ポケットモンスター鳴   作:史縞慧深

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今回、バトルがありますがあっさり終わります。
展開が思いつかなかったとも言う。
それではどうぞ。


24話 古代のロマンと一撃必殺

 次の日になって、私とMはサトリとコイシを見送り、そしてジムのあるシッポウ博物館の前まで来た。

 

「ここがジムのあるシッポウ博物館……」

 

 さすがはイッシュ地方最大と言われている博物館、でかいな。高さ的には二階建てだろうか。横にも広くその外観は宮殿に見えなくもない。さっそく入るとしよう。博物館の中に入る。

 

「ようこそ! シッポウ博物館へ!」

 

 入館料の代わりにトレーナーカードを提示する。

 

「トレーナーの方でしたか、ポケモンジムは博物館の奥から行けますよ」

 

 受付の女性からそう言われたのでお礼を返しておく。そうして博物館の中を進んでいく。博物館は中央エリア、東エリア、西エリアに分かれており、中央エリアは吹き抜けになっている。中央エリアの中心には、確かカイリューだったかな? の化石が展示されている。するとその化石の前でなにやらぶつぶつ言っている人がいる。

 

「うーむ! この骨格はいつみても……ホレボレしますな」

 

 うわ、この人マニアだ。絶対そうだ。この人のことを見ているとこちらに気づいて話しかけてくる。

 

「! どうも、わたくし副館長のキダチです。せっかくいらしたのです、館内を案内しましょう」

「え? いや私たちは……」

 

 ジム戦に来たのであって博物館の見学にきたのではないのだが。

 

「まあまあ、そう遠慮せずに。まずはこちらの骨格ですが……」

 

 キダチさんは私の言うことを聞かずに説明を始める。

 

「話を聞かない人」

 

 Mがふう、と息を吐いて言う。まあ急いでいるわけじゃないしいいか。キダチさんの説明が続く。

 

「ドラゴンタイプのポケモンですね。おそらく世界各地を飛び回っているうちになんらかの事故にあってそのまま化石になったようです」

 

 どんな事故にあったらこんなにきれいに骨格が残ったまま化石になるんだろう。不思議だな。次に何の変哲もない石に見えるものの前に来る。

 

「この石はすごいですよ、隕石でなんですよ! なにかしらの宇宙エネルギーを秘めています」

 

 なにかしらの宇宙エネルギーってなんだよ。随分と曖昧だなおい。そんな説明で大丈夫か?

 

「なにかしらの宇宙エネルギーって……」

 

 ほら見ろ。Mだって呆れているじゃないか。しかし、そんな様子の私たちを気にすることもなく、キダチさんの案内は続く。次にこれまたただのきれいな石に見えるものの前に来る。

 

「ああ、こちらはただの古い石です。砂漠あたりで見つかったのですが、古いこと以外には全く価値が無さそうなものでして……。ただとてもきれいですので展示しております」

 

 そんなんでいいのか? と言いたいところだがこれは後々重要なんだよね。これは色からしてライトストーンだな。このライトストーンはイッシュ建国の話に出てくる伝説のドラゴンポケモンの一体、レシラムなのだ。話によれば英雄に選ばれしものの前にのみ真の姿を現すという。まあ、その資格は私にはないと思うけど。理想だか真実だか知らないが、誰かのために戦うなんて私にはとてもできそうにない。自分の身の回りを守るだけで精一杯だ。英雄候補はほかにいることだし世界の命運をかけた戦いなんてのはその英雄さんに任せる。

 

「ああ、他にも説明したいものがたくさんあるのですが、どうやら時間のようです。それではわたくしはこれで失礼させていただきます」

 

 そういってキダチさんは去って行った。

 

「なんていうか、あわただしい人だったね」

「そうね。で、どうするの? 今すぐジムにいくの?」

「そうだね。う~ん、時間もあるし少しこの博物館を見てから行こうかな」

「そう。じゃ一緒に回ろうか」

 

 そうしてしばらくMと一緒に博物館を回った。展示品の前にある説明には詳しい考察なんかが書かれていて歴史の勉強になる。そんなこともあり、回ってみると結構面白かった。古代のロマンってやつだな。

 

「ふう、一通り回り終わったかな」

「そうね。だいたい見終わったかな」

「そういえば、Mは一度ここに来たことあるんじゃないの?」

「前に来たときは博物館を見なかったから。意外と面白いものね」

 

 Mも楽しんでいたようだ。それは良かった。

 

「うーん、そろそろジム戦といこうかな」

 

 私はググッと伸びをしながら言う。

 

「そう。なら、こっち。ついてきて」

「いやあ、ここまでくるのに何でか知らないけど――」

「長く感じた?」

「なぜわかったし」

「いや、なんとなく?」

 

 そうしてMに案内されて中央エリアの奥にある階段を上り、その奥にある部屋に入る。するとそこにはゲームと同じように図書館が広がっていた。ああ、そういえばこんなのだったな。このジムの仕掛けの肝である謎解きはパパッと解いて仕掛けを作動させる。謎解きは簡単なので特に苦労することもなかった。そして図書館の奥に下へと続く階段が現れた。その前に注意書きのようなものがあり、そこには、“この先ポケモンジム。挑戦者の方はこちらへ”と書かれていた。これはご丁寧にどうも。

