ポケットモンスター鳴   作:史縞慧深

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今回はちょっと長めです。
それではどうぞ。


21話 大会と初マルチバトル

「えっと、場所は、確か一昨日いったバトルクラブだね」

 

 現在、私とMは集合場所であるバトルクラブに向かって歩いている。

 

「確かここのバトルクラブには小さいけれどスタジアムがあったはず。たぶんバトルはそこでするんじゃないかな」

「へえそうなんだ」

 

 そうして会話しているとバトルクラブに着く。

 

「ふう、着いた着いた。えっと確か会議室に集合だったね。会議室はっと、こっちだね」

 

 Mと二人で会議室に向かう。

 

「どんな人がいるんだろうね」

「楽しみ」

 

 そして会議室に着く。集合時間にはまだかなり余裕があったはずだが、周りを見てみるとポケモンを出して最終チェックしている人や話し合っている人達がいた。他にも一昨日バトルクラブにいたゲームのキャラクターにそっくりなあの二人もいた。やはり大会参加者だったか。しばらくMと一緒にリオとコジョンドの最終チェックをしていると、さらに人が来て合計16人の人がこの部屋に集まった。これで全員なら戦うのは3回だな。しばらくすると係員が来て説明が開始される。

 

「参加者の皆様。今日はお集まりいただきありがとうございます。ではさっそく説明させていただきます。今大会はマルチバトルの大会になります。ですので、事前に申請したタッグでポケモンバトルをしてもらいます。使用できるポケモンは全バトルを通じて事前に申請したポケモン一体のみです。ポケモンに道具を持たせるのは禁止。ポケモンに道具を使うのも禁止です。今大会のルールは以上です。では、みなさんにはこれから控室に移動してもらいます。こちらへきてください」

 

 そう言われて私たち参加者はスタジアムの控室に案内される。

 

「時間がきたらお呼びしますのでしばらくここでお待ちください」

 

 ここで待て、か。う~ん、説明とか簡単だったしそれほど大きな大会ではなくちょっとしたものなのかも。 まあそれでも手を抜く理由にはならないけどね。しばらく待っていると、

 

「お待たせしました。これより開会式を始めますのでみなさん私についてきてください」

 

 そう言って係員は私たちを先導してスタジアムの中に入る。スタジアムの中に入ると周囲が観客席になっており、そこにはすでに観戦態勢を整えた観客が満員になっていた。私たち選手が会場に入ると観客がワァーッと歓声が起こる。おうおうこんな小さな大会でも結構盛り上がるもんだね。

 

「へえ意外と人がいっぱい」

 

 Mもこの人数には驚いているようだ。私たち選手が横一列に並ぶと、この大会の主催者である人物が登壇し開会のあいさつを始める。

 

「ええー。本日は選手のみなさん、観客のみなさん、お集まりいただきありがとうございます。この大会がみなさんにとって良いものとなるよう心より願っています。さて長々と話をするのもあれなのでこれでおしまいにします。では、ゴホン、これよりベストパートナーズは誰だ!? ちっちゃい大会だけど気にするな! 大会を開催します!」

 

 観客からウワアアァと歓声が起こる。ていうかそんな名前だったんだなこの大会。二回大会って言ってるしなんかダサい。まあ、いいか。優勝したらなにかもらえるのかな。賞品狙いで戦うわけではないけども。スタジアムの巨大モニターにトーナメント表が映された。私たちは第一試合か。そうして考えていると係員が来て、

 

「メイ様、M様ですね。一回戦第一試合はあなたたちです。こちらに来て準備をしてください」

 

 係員の言う通りバトルフィールドのトレーナーのが指示をだす位置につく。辺りを見渡すとほかの選手たちは控室に戻ったのか見当たらない。そして私とMの反対側のトレーナーの位置には対戦相手がいた。ふ~ん、男女のペアか。ん? なんか雰囲気があれだな。それに互いの位置が近い。こりゃカップルだな。ちっ、リア充め、爆発しろ!

 

「どうやら相手はカップルみたいだね」

「そのようね。なんかちょっといちゃいちゃしてるみたいだし。……やっちゃおっか」

 

 Mもあのカップルにはイライラしているみたいだ。

 

「そうだね。やっちゃおう」

 

 私とMはあのカップルを叩き潰すことを決め、相手のほうを向く。すると大会のMCの声が聞こえてくる。

 

 “さあ、みなさん! ついに始まります今大会。応援の態勢は十分か!? 早速行きます一回戦第一試合はアツアツカップルのコージとユリ対美少女コンビのメイとMだァーッ!”

 

 そんな実況の進行に観客が歓声を上げる。観客席のほうからは私達に対する応援の声も聞こえてくる。お望み通りやってやるぜ。

 

「リオ! Start the Struggle!」

『出番だね』

「出てきて、コジョンド!」

『いくわよ』

 

 私とMはお互いのパートナーを出す。

 

 “さあ! 最初に出てきたのはメイ選手のルカリオとM選手のコジョンドだァーッ!”

