けながらめいそう、なんてこともできちゃうの?」
『なぜそのチョイス? まあいいけど、確かにできるよ』
いったいいつの間に練習してたんだろう。
「おお! なら地上だけでなく空中も戦いのフィールドにできるわけだな! これは戦略の幅が広がるぞ。イヴ~、もう! どうして言ってくれなかったの?」
私はイヴに抱きつこうとするがいきなりだったためかスルリと避けられてしまった。……嫌われてないよね……?
『おっと、いきなり抱きついてこないでよ。びっくりするじゃない。まあ、言わなかったのは訊かれなかったから……ってそんなに気を落とさないでよ。別にメイのことを嫌っているわけじゃないからさ』
しゅんとしているとイヴが慰めてくれた。よかった。もし嫌われていたら私、泣いてたかも。
「そう、よかった。ま、とりあえず組み手の時も同時使用を意識してね。あ、イヴが覚える技はシャドーボールとシグナルビームね」
『わかった』
イヴが返事をする。
「ふう、こんなところだね。それじゃあ今日は英気を養う意味でお休みということで。みんな戻って」
そう言って私はみんなをモンスターボールに戻す。
「じゃあ、明日はカラクサタウンに向かって出発するから、そのために準備をして休むとしよう」
「そうね。そうしましょう」
そうしてこの日はポケモンセンターでゆっくりと休んだ。
ありがとうございました。