 

「こっち。この階段を下りた先がジム」

 

 Mの案内に従い階段を下りてく。そして階段を降りた先の扉の向こう側には、緑色の髪のドレッドヘアに褐色の肌、そしてピンクのエプロン姿のシッポウシティジムリーダー、アロエさんが執務机に向かっていた。

 

「? おや、お嬢ちゃんたち、あたしに何か用かい?」

 

 アロエさんが執務机から顔をあげて聞いてくる。

 

「あの、私、ジムに挑戦しに来たんだすけど」

「なんだ、挑戦者かい。そういえばそっちのお嬢ちゃんは一度みたことがあるねえ。たしかMっていったっけ? 強かったから覚えているよ」

 

 そういってアロエさんがMのほうを見る。

 

「ありがと」

 

 Mはアロエさんにお礼を言う。アロエさんは机から立ち上がってこちらに来る。

 

「さて、じゃあ初めてのお譲ちゃんのために自己紹介するとするかい。シッポウ博物館の館長にしてシッポウジムのジムリーダー、それがこのあたし、アロエだよ」

 

 アロエさんが自己紹介をする。

 

「はじめまして、私はヒオウギシティのメイです」

 

 こちらもそれに応える。

 

「メイか、いい名前だね。それでジムへの挑戦だったね。今、準備をするから、少し待ってな。ああ、それとアンタ、バッジは何個持ってるんだい?」

「バッジは一個です」

「そうかい、わかったよ」

 

 そういってアロエさんは館内連絡用の電話で誰かを呼びだしている。

 

「よし、じゃあついてきな。バトルフィールドに案内するよ」

 

 アロエさんに連れられて、バトルフィールドに来た。バトルフィールドはオーソドックスな地面だ。私とアロエさんは互いにフィールドの反対側に立つ。Mは前と同じようにフィールドの側にある観客席に座っている。するとバトルフィールドに人が入ってきて審判の立つ位置にくる。どうやらさっき呼んでいたのは審判の人らしい。

 

「さあて、挑戦者さん。愛情込めて育てたポケモンでどんな戦い方をするのか研究させてもらうよ!」

 

 おお、力強いお言葉。さすがジムリーダー。審判からルールの説明が告げられる。

 

「これよりジムリーダー、アロエ対チャレンジャー、メイのバトルを開始する。使用ポケモンはお互いに2体。ポケモンの交代はチャレンジャーのみ。相手のポケモンを全て戦闘不能にした方の勝利とする。それでは……バトル開始!」

 

 審判よりバトル開始の合図がなされる。

 

「いくよ! 出てきな! ハーデリア!」

『いよっしゃあ!』

 

 アロエさんが出してきたのは少し前に見たことのあるハーデリアだ。

 

「リオ! Start the Struggle!」

『ふっ』

 

 それに対しこちらは相性のいいリオを出す。

 

『がおおおおん!!!』

 

 するとハーデリアが激しく威嚇する。威嚇? ああ、そうか、そういやハーデリアの特性にいかくがあったな。ということはリオのこうげきが一段階下がったということか。まあいい、たぶんレベル差がかなりあるだろうし大丈夫だろう。それにリオはもともとこうげき、とくこうともに高いステータスでそろっているから片方下がったところで問題はない。

 

「いくよ! ハーデリア! にらみつける!」

『ウウウ!』

 

 ハーデリアの鋭い視線がリオを射抜く。ぼうぎょも一段階下げられたか。しかし問題ない。許容範囲だ。

 

「リオ! はどうだん!」

『はっ!』

 

 リオがハーデリアに向かってはどうだんを放つ。

 

「よけろ! ハーデリア!」

『うあああ!』

 

 しかしはどうだんをよけることはかなわず、ハーデリアははどうだんを受けて、目を回して倒れてしまう。

 

「ハーデリア、戦闘不能」

 

 審判から戦闘不能の宣言がなされる。

 

「ハーデリア!? まいったねえ。まさか一撃とは。よく育てられているよ。これはちょっと予定変更かね。戻っておくれ、ハーデリア」

 

 アロエさんはハーデリアをモンスターボールに戻しながら、よく育てられていると褒めてくれたがそのあとに言っていたことがよく聞こえなかった。しかし、笑っているのをみると何か嫌な予感がする。

 

「次はこいつだよ! いきな! ミルホッグ!」

『しっしっしっ!』

 

 アロエさんが出してきたのは昔プラズマ団が使っていたのを見たことがあるミルホッグだ。

 

「こっちからいくよ! ミルホッグ! かたきうち!」

『ひゅおっ!』

 

 ミルホッグは全身に白いオーラを発しながら突撃してくる。

 

「リオ! 攻撃を受け止めてカウンター!」

『おっけー!』

 

 リオは突撃してくるミルホッグを受け止めようと構える。

 

