それではどうぞ。
100年ほど前の倉庫が再利用され活気づく街、とタウンマップに書かれている街、シッポウシティ。確かに周囲を見てみると倉庫のような建物が多く見受けられる。
「ふう~、ようやく着いたあ!」
「お疲れ様、メイ」
「Mもね。森と道路ではあれほど探索のしやすさが違うとはね。おかげでここに着くまで2週間もかかっちゃった。もう森はしばらく入りたくないな」
ビリジオンに会えてなかったら、それはもう寂しい寂しい探索になっていただろう。
「そうね。私も森は勘弁してほしいかも。あ、ちょうど昼頃だしどこかで昼食とらない?」
「そうだね。そういえばこの街には“ソーコ”っていう有名なカフェがあったはず。せっかくだしそこにしない?」
「賛成。でも、ソーコって名前ちょっと安直すぎない?」
「それは言わないでおこうよ。たぶんいろいろ考えた末にたどり着いた結論だろうから」
そうして話しながら街の中を歩いて移動する。しばらく歩いていると、看板が見えてくる。その看板にはカフェソーコと書かれていた。
「どうやらこの先みたい」
「そのようね。さ、いこう?」
そうしてカフェソーコの中に入る。チリン、チリンとドアにつけられていた鈴がきれいな音を響かせる。なかはクラシックのような音楽をBGMに、落ち着いた雰囲気で、もともと倉庫だったころの面影を残している店だった。
「いらっしゃいませ~。何名様ですか?」
「二人です」
「二名様ですね。ではこちらへどうぞ」
ウェイトレスさんが席に案内してくれる。席に着くとメニューを渡される。
「ご注文がお決まりになりましたらお手元のベルを鳴らして店員をお呼びください」
ウェイトレスさんが去っていく。メニューを見ながら何を食べるか考える。
「う~ん、Mは何にする?」
メニューはナポリタン、カレーライス、オムライスなどのほかにチョコレートパフェ、ケーキなどの定番メニューで固められていた。さらにポケモン用のメニューもあった。
「そうね、どうしようかな」
こんなにいっぱいメニューがあると悩むなあ。オススメでも聞いてみるか。
「Mは決まった?」
「うん、決まった」
「じゃあ、呼ぶね」
そういって呼び鈴を鳴らしウェイトレスさんを呼ぶ。
「ご注文はお決まりですか?」
「あの、このお店のオススメはなんですか?」
「オススメですか? それならカレーライスがオススメです」
「じゃあ、それで」
「私はホットケーキで」
「あと特製ポケモンフーズを4人前」
「追加で特製ポケモンフーズ6人前」
「かしこまりました。カレーライス、ホットケーキ、特製ポケモンフーズ10人前ですね。料理ができるまで少々お待ちください」
Mはホットケーキか。あとでわけてもらおっと。注文をしてしばらくたつと料理が運ばれてきた。
「おまたせしました。カレーライスにホットケーキ、特製ポケモンフーズ10人前です!」
「お、きたきた。よしみんな出てきて!」
私はポケモン達を出す。
「みんな、ご飯だよ。一緒に食べよ」
そう言っているとMもポケモンを出す。あれ? ラティアスとラティオスの姿が見えない。二匹だけ出さないつもりか? そう思って私が怪訝そうな表情をすると、Mから説明があった。
「ラティアスとラティオスならそばにいるよ。ただ姿を隠しているだけ。二匹とも珍しいポケモンだから姿を現すと騒ぎになりかねないから」
「そういうこと。納得」
そういやラティアスとラティオスは姿を消すことができる能力があったね。
「ではでは、いただきます」
「いただきます」
カレーを一口。さわやかな辛味と濃厚な旨味が口の中に広がる。うん、うまいな。オススメなだけはある。Mのほうを見てみると幸せそうに顔を蕩けさせ、ホットケーキをほおばっている。……うまそうに食べるな。ホットケーキが好きなのかな?