 

「いってこい! ミネズミ!」

『ミイイ!』

「よろしく! ヨーテリー!」

『キャン!』

 

 向こうもポケモンを出してくる。出てきたポケモンは目が特徴的なみはりポケモン、ミネズミと犬に似たこいぬポケモン、ヨーテリーだ。これは……もしかすると……。

 

 “一方、コージ選手はミネズミ、ユリ選手はヨーテリーだ! これはメイ選手、M選手が少し有利か!”

 

 少しどころじゃない。かなり有利だ。レベル差もありそうだしこりゃ楽勝だね。

 

「これより一回戦第一試合、コージ、ユリペア対メイ、Mペアのバトルを始めます! それでは! 試合開始!」

 

 審判より試合開始の合図がなされる。

 

 “さあ! 始まりました一回戦第一試合! まず動き出すのは……”

 

「ミネズミ! 青い方にかみつく!」

『おらー!』

「ヨーテリー! 白い方にたいあたり!」

『わあああ!』

 

 名前、知らないのね。青い方とか白い方とか言ってるし。いや違うか、ポケモンにわかりやすいように言ってるだけか? ミネズミとヨーテリーがそれぞれリオとコジョンドに向かってくる。

 

 “ミネズミとヨーテリーだァーッ!!!”

 

「リオ! 向かってくる方にはどうだん!」

「コジョンド! あなたも同じようにはどうだん!」

『はあっ!』

『はっ!』

 

 向かってくるミネズミとヨーテリーにリオとコジョンドのはどうだんが当たる。

 

『ミイイ!』

『キャン!』

 

 “おおっと! ルカリオとコジョンドのはどうだんが炸裂ゥー! ミネズミとヨーテリーはどうなったァ!?”

 

 はどうだんが当たったミネズミとヨーテリーは目を回して倒れている。

 

「み、ミネズミ、ヨーテリーともに戦闘不能! よって勝者メイ、Mペア!」

 

 ワァーッと歓声が上がる。

 

 “なんとなんと! ルカリオとコジョンドが一撃で決めたー! これは強い! いきなり優勝候補が現れたぞ! コージ選手とユリ選手は運がなかったか!? とにかく第一試合はメイ選手とM選手の勝利だァーッ!”

 

「う~ん、これは……なんて言えばいいか」

「これはレベルが低い大会かもね」

「はっきり言うねM。まあ、私もそう思ったけど」

 

 Mの言うとおりこの大会は地方の小さな大会だけあってレベルが低いのかもしれない。……なんか場違いな気がしてきた。まあそれでも手を抜くことはしないが。考え事をしていると係員の人が来て再び控室で待つように言われる。控室に行く途中、リオたちを係員が回復させる。控室に来ると他の人が代わりに連れて行かれた。次の試合の人だろう。ん? 周りの人たちがこちらを見ている。なんだよ、そんなに見つめるなよ照れるじゃないか。するとあのゲームのキャラクターにそっくりな少女二人が話しかけてきた。

 

「こんにちは。さっきの試合、見させてもらいました」

 

 控室にはモニターがありそこから試合を見ることができる。

 

「うんうん。二人とも強いんだねー!」

「そう? ありがとう」

「どうも」

 

 Mも少し表情が柔らかくなっているので口ではああ言っているが満更ではなさそう。

 

「ですが、この大会、優勝するのは私たちです」

「そうだよー! わたしとお姉ちゃんのコンビネーションであなたたちをやっつけるよ!」

「う~ん、私たちが戦う可能性があるのは決勝戦でだよ? それまでにどちらかが負けたらこの会話は意味がないんじゃない?」

 

 確かこの子たちとはトーナメント表ではちょうど対極に位置していたはず。

 

「大丈夫です。私たちは負けませんから。もし負けるとしたらあなたたちのほうでは?」

「へえ、言うじゃない。いいよ。その挑戦受けて立とうじゃない。いいよね? M」

「そうね。ここまで言われて引き下がるわけにはいかないし」

 

 Mもやる気を見せている。当然私もだ。

 

「そうこなくては、おもしろくありません」

「ふふふ、決勝戦、楽しみにしてるよん!」

 

 そう言って二人は控室の空いているスペースに戻っていった。

 

「あの二人、どれくらい強いんだろうね」

「あの自信がハッタリじゃなければいいけどね」

 

 そうだね。まあそれはあの子たちの試合を見てみればわかる。そうして現在進行中の一回戦第二試合を見つめる。ああ、やはり他の人たちはあのカップルほどではないが皆レベルが低めだ。そうして試合を見ながら控室で出番を待つ。すると、さっきの二人の出番になった。さてどうなるか……。

 

 “さあやってまいりました! 一回戦最後の試合! 相対するは、ユウキ選手、ケンジ選手のレンジャータッグと双子姉妹での参戦、サトリ選手、コイシ選手だァーッ!”