『ぐううううう!』

 

 リオはミルホッグの攻撃を大きく後ずさりながらもなんとか受け止めきる。

 

「いっけえええええ! カウンター!!」

『はああああああ!!』

 

 リオのカウンターがミルホッグを襲う。

 

『ぐおわっ!』

 

 リオの拳を受けたミルホッグはフィールドの端っこまで吹き飛ぶ。するとそこには目を回して倒れているミルホッグの姿があった。

 

「こいつはたまげた!」

 

 アロエさんはミルホッグが一撃で倒れたことに驚いている様子。おかしい、おかしいぞ、これは。2番目のジムのレベルを考えると受けたダメージの二倍のダメージを与えるカウンターの威力が高すぎる。これはリオがカウンターでミルホッグを一撃で倒せるほどのダメージを受けたことになる。それはすなわちそれほどミルホッグの攻撃力が高かったということ。リオとの相性も考えるとミルホッグのレベルが相当高かったと考えられる。にらみつけるの影響を考えてもだ。

 

「アロエさん、ひとつ聞きたいんですけど」

 

 私とアロエさんはお互いのポケモンをモンスターボールに戻す。

 

「ん? なんだい?」

「アロエさん、もしかしてあのミルホッグ、バッジ一個の挑戦者に出すポケモンにしてはレベルが高すぎるんじゃないですか?」

 

 私の予想あたっているか……?

 

「ありゃ、気づいちまったかい。でもどうしてわかったんだい?」

 

 アロエさんがニヤリとしながら聞いてくる。これは試しているな。

 

「簡単なことです。カウンターですよ。カウンターは受けたダメージに応じてダメージを相手に与える技です。それで一撃で倒せたということはそれほどミルホッグから受けたダメージが大きかったということです。リオとミルホッグのタイプ相性を考えるとミルホッグのレベルが相当高くないとこのダメージは出ません。バッジの個数によって出すポケモンのレベルを決めているのはアーティさんから聞きました。そして、うちのリオのレベルはバッジの個数にしては高いことは分かっているので、それに対抗できていたミルホッグはバッジ一個の人に対するポケモンにしてレベルは高すぎると判断しました。こんなところでしょうか?」

 

 私はドヤァという擬音が付きそうな顔で説明する。これで間違ってたら恥ずかしい。

 

「いい洞察力だ。いいトレーナーになるよあんたは」

 

 よかった。どうやらこの説明で合っていたようだ。

 

「ありがとうございます」

「それにしても悪かったね。久しぶりに強い挑戦者だったもんだからつい強いやつを出しちまった」

「勝てたからよかったものの、もし私があのミルホッグに負けていたらどうするつもりだったんですか?」

「もしそうなったとしても、ミルホッグ相手に善戦していたらバッジはあげていたよ。いやあ、まさか負けるとはね。たいしたもんだよ、アンタ。惚れちゃうじゃないか!」

 

 アロエさんがいい笑顔で言う。

 

「はあ、もういいです。無事に勝てたのでそれでよしとします」

「ほんとに悪かったよ。すまないね。そう拗ねないでおくれ。ほら、これがこのジムを勝ち抜いた証ベーシックバッジだよ!」

 

 そういってアロエさんはベーシックバッジを渡してくれる。

 

「よし、ベーシックバッジ、ゲットだぜ!」

 

 私はポーズを決めて言う。

 

「それ、毎回言うの?」

 

 Mが近づいてきて、私の言動に疑問に思って言ってくる。

 

「いやあ、なんだか言わないとだめな気がして」

 

 私はてへへと笑って返事をする。

 

「あと、このわざマシンも持っていくといいさ!」

 

 アロエさんはそういってわざマシンを渡してくれる。

 

「わざマシンの中身は“かたきうち”。かたきうちは直前に味方のポケモンが倒れていたら威力が上がる技! 使いどころを究めれば強敵も倒せるんだよ!」

「ありがとうございます。貴重なわざマシンを」

「いいよいいよ、お礼なんて。うまく使ってくれるとあたしもうれしいしね」

 

 この世界でもジムリーダーに勝つとわざマシンをもらえるんだな。どうやらアーティさんのときや今回がたまたまということはなさそうだ。

 

「それではリオを回復させてあげたいので私たちはこれで」

「ああ、また遊びに来てくれていいからね!」

 

 アロエさんに別れを告げる。そしてジムから戻る途中の階段にて。

 

「災難だったね。レベルの高いポケモンを使われるなんて」

 

 Mがそう言う。

 

「まったくほんとだよ。勝てたからよかったけど」

 

 かたきうちの威力を見たときは一瞬焦ったぜ。

 

「今思えば私のときも妙にミルホッグが強かったかも」

「え、Mも?」

「まあ、勝ったんだけど」

「うーん、そっか。まあ勝てたからよし!」

「ふふ、メイって能天気だね」

「えー何それ、貶してるの!?」

「褒めてるんだよ」

 

 そんな会話をしながら私とMはポケモンセンターに戻り、少し遅めの昼ごはんを食べた。

 




ありがとうございました。

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