「……おいしそうだねM」
「ふぇ? うん、おいしいよ? 食べる?」
なんかここまでおいしそうに食べているとこっちまでほしくなってくるな。
「いいの? じゃあ一口もらおうかな」
「じゃあ、はい、あ~ん」
そういってMはホットケーキを一切れ差し出してくる。なんと! 生あ~んだと! これを体験できるとはな。Mよ、ありがとう。
「あ~ん、んむ、……うん、おいしい。ありがとM。じゃあ、こっちのカレーも食べてみる?」
「うん」
「じゃあ、はい、あ~ん」
そういってカレーを一口差し出す。それをMはあ~ん、と口に含む。
「うん。おいしい。でもやっぱり甘いホットケーキがいいな」
Mはホットケーキを食べるのに戻る。私も食べかけのカレーを食べる。ポケモンたちのほうを見てみると、おいしそうに特製ポケモンフーズを食べていた。おいしいかどうか聞いてみるといつも食べているのよりもおいしいそうだ。たまにはうまいものを食べないとね。そうして昼食を食べ終わり、駄弁っているとウェイトレスさんが話しかけてくる。
「ねえねえ、あなたたちポケモントレーナーだったりする?」
「そうですけど」
「じゃあじゃあ、明後日に開かれる大会にでたりするの?」
「大会?」
私とMはそろって首を傾げる。
「あら、知らないの? 明後日にポケモンバトルの大会が開かれるの。それもなんかマルチバトルっていう形式で二人のトレーナーがタッグを組んで一体ずつポケモンをだして相手のタッグと戦うんだって」
「へえ、マルチバトルの大会か、おもしろそう、ねえM一緒に出てみない?」
「え? う~ん、いいよ」
マルチバトルの大会か、これはMとの連携が重要になるぞ。
「うんうん、やっぱりトレーナーなら大会に参加しないとね。お姉さん、応援するわよ。あと大会にでるには事務所に申請しなければならないのだけど、締切が今日までだから大会にでるなら急いだほうがいいわよ。事務所はここを出て道を左に進んで、三番目の建物よ」
ウェイトレスさんが場所を教えてくれる。
「ありがとうございます。さっそく行ってこようM」
そういって私とMはポケモンたちをモンスターボールに戻し、お勘定をすませ、ウェイトレスさんに教えてもらった建物を目指す。そして目的の建物に着き、中に入る。
「おや? お嬢さん方、うちの事務所に何の用だい?」
するとナイスミドルなオジサンがこちらを向いて話しかけてきた。
「あの、私たち大会に参加したいんですけど」
「ああ、大会に。ではこちらへどうぞ」
そう言ってオジサンが席に案内してくれる。
「では、こちらに名前と使用ポケモンを記入してください」
言われたとおりに名前を記入しようとする。けど使用ポケモンまで書かなきゃいけないのか? そうして手を止めてオジサンに聞いてみる
「あの、使用ポケモンってどういうことですか?」
「ああ、すみません。説明してませんでした。この大会では使用できるポケモンは各人一体のみです。あとこの大会はマルチバトルの大会ですので二人一組で参加申請をしてもらいます」
「なるほど、そういうわけですか。わかりました」
なら、出すポケモンは一番パートナーとして長く付き合っていて、手持ちで最も強いリオだな。タッグを組むのはもちろんMだ。Mはどのポケモンでいくんだろう? 私は使用ポケモンの欄にルカリオと記入する。ちらりとMの書いている方を見てみるとそこにはコジョンドと書かれていた。
「へえ、Mはコジョンドか」
「そういうメイはルカリオだね。なんで?」
「最初のパートナーで一番強いから」
「私も同じ理由」
へえMの最初のパートナーはコジョンドだったのか。いや最初だから初めはコジョフーだったのかな。まあ、どうでもいいか。
「はいこれで登録が完了しました。大会について詳しいことはこの紙に書いてあります」
オジサンから紙が渡される。そこには詳しい大会のルールや集合時間、大会の場所なんかが書かれていた。ほうほう、使用ポケモンが各人一体のみ、道具を持たせるのはなし、道具の使用もなし、か。ふむ。何回戦あるかわからないし、体力はできるだけ温存して戦わなくちゃいけないな。
「それでは、登録ありがとうございました。大会を楽しみにしていてください」
「じゃあ、作戦会議といこうかM。もう一度カフェソーコに行こう」
「了解」
もう一度カフェソーコに行く。カフェソーコに入ると、さっき話しかけてきたウェイトレスのお姉さんが近寄ってくる。
「あら、いらっしゃいませ。また来てくれたのね。申請、終わった?」
「あ、はい。おかげさまで」
「うんうん、よかったわね。またここに来てくれたのはうれしいわ。ここで作戦会議といったところかしら?」
おおう、ズバリ当てられた。
「はい、そんなところです」
そうして先ほどと同じように席に案内され注文をとる。私はコーヒーを頼み、Mはチョコレートパフェを頼んでいた。まだ入るのか。さっき食べたばかりなのに。
「ねえM、もしかして甘いもの好きなの?」
「うん、大好き」
やはりそうか。そして養分は胸にいくんですねわかります。注文したコーヒーとチョコレートパフェがきて、さっそく作戦会議に入る。
「さて、ではこれより第一回作戦会議を始めます」
「んむ」
Mはパフェを食べながら頷く。
「今回の大会で重要なのは体力配分と私たち二人の連携だと思う。そこのところどうかな?」
「異議な~し」
「この大会、何回戦まであるのかわからないけど、体力を温存しなければいけないと思う。だからできるだけダメージを受けないことが重要になってくる。回復はしてくれるみたいだけど、連戦の疲れは避けられない。Mのコジョンドはみきりとかまもるを覚えてる?」
「みきりを覚えてるよ」
「よし、ならみきりをうまく使えばダメージを減らせるね。私のリオもみきりを覚えてるし。ダブルバトルだとホントは一匹しか効果のないみきりより味方を守れるまもるのほうがいいんだけど、ないものねだりしてもしょうがない」
「そうね。幸いどっちもみきりを覚えてるみたいだし、体力温存についてはこれでクリアね」
「あとはMと私の連携についてだけど。これが問題だよね」
「そうね。今まで一緒に戦ったことないもんね」
そうなんだよね。これが問題なんだよ。こんな町の小さな大会ひとつで大げさなと思うかもしれないがやるからには優勝しないとね。本気と書いてマジってやつだ。
「う~ん。1日でどうにかなるかな?」
「できたとしても付け焼刃」
「それでもやらないよりましでしょ」
「でもどうする? 連携って言っても具体的になにをすればいいか」
「そのことなんだけど、一度リオとコジョンドで戦ってみない? そうすれば互いにどんな動きをするかだいたい把握できると思うんだけど」
「それはいいかもね」
「じゃあ、さっそくいってみる?」
「おー」
そうして私とMはチョコレートパフェとコーヒーのお代を払い、近くのバトルクラブに直行した。
ありがとうございました。