 

 実況の声が聞こえてくる。おいおい名前までゲームのキャラクターと一緒かよ。もうこれは本人といってもいいんじゃないかな? まあゲームのキャラクターは妖怪なんだが、あの子たちは人間だろう……たぶん。ちなみに薄紫のボブの髪の丁寧な口調のほうがサトリ、薄く緑がかった癖のある灰色のセミロングの髪の元気いっぱいなほうがコイシだ。それより試合だ試合。あの子たちの戦いぶりを見ないと。

 

「いけ! マラカッチ!」

『ぽー』

「いくぞ! ロゼリア!」

『ふふん』

 

 レンジャータッグのほうがポケモンを出す。楕円が連なったような姿のサボテンポケモン、マラカッチと両手の薔薇が特徴的ないばらポケモン、ロゼリアだ。ふうん、ま、そこそこだな。

 

 “レンジャーたちが出してきたのはマラカッチとロゼリアだ! それに対しサトリ選手とコイシ選手が出すのは……”

 

「出てきなさい! ゴチルゼル!」

『いきます!』

「いっけぇー! ランクルス!」

『あははは!』

 

 サトリが出したのは黒いワンピースを着たような姿をしたてんたいポケモン、ゴチルゼル。コイシが出したのは赤ちゃんが緑色のスライム状の物体まとったような姿のぞうふくポケモン、ランクルス。どちらもエスパータイプのポケモンだ。これは戦うことになったら少しキツイな。こっちのメイン技の威力が半減させられる。それにコジョンドとは相性が悪い。そうして考えながら試合を見つめる。

 

 “ゴチルゼルとランクルスだァーッ! さあ、注目の試合が今始まるぞ!”

 

 審判により試合開始の合図が出され、指示がとぶ。

 

「ロゼリア! マジカルリーフ!」

『ふうあ!』

「マラカッチ! ミサイルばり!」

『いよっと!』

 

 ロゼリアから虹色の葉の嵐が放出され、マラカッチからは白い円錐状の物体が多数発射される。そしてそれぞれの攻撃が混じり合い、威力と範囲を増してゴチルゼルとランクルスに襲いかかる。

 

 “ロゼリアとマラカッチの合体技だァーッ! これは強力ゥー!”

 

「ゴチルゼル!」

「ランクルス!」

「「ダブルサイコキネシス!」」

『『はあっ!』』

 

 ゴチルゼルとランクルスは手をつなぎ、そして目を青く光らせる。すると、襲いかかるマジカルリーフとミサイルばりの合体技が動きを止めそして方向を反転させてロゼリアとマラカッチに向かう。おそらくサイコキネシスで発射された攻撃技を操ったのだろう。

 

 “おおっと! ゴチルゼルとランクルス! 強力な攻撃をはね返したぞ! これはすごい!”

 

「なんだと! よ、避けろ!」

「なにい! が、ガードだ!」

 

 レンジャータッグがそれぞれの指示をだすが、ロゼリアは避けきることができず、ガードしたマラカッチも両方ダメージを受けてしまう。

 

『きゃああ!』

『おわああ!』

 

 “これは大ダメージだ! ロゼリアとマラカッチは大丈夫かァー!”

 

 ロゼリアとマラカッチはダメージを受けてひるんでしまっている。そこを見逃す手はなかった。

 

「ゴチルゼル!」

「ランクルス!」

「「ダブルサイコキネシス!!」」

 

 こんどはゴチルゼルとランクルスは攻撃ではなく直接ロゼリアとマラカッチを操り、二匹で拍手するようにたたきつける。するとロゼリアとマラカッチが目を回して倒れる。

 

 “これは決まったァーッ! 強いぞ! ゴチルゼル! ランクルス! 協力技で相手を圧倒!  勝者はサトリ選手、コイシ選手ゥー!”

 

 審判からも勝者が告げられ、勝負が終わる。

 

「ふう、ねえM」

「そうね。強いね、あの子たち」

 

 Mも感じたようだ。あの子たちは強いと。

 

「うん、相手にとって不足はないね」

 

 これは楽しみになってきたな。さあ一体どう攻略しようか。そうして考えていると、例の二人、サトリとコイシが控室に戻ってきた。二人はこちらをチラリとみて笑みを浮かべる。さっきの戦いぶりを見ればこの笑みもわかる。いいだろう、やってやんよ。決勝戦、覚悟しておけよ。

 おっとその前に準決勝があったな。まずはそちらか。しばらく待っていると係員がきて私とMが呼ばれる。準決勝だな。そうして再度スタジアムに入りバトルが開始される。準決勝も特に何の問題もなく突破し、いよいよ決勝戦を待つのみとなった。決勝戦の相手はもちろんサトリ、コイシペアだ。彼女らはこの大会において、他の選手と比べて頭一つ抜きんでていたから決勝のこったのも当然と言えるだろう。はてさていったいどうなることやら。

 




ありがとうございました。

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